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五章 テクサイス帝国編 3 帝都テクサイス
558 レオラとアイリスに仕える騎士の合同訓練 10 今回の訓練を実地した意味
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三日間使用したテントを片付けにレオラ組の三人と、カズとアレナリアが向かった後、レオラは疲弊しているアイリス組の騎士達に話をしていた。
「お前達の顔を見ればわかるぞ。魔力の操作が苦手であろうと、万全の装備をしていれば問題ないと思ってるだろ。モンスターを相手にした戦闘訓練なんて、姉上を護衛する自分達には関係ないとも考えてるだろ」
疲弊しているアイリス組の騎士達からは、見透かされた思う者もいれば、疲れからそれが隠しきれず表情に出てしまう者もいた。
「姉上は公務でも帝都から出ることは殆どないからね。お前達がモンスターとの戦闘訓練をする必要がないと思うのは当然かもしれない。だが、必ずしもモンスターが帝都に現れないとも言いきれないぞ」
流石にテイムされてないモンスターが、帝都中央に現れるとは、万が一にも思ってない面々に、レオラは更に話を続けた。
「カズが連れてきたテイムモンスターのフジは、危険度Aランクと指定されてるライジングホークの子供だ。カミーリアが遭遇したというアルラウネの話は聞いているか? あれの危険度はBランクに位置付けられている。帝都南部の村では、危険度Aランクの猛毒を持つヘルバイパーが少し前まで出現していたみたいだぞ」
「していたみたい? と言いますと、今はどこかに移動したって事ですか? まさか帝都中央に」
レオラの話が過去形だったので、騎士の一人がその事について尋ね、モンスターが迫って来ているのではと危惧した。
「ヘルバイパーはギルドからの指名依頼を受けた冒険者によって討伐された。人の多い場所に、強力なモンスターが現れたら大事だからね。事前に被害が出る前に、ギルドが指名依頼として高ランク冒険者に依頼を出しているんだ。こういった事は国との契約でギルドが動き、処理している事が多い。お前達は知らないだろう」
冒険者がそうやってモンスターを討伐してくれるのであれば、尚更モンスターを相手にした戦闘訓練をする必要はないのと騎士達は考えた。
そう考えているだろうと察したレオラは、モンスターの相手を想定した戦闘訓練をする意味を話す。
「もし危険度Aランク以上のモンスターが群れで現れた場合は、守護者の称号を持つアタシらが対処する事になるだろう。冒険者ギルドは帝国との契約で動かなければならないが、冒険者がそれを受けるかはわからない。ギルドが強制させようとしても、ランク降格や冒険者ギルドから除名させられても、実力があり貴族などと契約をしていれば、冒険者という肩書きが無くなってもいいと思っている者も少なくはないだろ。だから帝都中央まで攻められる可能性だってあるんだ。それは数十年後かも知れないし、明日かも知れない」
帝国と冒険者ギルド、それと冒険者の繋がりを聞かされたアイリス組の騎士達は、鍛えて強くなれるのであれば、それをしなければならないのではと、考えに変化が現れる者が出てきた。
「勧誘しているようになってしまっているが、姉上の所に居るお前達は、他の皇女の護衛をしている女の騎士達に比べ、今以上に強くなるための教えを受けられる環境にある。強くなりたいと思うのであれば、それは幸いだとアタシは思う。あとは個々にどうするか考える事だ。アタシの立場云々は関係なしだ。アタシの考えに賛同しないからと、姉上の騎士を辞める必要もない。これは強制ではない」
これからもレオラの指導を受けて、強くなろうと決断出来る者はまだいなかった。
唯一アルラウネと実際に戦った事のあるカミーリアも、即決する判断は出来なかった。
