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五章 テクサイス帝国編 3 帝都テクサイス
534 ちぐはぐ騎士の初デート 3 ドレス選び
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ワンピース姿に真珠のイヤリング、ネックレス、指輪をしている姿に違和感を覚えたカズは、カミーリアがある店の前を通った時に視線を移していた店を思い出し、そこへ向かった。
「どうせなら、服も合わせよう」
「高価な宝石を買ってもらったのに、これ以上は」
「イヤリングだけならワンピースでもいいだろうが、ネックレスと指輪もするならドレスの方がいいだろ。気になってたんだろ」
ここまできたら社交界にでも出れるようにと、カズは悪のりして「ドレスと靴を買ちに行くぞ」と、カミーリアの手を引っ張り煌びやかなドレスと靴を販売する店に入った。
入店したカミーリアを見た途端に、女性店員が目を光らせて詰め寄る。
だが宝石店の時と違い、売り込もうというよりも、カミーリアに色々とドレスを着せたいという願望が、その表情から読み取れた。
二人は女性店員の圧に負け、ドレス選びを任せることにした。
すると女性店員は「お任せかださい!」と、足早にドレスをかき集めてきた。
カミーリアを姿見の前に立たせ、女性店員が何着ものドレスをあてる。
「長身で足の長いお客様にはタイトこちらはどうでしょう? それともメリハリがありスカートの長いちらもお似合いかと思いますよ」
どうしたらいいものかと、カミーリアがカズにちらちらと視線を向ける。
「気になったのがあったら、試着してみたらどうだ」
カズの後押しを受けて試着を女性店員に頼むと「でしたら」と、更にドレスを集めてきた。
一通り女性店員の勧めてきたドレスから八着を選び、試着室で着替えて更にその中から二着のドレスを選らんで、カズの意見を求めた。
「カズがプレゼントしてくれた真珠と同じ、白かピンクのドレスはどうだろう?」
「でもそれだと、せっかくの真珠が目立たなくないか?」
「それもそう…」
試着したドレスを片付けた女性店員が、カズとカミーリアのやり取りを聞き意見を述べてきた。
「お客様宜しいでしょうか。ドレスや宝飾品は、それを着けている方を引き立てる為にあると、わたしは思います。それを踏まえて決められてはどうでしょうか? ドレスもまだまだ多くありますので、気になるものがあれば、どれでも試着してください。ゆっくり決めてもらっても大丈夫ですよ」
接客に付いた女性店員の言葉を聞き、確かにそうだとカズは思った。
新作ドレスのファッションショーではない、主役はカミーリアであって、着飾る衣服や宝飾品は脇役なのだから。
それを踏まえてドレスを選ぶが、流石に肌を露出するようなドレスは選べなかった。
女性店員は多少の露出があるドレスを薦めてきたが、それはカミーリアを女性だと思ってのこと。
仕事柄肌の露出はできないと説明をしたが、せめてこれくらいならと、背中が少し開けたドレスを薦めてきた。
後ろで纏めている髪を下ろせば、露出した背中部分は見えなくなるから大丈夫だと。
最終的に手首まで隠れる長い袖、地面すれすれまである長いスカート、背中の上部が露出した白のドレスと、ヒールの低い白の靴を選び試着する。
宝石店で購入した宝飾品を着け、ドレスを着たカミーリアが試着室から出て、カズにその姿を見せる。
「おお」
カズは思わず声が漏れた。
ただ選んだドレスと宝飾品を身に纏ったカミーリアの姿は、社交界デビューする淑女というよりは、これから式を挙げる花嫁。
少し青みがかったカミーリアの黒髪に、白の真珠とドレスが合っていた。
カズに向ける女性店員の視線は『言うことがあるでしょ』だった。
「よく似合ってる、と思う(これはあれだ、まるでウェディングドレス。選ぶの間違えたか?)」
カズの言葉を聞いた女性店員の眉が一瞬ピクッと動き、物言いたげな視線を再びカズに向けた。
「お綺麗ですよ(思う、はいらないの。綺麗だけでいいのよ)」
「ありがとう……カズ」
「ああ」
カミーリアに見えないようにして『ああ。じゃないでしょ』というを表情を浮かべた女性店員は、カズに対して評価を更にぐっと下げた。
ワンピースにはイヤリングだけがいいとなり、ネックレスと指輪は外して、買ったドレスと靴と一緒にカズが一旦預かり、店を出てから【アイテムボックス】にしまった。
見送りをした女性店員はニコやかにしていたが、カズに対しての視線は厳しかった。
なにせカミーリアが試着室に入って、女性店員と二人になった時に「彼女さん美人ですね」「付き合って長いのですか?」「ご結婚は考えていますか?」等と、ぐいぐいと聞いてきた。
カズは「そうですね」「付き合っては」「……」と、質問によっては曖昧な返答をしていた。
