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五章 テクサイス帝国編 3 帝都テクサイス
572 一ヶ月間の柵作り
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フジを外に出さないようにするのではなく、この林には人の手が入っていると、訪れた者に分かるようにするのが目的。
林の中に立派な柵を作っても、木に登るなり、柵を壊せば侵入は簡単に出来てしまう。
だから柵は杭を刺して、杭と杭に横木を五本あるだけの柵にする。
もっと低ければ、横木は二、三本で済むが、2メールくらいとなれば五本はいるだろう。
これはサイネリアにも話してあるので、簡単な柵で問題はない筈だと構想する。
今度は【マップ】を見て確認しながら、伐採する木に目印を付けていく。
柵で囲んだ内側の木も数本を残してあとは伐採して、柵を作るための材料にする。
余分な木が多いと、フジが飛び降りするのに邪魔になるだろうと。
一通り伐採する木に目印を付けたところで、カズが来ているのに気付き、フジが住み家に戻って来た。
カズは来た理由をフジに話して、柵が出来るまで急用が入らなければ毎日来るとも伝えた。
フジは嬉しそうに、柵の材料作りを手伝と言った。
翌日には目印を付けた木を全て風魔法で伐採し、柵を作るための鋸や木槌などを買い《加工》スキルを使いながら作業を進める。
柵作りの作業を初めてから三日後に、アイリスの使いでカミーリアが来たとアレナリアから聞き、その翌日にアイリスの屋敷にフジを連れて行った。
一つはフジの住み家の登録をしてくれたお礼として、気球用のバスケットに乗るアイリスを空中散歩させて楽しませること。
もう一つはレラの事で、コンルと話をする為に。
午前中はアイリスに付き合い、フジに頼んであっちへこっちへと飽きもせずに、途中休憩を取り、アイリスの付き添いを交代し、最終的に計二時間も飽きずに楽しんでいた。
侍女や女性騎士が入れ替わりで、アイリスと一緒に気球用のバスケットに乗るも、楽しそうにしていたのアイリスだけで、一緒に乗った侍女は青褪め、地上に降りると腰砕けになってしまっていた。
カズが侍女に忠告をするも、誰か一人は一緒に居ないとならない、と断固として引かなかった。
女性騎士は地上に降りても腰砕けにはならなかったが、足が震えてなんとか立っている様子だった。
乗った女性騎士は、カズから飛翔魔法を教えてもらいたいと、手を上げた一人だった。
ただ、この程度で足が震えているようでは、飛翔魔法を覚えて飛ぶのは無理じゃないかと、カズは思った。
午前はアイリスの楽しみに付き合い、午後はまた話をしたいと頼んで部屋を用意してもらい、カズとレラとコンルの三人だけにしてもらった。
コンルには情報にあった村に行き、真偽を確かめた事などを話した。
帝都からのその村がある砂漠までの距離や、その村を発見して妖精族を埋葬した年配女性の家を突き止めた事と、それを数日でしてきた事にコンルは驚きを隠せなかった。
今回の移動手段は、フジでという事にした。(実際に砂漠に着いてからはそうなのだから、嘘は言ってない)
大峡谷から帝都まで、二時間も掛からないと教えると、コンルは更に驚いていた。
翌日からはまたフジの所に行き、柵を作る作業の続きをする。
アイリスの女性騎士に魔力操作の訓練をするのに出掛ける時は、レラはカズが連れていく。
レラが来た事でフジも喜び、レラの気晴らしにもなり、人目もないので自由に外を飛び回れる。
フジが居ることで、近場に生息するモンスターや獣は寄り付かないので、カズは安心して柵作りの作業が出来る。
伐採した木を加工して、等間隔で杭を刺していく。
永住するわけでもないので、三年保てば十分だと考えている。
