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五章 テクサイス帝国編 3 帝都テクサイス
543 遊覧飛行
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三十分程して騎士を二人増やし、手押し車に大きな買い物カゴのような物を乗せて運んで来た。
新たに来た騎士の二人も、フジの姿を間近で目にして血の気が引いているのが分かった。
「そんな物を準備してたのか、姉上」
「どうせ使ってませんし、わたくしの望みが叶うかも知れませんもの」
「なんですか、その…カゴ?」
「あれは気球に使っていたバスケットだ」
「気球があるんですか!?」
「カズは気球を知っているの?」
「知っているのと同じものかはわかりません(やらかしたな! 気球が異世界から来た人が作り出していたら、俺が知っているのは不自然ではないか?)」
「地方に行けば長いロープで風に流されないよう固定し、地形の確認をしたり、貴族の娯楽で使ってる所もある。帝都では飛ばせる場所がなくて、使われる事はほぼない」
「わたくしも何度か乗った事はあるんですが、風の魔法に長けた信用ある方が同乗しませんと、移動が風任せの気球では、どこに墜ら…着陸するかわかりませんから」
「墜落って言いましたか?」
「言ってません。そういう事態があったと、聞いたことがあるだけですよ」
アイリスの表情から嘘は言ってないと思われるが、身近な誰かではないかと、カズは察した。
侍女からはやはり危険だから病めるようにと言われ、太いロープをフジの脚とバスケットに縛り付ければ落下の心配はないとアイリスは粘る。
どうしても乗りたいアイリスは、レオラが一緒に乗るのを条件に出し、侍女を説得した。
バスケットの定員は三名ということで、アイリスとレオラと共に、フジのテイマーであるカズが乗ることになった。
カズがバスケットとフジの脚に、落下防止用のロープを縛り付け、三人はバスケットに乗り込む。
バスケット上部にはフジが脚で掴めるように、頑丈な横木がつけられている。
カズが合図をすると、フジがバスケット上部の横木を掴み、ゆっくりと上昇していく。
地上で見守る侍女とカミーリアを含む女性騎士達は、どんどん上昇するアイリスを見て気がきでなかった。
「『縛った脚痛くないか?』」
「『なんともない』」
「『重くないか?』」
「『全然くらい平気』」
「『こんな事になって悪いな、フジ』」
「『大丈夫。喜んでるの見ると楽しいか』」
ただ会わせるだけだったのに、こんな事になるとは思わず、バスケットに乗り込んでから、カズは念話でフジに話続けていた。
その間アイリスは目を煌めかせ、遥か遠くまで見える地上を眺めていた。
「ここからならお城も見えそう」
帝都に来てから一度も皇帝の住む城を見てないが、何処にあるのだろうとカズは考えた。
「見える高さまで上がってはいるが、不可視化してあるから見えはしない」
「だから見たことがないのか」
ぼそり呟くカズの言葉を聞き逃さなかったレオラがそれに反応した。
「帝都の上空が飛行禁止だと話したろ、それが答えだ」
「はい?」
「それはそにお城があるからですよ」
カズはレオラとアイリスの言っている意味が解らず聞き返す。
「帝都の上空に、不可視化した城が浮いていると聞こえましたが?」
「そうですよ」
「それ言っていいのか? 姉上」
「問題ないと思うわ。今まで気付かずにいたんですし。それにレオラちゃんだって、言ったようなものでしょ」
「アタシは帝都の上空が飛行禁止と言っただけだ」
「もしかして、あの一瞬変に感じた場所に?」
「見たのか!?」
またぼそりと呟いたカズの言葉にレオラは反応した。
「城があるならというなら見てません。上空から見た帝都の景色が歪んだように見えただけで」
「城の場所は一部の者しか知らない事実だ。いいなカズ」
「わかってます。他言無用ですね(知らなくてもよかったんだけどな。そんな面倒な事実を。この二人は何を教えてくれてんだか、まったく)」
ひょんな事からカズは皇帝の住まう城の在り処を知ってしまう。
池の上空を飛行するフジから「何時までこうして飛べばいいの?」と、念話で聞いてきたので、池を一周回ってから地上に降りてもらった。
十数分の飛行後、侍女や女性騎士達にも乗るように勧めたが断固として拒否した。
大人しいフジを気に入ったアイリスがもう一度とバスケットに乗り込み、やれやれと言いながらレオラも続き、今度はカズの代わりにカミーリアが乗り、そしてレラがフジの頭部に。
「これで最後ですよ」
「わかってます。お願いね、フジくん」
アイリスの言葉に、頷いて答える。
「やはり言葉を理解してるか」
「ええ。ですから、進みたい方向を言ってください。出来れば、同じくらいの時間で
(これじゃあ、動物と触れ合えるテーマパークだよ)」
「いっくよ~ん!」
レラがフジの頭に乗ったところで、再びバスケットを掴んで大空に舞い上がる。
やはり侍女と女性騎士達の不安な表情を表し、時折カズに鋭い視線を向けていた。
