人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ

文字の大きさ
上 下
532 / 804
五章 テクサイス帝国編 3 帝都テクサイス

514 源流の森の調査 と 足手まとい

しおりを挟む
 村長代理の話によると、現在源流の村に住む者は数える程しか居らず、病にかかった者は支流の村に移り住んでいる。
 昔から川の源流に住み、水質の変化や倒木で川が塞き止められたりしないように管理していたのだが、村の者達では源流の森入るのは危険だと判断され、許可が下りず調査も出来ず困り果てていたと。
 村長代理として自分も源流の森に入り、原因を突き止めたいと言ってきたが、入るのを許されているのは、カズとカミーリアの二人だけと、許可証に書かれている。

「俺が一人で調査に入るので、カミーリアさんは村に残ってください」

「そうはいかない。許可証には私の名も書かれている。カズ殿と一緒に行かせてもらう」

「話を聞く限り、この先は獣道すら無い場所です」

「それは承知しています」

「あまり言いたくはなかったんですけど、そういった所を歩くの慣れてませんでしょ。ハッキリと言うと、足手まといになります」

「ッ! ……カズ殿の言う通りだ。しかし、ここでただ待っているだけでは、アイリス様に顔向け出来ない。私も森に入る。カズ殿が邪魔だと思ったら、置いて行っても構わない」

 目は口ほどにものを言う、カズを見るカミーリアの目は、絶対に付いて行くと決心していた。

「……わかりました。とりあえず今から少し森に入って、村の近くを見て回ります。森の奥への調査は、明日にしたいと思います(夜明け前にこっそり村を出て、カミーリアさんは置いて行こう)」

「承知しました」

 昼食を軽く済ませたカズとカミーリアは滝の上まで行き、源流の村から周囲50メートル程の範囲を見て回る。
 カミーリアは何度か苔で滑り、地面から飛び出ている木の根で転びそうになっていた。
 翌日この調子で森の奥へ調査に向かえば、カズが言うように足手まといになるのは明らか。
 この日の調査では、誰かが森に入った形跡や、これといった異常は特に見つからなかった。
 宿泊場所は村長の家で部屋を借り、翌日本格的な調査をすることにした。


 ◇◆◇◆◇


 カズは朝早くに起きて、カミーリアを置いて一人で源流の森に入るつもりでいた。
 だが夜明け前にが発生し、薄まるのを待っている間に、カミーリアと村長代理が起きて来てしまったので、一人で源流の森に入るのを断念した。
 朝食はカズが用意し、それを食べ終えて一時間程すると、やっと霧が薄まってきた。
 前日同様、カズはカミーリアと共に源流の森に入った。

 足場は霧の影響で、前日よりも滑りやすくなっている。
 迷わぬ様にカミーリアには川沿いを森の奥へと調査してもらい、カズは川から離れた所を広範囲に見て回った。

 滝から約200メートル上流に移動すると、川は細く無数に枝分かれしており、跨いで渡れる程度にまでなっていた。
 カズはそこでカミーリアと合流して、互いの調査結果を報告しあうも、病の原因と思われるのは特に見付からず、更に奥への調査をする事にして、一旦小休止する。

 何度か転んだのだろうか、軽装備の革鎧は薄汚れて、足元は泥だらけになっており、少し寒そうにしている。
 カズは温かいハーブティーが入った容器と木製のコップを二つ【アイテムボックス】から出し、それを注いで一つをカミーリアに渡した。
 カミーリアは両手でコップを持ち、ハーブティーをゆっくりと少しずつ飲み温まる。