最終的に腐ちた事を考えて鉄釘は使わずに、知識としては何となく知っている木組みの要領で横木をはめ込んでいく。
ある程度出来たら、緑属性の植物系魔法〈プラントバインド〉を使い、杭と横木を絡めて固定する。
この作業を繰り返し、腐ちても自然に帰るだろうと、カズはこの方法で柵を地道に作っていく。
それを見ていたレラが「全部魔法で作れば簡単で早いじゃん」とツッコミを入れてきた。
確かにプラントバインド以外にプラントウォールや、土属性魔法を使えば楽なうえに、早くて頑丈な柵が出来るだろうが、サイネリアが確認をすることも考えて、林の中にあってもそれ程目立たない柵を、日数を掛けて地道に作る。
それから数日後ビワが休みとなったので、四人でフジの所に来て、カズは柵作りの作業を行い、レラはフジと遊び、アレナリアとビワは開けて日差しが注ぐ林でのんびりと休日を楽しむ。
砂漠の村から戻って十六日が経ち、レラの気持ちも大分落ち着いてきていた。
おちゃらけた感じの笑顔も戻り、以前のような騒がしさも戻って来た。
そして作業始めてから二十二日目で、ようやく柵が完成した。
日当たりを良くするのに、柵を作った外側の木々も少し伐採し、フジが住み家している建物の隣に、ちょっとしたログハウスを作った。
これで雨が降っても休憩ができ、泊まる時には壁の出っ張りにハンモックを引っ掛けて寝る事も出来る。
食事は外で焚火をして、バーベキュースタイルにすれば問題ない。
ちょっとした別荘気分で、皆で泊まりに来た時は楽しくなりそう。
サイネリアから柵を設置するように言われてから一ヶ月が経ったので、カズは柵が完成した事の報告と、テイムモンスターが生息しているという看板を作ってくれてる筈なので、それを受け取りに冒険者ギルド本部に行く。
何時も通り受付に声を掛け、サイネリアが来るのを個室に移動して待つ。
「早くてもと言いましたが、本当に一ヶ月で作っちゃったんですか?」
「そのなんだ……出来ちゃった(一ヶ月だって言ったから、それまで待って報告に来たんだけどなぁ)」
「ハァ…カズさんですから、魔法やらスキルを使って作ったんでしょう」
「まあ、そんな感じ。ところで、また確認に?」
「わたしとしては一番近い箱町のギルド職員に行ってもらいたいんですが、上司からはわたしが行くように言われてます」
そう言うサイネリアは、ふッと疲れた表情をする。
「それでいつ、行く…行きますでしょうか?」
「なんですか、急に?」
「いやなんか、功績よりも迷惑をかけてる方が多いのかと…」
「カズさんはギルド対して、大いに貢献してくれてますよ。ギルドに対しては」
「サイネリアには迷惑を掛け通しだとの事ですか?」
「これもわたしがレオラ様とカズさんの担当になったんですし、これも仕事ですから」
サイネリアはレオラ本人には決して言えないような本気の愚痴を、カズには遠慮なく向けてくる様になった。
「スゴい言葉にトゲがあるのは気のせい?」
「気のせいですよ」
絶対に気のせいではないと、カズは分かっていた。
「それで、いつ確認に行きます?」
「カズさんの予定が大丈夫であれば、明後日にと、上司から言われました」
「俺は大丈夫です」
「そうですか、大丈夫なんですね……」
カズの返答を聞き、サイネリアは一瞬嫌はそうな表情を浮かべた。
「ダメだった?」
「いいえ、大丈夫ですよ。せっかくの休日が出張で潰れても、カズさんの担当をしてるんですから。しかたないですよね!」
「だったら別日に」
「今のわたしは、後輩に仕事を教えなければならないので、丸一日時間を取るのは大変なんです」
「すいません」
「一応、特別手当もでますし、別日に休日を取れるんですが」
「そうなんだ(だったら別にいいじゃん)」
「その顔は、ちゃんとお給料も支払われて、休みも他の日に取れるなら、とか考えてますね」