アスターとグラジオラスも最初は心配していたが、戻ってきたレオラを見て楽しんでると理解した。
上昇したフジはアイリスとレオラの指示で、ぐんぐんスピードを上げて大きな円を書き飛翔する。
魔導列車が出せるの最高スピードくらいになったところで、カズは念話をフジに繋げ、それ以上速く飛ばないように指示した。
一度目よりも少し長い時間の飛行を終えて、フジが降下して皆が待機している場所に降りる。
満足な表情を浮かべたアイリスと、何かを考えているレオラが降り、最後に疲弊したカミーリアがバスケットを降りた。
三度目という前に、カズはフジの脚を縛っているロープを外し、これにてテイムモンスターの紹介と遊覧飛行は終わった。
「フジくんの住む場所がないと聞きました。でしたら、この辺りに作ってはどうです」
「それは駄目だ」
急なアイリスの提案を、バッサリとレオラが却下した。
「いいじゃない。フジくんは大人しいし、言葉がわかるのよ」
「本来テイムモンスターは、主人のテイマーと一緒にいなければならない。特にAランク級のモンスターとなれば尚更だ」
「でしたら、カズさんはカ…」
「遠慮させてもらいます。アイリス様がよくても、皆さんの表情を見れば困っているのは明らかです。それに皇女様の住むお屋敷の側に、大きなモンスターを住ませるのはどうかと思います(カミーリアの部屋に住ませようとするだろうからな、この人は)」
アイリスが話してるのを遮り、断りの返事をしたカズに対して、アイリスの侍女と女性騎士からの鋭い視線はなかった。
よっぽどフジが近くで生息する事を、承知出来なかったのだろう。
テイムされたモンスターとはえ、手に負えないものを近くに置くことなど、自殺に等しいと女性騎士達は考えていたに違いない。
「カズの言う通りだ。アタシならともかく、姉上ではフジが暴れた場合成すがままだろ。ここにいる中で対処出来るのは、主人のカズとアタシだけだ」
「仕方ないわね。フジくんのお相手を出来るくらいには、うちの騎士達を鍛えてくれるんでしょ」
「その為の合同訓練だ」
モンスターランクがA級のフジを相手に戦えるように訓練するのだと思い、この場に居たアイリスの女性騎士達は青ざめていたが、モンスターの近くで暮らす事がなくなり、内心ホッとしていた。
アスターとグラジオラスもキツい訓練になるのだと、顔を若干引き引き攣らせていた。
カズはフジを仮の住み処に戻らせ、全員でアイリスの屋敷に戻ると、両女性騎士を集めて合同訓練の話になった。
カズは巻き込まれないようレラを連れて、先に屋敷を出る事にした。
帰り際に両皇女から手紙をレラが預かり、カズはそれを受け取る。
すぐに開封して内容を確認する気になれず、とりあえず上着の内ポケットにしまった。
帰り道半ばでアレナリアから念話が繋がり、ヒューケラの所に泊まる事になり午後戻ると連絡がきたので迎えに行くと伝えた。
新たに来た騎士の二人も、フジの姿を間近で目にして血の気が引いているのが分かった。
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「カズは気球を知っているの?」
「知っているのと同じものかはわかりません(やらかしたな! 気球が異世界から来た人が作り出していたら、俺が知っているのは不自然ではないか?)」
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「墜落って言いましたか?」
「言ってません。そういう事態があったと、聞いたことがあるだけですよ」
アイリスの表情から嘘は言ってないと思われるが、身近な誰かではないかと、カズは察した。
侍女からはやはり危険だから病めるようにと言われ、太いロープをフジの脚とバスケットに縛り付ければ落下の心配はないとアイリスは粘る。
どうしても乗りたいアイリスは、レオラが一緒に乗るのを条件に出し、侍女を説得した。
バスケットの定員は三名ということで、アイリスとレオラと共に、フジのテイマーであるカズが乗ることになった。
カズがバスケットとフジの脚に、落下防止用のロープを縛り付け、三人はバスケットに乗り込む。
バスケット上部にはフジが脚で掴めるように、頑丈な横木がつけられている。
カズが合図をすると、フジがバスケット上部の横木を掴み、ゆっくりと上昇していく。
地上で見守る侍女とカミーリアを含む女性騎士達は、どんどん上昇するアイリスを見て気がきでなかった。
「『縛った脚痛くないか?』」
「『なんともない』」
「『重くないか?』」
「『全然くらい平気』」
「『こんな事になって悪いな、フジ』」
「『大丈夫。喜んでるの見ると楽しいか』」
ただ会わせるだけだったのに、こんな事になるとは思わず、バスケットに乗り込んでから、カズは念話でフジに話続けていた。
その間アイリスは目を煌めかせ、遥か遠くまで見える地上を眺めていた。
「ここからならお城も見えそう」
帝都に来てから一度も皇帝の住む城を見てないが、何処にあるのだろうとカズは考えた。
