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五章 テクサイス帝国編 3 帝都テクサイス
537 フジの短い仮住まい作り
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アレナリアとレラの二人は、いつの間にかリンゴ酒を一本空けており、二本目も半分以上減っていた。
食後はこちらも当然カズとカミーリアの話になった。
「もうちょっと、こう……子供じゃないんだから、デパートで食べ歩きの昼食ってなによ」
「それくらいがちょうどよかったんだよ。それに高級店が並ぶ通りなんて、最初からハードルが高いんだよ」
二本目のリンゴ酒の残りを注いだコップを片手に、アレナリアがカズの対応に物申す。
「まあ、カミーリアが満足したなら別にいいけど。女性として扱うように言ったでしょ。何で真珠を着けた時すぐに、似合うとか綺麗だとか、言ってあげないのよ!」
「そうだそうだ! 絶世の美女のあちしにも買え! 言え! わひゃひゃひゃッ」
「レラ、飲み過ぎ。もう終わり」
「嫌だ! もっと…飲むぅ……」
レラのまぶたが重く下がり眠そうする。
「眠いならベッドで寝なさい」
「……そうする」
レラがベッドに移り寝た後も「そこは腕を、こう─……」「それはカズが─……」「何で休暇なのに─……」等と、アレナリアはくどくど絡み酒。
カズとビワは途中から聞き流して、相槌を打つだけにしていた。
アレナリアの呂律が回らなくなってきたと思ったら、急に静かになり、組んだ腕をテーブルに乗せて、それを枕にして寝落ちした。
やれやれとカズはアレナリアを二階の部屋のベッドに運び、すぐ一階のリビングに戻ってソファーに座り、背もたれに体を預ける。
アレナリアが使用していた食器を洗い片付けたビワが、テーブルを挟んだ向かいのソファーに座った。
「俺はもう少し起きてるけど、ビワはどうする?」
「私も休ませてもらいます。その前に、カズさんにレオラ様からの伝言が」
「レオラが?」
「はい。明日お屋敷に来るように、と」
「呼び出しなんて珍しいな。また面倒な仕事でもさせるのかな?」
「そこまでは」
ビワはただ、カズが屋敷に来るようにと言付かってるだけだった。
「朝、ビワと一緒に行けばいいの?」
「午前中は書類仕事があるので、昼食後にとのことです」
「そう、わかった。ありがとう(ちょうどいいから、モンスター相手の戦闘訓練を、カミーリアにしてやってくれるように話してみるか)」
レオラからの伝言をカズに伝えたビワは、カズに温かいハーブティーを淹れて、自分の部屋に戻り就寝した。
カズはビワの淹れてくれたハーブティーを飲みたがら、アレナリアが酔っていて細かく突っ込まれずに済んだと安心し、そのままソファーで横になり寝た。
◇◆◇◆◇
昨夜のリンゴ酒が残っているらしく、アレナリアは一向に起きてこない。
レラが様子を見に行ったが、気持ち悪そうにはしてないようだったので、そのまま寝かせておくことにした。
なのでアレナリア抜きの三人で朝食を済ませ、その後ビワはレオラの屋敷へと仕事に出掛け、カズはレラを連れて行く事と、ヒューケラの事を書いたアレナリア宛ての手紙をキッチンのテーブルの上に置き、帝都南部の箱町から南東にあるキビ村、そこから少し離れた場所に〈空間転移魔法〉で移動する。
レラに〈イリュージョン〉の魔法を掛けて、他者から小人族に見えるようにし、二人はキビ村に入った。
村人の何人かはカズを覚えており「あ!」などと気付いた様子だった。
すれ違う村人達に会釈をしながら、村長の家に向かった。
途中村人から「村長なら集会場だよ」と教えられ、集会場に方向を変えた。
集会場に着くと話し合いが終わったのか、ぞろぞろと村人達が出てきたので、入れ替りカズが入った。
「失礼します。村長に話があるんですが、少々時間をもらっていいですか?」
「あんたは!」
突如訪れたカズを見て、村長は驚いていた。
カズが「依頼とかではなく、個人でちょっと用があって来た」と聞き、そのまま集会場で話を聞いてもらえる事になった。
残っていた村人達は村長に言われ、集会場を出て個々の仕事に戻り、集会場には村長とカズとレラだけになった。