「そ、そんな事は……(なぜわかった! 顔に出てたのか?)」
偶然だろうが、考えてる事を読み取られた事に、カズはドキッとした。
林の中に立派な柵を作っても、木に登るなり、柵を壊せば侵入は簡単に出来てしまう。
だから柵は杭を刺して、杭と杭に横木を五本あるだけの柵にする。
もっと低ければ、横木は二、三本で済むが、2メールくらいとなれば五本はいるだろう。
これはサイネリアにも話してあるので、簡単な柵で問題はない筈だと構想する。
今度は【マップ】を見て確認しながら、伐採する木に目印を付けていく。
柵で囲んだ内側の木も数本を残してあとは伐採して、柵を作るための材料にする。
余分な木が多いと、フジが飛び降りするのに邪魔になるだろうと。
一通り伐採する木に目印を付けたところで、カズが来ているのに気付き、フジが住み家に戻って来た。
カズは来た理由をフジに話して、柵が出来るまで急用が入らなければ毎日来るとも伝えた。
フジは嬉しそうに、柵の材料作りを手伝と言った。
翌日には目印を付けた木を全て風魔法で伐採し、柵を作るための鋸や木槌などを買い《加工》スキルを使いながら作業を進める。
柵作りの作業を初めてから三日後に、アイリスの使いでカミーリアが来たとアレナリアから聞き、その翌日にアイリスの屋敷にフジを連れて行った。
一つはフジの住み家の登録をしてくれたお礼として、気球用のバスケットに乗るアイリスを空中散歩させて楽しませること。
もう一つはレラの事で、コンルと話をする為に。
午前中はアイリスに付き合い、フジに頼んであっちへこっちへと飽きもせずに、途中休憩を取り、アイリスの付き添いを交代し、最終的に計二時間も飽きずに楽しんでいた。
侍女や女性騎士が入れ替わりで、アイリスと一緒に気球用のバスケットに乗るも、楽しそうにしていたのアイリスだけで、一緒に乗った侍女は青褪め、地上に降りると腰砕けになってしまっていた。
カズが侍女に忠告をするも、誰か一人は一緒に居ないとならない、と断固として引かなかった。
女性騎士は地上に降りても腰砕けにはならなかったが、足が震えてなんとか立っている様子だった。
乗った女性騎士は、カズから飛翔魔法を教えてもらいたいと、手を上げた一人だった。
ただ、この程度で足が震えているようでは、飛翔魔法を覚えて飛ぶのは無理じゃないかと、カズは思った。
午前はアイリスの楽しみに付き合い、午後はまた話をしたいと頼んで部屋を用意してもらい、カズとレラとコンルの三人だけにしてもらった。
コンルには情報にあった村に行き、真偽を確かめた事などを話した。
帝都からのその村がある砂漠までの距離や、その村を発見して妖精族を埋葬した年配女性の家を突き止めた事と、それを数日でしてきた事にコンルは驚きを隠せなかった。
今回の移動手段は、フジでという事にした。(実際に砂漠に着いてからはそうなのだから、嘘は言ってない)
大峡谷から帝都まで、二時間も掛からないと教えると、コンルは更に驚いていた。
翌日からはまたフジの所に行き、柵を作る作業の続きをする。
アイリスの女性騎士に魔力操作の訓練をするのに出掛ける時は、レラはカズが連れていく。
レラが来た事でフジも喜び、レラの気晴らしにもなり、人目もないので自由に外を飛び回れる。
フジが居ることで、近場に生息するモンスターや獣は寄り付かないので、カズは安心して柵作りの作業が出来る。
伐採した木を加工して、等間隔で杭を刺していく。
永住するわけでもないので、三年保てば十分だと考えている。
最終的に腐ちた事を考えて鉄釘は使わずに、知識としては何となく知っている木組みの要領で横木をはめ込んでいく。
ある程度出来たら、緑属性の植物系魔法〈プラントバインド〉を使い、杭と横木を絡めて固定する。