「見える高さまで上がってはいるが、不可視化してあるから見えはしない」
「だから見たことがないのか」
ぼそり呟くカズの言葉を聞き逃さなかったレオラがそれに反応した。
「帝都の上空が飛行禁止だと話したろ、それが答えだ」
「はい?」
「それはそにお城があるからですよ」
カズはレオラとアイリスの言っている意味が解らず聞き返す。
「帝都の上空に、不可視化した城が浮いていると聞こえましたが?」
「そうですよ」
「それ言っていいのか? 姉上」
「問題ないと思うわ。今まで気付かずにいたんですし。それにレオラちゃんだって、言ったようなものでしょ」
「アタシは帝都の上空が飛行禁止と言っただけだ」
「もしかして、あの一瞬変に感じた場所に?」
「見たのか!?」
またぼそりと呟いたカズの言葉にレオラは反応した。
「城があるならというなら見てません。上空から見た帝都の景色が歪んだように見えただけで」
「城の場所は一部の者しか知らない事実だ。いいなカズ」
「わかってます。他言無用ですね(知らなくてもよかったんだけどな。そんな面倒な事実を。この二人は何を教えてくれてんだか、まったく)」
ひょんな事からカズは皇帝の住まう城の在り処を知ってしまう。
池の上空を飛行するフジから「何時までこうして飛べばいいの?」と、念話で聞いてきたので、池を一周回ってから地上に降りてもらった。
十数分の飛行後、侍女や女性騎士達にも乗るように勧めたが断固として拒否した。
大人しいフジを気に入ったアイリスがもう一度とバスケットに乗り込み、やれやれと言いながらレオラも続き、今度はカズの代わりにカミーリアが乗り、そしてレラがフジの頭部に。
「これで最後ですよ」
「わかってます。お願いね、フジくん」
アイリスの言葉に、頷いて答える。
「やはり言葉を理解してるか」
「ええ。ですから、進みたい方向を言ってください。出来れば、同じくらいの時間で
(これじゃあ、動物と触れ合えるテーマパークだよ)」
「いっくよ~ん!」
レラがフジの頭に乗ったところで、再びバスケットを掴んで大空に舞い上がる。
やはり侍女と女性騎士達の不安な表情を表し、時折カズに鋭い視線を向けていた。
アスターとグラジオラスも最初は心配していたが、戻ってきたレオラを見て楽しんでると理解した。
上昇したフジはアイリスとレオラの指示で、ぐんぐんスピードを上げて大きな円を書き飛翔する。
魔導列車が出せるの最高スピードくらいになったところで、カズは念話をフジに繋げ、それ以上速く飛ばないように指示した。
一度目よりも少し長い時間の飛行を終えて、フジが降下して皆が待機している場所に降りる。
満足な表情を浮かべたアイリスと、何かを考えているレオラが降り、最後に疲弊したカミーリアがバスケットを降りた。
三度目という前に、カズはフジの脚を縛っているロープを外し、これにてテイムモンスターの紹介と遊覧飛行は終わった。
「フジくんの住む場所がないと聞きました。でしたら、この辺りに作ってはどうです」
「それは駄目だ」
急なアイリスの提案を、バッサリとレオラが却下した。
「いいじゃない。フジくんは大人しいし、言葉がわかるのよ」
「本来テイムモンスターは、主人のテイマーと一緒にいなければならない。特にAランク級のモンスターとなれば尚更だ」
「でしたら、カズさんはカ…」
「遠慮させてもらいます。アイリス様がよくても、皆さんの表情を見れば困っているのは明らかです。それに皇女様の住むお屋敷の側に、大きなモンスターを住ませるのはどうかと思います(カミーリアの部屋に住ませようとするだろうからな、この人は)」
アイリスが話してるのを遮り、断りの返事をしたカズに対して、アイリスの侍女と女性騎士からの鋭い視線はなかった。
よっぽどフジが近くで生息する事を、承知出来なかったのだろう。
テイムされたモンスターとはえ、手に負えないものを近くに置くことなど、自殺に等しいと女性騎士達は考えていたに違いない。
「カズの言う通りだ。アタシならともかく、姉上ではフジが暴れた場合成すがままだろ。ここにいる中で対処出来るのは、主人のカズとアタシだけだ」
「仕方ないわね。フジくんのお相手を出来るくらいには、うちの騎士達を鍛えてくれるんでしょ」
「その為の合同訓練だ」
モンスターランクがA級のフジを相手に戦えるように訓練するのだと思い、この場に居たアイリスの女性騎士達は青ざめていたが、モンスターの近くで暮らす事がなくなり、内心ホッとしていた。
アスターとグラジオラスもキツい訓練になるのだと、顔を若干引き引き攣らせていた。
カズはフジを仮の住み処に戻らせ、全員でアイリスの屋敷に戻ると、両女性騎士を集めて合同訓練の話になった。
カズは巻き込まれないようレラを連れて、先に屋敷を出る事にした。
帰り際に両皇女から手紙をレラが預かり、カズはそれを受け取る。
すぐに開封して内容を確認する気になれず、とりあえず上着の内ポケットにしまった。
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