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五章 テクサイス帝国編 3 帝都テクサイス
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カミーリアの同僚の女性騎士の態度に気付いていたカズが、曲がりなりにもアルラウネと対峙したカミーリアを庇う。
「レオラ様に対モンスターの戦い方を学べば、今回のモンスターと同格程度であれば、カミーリアさんなら倒せますよ(その時の場所や状態にもよるけど、それは言わないでおこう)」
「わたくしの騎士では倒せない程のモンスターだったのですか?」
「いやまあ、なんというか……(答えづらい質問を)」
「構いませんので仰ってください。レオラちゃんに聞いているかも知れませんが、女性騎士は男性騎士より格下だと思われています。ですので実力を上げて、せめて同格だと思われたいのです」
「……わかりました。ですがその前に一つ、男性騎士はモンスターとの戦闘経験はあるんでしょうか?」
「詳しくは知りませんが、少ないと思います。地方の兵士の方が、モンスターと戦う機会は多いかと思おます」
「帝国の騎士が相手をするのは、皇族や貴族を害する危険人物という事ですか」
「そうなります」
「……気分を悪くすると思いますが、率直に申し上げます」
カミーリアの実力を基準として、源流の森に出現したアルラウネを女性騎士だけで討伐するとしたら最低で三人、重傷者を出さない戦いをするなら、倍の六人以上は必要だとカズは答えた。
これは森の中とかではなく、尚且つ足場がしっかりている場所でのこと。
今回のように敵に有利な場所だと、例えニ十人集まったとしても倒せないだろうと、カズは少しキツい事を言う。
室内で待機している女性騎士がそれを聞き、カズを威嚇するように睨み付け、アイリス皇女はそれを戒めた。
「とても参考になりました。すぐに帰宅出来る様に馬車を用意します」
「ずっとトライクに乗っていたので、帰りは歩きます」
「しかしそれでは、暗くなってしまいますよ」
「馬車で二時間程度の距離なら大丈夫です。走れば馬車に乗るのと大差ないですから」
「さすがはレオラちゃんの無茶な仕事をする冒険者ですね。わかりました、気を付けてお帰りください。報酬と謝礼は改めてお渡しします」
「ありがとうございます。それでは失礼いたします(レオラが無茶振りしてくるって知ってるんだ)」
アイリス皇女にお辞儀をして別れの挨拶をし、カミーリアと待機している侍女と女性騎士に会釈をして、カズは執務室を出て行く。
「あ……」
隣に座っていたカズが居なくなると、カミーリアの表情が心なしか、暗くなった様に見えた。
「お見送りをしてきたらどうですか?」
「私はアイリス様の騎士です。これ以上の私情は」
「後悔しても知りませんよ」
「大丈夫…です」
「でしたら、疲れているでしょうから、今日は楽な格好に着替えて仕えなさい。わたくしはまだ休憩していますので、ゆっくり戻ってくれば良いですよ」
「はい。ありがとうございます」
暗かった表情が明るくなり、カミーリアはアイリス皇女の執務室を出て、カズの見送りをする為に屋敷の外に向かった。
使用人に案内されて屋敷の外に出たカズは、アレナリアとビワとレラの待つ家に向けて歩き出す。
屋敷の敷地から出る寸前の所で、後方から名前を呼ばれ振り返ると、そこにはこの五日間一緒だったカミーリアの姿があった。
「わざわざ見送りに出て来てくれたんですか」
「あの……もし迷惑でなければ、会いに行ってもいいでしょう…か? あ、その、対モンスターとの戦闘方法について、色々と意見を聞きたくて(わ、私は何を言ってるんだ)」
「ん? ああ、別に構いませんよ」
「あ、あと、街を回ってくれませんか? その、服とか買いに(だから何を言ってるんの、私は)」
「別にいいですよ。レオラ様やギルドの依頼で、出掛けてるかも知れませんので、早めに知らせてもらえれば、その日は空けておきます(一人だと、女性の店に入りづらいんだろな。アレナリアとビワを一緒に連れて行けば、買いやすいだろ)」