前回モンスターの討伐依頼を終えた後で、討伐中の危険な盆地に、二人の村人が約束を破り来たのを少々咎めた事で、怯える程ではないが、村長の顔は少し強張っている様だった。
回りくどい言い方をして勘違いされても面倒なので、カズは単刀直入に用件を伝えた。
一次的とはいえ大きな鳥のモンスターを、村の近くの盆地周辺に住まわせる事に、村長は了承はしてくれなかった。
当然といえば当然だろう。
大きな毒蛇のヘルバイパーが討伐され、やっとその時の恐怖が薄れ、安息して寝れるようになったのだから。
いくらテイムされたモンスターとはいえ、テイマーのカズが常に一緒に居るわけではない。
盆地周辺を住みかにすれば、盆地の畑を荒らす獣や、それを狙ったモンスターも寄り付かないと、カズは利点を上げた。
説得の末、村側には飛んで来ない事と、もしモンスターが盆地を離れて村に来るような事があれば、フジに対処させる事を条件に、八日だけならと了承してもらった。
金銭を要求してくるかとも思ったが、仕返しでも恐れたのか、それは言ってくることはなかった。
村長の考えが変わる前にと、会わせるからと村の外に連れて行き《念話》でフジを呼んだ。
村から少し離れた場所で待つと、上空からフジが三人の居る場所に降下していた。
降り立ったフジの姿に村長は驚き、カズの後ろに隠れておどおどする。
「これが俺のテイムしているモンスターのフジ(ヘルバイパーに比べれば、怖くないと思うんだが)」
「ほ、本当に大丈夫なのか?」
カズの後ろから、こそっと顔を出してフジを見る村長。
「大丈夫。村長に挨拶してやって」
カズの後ろから少し顔を出している村長に、フジはコクりと頭を下げてお辞儀をした。
「言葉がわかるのか。なら、ちゃんと言った事を守らせろ。八日だけだ」
「わかってますよ。村の人達にも伝えておいてくださいよ。それと木を何本か切らせもらうから、そこんとこよろしく(下手に出ると性格変わる村長だな)」
フジの視線にまだおどおどしながら、村長は村に戻って行った。
「ビビってるくせに偉そうに言ってるよ」
「レラの意見には同感だが、急にこんな事を頼んだんだから仕方ないさ。とりあえずの場所は確保出来たからよしとしよう(見知らぬ人の居る土地よりは、騒ぎにならないと思ったんだが、選択間違えたかなあ?)」
「『レラ前より小さくなった?』」
「『なってないし! ってか、フジでかくなりすぎなの。ちょっとあちし乗せて飛んで』」
「『いいよいいよ』」
「カズも乗るじゃん」
「俺はいい。八日だけだが、とりあえずフジの住む場所を決めないと(盆地を挟んで、村の反対側に寝床になる場所を作るか)」
村長とした約束事をフジに伝えて、適当に遊んでるなりしているよう言い、カズは盆地を挟んで村の反対側に移動した。
レラはフジの頭に乗り、飛び立って行った。
盆地を挟んだ村の反対側には林があり、その先は荒野になっている。
流石に荒野にフジの寝床を作ると目立つので、林の中央辺りの木を数本伐採して〈アースウォール〉と〈プラントウォール〉を使い、小屋というよりは大きめの倉庫を建ててしまった。
「まぁ、いいか『林の中に寝床が出来たぞ』」
「『わかった。すぐ行く』」
「ああ(八日だけの仮住まいだから、これで十分だろう)」
数分でフジが林の上を低空飛行して、カズが建てた倉庫横に降り立つ。
フジが入れるように、四方の壁の一部が空いており扉はない。
伐採した木は空いている壁から5メートル程離れた場所に、目隠しと風避けように積み重ねて〈プラントバインド〉で固定してある。
フジに寝床に必要な物を聞き、落ち葉を集めて倉庫内に厚めに敷き詰めた。
「こんな感じでいいか?」
フジは落ち葉を脚と翼で動かして、自分の寛ぎやすいように整える。
「『うん。いい感じ』」
「そうか。ちゃんと住める場所を探すから、とりあえず少しだけここに居てくれ。用があれば念話でな」
「『うん、わかった』」
「くれぐれも村の方には行かないようにして、狩は適当にここから離れた場所で頼む。俺達は用事があるから、そろそろ帝都に戻る」
「『たまには来て。レラも』」
「『来るよ~ん。今度はもっと高くまで行こうね』」
