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五章 テクサイス帝国編 3 帝都テクサイス
556 レオラとアイリスに仕える騎士の合同訓練 8 残念な魔力操作は駆け出し冒険者並み
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レオラとアイリスが話をしながら訓練を見始めてから、カズは地面に胡座をかいて座り、フジに寄り掛かってうとうとしだし、少しするとそのまま寝てしまった。
カズが寝たのを見て、寄り添っていたフジも一緒になって昼寝をする。
暫くしてレ訓練の指導をしろと、レオラに起こされた。
「アレナリアと一緒に魔力操作のコツを皆に教えてやれ。それと、しっかりと目を覚ませ(最後には騎士達に見せ事もあるんだ)」
「ふぁ~……わかりました(寝足りないが、少しはましなったかな)」
寝ているフジを起こさないようにして、カズは騎士達とアレナリアが居る場所に移動した。
アイリスに仕える十二人の騎士の内、半数が魔力を消費し過ぎてへばっていた。
細剣を使っていた小柄な騎士が魔力操作の覚えが早く、剣に魔力を纏わせて器用に衝突の瞬間切っ先に魔力を集め、ダメージ上昇と武器への耐久力を高めていた。
貫く事は出来ないが、標的にしている溶岩喰いのケラの前脚に、ペン先くらいの小さな穴を空けられるようになっていた。
ガザニアとグラジオラスも強化スキルを使い全力で一撃を入れると、ハッキリと分かる傷を付ける事が出来ていた。
「お疲れアレナリア。皆の調子はどう?」
「装備品を身に付けるだけで、自動で魔力を消費して耐久力を上げたりする物を使ってる騎士ばかりみたい。だから魔力操作が雑ね。魔力が枯渇する前に消費は止まるようだけど、それらかどうするつもりなのかしら。ただの重たい防具になるだけじゃない」
「アレナリアもそう感じたか(聞こえるようにハッキリと言うね。しかもキツメに)」
「ええ。実戦をしないから、強化スキルや魔法が使えても、魔力の使い方がなってないのよ。だから必要以上に消費して、短時間しか持たない。剣の腕は一流でも魔力操作としては三流。DかよくてもCランクの冒険者並み」
声を落とさず騎士達に聞こえるように言うアレナリアに、少しばかりキツい視線が向く。
だが的を得ているのと、レオラが指南役として呼んだ手前、誰も言い返せなかった。
あと二時間程で合同訓練も終わりだが、険悪な雰囲気になるのも嫌だったので、一応カズはフォローに入る。
「合同訓練参加してる皆は皇族に仕える騎士であって、魔法騎士とかじゃないんだ。それに帝国は品質の良いアイテムが生産されてるんだろ」
「それを装備してるから男性の騎士と対等に渡り合える。そんな甘い考えをしてるって言いたいのね。さすがカズだわ」
「そうそぅ……ん? 違っ…」
アレナリアの勘違いから、カミーリアを除くアイリス組騎士達からのキツい視線がカズに向く。
「男と女では体格が違うのだから、対等以上になりたければ、腕力以外に出来る事を考えろと言いたいのね」
「いや、あ…」
「確かに質の良い装備をしてたら、魔力の使い方が雑でもいいやなんて思うわよね」
「あ、うん。まあ、そういうこと(……何が?)」
「帝国の騎士全体がそんな考えをしてるなら、あなた達が魔力操作を器用にこなせるようになれば、男の騎士と対等どころかそれ以上になれる。カズはそう教えてくれてるの。わかったかしら!」
ヒドい言い方をしたのは、自分達を思っての事だったと、カミーリアを除くアイリス組の騎士達のキツい視線が消え、カズを見る目が尊敬の眼差しへと変わった。
「ま、まぁそんな感じ(険悪にならなければ、もうそれでいいや)
「残り少ない訓練の時間で覚えなくても、簡単な魔力操作のやり方をカズが教えてくれるわ。毎日寝る前に少しだけとか、空いた時間だけでもやること」