流石にカミーリアが男だとは口にしなかったが、曖昧な態度でいたからこそ、女性店員の対応が厳しくなったのだろう。
これで他の女性を連れて来たりでもしたら、スゴい剣幕で睨まれそうだと思い、同じ店にカミーリア以外の女性(カミーリアは男だが)を連れて来るのは止めようと思った。
「他にも青や黄色とか、もっと色々と試着してから決めても」
「あの店員さんが勧めてきたのだけでも十分。それとも、カズも私を着せ替え人形にするつもりなのか」
「着せ替え人形? ああ、そのワンピースを買った時の事を言ってるのか」
以前四人で買い物に行った際に、アレナリアとグラジオラスにあれこれと色々な服を着させられたのを、カミーリアは思い出していた。
カズは後から話を聞いただけで、実際にその時の状況がどんなだったかは知らない。
ただ性別が男なだけで、カミーリアの肩幅は狭く、服を脱がなければ見た目は完全に女性。
「まあ、わからなくもないかな。カミーリアはスラッとしてて、何着ても似合いそうだから。アレナリアは自分の身長が高ければと、代わりにカミーリアに着てもらったんだろ」
「そうは見えなかった」
「嫌だったのか?」
「……ちょっと、楽しかった」
「ならよかったじゃないか。今度時間が出来たら、またアレナリア達に付き合ってくれ」
「その時はカズも一緒にだ。止める者がいないと困る」
「俺が一緒に行っても、止めるかどうかわからないぞ」
「止めてよぉ」
「あははッ」
買い物を終えた二人は、午前中の堅い雰囲気とは違い、楽しげな会話をしながら街を小一時間程ぶらつく。
「そろそろ戻りましょう」
「まだ時間があるけど、もういいのか?」
「私は、十分満足しました。なのでもう一つの約束を、モンスターとの戦い方を教えてください」
カズを見るカミーリアの目は、一人の騎士のそれになっていた。
「わかった。なら、アイリス様の屋敷に戻ろう。着替えないとな」
昼を過ぎて二時間程しか経ってないが、カミーリアの頼みを聞くために、アイリスの屋敷に戻ることにする。
二人は来る時に乗ってきた、大型三輪バイクを取りに行く。
カズはカミーリアに少し時間をもらい、冒険者ギルド本部に寄り、テイムモンスターの登録証明がされたバードリングを受け取った。
カミーリアがバードリングを不思議そうに見ていたので「鳥をテイムして、登録したんだ。これはその証明する物。鳥の脚に付けるんだよ。早めに付けてやらないと」と、フジの大きさや種族は省いてざっくりと説明した。
一時間程大型三輪バイクを走らせ、朝カミーリアを迎えに来た第五皇女の屋敷に戻って来た。
カミーリアに購入した宝飾品とドレスを渡し、使用人や騎士が住まう建物の裏手にある訓練場所に、カズは先に移動して待つ。
訓練場所といっても、ただ何もない裏庭のような場所にすぎない。
来客の目を避けられるその場所を、女性騎士達はただそう呼んでいるだけ。
訓練用の道具があるわけでもなく、ただ建物の陰になり、屋敷からは死角で見えない場所。
帝国では男の騎士の方が上だという偏見があるため、アイリスの屋敷でも来客から見えぬ位置に訓練する場所を作るしかなかったらしい。
並の騎士より遥かに強く、帝国の守護者の称号を持つレオラの屋敷ででもなければ、女性騎士が訓練する場所を、来客から見える位置に作ろうとは思わないだろう。
「どうせなら、服も合わせよう」
「高価な宝石を買ってもらったのに、これ以上は」
「イヤリングだけならワンピースでもいいだろうが、ネックレスと指輪もするならドレスの方がいいだろ。気になってたんだろ」
ここまできたら社交界にでも出れるようにと、カズは悪のりして「ドレスと靴を買ちに行くぞ」と、カミーリアの手を引っ張り煌びやかなドレスと靴を販売する店に入った。
入店したカミーリアを見た途端に、女性店員が目を光らせて詰め寄る。
だが宝石店の時と違い、売り込もうというよりも、カミーリアに色々とドレスを着せたいという願望が、その表情から読み取れた。
二人は女性店員の圧に負け、ドレス選びを任せることにした。
すると女性店員は「お任せかださい!」と、足早にドレスをかき集めてきた。
カミーリアを姿見の前に立たせ、女性店員が何着ものドレスをあてる。
「長身で足の長いお客様にはタイトこちらはどうでしょう? それともメリハリがありスカートの長いちらもお似合いかと思いますよ」
どうしたらいいものかと、カミーリアがカズにちらちらと視線を向ける。
「気になったのがあったら、試着してみたらどうだ」
カズの後押しを受けて試着を女性店員に頼むと「でしたら」と、更にドレスを集めてきた。
一通り女性店員の勧めてきたドレスから八着を選び、試着室で着替えて更にその中から二着のドレスを選らんで、カズの意見を求めた。
「カズがプレゼントしてくれた真珠と同じ、白かピンクのドレスはどうだろう?」
「でもそれだと、せっかくの真珠が目立たなくないか?」
「それもそう…」
試着したドレスを片付けた女性店員が、カズとカミーリアのやり取りを聞き意見を述べてきた。