「『うん』」
フジの仮の住まいを作ったところで時刻は昼間近になり、カズは〈空間転移魔法〉で、レラと共に川沿いの家に戻った。
食後はこちらも当然カズとカミーリアの話になった。
「もうちょっと、こう……子供じゃないんだから、デパートで食べ歩きの昼食ってなによ」
「それくらいがちょうどよかったんだよ。それに高級店が並ぶ通りなんて、最初からハードルが高いんだよ」
二本目のリンゴ酒の残りを注いだコップを片手に、アレナリアがカズの対応に物申す。
「まあ、カミーリアが満足したなら別にいいけど。女性として扱うように言ったでしょ。何で真珠を着けた時すぐに、似合うとか綺麗だとか、言ってあげないのよ!」
「そうだそうだ! 絶世の美女のあちしにも買え! 言え! わひゃひゃひゃッ」
「レラ、飲み過ぎ。もう終わり」
「嫌だ! もっと…飲むぅ……」
レラのまぶたが重く下がり眠そうする。
「眠いならベッドで寝なさい」
「……そうする」
レラがベッドに移り寝た後も「そこは腕を、こう─……」「それはカズが─……」「何で休暇なのに─……」等と、アレナリアはくどくど絡み酒。
カズとビワは途中から聞き流して、相槌を打つだけにしていた。
アレナリアの呂律が回らなくなってきたと思ったら、急に静かになり、組んだ腕をテーブルに乗せて、それを枕にして寝落ちした。
やれやれとカズはアレナリアを二階の部屋のベッドに運び、すぐ一階のリビングに戻ってソファーに座り、背もたれに体を預ける。
アレナリアが使用していた食器を洗い片付けたビワが、テーブルを挟んだ向かいのソファーに座った。
「俺はもう少し起きてるけど、ビワはどうする?」
「私も休ませてもらいます。その前に、カズさんにレオラ様からの伝言が」
「レオラが?」
「はい。明日お屋敷に来るように、と」
「呼び出しなんて珍しいな。また面倒な仕事でもさせるのかな?」
「そこまでは」
ビワはただ、カズが屋敷に来るようにと言付かってるだけだった。
「朝、ビワと一緒に行けばいいの?」
「午前中は書類仕事があるので、昼食後にとのことです」
「そう、わかった。ありがとう(ちょうどいいから、モンスター相手の戦闘訓練を、カミーリアにしてやってくれるように話してみるか)」
レオラからの伝言をカズに伝えたビワは、カズに温かいハーブティーを淹れて、自分の部屋に戻り就寝した。
カズはビワの淹れてくれたハーブティーを飲みたがら、アレナリアが酔っていて細かく突っ込まれずに済んだと安心し、そのままソファーで横になり寝た。
◇◆◇◆◇
昨夜のリンゴ酒が残っているらしく、アレナリアは一向に起きてこない。
レラが様子を見に行ったが、気持ち悪そうにはしてないようだったので、そのまま寝かせておくことにした。
なのでアレナリア抜きの三人で朝食を済ませ、その後ビワはレオラの屋敷へと仕事に出掛け、カズはレラを連れて行く事と、ヒューケラの事を書いたアレナリア宛ての手紙をキッチンのテーブルの上に置き、帝都南部の箱町から南東にあるキビ村、そこから少し離れた場所に〈空間転移魔法〉で移動する。
レラに〈イリュージョン〉の魔法を掛けて、他者から小人族に見えるようにし、二人はキビ村に入った。
村人の何人かはカズを覚えており「あ!」などと気付いた様子だった。
すれ違う村人達に会釈をしながら、村長の家に向かった。
途中村人から「村長なら集会場だよ」と教えられ、集会場に方向を変えた。
集会場に着くと話し合いが終わったのか、ぞろぞろと村人達が出てきたので、入れ替りカズが入った。
「失礼します。村長に話があるんですが、少々時間をもらっていいですか?」
「あんたは!」
突如訪れたカズを見て、村長は驚いていた。
カズが「依頼とかではなく、個人でちょっと用があって来た」と聞き、そのまま集会場で話を聞いてもらえる事になった。
残っていた村人達は村長に言われ、集会場を出て個々の仕事に戻り、集会場には村長とカズとレラだけになった。
前回モンスターの討伐依頼を終えた後で、討伐中の危険な盆地に、二人の村人が約束を破り来たのを少々咎めた事で、怯える程ではないが、村長の顔は少し強張っている様だった。
