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五章 テクサイス帝国編 3 帝都テクサイス

571 柵と看板の設置要求

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 浴室の扉が開き三人の声が大きく聞こえてくると、やましい事はしてないのだが、いそいそとリビングのソファーに座り、平静を保とうとするカズ自身がいた。

「カズーちょっとあちし小腹空いちゃった! プリンあるしょ! プリンちょーだいっ! もちろん、アレナリアとビワの分もね!」

 風呂から出て来た第一声がプリンを食べたいと、なんともレラらしい言葉で、カズは「ぷッ」と、つい吹き出し笑ってしまった。

「何わらってんのさ! あちしはプリンを要求する!」

「から元気はもういいのか?」

 思うより明るく風呂から出て来たレラを見て、カズはちょっと意地悪な言い方をしてみた。

「なになに? カズはあちしに遊ばれたい子供なの!? しょうがないなぁ~、あちしはこれかはも、カズをかまってあげるよ!」

「かまう? からかってくるの間違いだろ」

「にっちっち! そうとも言うかもね」

 アレナリアとビワに話した事で、レラは少し気持ちが楽になったようだった。
 だがやはり、少々無理して明るく振る舞っている様に感じ取れ、三人はそんなにレラを暫くの間、温かく見守ることにした。


 ◇◆◇◆◇


 今日ビワはメイドの仕事は休み、皆の布団を干して各部屋の掃除と、家でもレオラの屋敷でも、やることはあまり変わらない。
 ゆっくりと休めば良いのに働き者だ。
 アレナリアもこの日はヒューケラの所に行く事はせず、レラに付き合い裏庭で日向ぼっこをしてのんびりと過ごす。
 カズはサイネリアから四、五日したら来るように言われていたのを思い出し、朝から冒険者ギルド本部に。

 先日レオラと共に訪れ、大々的出迎えられた事で、カズが第六皇女専属の冒険者だと、今まで知りもしなかったギルド職員や冒険者らに知られる事になった。
 幸いにも第五皇女アイリスの屋敷に出入りしてるのは知られておらず、ギルド職員で知るのはサイネリアと一握りの上司だけ。
 それもレオラのお供として付いて行くと思っている。
 ギルド職員達は第五皇女アイリスが、とても気さくなのを知らない。
 知られたとしても好感度が上がるので良いのだが、男色好きなを知られるのは流石に問題がある。
 レオラから注意をされずとも、カズもそれを危惧していたので、アイリスやその騎士のカミーリアを話題を自分から話すことはしない。
 例え話題に上がったとしても、顔見知り程度としか話さないようにしていた。

 カズが冒険者ギルド本部の一階に姿を現すと、それに気付いた周囲の冒険者と、先日の一件でカズを知ったギルド職員が、ざわざわとし始めていた。
 カズは居た堪れず、サイネリアとよく話をしていた受付の女性職員に声を掛けて、上に行く許可を得ると、何時も使う個室に移動した。

「あの空気と視線は耐えられん。俺もこれからは、職員用の出入口から越させてもらおうかな」

「個室だからって、ずいぶんと大きな独り言ですね」

 受付から連絡がいき、サイネリアがカズの待つ個室にやって来た。

「ならちょうどいいや、これから職員用の方から来ていい?」

「駄目です。カズさんは今まで通り、正面の一階受付から来てください。レオラ様は特別なんです」

「色々と面倒な頼まれた事をやったよね。それでも?」

「駄目です。それはそれ、これはこれです」

「結構厳しいんだ」

「確かにカズさんには、急ぎの素材採取や、ヘルバイパーなどの危険なモンスター討伐をお願いしましたが、今回のテイムモンスター登録の件や、特殊なターマイトの引き取りなんかで、書類やらなんならで色々と大変だったんですよ。珍しい素材が入るのは、ギルドとしては嬉しいのですが」