「はい、ありがとうございます」
「それでは、また」
それぞれの考えが違うのを知らぬまま、カミーリアは買い物の約束と取り付けたと思い、カズはアレナリアとビワを連れて、女性物を売る店に行き、買い物をするのだと思っていた。
小さな湖畔にある屋敷を出たカズは、人目のない場所になると空間転移を川沿いの住む家に繋げ戻った。
《 一ヶ月後 》
第五皇女ことアイリスの頼みを聞き、源流の森に出現したダンジョンで、病の原因を生成していた元凶のアルラウネを討伐してから一ヶ月が経った陽気の良い日。
カズ達が住む川沿いに建つ家に、カーディナリスを連れたレオラがまた来ていた。
しかしそれだけではなく、今回は第五皇女のアイリスまでもが、従者のカミーリアを連れて遊びに来ていた。
アイリスの護衛がカミーリア一人なのは、目的地がカズが住んでいる家なのと、一緒に来たのが帝国の守護者の称号を持つレオラだったから。
ちなみにアイリスがこの家に来たのは、実はこれが二度目である。
一度目はレオラの屋敷に行った帰りに、ビワを送りがてら息抜きに行くと言うレオラに付いて、ちょっとだけ顔を出した時に、滞在時間は十分程度。
そして今回の二度目は、カズがカミーリアと共に源流の森に行き、病の原因を解決した謝礼を渡しに自ら足を運んでい。
「わたくしもお買い物に行きたかったわ」
「姉上を連れて来る条件として、家から出ないと言ったのを忘れた? 嫌なら屋敷に送って行くけど。もう二度と連れて来ない」
「レオラちゃんヒドいわ。代わりに出来る公務は、いつも変わってあげてるのに。カーディナリスさんもそう思いますよね」
「でしたら、今度はアイリス姫様でなくとも出来る公務を、全てレオラ姫様にしていただいてはどうでしょうか?」
「それは良い考えね」
「待て待て! 全然良くはないだろ。ほら、姉上には病の原因を解決した借りがだ」
「あれはカズさんに解決してもらったんです。そういえば、カズさんがレオラちゃん専属の冒険者ではないと言うじゃないですか」
「仕事を手伝わせてるんだから、アタシ専属の冒険者で構わないだろう。一応、ギルドではそうなっている」
「それでは、わたくしが頼みたい時に頼めないわ」
「アタシを通して頼めばいい事じゃないか」
「それでは時間が掛かってしまいます。そうだわ! わたくしの専属冒険者をカズさんにしましょう」
「なぜそうなるんだ!」
「だって、レオラちゃんの専属じゃないんですもの。わたくしの専属にしても構わないでしょう。そうすればカミーリアも喜ぶし、わたくしの騎士を鍛えてもらえて良い事ずくめだわ」
都合の良い様に言うアイリスにレオラは呆れ、返答は庭から屋内に入って来たカズに任せた。
「アイリス様の申し出はありがたいですけど、誰かの専属になるつもりはないです。俺達は目的があり、まだ旅の途中なもので。フェアリーが居るので、表向きはレオラ専属にしてもらってます」
「残念だわ。カズさんになら、カミーリアを愛人として連れて行くのを許可しますのに」
「あのですね、カミーリアさんを友人としてならまだしも、そういった方向に話を進めないでください。しかも本人が出掛けて居ない時に」
「男性同士の愛があっても、わたくしはよろしいと思いますよ。もちろん繋がるのは心はだけではなく、肉体の方も」
前回アイリスが寄った際に、カズが望むのであれば、謝礼としてカミーリアを側仕えとして与えても良いと言ってきた。
もちろん夜伽の相手も大丈夫だと、アレナリアとビワとレラの居る前で平然と言う。
その時のアイリスの態度や表情で、腐女子的な方の人だとカズは疑い、今日確信した。
「俺にそっちの趣味はありません。くれぐれも三人の前では、そういった話題を出さないでください。というか、アイリス様の趣味方面に誘わないでください」
「こういうお話をするお友達って居ないのよね。ビワさんは物静かだし、わたくしの話を聞いてくれそうじゃないかしら。それともアレナリアさんは、わたくしの事を理解してくれるかしら」
「絶対に止めてください。って言うか、そういった話をするなら、お屋敷に帰ってください(なんで知り合うのが、こういった連中ばかりなんだ!)」