回りくどい言い方をして勘違いされても面倒なので、カズは単刀直入に用件を伝えた。
一次的とはいえ大きな鳥のモンスターを、村の近くの盆地周辺に住まわせる事に、村長は了承はしてくれなかった。
当然といえば当然だろう。
大きな毒蛇のヘルバイパーが討伐され、やっとその時の恐怖が薄れ、安息して寝れるようになったのだから。
いくらテイムされたモンスターとはいえ、テイマーのカズが常に一緒に居るわけではない。
盆地周辺を住みかにすれば、盆地の畑を荒らす獣や、それを狙ったモンスターも寄り付かないと、カズは利点を上げた。
説得の末、村側には飛んで来ない事と、もしモンスターが盆地を離れて村に来るような事があれば、フジに対処させる事を条件に、八日だけならと了承してもらった。
金銭を要求してくるかとも思ったが、仕返しでも恐れたのか、それは言ってくることはなかった。
村長の考えが変わる前にと、会わせるからと村の外に連れて行き《念話》でフジを呼んだ。
村から少し離れた場所で待つと、上空からフジが三人の居る場所に降下していた。
降り立ったフジの姿に村長は驚き、カズの後ろに隠れておどおどする。
「これが俺のテイムしているモンスターのフジ(ヘルバイパーに比べれば、怖くないと思うんだが)」
「ほ、本当に大丈夫なのか?」
カズの後ろから、こそっと顔を出してフジを見る村長。
「大丈夫。村長に挨拶してやって」
カズの後ろから少し顔を出している村長に、フジはコクりと頭を下げてお辞儀をした。
「言葉がわかるのか。なら、ちゃんと言った事を守らせろ。八日だけだ」
「わかってますよ。村の人達にも伝えておいてくださいよ。それと木を何本か切らせもらうから、そこんとこよろしく(下手に出ると性格変わる村長だな)」
フジの視線にまだおどおどしながら、村長は村に戻って行った。
「ビビってるくせに偉そうに言ってるよ」
「レラの意見には同感だが、急にこんな事を頼んだんだから仕方ないさ。とりあえずの場所は確保出来たからよしとしよう(見知らぬ人の居る土地よりは、騒ぎにならないと思ったんだが、選択間違えたかなあ?)」
「『レラ前より小さくなった?』」
「『なってないし! ってか、フジでかくなりすぎなの。ちょっとあちし乗せて飛んで』」
「『いいよいいよ』」
「カズも乗るじゃん」
「俺はいい。八日だけだが、とりあえずフジの住む場所を決めないと(盆地を挟んで、村の反対側に寝床になる場所を作るか)」
村長とした約束事をフジに伝えて、適当に遊んでるなりしているよう言い、カズは盆地を挟んで村の反対側に移動した。
レラはフジの頭に乗り、飛び立って行った。
盆地を挟んだ村の反対側には林があり、その先は荒野になっている。
流石に荒野にフジの寝床を作ると目立つので、林の中央辺りの木を数本伐採して〈アースウォール〉と〈プラントウォール〉を使い、小屋というよりは大きめの倉庫を建ててしまった。
「まぁ、いいか『林の中に寝床が出来たぞ』」
「『わかった。すぐ行く』」
「ああ(八日だけの仮住まいだから、これで十分だろう)」
数分でフジが林の上を低空飛行して、カズが建てた倉庫横に降り立つ。
フジが入れるように、四方の壁の一部が空いており扉はない。
伐採した木は空いている壁から5メートル程離れた場所に、目隠しと風避けように積み重ねて〈プラントバインド〉で固定してある。
フジに寝床に必要な物を聞き、落ち葉を集めて倉庫内に厚めに敷き詰めた。
「こんな感じでいいか?」
フジは落ち葉を脚と翼で動かして、自分の寛ぎやすいように整える。
「『うん。いい感じ』」
「そうか。ちゃんと住める場所を探すから、とりあえず少しだけここに居てくれ。用があれば念話でな」
「『うん、わかった』」
「くれぐれも村の方には行かないようにして、狩は適当にここから離れた場所で頼む。俺達は用事があるから、そろそろ帝都に戻る」
「『たまには来て。レラも』」
「『来るよ~ん。今度はもっと高くまで行こうね』」
「『うん』」
フジの仮の住まいを作ったところで時刻は昼間近になり、カズは〈空間転移魔法〉で、レラと共に川沿いの家に戻った。
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