今さら違うと言えず、カズはそのままアレナリアの勘違い話に乗り、一緒に魔力の操作方法を教えた。
アイリス組の殆どの騎士が魔力枯渇寸前とまではいかないが、交代で休憩を取りつつ、地面に突き刺された溶岩喰いのケラの前脚への打ち込みを続けた。
日没まであと少しとなったところで、十五分前から目を覚ましたフジと戯れていたレオラが皆の所にやって来た。
フジを帰しても構わないと言ってきたので、キビ村近くの仮住まいに戻っていてくれとカズは《念話》で伝えた。
フジは翼を広げて大きく羽ばたき、南に向かい飛び立っていった。
レオラは地面に突き刺した溶岩喰いのケラの前脚の状態を見て、騎士達の成果を確認した。
「そこそこ傷は付いているが、内部までは到達してないか」
「同格以上のモンスターを相手にするなら、魔力操作が不可欠なのは、これでわかったと思います」
「アレナリアには姉上の屋敷で、もう少し皆に魔力の使い方を教えてやってくれ」
「毎日…ですか?」
「そんな面倒な顔をするな。五日起きくらいでいい。皆も騎士としての勤めがある。姉上には伝えておく。一日に教える人数や時間は相談するといい」
「皇女様の頼みなら仕方ないわ。私に出来るとこまでならやってあげます」
「皇女相手に言うね。ハハハは、頼むぞ。そのケラの前脚は貰うが構わないだろ。カズ」
「ええ、そのつもりで渡しましたから(そのお陰で、少しは寝れたしな)」
「アタシの所と姉上の所で使う。半分にしてくれ」
「俺がですか?」
「嫌ならいい。もう一本あるんだろ」
「もう一本はギルドに……わかりましたよ」
溶岩喰いのケラの前脚は、灼熱と極寒のダンジョンの最下層で遭遇して、討伐した証拠として持ち帰って来たので、二本とも二人の皇女に仕える騎士の訓練用に渡すのを、カズは少し躊躇う。
カズは内ポケットにしまっておいた火燐刀のトレカを取り出し、魔力を込めて実体化させると、更に魔力を注ぎ込む。
魔力を込め刀身の波紋が青白くなった火燐刀を鞘から抜き、訓練の的にされて細かな傷が付き、地面に突き刺された溶岩喰いのケラの前脚を横一閃して半分に切断した。
強化スキルを使用したり、魔力を剣に込め何度斬り付けてもかすり傷が付く程度だったのにも関わらず、それをカズは一太刀で切断したのを見て、アイリス組の騎士達はあっけに取られていた。
「あ! 埋まってる部分を差引きするの忘れた。出ていた部分の真ん中辺りで斬ったから、下の方が長くなっちゃった」
「そこまできっちりせんでもいい。短いが、前脚は先端の方が大きいだろ、それを姉上の屋敷に運んで、騎士達の訓練をする時の的に使うようにすればいい。姉上のところの方が騎士の人数が多いから、ちょうどいいだろ」
「それって、俺が運ぶの?」
「どうせレラを迎えに姉上の屋敷に行くんだ。アイテムボックスに入れて行けば、重荷にはならないだろ」
「はぁ…わかりました(荷物持ちか)」
溶岩喰いのケラの切り落とした前脚の先端と、地面に突き刺さった半分を引き抜き、使用した火燐刀と共に【アイテムボックス】へ仕舞い入れた。
「あと二十分もすれば日が沈むだろ。今回の合同訓練最後は、アタシとカズが軽く軽く手合わせする」
「……なぬ(聞いてないぞ)」
「それを見てどう思うかは、個々の判断に任せる」
「もしもしレオラ様、初耳なんですけど」
「今言った。なぁに軽くやるだけだ。武器を使いたければ使っても構わないぞ」
「あの、そういう事じゃ……」
「早くしろ。暗くなる」
「えぇー……(手合わせは確定なのね)」
カズは仕方がなく、レオラの言う通り手合わせをする事にした。
軽くと言っているので、日没まであと十数分相手をすれば、それで終わるだろうと。
二人は騎士達から十数メートル離れ、5メートル程の間合いを取った。
「加減してくださいよ」
「わかっている。では、行くぞ」
足形が残る勢いで地面を蹴り、瞬く間にカズの正面に移動する。
「ぃ!」
「すでに始まってるんだぞ」
カズの脇腹目掛け、レオラは右の拳を繰り出す。