「カズ殿はこの病の原因は何だと思いますか?」

 ハーブティーで体の内部から温まり、疲れの色を浮かべていたカミーリアの表情が和らぐと、熱と夢遊病の原因について聞いてきた。

「話を聞いた時は水が原因かと思ったんですが、それだと村人全員が同じ病にかからないとおかしいので、その可能性は少ないと思いました。なのであとは魔素かな、と」

「魔素…ですか?」

「夢遊病になった村人を見てないので断定は出来ませんが、この森から霧と共に魔素が村に流れているので(なんかが奥にありそうな感じするんだよね)」

 十分程の休憩を終えると、体が温まったカミーリアが森の奥に向かおうと動き出す。

「カミーリアさんはもう村に戻った方が」

「カズ殿に頂いた飲み物で、体が温まりましたので大丈夫です」

 どう言って村に戻ってもらおうかと、カズは考えを巡らせ、素直に危険があると知らせて戻ってもらおうと思った。

「もしかしたら少し先に、ダンジョンの入口があるかも知れないんですよ。ですから、カミーリアさんには村に戻っていてもらった方が」

「ダンジョン!? そんなものがあるなんて、アイリス様とレオラ様からは聞いてません」

「ここで濃い魔素溜りが出来たとしたらどうですか?」

「一ヶ所に魔素が多く溜まり過ぎると、密度が濃くなり危険なモンスターや、変わった植物が発生すると聞いた事があります。ダンジョンもそうして出来るものなのですか?」

「俺もそこまでは詳しく知らないんですが、以前ダンジョンに入った時と同じ様な感じがするので」

「……わかりました」

「ではカミーリアさんは村に」

「私も同行します」

「あのですから、危険かも知れませんので」

「カズ殿の護衛も私の任務です。それにもし戦闘になった場合は、レオラ様からカズ殿の戦い方を見ておくように言われてます」

「どうしても付いて来ると(レオラには足手まといになるとも言われたの忘れたか?)」

「無理を承知で付いて行くのです。カズ殿が身の危険を感じたのであれば、私を置いて行ってください。その覚悟は出来ています」

 仕方がないかと、カズはカミーリアと共に源流の森を更に奥へと進む。
 水の流れる音はするも、苔が厚く生えた根がうねってるだけで、地表上に流れる水は見えない。
 ふわっとした厚いを苔を踏むと、足はくるぶしまで沈み水が染み出る。
 この事から水は厚い苔や、うねる根の少し下を流れているのが分かる。
 カズは染み出て来る水を《分析》を使い調べてみるも、特に異常はなくただの軟水。

 カミーリアに歩調を合わせながら、魔素溜まりのある場所まで行く。
 すると太い木の根が何本も盛り上がり、そこには地中へ続くトンネル状の穴が形成されていた。
 トンネル状の穴の高さ幅共に2メートルあり、奥は暗く暗視のスキルがあるカズでも何故か見えない。
 カズはそれを《分析》で調べ、やはりカミーリアには村で待ってもらう事に決めて、トンネル状の穴の先は一人で調査しようと決めた。

「暗くて中がどうなってるか不明なので、ここは一度村に戻って、カミーリアは待機していてください。俺が一人で調査に入ります」

「原因と思われる場所を見つけたのに、引き返せと言うのですか。暗ければ明かりを点けてれば良いのです。こんな事もあろうかと、小型の鉱石灯ライトを持って来てあります」

 カミーリアが取り出したのは、魔力を注ぐと発光する鉱石が埋め込まれた鉱石ライトという、懐中電灯のような携帯用の魔道具アイテム
 手の中に収まる小型の鉱石ライトに魔力を流して明かりを点すと、カミーリアはトンネルの側まで行き、中を照らして様子を見る。

「あんまり近くまで行くと、危ないですよ」

「気を付け…うわッ!」

 カズが注意をするも、苔で足を取られてたカミーリアが、トンネルの中に滑って行ってしまった。
 これでもう後戻りは出来なくなり、カズはカミーリアを追い掛けて、トンネル状の穴に入った。
 中に入るとカズの《暗視》スキルが機能して、入口から5メートル程の所で倒れているカミーリアを見付けた。

「大丈夫ですか」

 やる気が空回りして完全に足手まといになっているカミーリアを見て、美人の欠点がこの程度のおっちょこちょいならマシなのにと、キツい欠点のあるガザニア美人を思い出し、カズはカミーリアに手を差し伸べた。