「ヒドいわ、カズさん。皇女のわたくしに出て行けなんて」
アイリスは手を目元に添えて、涙ぐむ素振りをした。
「レオラ様に対モンスターの戦い方を学べば、今回のモンスターと同格程度であれば、カミーリアさんなら倒せますよ(その時の場所や状態にもよるけど、それは言わないでおこう)」
「わたくしの騎士では倒せない程のモンスターだったのですか?」
「いやまあ、なんというか……(答えづらい質問を)」
「構いませんので仰ってください。レオラちゃんに聞いているかも知れませんが、女性騎士は男性騎士より格下だと思われています。ですので実力を上げて、せめて同格だと思われたいのです」
「……わかりました。ですがその前に一つ、男性騎士はモンスターとの戦闘経験はあるんでしょうか?」
「詳しくは知りませんが、少ないと思います。地方の兵士の方が、モンスターと戦う機会は多いかと思おます」
「帝国の騎士が相手をするのは、皇族や貴族を害する危険人物という事ですか」
「そうなります」
「……気分を悪くすると思いますが、率直に申し上げます」
カミーリアの実力を基準として、源流の森に出現したアルラウネを女性騎士だけで討伐するとしたら最低で三人、重傷者を出さない戦いをするなら、倍の六人以上は必要だとカズは答えた。
これは森の中とかではなく、尚且つ足場がしっかりている場所でのこと。
今回のように敵に有利な場所だと、例えニ十人集まったとしても倒せないだろうと、カズは少しキツい事を言う。
室内で待機している女性騎士がそれを聞き、カズを威嚇するように睨み付け、アイリス皇女はそれを戒めた。
「とても参考になりました。すぐに帰宅出来る様に馬車を用意します」
「ずっとトライクに乗っていたので、帰りは歩きます」
「しかしそれでは、暗くなってしまいますよ」
「馬車で二時間程度の距離なら大丈夫です。走れば馬車に乗るのと大差ないですから」
「さすがはレオラちゃんの無茶な仕事をする冒険者ですね。わかりました、気を付けてお帰りください。報酬と謝礼は改めてお渡しします」
「ありがとうございます。それでは失礼いたします(レオラが無茶振りしてくるって知ってるんだ)」
アイリス皇女にお辞儀をして別れの挨拶をし、カミーリアと待機している侍女と女性騎士に会釈をして、カズは執務室を出て行く。
「あ……」
隣に座っていたカズが居なくなると、カミーリアの表情が心なしか、暗くなった様に見えた。
「お見送りをしてきたらどうですか?」
「私はアイリス様の騎士です。これ以上の私情は」
「後悔しても知りませんよ」
「大丈夫…です」
「でしたら、疲れているでしょうから、今日は楽な格好に着替えて仕えなさい。わたくしはまだ休憩していますので、ゆっくり戻ってくれば良いですよ」
「はい。ありがとうございます」
暗かった表情が明るくなり、カミーリアはアイリス皇女の執務室を出て、カズの見送りをする為に屋敷の外に向かった。
使用人に案内されて屋敷の外に出たカズは、アレナリアとビワとレラの待つ家に向けて歩き出す。
屋敷の敷地から出る寸前の所で、後方から名前を呼ばれ振り返ると、そこにはこの五日間一緒だったカミーリアの姿があった。
「わざわざ見送りに出て来てくれたんですか」
「あの……もし迷惑でなければ、会いに行ってもいいでしょう…か? あ、その、対モンスターとの戦闘方法について、色々と意見を聞きたくて(わ、私は何を言ってるんだ)」
「ん? ああ、別に構いませんよ」
「あ、あと、街を回ってくれませんか? その、服とか買いに(だから何を言ってるんの、私は)」
「別にいいですよ。レオラ様やギルドの依頼で、出掛けてるかも知れませんので、早めに知らせてもらえれば、その日は空けておきます(一人だと、女性の店に入りづらいんだろな。アレナリアとビワを一緒に連れて行けば、買いやすいだろ)」
「はい、ありがとうございます」
「それでは、また」
それぞれの考えが違うのを知らぬまま、カミーリアは買い物の約束と取り付けたと思い、カズはアレナリアとビワを連れて、女性物を売る店に行き、買い物をするのだと思っていた。