「ただし体力はもう少しつけることだ。今のままで、姉上の護衛が万全に出来るか心配になる。だから最後の訓練は、今の装備を付けたまま宿舎に戻る事だ」
普段は付けない金属製の装備も、カズが運んでくれるのではと期待していたアイリス組の騎士達だが、そう甘くなかったと落胆。
「そろそろ後片付けを終えた五人が戻って来るだろ。ちなみに付け加えておくと、ヘルバイパーを討伐したのもカズだ。他にも危険度Aランクの特殊個体の大百足や、Aランクを含むCランクやDランクが二百体以上が群れた、グラトニィ・ターマイトなんてのも一人で討伐している。ほぼ無傷で」
最後にレオラが付け加えた話を聞き、カズと模擬戦をした騎士五人の顔が引き攣った。
「実際受けた通り、カズは異性に対して甘い考えがある。お前達が同姓だったら、気絶する攻撃くらいはされただろう」
もしレオラが致命傷になり得るダメージを、その身に受けさせてやれとでも言っていたら。(本人達は知らないが、実際に近い事は言っていた)
軽症でも治してくれたカズなら、すぐに回復魔法を掛けてくれたろうが、もし力加減を誤っていたとしたらと考えると……。
レオラとカズの手合わせを見た時に、あの一撃をまともに受け止められるだろうか、と。
その考えは間違いでなかったと、付け加えられた話を聞き、今のままでは無理だと確信した。
全員がアイリスの屋敷に着いた頃には、アイリス組の騎士十二人全員が息を荒くして、足取りは重く体勢は前のめり、酔っているかのような千鳥足な者も居た。
「風呂で汗を流してと言いたいところだが、その様子では無理か」
使用人や騎士達の私室がある宿舎の前で座り込み、金属製の装備を脱ぎ捨て薄着になりぐったりとする。
「その汚れてままの姿では、宿舎に入れないだろ。カズ、何とかしてやれ(やはり体力不足か。無理させず装備品を脱がせて、カズに運ばせるべきだった。姉上に小言を言われそうだ)」
「わかりました(装備を外させれば、ここまでへばる前に着いたろうに)」
アイリスの屋敷の敷地内にある宿舎の前に着き、金属製の装備を脱ぐと、軽くなった体と宿舎に着いた事の安心から、一気に眠気がアイリス組の騎士達を襲う。
カズはレオラやアレナリアを含む騎士全員に〈クリーン〉を掛けて全身から汚れを取り除き清潔にし、脱ぎ捨てられた装備品には〈クリア〉を使った。
ただ、持ち主の騎士達に手入れをさせるために、一部だけに使い完全には汚れを取り除かなかった。
自分の身を守る装備品は、自分で管理しないと駄目だと、カズは考えたからだ。
それでも八割くらいは汚れが取り除かれている。(やはり異性には甘くなるようだ)
アイリスからの指示があったのだろう、宿舎から女性の使用人が五人出てきて、騎士達を各々の部屋へと連れていった。
「カミーリアは回収した荷物を片付ける場所をカズを案内してから休め。それくらいは動けるだろ」
「それくらいなら大丈夫です」
「お前達三人は風呂に入って疲れを取れ。遠慮はするなよ。アタシとアレナリアは姉上の所に行ってる。カズは荷物を置いたら、カミーリアを部屋まで連れてってから来い。途中で倒れられたら、姉上に何を言われるか」
「了解しました(最後の後片付けは、俺がするのか)」
レオラとアレナリアは屋敷の迎えに出てきた侍女の案内でアイリスの居る部屋に向かい、アスターとグラジオラスとガザニアの三人は、女性の使用人の案内で風呂場へと移動した。
カズは騎士達の脱ぎ捨てた金属製の装備品を、運ぶために一度【アイテムボックス】に入れ、カミーリアの案内で宿舎脇の倉庫に移動して、回収した全ての物を出した。
「俺にはどれが誰の物かわからないから、動けたら明日にでも片付けてくれ」
「申し訳ない、カズ」
「アイテムボックスに入れて運んできたんだ。負担になってるわけじゃないんだから気にするな。カミーリアも疲れてるんだろ、部屋まで送る」
「私は大丈夫です」
「住んでるのが女性ばかりだから、俺は入らない方がいいんだろうが、レオラ様に言われてるからな。カミーリアを部屋まで送ったらすぐに出るよ(早く用事を済ませて戻らないと、ビワが夕食作って待ってるはずたからな)」
