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五章 テクサイス帝国編 3 帝都テクサイス
563 フジの住まいの登録に
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《 二日後 》
朝ビワをレオラの屋敷に送り、レオラと今日の護衛グラジオラスと共に、カズはギルド本部へと向かった。
レラが昨夜アレナリアとビワに、コンルから聞いた話を伝えた筈だが、今朝アレナリアも一緒に来たビワも、その事について何も言わなかった。
「なぜギルドに来たんですか? 出発前に用事でも?」
「いや、列車では時間がかかる。だからここから南部のギルドに飛ぶ」
「は?」
「なんだ知らないのか。帝国の範囲内なら、一部のギルド同士で転移する事が出来るんだぞ」
「帝国では初耳です」
「カズの反応からすると、オリーブ王国でも使われてるのか」
「結構使われてますね」
「そうか。帝国では魔導列車が発展しているから、余程緊急でなければ使う事はない。それに帝国は国土が広く、転移するギルドによっては魔力消費が多く、今の時点で実用的じゃない。Aランクの冒険者だって、おいそれと使う事はないだろ」
「確かに王国より、帝国の方が遥かに広いですからね」
「今回はアタシの取れた時間が、今日一日だけだったから使う事にした。それにカズの魔力を使えば、転移に必要な魔力に問題ないだろ」
「俺を当てにしての、ギルドからギルドへの転移ですか」
「目的はフジの件なんだ。カズには関係大ありだろ」
「それを言われると……」
「昨日の内に話は通してある。先に受付に行き、サイネを呼び出してくれグラジオラス」
「わかりました。すぐ行ってきます」
グラジオラスは見えてきたギルド本部に小走りで向かい、一階受付でサイネリアを呼び出してもらった。
グラジオラスが離れた事で、レオラは移動についての話を切り替えた。
「アタシと二人ならカズの転移魔法で行けば早いだろうが、今回は一応公務だ」
「公務? その割に服装はいつもと同じなのか」
「テイムされたモンスターだとしても、その危険度はAランクだ。だから姉上に書類を作成してもらい、アタシが直々に行くんだ。ちなみにアタシが正装するのは、皇族の集まりくらいだ」
「結構な大事になってる」
「アタシお抱えの冒険者という事になってるからこの程度ですんだんだ。でなければ本来カズはフジから離れず、常に行動を共にしなければならないんだぞ」
「それは…確かにその通りです(それが通常のテイマーなんだよな)」
「だから記録が残るギルドでの転移を選んだ」
「テイムモンスターのフジと一緒にいない俺って、そこまで不味い感じですか?」
「危険度Aランクのモンスターをテイムしてるんだ。不味いどころじゃない。カズがアタシのお抱え冒険者だという事になっていなければ、帝国への敵対とみなされる可能性だって大いにあったぞ」
「んッ!」
「だがまあ、カズはギルドへの貢献もそれなりにある。とりあえず問題ないだろ。フジは利口で、カズの言う事を聞いていたしな」
「レオラ様、さまさまです」
「ハハハっ。カズに感謝されるのはいいもんだ。うんうん。いつもその心構えを忘れるなよ」
とんだところで、帝国の敵とみなされそうな事をしていたと知ったカズは、第六皇女と知り合っていて良かったと初めて思った。
レオラと知り合わなければ、色々な意味でこうならなかったかも知れないが、今言ったところでどうなる訳でもなく、実際知り合わなければ、レラに関する情報は未だに得られなかったかも知れなかった。
カズが冷や汗を流しそうな思いになってるなか、レオラはカズに感謝された事で上機嫌になっていた。
結局もって善し悪しなんてのは、その時自分が置かれている状況で、自分が良いと思えるか悪いと思えるかでしかない。
第六皇女として御付きの騎士を連れて、ギルド本部に来る事は殆どなく、一階に居るギルド職員が仕事の手を止めて、外まで迎えに出て来る事態になった。
公務として訪れたレオラだが、何時も来る時はギルド正面からは入らず、職員専用の出入口から出入りしているので、よくギルド本部に来ている冒険者も滅多にレオラを見掛ける事はない。
レオラの専属であるサイネリアが丁重に出迎え、昇降機を使用し、上層階の上級貴族以上が使う専用の部屋へと三人を案内した。(そもそもレオラ以外の皇族が、冒険者ギルドに来ることは無いに等しい)
たまたますれ違ったギルド職員も、立ち止まり通路の隅によって頭を下げて、失礼のないようにする。