 グラトニィ・ターマイトに関しては、レオラからの依頼なんだけど、とツッコミたかったが、そしたら今度は特殊な大百足を、と言ってきそうだったのでやめておいた。
 フジの住まいに関してサイネリアから言われたことは、大きなテイムモンスターが居るのを、近くに来たり通った人が分かるように、周囲に柵を設けて看板を取り付けるくらいはするようにとの事だった。
 フジの大きさを考えて、2メールから3メールの高さの柵を作りように言われた。
 テイムされたモンスターとはいえ、危険度Aランクのフジと常に行動を共にしてないのだから、最低そのくらいの事はするようにとのギルドからの話だった。

「わかった。周囲の木を伐採して、柵を作ればいいんだな。簡単な物でいいだろ?」

「はい。閉じ込めるための物ではないので。ですが、ちゃんとテイムモンスターがいると、看板を設置してください。もし誰かにケガをさせた場合は、カズさんに責任がいきますからね」

「わかってる。ちゃんとフジに言っておく。それでも、相手からやられたら反撃するようには教えてあるからな」

「その相手がモンスターなら構いませんが、迷い込んだ子供を食べたなんて事にでもなったら」

「子供をあんな場所に、一人にする方が問題あると思うが(子供を育てられず捨てた、とかか?)」

「例えで言ったまでです。でもあり得ない事ではないので、注意してください」

「わかった(今のところ一番近いのはキビ村だけど、フジの存在は話してあるから大丈夫だと思うが、柵と看板を作ったら、一応伝えに行くか)」
         
「それと人の多い帝都中央に来させるのは、レオラ様の頼みでもやっぱり難しいですね。初めてカズさんが連れて来た時に、もし他の人に見つかっていたら大騒ぎでしたからね」

「そうなると思って、暗くなってからギルドの来させたんけど。やっぱり家に呼び寄せるのは無理か」

「無理ですね。あの辺りは住宅地ですし、川の反対側には商店が多くありますから。郊外でないと」

「了解した。言われた柵を作ったら来るから、テイムモンスターが居ると書かれた看板は、そっちで用意してくれないか。ギルドが公認したと分かるように」

「それもそうですね。後々問題になっても困りますし、柵を作るのにも早くても一ヶ月は掛かるでしょう。それまでには用意しておきます」

「よろしく頼む。看板を作る費用は、俺がギルドに預けてるお金から引いといてくれ(簡単な柵なら、もっと早く出来ると思うが黙っておこう)」

 ギルド本部を後にして、カズは周囲に建物がなく広く人気のない場所で、フジを呼び寄せても問題ない一番近いのは、やはりアイリスの屋敷周辺しかないと考えた。
 頼めば許可されると思うが、その結果レオラ第六皇女アイリス第五皇女二人のお抱え冒険者と認知されてしまうに違いない。
 それこそアイリスが地方に公務として出掛けると大義名分を利用して、気球用のバスケットを使用し、時間あれば乗ろうとするかも知れないと考えた。
 しょっちゅう乗れば飽きる可能性もあるが、それが何時になるか分からないので、用事のある時は自分からフジの所に行こうとカズは決めた。

 だがフジの住み家を登録するのに協力し、書類を用意してくれたので、お礼として気球用のバスケットで空を飛ばせる為に、連絡があれば一度は行く必要があった。
 そんな事を考えながら人気の無い路地に入ると、周囲を確かめ〈空間転移魔法ゲート〉でフジの居る林に移動した。

 カズに言われた事を守り、キビ村とその畑にモンスターが接近してはないか、フジは毎日上空から観察していた。
 カズは柵を作るのに、フジの住み家の周囲を歩いて伐採する木を選ぶ。
 フジが寝床にしている建物を中心として、そこそこの広さになるように柵を作ることにした。
 といっても、出入りが出来ないような頑丈な物ではなく、牧場にありそうな、牛や馬が出ないようにする感じの柵を作るつもりだ。
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