この作業を繰り返し、腐ちても自然に帰るだろうと、カズはこの方法で柵を地道に作っていく。
それを見ていたレラが「全部魔法で作れば簡単で早いじゃん」とツッコミを入れてきた。
確かにプラントバインド以外にプラントウォールや、土属性魔法を使えば楽なうえに、早くて頑丈な柵が出来るだろうが、サイネリアが確認をすることも考えて、林の中にあってもそれ程目立たない柵を、日数を掛けて地道に作る。
それから数日後ビワが休みとなったので、四人でフジの所に来て、カズは柵作りの作業を行い、レラはフジと遊び、アレナリアとビワは開けて日差しが注ぐ林でのんびりと休日を楽しむ。
砂漠の村から戻って十六日が経ち、レラの気持ちも大分落ち着いてきていた。
おちゃらけた感じの笑顔も戻り、以前のような騒がしさも戻って来た。
そして作業始めてから二十二日目で、ようやく柵が完成した。
日当たりを良くするのに、柵を作った外側の木々も少し伐採し、フジが住み家している建物の隣に、ちょっとしたログハウスを作った。
これで雨が降っても休憩ができ、泊まる時には壁の出っ張りにハンモックを引っ掛けて寝る事も出来る。
食事は外で焚火をして、バーベキュースタイルにすれば問題ない。
ちょっとした別荘気分で、皆で泊まりに来た時は楽しくなりそう。
サイネリアから柵を設置するように言われてから一ヶ月が経ったので、カズは柵が完成した事の報告と、テイムモンスターが生息しているという看板を作ってくれてる筈なので、それを受け取りに冒険者ギルド本部に行く。
何時も通り受付に声を掛け、サイネリアが来るのを個室に移動して待つ。
「早くてもと言いましたが、本当に一ヶ月で作っちゃったんですか?」
「そのなんだ……出来ちゃった(一ヶ月だって言ったから、それまで待って報告に来たんだけどなぁ)」
「ハァ…カズさんですから、魔法やらスキルを使って作ったんでしょう」
「まあ、そんな感じ。ところで、また確認に?」
「わたしとしては一番近い箱町のギルド職員に行ってもらいたいんですが、上司からはわたしが行くように言われてます」
そう言うサイネリアは、ふッと疲れた表情をする。
「それでいつ、行く…行きますでしょうか?」
「なんですか、急に?」
「いやなんか、功績よりも迷惑をかけてる方が多いのかと…」
「カズさんはギルド対して、大いに貢献してくれてますよ。ギルドに対しては」
「サイネリアには迷惑を掛け通しだとの事ですか?」
「これもわたしがレオラ様とカズさんの担当になったんですし、これも仕事ですから」
サイネリアはレオラ本人には決して言えないような本気の愚痴を、カズには遠慮なく向けてくる様になった。
「スゴい言葉にトゲがあるのは気のせい?」
「気のせいですよ」
絶対に気のせいではないと、カズは分かっていた。
「それで、いつ確認に行きます?」
「カズさんの予定が大丈夫であれば、明後日にと、上司から言われました」
「俺は大丈夫です」
「そうですか、大丈夫なんですね……」
カズの返答を聞き、サイネリアは一瞬嫌はそうな表情を浮かべた。
「ダメだった?」
「いいえ、大丈夫ですよ。せっかくの休日が出張で潰れても、カズさんの担当をしてるんですから。しかたないですよね!」
「だったら別日に」
「今のわたしは、後輩に仕事を教えなければならないので、丸一日時間を取るのは大変なんです」
「すいません」
「一応、特別手当もでますし、別日に休日を取れるんですが」
「そうなんだ(だったら別にいいじゃん)」
「その顔は、ちゃんとお給料も支払われて、休みも他の日に取れるなら、とか考えてますね」
「そ、そんな事は……(なぜわかった! 顔に出てたのか?)」
偶然だろうが、考えてる事を読み取られた事に、カズはドキッとした。
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