ドスッと重たい音と共に、左腕でレオラの拳を受けたカズが、衝撃で2メートル弱押され移動させられた。
「軽くじゃなかったのか…ですか?」
「全然軽いだろ?」
カズのステータスを知っているレオラは、アスターやグラジオラスやガザニアには決して出さない威力でカズを攻撃する。
カズが寝たのを見て、寄り添っていたフジも一緒になって昼寝をする。
暫くしてレ訓練の指導をしろと、レオラに起こされた。
「アレナリアと一緒に魔力操作のコツを皆に教えてやれ。それと、しっかりと目を覚ませ(最後には騎士達に見せ事もあるんだ)」
「ふぁ~……わかりました(寝足りないが、少しはましなったかな)」
寝ているフジを起こさないようにして、カズは騎士達とアレナリアが居る場所に移動した。
アイリスに仕える十二人の騎士の内、半数が魔力を消費し過ぎてへばっていた。
細剣を使っていた小柄な騎士が魔力操作の覚えが早く、剣に魔力を纏わせて器用に衝突の瞬間切っ先に魔力を集め、ダメージ上昇と武器への耐久力を高めていた。
貫く事は出来ないが、標的にしている溶岩喰いのケラの前脚に、ペン先くらいの小さな穴を空けられるようになっていた。
ガザニアとグラジオラスも強化スキルを使い全力で一撃を入れると、ハッキリと分かる傷を付ける事が出来ていた。
「お疲れアレナリア。皆の調子はどう?」
「装備品を身に付けるだけで、自動で魔力を消費して耐久力を上げたりする物を使ってる騎士ばかりみたい。だから魔力操作が雑ね。魔力が枯渇する前に消費は止まるようだけど、それらかどうするつもりなのかしら。ただの重たい防具になるだけじゃない」
「アレナリアもそう感じたか(聞こえるようにハッキリと言うね。しかもキツメに)」
「ええ。実戦をしないから、強化スキルや魔法が使えても、魔力の使い方がなってないのよ。だから必要以上に消費して、短時間しか持たない。剣の腕は一流でも魔力操作としては三流。DかよくてもCランクの冒険者並み」
声を落とさず騎士達に聞こえるように言うアレナリアに、少しばかりキツい視線が向く。
だが的を得ているのと、レオラが指南役として呼んだ手前、誰も言い返せなかった。
あと二時間程で合同訓練も終わりだが、険悪な雰囲気になるのも嫌だったので、一応カズはフォローに入る。
「合同訓練参加してる皆は皇族に仕える騎士であって、魔法騎士とかじゃないんだ。それに帝国は品質の良いアイテムが生産されてるんだろ」
「それを装備してるから男性の騎士と対等に渡り合える。そんな甘い考えをしてるって言いたいのね。さすがカズだわ」
「そうそぅ……ん? 違っ…」
アレナリアの勘違いから、カミーリアを除くアイリス組騎士達からのキツい視線がカズに向く。
「男と女では体格が違うのだから、対等以上になりたければ、腕力以外に出来る事を考えろと言いたいのね」
「いや、あ…」
「確かに質の良い装備をしてたら、魔力の使い方が雑でもいいやなんて思うわよね」
「あ、うん。まあ、そういうこと(……何が?)」
「帝国の騎士全体がそんな考えをしてるなら、あなた達が魔力操作を器用にこなせるようになれば、男の騎士と対等どころかそれ以上になれる。カズはそう教えてくれてるの。わかったかしら!」
ヒドい言い方をしたのは、自分達を思っての事だったと、カミーリアを除くアイリス組の騎士達のキツい視線が消え、カズを見る目が尊敬の眼差しへと変わった。
「ま、まぁそんな感じ(険悪にならなければ、もうそれでいいや)
「残り少ない訓練の時間で覚えなくても、簡単な魔力操作のやり方をカズが教えてくれるわ。毎日寝る前に少しだけとか、空いた時間だけでもやること」
今さら違うと言えず、カズはそのままアレナリアの勘違い話に乗り、一緒に魔力の操作方法を教えた。
アイリス組の殆どの騎士が魔力枯渇寸前とまではいかないが、交代で休憩を取りつつ、地面に突き刺された溶岩喰いのケラの前脚への打ち込みを続けた。
日没まであと少しとなったところで、十五分前から目を覚ましたフジと戯れていたレオラが皆の所にやって来た。