カズは自身にも〈クリーン〉を掛けてから、カミーリアと共に宿舎へと向かった。
「あの、少しふらつきそうなので、腕を掴んでいいです?」
「だったら肩貸そうか?」
「いえ、そこまでは」
カズの左腕に自分の右腕を絡ませて、カミーリアはその腕を胸の方へ引き付けた。
カミーリアの方が背が高いので、この体勢では逆に疲れてしまいそうにも思えた。
だがそれはどうでもよく、カミーリアは頑張って訓練をした自分への御褒美が欲しかっただけだった。
カズは疲弊しているカミーリアを気遣い、好きさせてそのまま宿舎へと入っていった。
「お前達の顔を見ればわかるぞ。魔力の操作が苦手であろうと、万全の装備をしていれば問題ないと思ってるだろ。モンスターを相手にした戦闘訓練なんて、姉上を護衛する自分達には関係ないとも考えてるだろ」
疲弊しているアイリス組の騎士達からは、見透かされた思う者もいれば、疲れからそれが隠しきれず表情に出てしまう者もいた。
「姉上は公務でも帝都から出ることは殆どないからね。お前達がモンスターとの戦闘訓練をする必要がないと思うのは当然かもしれない。だが、必ずしもモンスターが帝都に現れないとも言いきれないぞ」
流石にテイムされてないモンスターが、帝都中央に現れるとは、万が一にも思ってない面々に、レオラは更に話を続けた。
「カズが連れてきたテイムモンスターのフジは、危険度Aランクと指定されてるライジングホークの子供だ。カミーリアが遭遇したというアルラウネの話は聞いているか? あれの危険度はBランクに位置付けられている。帝都南部の村では、危険度Aランクの猛毒を持つヘルバイパーが少し前まで出現していたみたいだぞ」
「していたみたい? と言いますと、今はどこかに移動したって事ですか? まさか帝都中央に」
レオラの話が過去形だったので、騎士の一人がその事について尋ね、モンスターが迫って来ているのではと危惧した。
「ヘルバイパーはギルドからの指名依頼を受けた冒険者によって討伐された。人の多い場所に、強力なモンスターが現れたら大事だからね。事前に被害が出る前に、ギルドが指名依頼として高ランク冒険者に依頼を出しているんだ。こういった事は国との契約でギルドが動き、処理している事が多い。お前達は知らないだろう」
冒険者がそうやってモンスターを討伐してくれるのであれば、尚更モンスターを相手にした戦闘訓練をする必要はないのと騎士達は考えた。
そう考えているだろうと察したレオラは、モンスターの相手を想定した戦闘訓練をする意味を話す。
「もし危険度Aランク以上のモンスターが群れで現れた場合は、守護者の称号を持つアタシらが対処する事になるだろう。冒険者ギルドは帝国との契約で動かなければならないが、冒険者がそれを受けるかはわからない。ギルドが強制させようとしても、ランク降格や冒険者ギルドから除名させられても、実力があり貴族などと契約をしていれば、冒険者という肩書きが無くなってもいいと思っている者も少なくはないだろ。だから帝都中央まで攻められる可能性だってあるんだ。それは数十年後かも知れないし、明日かも知れない」
帝国と冒険者ギルド、それと冒険者の繋がりを聞かされたアイリス組の騎士達は、鍛えて強くなれるのであれば、それをしなければならないのではと、考えに変化が現れる者が出てきた。
「勧誘しているようになってしまっているが、姉上の所に居るお前達は、他の皇女の護衛をしている女の騎士達に比べ、今以上に強くなるための教えを受けられる環境にある。強くなりたいと思うのであれば、それは幸いだとアタシは思う。あとは個々にどうするか考える事だ。アタシの立場云々は関係なしだ。アタシの考えに賛同しないからと、姉上の騎士を辞める必要もない。これは強制ではない」
これからもレオラの指導を受けて、強くなろうと決断出来る者はまだいなかった。
唯一アルラウネと実際に戦った事のあるカミーリアも、即決する判断は出来なかった。