「お客様宜しいでしょうか。ドレスや宝飾品は、それを着けている方を引き立てる為にあると、わたしは思います。それを踏まえて決められてはどうでしょうか? ドレスもまだまだ多くありますので、気になるものがあれば、どれでも試着してください。ゆっくり決めてもらっても大丈夫ですよ」
接客に付いた女性店員の言葉を聞き、確かにそうだとカズは思った。
新作ドレスのファッションショーではない、主役はカミーリアであって、着飾る衣服や宝飾品は脇役なのだから。
それを踏まえてドレスを選ぶが、流石に肌を露出するようなドレスは選べなかった。
女性店員は多少の露出があるドレスを薦めてきたが、それはカミーリアを女性だと思ってのこと。
仕事柄肌の露出はできないと説明をしたが、せめてこれくらいならと、背中が少し開けたドレスを薦めてきた。
後ろで纏めている髪を下ろせば、露出した背中部分は見えなくなるから大丈夫だと。
最終的に手首まで隠れる長い袖、地面すれすれまである長いスカート、背中の上部が露出した白のドレスと、ヒールの低い白の靴を選び試着する。
宝石店で購入した宝飾品を着け、ドレスを着たカミーリアが試着室から出て、カズにその姿を見せる。
「おお」
カズは思わず声が漏れた。
ただ選んだドレスと宝飾品を身に纏ったカミーリアの姿は、社交界デビューする淑女というよりは、これから式を挙げる花嫁。
少し青みがかったカミーリアの黒髪に、白の真珠とドレスが合っていた。
カズに向ける女性店員の視線は『言うことがあるでしょ』だった。
「よく似合ってる、と思う(これはあれだ、まるでウェディングドレス。選ぶの間違えたか?)」
カズの言葉を聞いた女性店員の眉が一瞬ピクッと動き、物言いたげな視線を再びカズに向けた。
「お綺麗ですよ(思う、はいらないの。綺麗だけでいいのよ)」
「ありがとう……カズ」
「ああ」
カミーリアに見えないようにして『ああ。じゃないでしょ』というを表情を浮かべた女性店員は、カズに対して評価を更にぐっと下げた。
ワンピースにはイヤリングだけがいいとなり、ネックレスと指輪は外して、買ったドレスと靴と一緒にカズが一旦預かり、店を出てから【アイテムボックス】にしまった。
見送りをした女性店員はニコやかにしていたが、カズに対しての視線は厳しかった。
なにせカミーリアが試着室に入って、女性店員と二人になった時に「彼女さん美人ですね」「付き合って長いのですか?」「ご結婚は考えていますか?」等と、ぐいぐいと聞いてきた。
カズは「そうですね」「付き合っては」「……」と、質問によっては曖昧な返答をしていた。
流石にカミーリアが男だとは口にしなかったが、曖昧な態度でいたからこそ、女性店員の対応が厳しくなったのだろう。
これで他の女性を連れて来たりでもしたら、スゴい剣幕で睨まれそうだと思い、同じ店にカミーリア以外の女性(カミーリアは男だが)を連れて来るのは止めようと思った。
「他にも青や黄色とか、もっと色々と試着してから決めても」
「あの店員さんが勧めてきたのだけでも十分。それとも、カズも私を着せ替え人形にするつもりなのか」
「着せ替え人形? ああ、そのワンピースを買った時の事を言ってるのか」
以前四人で買い物に行った際に、アレナリアとグラジオラスにあれこれと色々な服を着させられたのを、カミーリアは思い出していた。
カズは後から話を聞いただけで、実際にその時の状況がどんなだったかは知らない。
ただ性別が男なだけで、カミーリアの肩幅は狭く、服を脱がなければ見た目は完全に女性。
「まあ、わからなくもないかな。カミーリアはスラッとしてて、何着ても似合いそうだから。アレナリアは自分の身長が高ければと、代わりにカミーリアに着てもらったんだろ」
「そうは見えなかった」
「嫌だったのか?」
「……ちょっと、楽しかった」
「ならよかったじゃないか。今度時間が出来たら、またアレナリア達に付き合ってくれ」
「その時はカズも一緒にだ。止める者がいないと困る」
「俺が一緒に行っても、止めるかどうかわからないぞ」
「止めてよぉ」
「あははッ」
買い物を終えた二人は、午前中の堅い雰囲気とは違い、楽しげな会話をしながら街を小一時間程ぶらつく。
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「まだ時間があるけど、もういいのか?」
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訓練場所といっても、ただ何もない裏庭のような場所にすぎない。
来客の目を避けられるその場所を、女性騎士達はただそう呼んでいるだけ。
訓練用の道具があるわけでもなく、ただ建物の陰になり、屋敷からは死角で見えない場所。
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