フジを帰しても構わないと言ってきたので、キビ村近くの仮住まいに戻っていてくれとカズは《念話》で伝えた。
フジは翼を広げて大きく羽ばたき、南に向かい飛び立っていった。
レオラは地面に突き刺した溶岩喰いのケラの前脚の状態を見て、騎士達の成果を確認した。
「そこそこ傷は付いているが、内部までは到達してないか」
「同格以上のモンスターを相手にするなら、魔力操作が不可欠なのは、これでわかったと思います」
「アレナリアには姉上の屋敷で、もう少し皆に魔力の使い方を教えてやってくれ」
「毎日…ですか?」
「そんな面倒な顔をするな。五日起きくらいでいい。皆も騎士としての勤めがある。姉上には伝えておく。一日に教える人数や時間は相談するといい」
「皇女様の頼みなら仕方ないわ。私に出来るとこまでならやってあげます」
「皇女相手に言うね。ハハハは、頼むぞ。そのケラの前脚は貰うが構わないだろ。カズ」
「ええ、そのつもりで渡しましたから(そのお陰で、少しは寝れたしな)」
「アタシの所と姉上の所で使う。半分にしてくれ」
「俺がですか?」
「嫌ならいい。もう一本あるんだろ」
「もう一本はギルドに……わかりましたよ」
溶岩喰いのケラの前脚は、灼熱と極寒のダンジョンの最下層で遭遇して、討伐した証拠として持ち帰って来たので、二本とも二人の皇女に仕える騎士の訓練用に渡すのを、カズは少し躊躇う。
カズは内ポケットにしまっておいた火燐刀のトレカを取り出し、魔力を込めて実体化させると、更に魔力を注ぎ込む。
魔力を込め刀身の波紋が青白くなった火燐刀を鞘から抜き、訓練の的にされて細かな傷が付き、地面に突き刺された溶岩喰いのケラの前脚を横一閃して半分に切断した。
強化スキルを使用したり、魔力を剣に込め何度斬り付けてもかすり傷が付く程度だったのにも関わらず、それをカズは一太刀で切断したのを見て、アイリス組の騎士達はあっけに取られていた。
「あ! 埋まってる部分を差引きするの忘れた。出ていた部分の真ん中辺りで斬ったから、下の方が長くなっちゃった」
「そこまできっちりせんでもいい。短いが、前脚は先端の方が大きいだろ、それを姉上の屋敷に運んで、騎士達の訓練をする時の的に使うようにすればいい。姉上のところの方が騎士の人数が多いから、ちょうどいいだろ」
「それって、俺が運ぶの?」
「どうせレラを迎えに姉上の屋敷に行くんだ。アイテムボックスに入れて行けば、重荷にはならないだろ」
「はぁ…わかりました(荷物持ちか)」
溶岩喰いのケラの切り落とした前脚の先端と、地面に突き刺さった半分を引き抜き、使用した火燐刀と共に【アイテムボックス】へ仕舞い入れた。
「あと二十分もすれば日が沈むだろ。今回の合同訓練最後は、アタシとカズが軽く軽く手合わせする」
「……なぬ(聞いてないぞ)」
「それを見てどう思うかは、個々の判断に任せる」
「もしもしレオラ様、初耳なんですけど」
「今言った。なぁに軽くやるだけだ。武器を使いたければ使っても構わないぞ」
「あの、そういう事じゃ……」
「早くしろ。暗くなる」
「えぇー……(手合わせは確定なのね)」
カズは仕方がなく、レオラの言う通り手合わせをする事にした。
軽くと言っているので、日没まであと十数分相手をすれば、それで終わるだろうと。
二人は騎士達から十数メートル離れ、5メートル程の間合いを取った。
「加減してくださいよ」
「わかっている。では、行くぞ」
足形が残る勢いで地面を蹴り、瞬く間にカズの正面に移動する。
「ぃ!」
「すでに始まってるんだぞ」
カズの脇腹目掛け、レオラは右の拳を繰り出す。
ドスッと重たい音と共に、左腕でレオラの拳を受けたカズが、衝撃で2メートル弱押され移動させられた。
「軽くじゃなかったのか…ですか?」
「全然軽いだろ?」
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