小さな湖畔にある屋敷を出たカズは、人目のない場所になると空間転移を川沿いの住む家に繋げ戻った。
《 一ヶ月後 》
第五皇女ことアイリスの頼みを聞き、源流の森に出現したダンジョンで、病の原因を生成していた元凶のアルラウネを討伐してから一ヶ月が経った陽気の良い日。
カズ達が住む川沿いに建つ家に、カーディナリスを連れたレオラがまた来ていた。
しかしそれだけではなく、今回は第五皇女のアイリスまでもが、従者のカミーリアを連れて遊びに来ていた。
アイリスの護衛がカミーリア一人なのは、目的地がカズが住んでいる家なのと、一緒に来たのが帝国の守護者の称号を持つレオラだったから。
ちなみにアイリスがこの家に来たのは、実はこれが二度目である。
一度目はレオラの屋敷に行った帰りに、ビワを送りがてら息抜きに行くと言うレオラに付いて、ちょっとだけ顔を出した時に、滞在時間は十分程度。
そして今回の二度目は、カズがカミーリアと共に源流の森に行き、病の原因を解決した謝礼を渡しに自ら足を運んでい。
「わたくしもお買い物に行きたかったわ」
「姉上を連れて来る条件として、家から出ないと言ったのを忘れた? 嫌なら屋敷に送って行くけど。もう二度と連れて来ない」
「レオラちゃんヒドいわ。代わりに出来る公務は、いつも変わってあげてるのに。カーディナリスさんもそう思いますよね」
「でしたら、今度はアイリス姫様でなくとも出来る公務を、全てレオラ姫様にしていただいてはどうでしょうか?」
「それは良い考えね」
「待て待て! 全然良くはないだろ。ほら、姉上には病の原因を解決した借りがだ」
「あれはカズさんに解決してもらったんです。そういえば、カズさんがレオラちゃん専属の冒険者ではないと言うじゃないですか」
「仕事を手伝わせてるんだから、アタシ専属の冒険者で構わないだろう。一応、ギルドではそうなっている」
「それでは、わたくしが頼みたい時に頼めないわ」
「アタシを通して頼めばいい事じゃないか」
「それでは時間が掛かってしまいます。そうだわ! わたくしの専属冒険者をカズさんにしましょう」
「なぜそうなるんだ!」
「だって、レオラちゃんの専属じゃないんですもの。わたくしの専属にしても構わないでしょう。そうすればカミーリアも喜ぶし、わたくしの騎士を鍛えてもらえて良い事ずくめだわ」
都合の良い様に言うアイリスにレオラは呆れ、返答は庭から屋内に入って来たカズに任せた。
「アイリス様の申し出はありがたいですけど、誰かの専属になるつもりはないです。俺達は目的があり、まだ旅の途中なもので。フェアリーが居るので、表向きはレオラ専属にしてもらってます」
「残念だわ。カズさんになら、カミーリアを愛人として連れて行くのを許可しますのに」
「あのですね、カミーリアさんを友人としてならまだしも、そういった方向に話を進めないでください。しかも本人が出掛けて居ない時に」
「男性同士の愛があっても、わたくしはよろしいと思いますよ。もちろん繋がるのは心はだけではなく、肉体の方も」
前回アイリスが寄った際に、カズが望むのであれば、謝礼としてカミーリアを側仕えとして与えても良いと言ってきた。
もちろん夜伽の相手も大丈夫だと、アレナリアとビワとレラの居る前で平然と言う。
その時のアイリスの態度や表情で、腐女子的な方の人だとカズは疑い、今日確信した。
「俺にそっちの趣味はありません。くれぐれも三人の前では、そういった話題を出さないでください。というか、アイリス様の趣味方面に誘わないでください」
「こういうお話をするお友達って居ないのよね。ビワさんは物静かだし、わたくしの話を聞いてくれそうじゃないかしら。それともアレナリアさんは、わたくしの事を理解してくれるかしら」
「絶対に止めてください。って言うか、そういった話をするなら、お屋敷に帰ってください(なんで知り合うのが、こういった連中ばかりなんだ!)」
「ヒドいわ、カズさん。皇女のわたくしに出て行けなんて」
アイリスは手を目元に添えて、涙ぐむ素振りをした。
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