「ただし体力はもう少しつけることだ。今のままで、姉上の護衛が万全に出来るか心配になる。だから最後の訓練は、今の装備を付けたまま宿舎に戻る事だ」
普段は付けない金属製の装備も、カズが運んでくれるのではと期待していたアイリス組の騎士達だが、そう甘くなかったと落胆。
「そろそろ後片付けを終えた五人が戻って来るだろ。ちなみに付け加えておくと、ヘルバイパーを討伐したのもカズだ。他にも危険度Aランクの特殊個体の大百足や、Aランクを含むCランクやDランクが二百体以上が群れた、グラトニィ・ターマイトなんてのも一人で討伐している。ほぼ無傷で」
最後にレオラが付け加えた話を聞き、カズと模擬戦をした騎士五人の顔が引き攣った。
「実際受けた通り、カズは異性に対して甘い考えがある。お前達が同姓だったら、気絶する攻撃くらいはされただろう」
もしレオラが致命傷になり得るダメージを、その身に受けさせてやれとでも言っていたら。(本人達は知らないが、実際に近い事は言っていた)
軽症でも治してくれたカズなら、すぐに回復魔法を掛けてくれたろうが、もし力加減を誤っていたとしたらと考えると……。
レオラとカズの手合わせを見た時に、あの一撃をまともに受け止められるだろうか、と。
その考えは間違いでなかったと、付け加えられた話を聞き、今のままでは無理だと確信した。
全員がアイリスの屋敷に着いた頃には、アイリス組の騎士十二人全員が息を荒くして、足取りは重く体勢は前のめり、酔っているかのような千鳥足な者も居た。
「風呂で汗を流してと言いたいところだが、その様子では無理か」
使用人や騎士達の私室がある宿舎の前で座り込み、金属製の装備を脱ぎ捨て薄着になりぐったりとする。
「その汚れてままの姿では、宿舎に入れないだろ。カズ、何とかしてやれ(やはり体力不足か。無理させず装備品を脱がせて、カズに運ばせるべきだった。姉上に小言を言われそうだ)」
「わかりました(装備を外させれば、ここまでへばる前に着いたろうに)」
アイリスの屋敷の敷地内にある宿舎の前に着き、金属製の装備を脱ぐと、軽くなった体と宿舎に着いた事の安心から、一気に眠気がアイリス組の騎士達を襲う。
カズはレオラやアレナリアを含む騎士全員に〈クリーン〉を掛けて全身から汚れを取り除き清潔にし、脱ぎ捨てられた装備品には〈クリア〉を使った。
ただ、持ち主の騎士達に手入れをさせるために、一部だけに使い完全には汚れを取り除かなかった。
自分の身を守る装備品は、自分で管理しないと駄目だと、カズは考えたからだ。
それでも八割くらいは汚れが取り除かれている。(やはり異性には甘くなるようだ)
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「俺にはどれが誰の物かわからないから、動けたら明日にでも片付けてくれ」
「申し訳ない、カズ」
「アイテムボックスに入れて運んできたんだ。負担になってるわけじゃないんだから気にするな。カミーリアも疲れてるんだろ、部屋まで送る」
「私は大丈夫です」
「住んでるのが女性ばかりだから、俺は入らない方がいいんだろうが、レオラ様に言われてるからな。カミーリアを部屋まで送ったらすぐに出るよ(早く用事を済ませて戻らないと、ビワが夕食作って待ってるはずたからな)」
カズは自身にも〈クリーン〉を掛けてから、カミーリアと共に宿舎へと向かった。
「あの、少しふらつきそうなので、腕を掴んでいいです?」
「だったら肩貸そうか?」
「いえ、そこまでは」
カズの左腕に自分の右腕を絡ませて、カミーリアはその腕を胸の方へ引き付けた。
カミーリアの方が背が高いので、この体勢では逆に疲れてしまいそうにも思えた。
だがそれはどうでもよく、カミーリアは頑張って訓練をした自分への御褒美が欲しかっただけだった。
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