「表から顔をさらして来るとこれだ。堅苦しくて疲れる」
部屋に入り四人だけになると、レオラは高級ソファーにどさりと座り気を抜く。
「アイリス様に書類を用意していただき、レオラ様が現地を訪れて、カズ殿のテイムモンスターを正式に帝都中央に来させても大丈夫なようにするのです。いつもみたいに裏からギルドに入られては」
「わかってる、グラジオラス。だからこうしてわざわざ表から来たんだ」
「今回の正式訪問は、話にありましたカズさんのテイムモンスターの事だと伺ってます」
「そうだ。フジが急に帝都に姿を現したら、大騒ぎになるだろう。だから姉上とアタシの名前を使って、皇女お抱えAランク冒険者のテイムモンスターだとする」
「確かにその方がよろしいですね。わたしも初めて見せられた時は……」
サイネリアはジト目をカズに向ける。
「そう言うなサイネ」
「……そうですね、過ぎた事でした」
口ではそう言っているが、サイネリアの視線から何かあれば、また言われそうだとカズは思った。
「ではさっそく帝都南部のギルドに飛ぶ」
「箱町のギルドです。そこからキビ村までの移動手段として、あちらのギルドに馬車を用意させてあります。持っていかれる書類は、複写した物をお持ちください。元の書類はギルド本部にて厳重に保管いたします。それと他にもキビ村への連絡事項が…」
「説明はいい。頼んだぞサイネ」
「……何を、ですか?」
「アタシらがやるより、サイネがやれば早いだろ」
「え? それはどういう」
「だから、サイネも行くんだ」
「は? え!? わ、わたしが?」
「話は昨日ギルドに通してあるぞ。聞いてないのか?」
「今朝日帰りの出張と聞きました。レオラ様達と一緒に行くとは……そういえば、一緒に行く方に失礼のないようにと」
「ああ、サイネは昨日休みだったけな」
「はい。今朝、日帰り出張の話を聞いている時に、グラジオラス様がいらして、一緒に行く相手を聞きそびれてしまい」
「どうあれ決まった事だ。持って行く書類などは、ここにあるだけか?」
「出張に持っていく荷物は用意してあると、わたしの仕事机の上に置いてあります」
「ならそれと書類を持って、すぐに行くぞ」
「え、あの…はい(急にレオラ様達と出掛ける事になるなんて、昨日休みじゃなければ心の準備が出来たのに)」
無理矢理な感じでサイネリアを加えた四人は、ギルド本部の転移装置から、カズの魔力を使用して帝都南部の箱町のギルドに移動した。
こちらでも皇女であるレオラが訪れた事で、ギルド職員が総出で出迎えてきた。
この日小さなこの箱町のギルドでは、レオラがいつ来るかと、前日からずっと緊張で空気が張り詰めていた。
転移装置で訪れた四人の内、カズが以前に来た冒険者だと気付く職員もいたが、殆どがレオラを目の当たりにしてそれどころではなかった。
ペコペコと箱町のギルドマスターと、サブ・ギルドマスターが腰を低く対応していたのは言うまでもない。
一緒にきたギルド本部職員のサイネリアが手続きなどをして、四人は用意された馬車に乗りキビ村に向かう。
移動手段は箱街で一番馬力のある馬と、高価な内装の馬車をギルドが急いで用意した。
御者は断っており、グラジオラスが馬を操る御者を務める。
朝ビワをレオラの屋敷に送り、レオラと今日の護衛グラジオラスと共に、カズはギルド本部へと向かった。
レラが昨夜アレナリアとビワに、コンルから聞いた話を伝えた筈だが、今朝アレナリアも一緒に来たビワも、その事について何も言わなかった。
「なぜギルドに来たんですか? 出発前に用事でも?」
「いや、列車では時間がかかる。だからここから南部のギルドに飛ぶ」
「は?」
「なんだ知らないのか。帝国の範囲内なら、一部のギルド同士で転移する事が出来るんだぞ」
「帝国では初耳です」
「カズの反応からすると、オリーブ王国でも使われてるのか」
「結構使われてますね」
「そうか。帝国では魔導列車が発展しているから、余程緊急でなければ使う事はない。それに帝国は国土が広く、転移するギルドによっては魔力消費が多く、今の時点で実用的じゃない。Aランクの冒険者だって、おいそれと使う事はないだろ」
「確かに王国より、帝国の方が遥かに広いですからね」
「今回はアタシの取れた時間が、今日一日だけだったから使う事にした。それにカズの魔力を使えば、転移に必要な魔力に問題ないだろ」
「俺を当てにしての、ギルドからギルドへの転移ですか」
「目的はフジの件なんだ。カズには関係大ありだろ」
「それを言われると……」
「昨日の内に話は通してある。先に受付に行き、サイネを呼び出してくれグラジオラス」
「わかりました。すぐ行ってきます」
グラジオラスは見えてきたギルド本部に小走りで向かい、一階受付でサイネリアを呼び出してもらった。
グラジオラスが離れた事で、レオラは移動についての話を切り替えた。
「アタシと二人ならカズの転移魔法で行けば早いだろうが、今回は一応公務だ」
「公務? その割に服装はいつもと同じなのか」
「テイムされたモンスターだとしても、その危険度はAランクだ。だから姉上に書類を作成してもらい、アタシが直々に行くんだ。ちなみにアタシが正装するのは、皇族の集まりくらいだ」
「結構な大事になってる」
「アタシお抱えの冒険者という事になってるからこの程度ですんだんだ。でなければ本来カズはフジから離れず、常に行動を共にしなければならないんだぞ」
「それは…確かにその通りです(それが通常のテイマーなんだよな)」
「だから記録が残るギルドでの転移を選んだ」
「テイムモンスターのフジと一緒にいない俺って、そこまで不味い感じですか?」
「危険度Aランクのモンスターをテイムしてるんだ。不味いどころじゃない。カズがアタシのお抱え冒険者だという事になっていなければ、帝国への敵対とみなされる可能性だって大いにあったぞ」
「んッ!」
「だがまあ、カズはギルドへの貢献もそれなりにある。とりあえず問題ないだろ。フジは利口で、カズの言う事を聞いていたしな」
「レオラ様、さまさまです」
「ハハハっ。カズに感謝されるのはいいもんだ。うんうん。いつもその心構えを忘れるなよ」
とんだところで、帝国の敵とみなされそうな事をしていたと知ったカズは、第六皇女と知り合っていて良かったと初めて思った。
レオラと知り合わなければ、色々な意味でこうならなかったかも知れないが、今言ったところでどうなる訳でもなく、実際知り合わなければ、レラに関する情報は未だに得られなかったかも知れなかった。
カズが冷や汗を流しそうな思いになってるなか、レオラはカズに感謝された事で上機嫌になっていた。
結局もって善し悪しなんてのは、その時自分が置かれている状況で、自分が良いと思えるか悪いと思えるかでしかない。
第六皇女として御付きの騎士を連れて、ギルド本部に来る事は殆どなく、一階に居るギルド職員が仕事の手を止めて、外まで迎えに出て来る事態になった。
公務として訪れたレオラだが、何時も来る時はギルド正面からは入らず、職員専用の出入口から出入りしているので、よくギルド本部に来ている冒険者も滅多にレオラを見掛ける事はない。
レオラの専属であるサイネリアが丁重に出迎え、昇降機を使用し、上層階の上級貴族以上が使う専用の部屋へと三人を案内した。(そもそもレオラ以外の皇族が、冒険者ギルドに来ることは無いに等しい)
たまたますれ違ったギルド職員も、立ち止まり通路の隅によって頭を下げて、失礼のないようにする。
「表から顔をさらして来るとこれだ。堅苦しくて疲れる」
部屋に入り四人だけになると、レオラは高級ソファーにどさりと座り気を抜く。
「アイリス様に書類を用意していただき、レオラ様が現地を訪れて、カズ殿のテイムモンスターを正式に帝都中央に来させても大丈夫なようにするのです。いつもみたいに裏からギルドに入られては」
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「確かにその方がよろしいですね。わたしも初めて見せられた時は……」
サイネリアはジト目をカズに向ける。
「そう言うなサイネ」
「……そうですね、過ぎた事でした」
口ではそう言っているが、サイネリアの視線から何かあれば、また言われそうだとカズは思った。
「ではさっそく帝都南部のギルドに飛ぶ」
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「説明はいい。頼んだぞサイネ」
「……何を、ですか?」
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「え? それはどういう」
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無理矢理な感じでサイネリアを加えた四人は、ギルド本部の転移装置から、カズの魔力を使用して帝都南部の箱町のギルドに移動した。
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