「申し訳ない」

 カズの手を取って起き上がり、持っていた小型の鉱石ライトが無いのに気付き、外から射し込む光を頼りに周りを探すが見付からない。

「〈ライト〉」

 カズは光属性の魔法で、拳大の光りの玉を作り出した。
 落とした小型の鉱石ライトを足元に見付けて、カミーリアは拾い上げて壊れないか明かりを点けて確かめた。

「この通り足場も悪いので、今日のところは村に戻りましょう。かなり汚れてしまっていますし」

「も、申し訳ない……カズ殿」

 外に出ようと歩を進めるも、外と内との境界線に見えない壁があり、外に出れなくなっていた。

「どうしましたか?」

「これ以上先に進めません。おそらく結界の類でしょう(分析で障壁があるってのはこの事で、外から中が見えなかったのは、これのせいか)」

「え!? そんな……」

 まさか見えているすぐそこに行けないなんてと、カミーリアがカズの横を通り、木の根のトンネルから出ようとするも見えない壁があり、外に出る事が出来なかった。
しおりを挟む
感想 84

あなたにおすすめの小説

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜

ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった! 謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。 教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。 勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。 元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。 力を持っていても順応できるかは話が別だった。 クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。 ※ご注意※ 初投稿、試作、マイペース進行となります。 作品名は今後改題する可能性があります。 世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。 旅に出るまで(序章)がすごく長いです。 他サイトでも同作を投稿しています。 更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。

異世界転移ボーナス『EXPが1になる』で楽々レベルアップ!~フィールドダンジョン生成スキルで冒険もスローライフも謳歌しようと思います~

夢・風魔
ファンタジー
大学へと登校中に事故に巻き込まれて溺死したタクミは輪廻転生を司る神より「EXPが1になる」という、ハズレボーナスを貰って異世界に転移した。 が、このボーナス。実は「獲得経験値が1になる」のと同時に、「次のLVupに必要な経験値も1になる」という代物だった。 それを知ったタクミは激弱モンスターでレベルを上げ、あっさりダンジョンを突破。地上に出たが、そこは小さな小さな小島だった。 漂流していた美少女魔族のルーシェを救出し、彼女を連れてダンジョン攻略に乗り出す。そしてボスモンスターを倒して得たのは「フィールドダンジョン生成」スキルだった。 生成ダンジョンでスローライフ。既存ダンジョンで異世界冒険。 タクミが第二の人生を謳歌する、そんな物語。 *カクヨム先行公開

努力しても平均的だった俺が異世界召喚された結果

ひむよ
ファンタジー
全てが平均的な少年、山田 涼太。 その少年は努力してもしなくても、何をしても平均的だった。そして少年は中学2年生の時に努力することをやめた。 そのまま成長していき、高校2年生になったとき、あることが起こり少年は全てが異常へと変わった。 それは───異世界召喚だ。 異世界に召喚されたことによって少年は、自分のステータスを確認できるようになった。すぐに確認してみるとその他の欄に平均的1と平均的2というものがあり、それは0歳の時に入手していた! 少年は名前からして自分が平均的なのはこれのせいだと確信した。 だが全てが平均的と言うのは、異世界ではチートだったのだ。 これは平均的で異常な少年が自由に異世界を楽しみ、無双する話である。 hotランキング1位にのりました! ファンタジーランキングの24hポイントで1位にのりました! 人気ランキングの24hポイントで 3位にのりました!

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重
ファンタジー
水無月宗八は意識を取り戻した。 そこは誰もいない大きい部屋で、どうやら異世界召喚に遭ったようだ。 しかし姫様が「ようこそ!」って出迎えてくれないわ、不審者扱いされるわ、勇者は1ヶ月前に旅立ってらしいし、じゃあ俺は何で召喚されたの? 優しい水の国アスペラルダの方々に触れながら、 冒険者家業で地力を付けながら、 訪れた異世界に潜む問題に自分で飛び込んでいく。 勇者ではありません。 召喚されたのかも迷い込んだのかもわかりません。 でも、優しい異世界への恩返しになれば・・・。

伯爵家の三男は冒険者を目指す!

おとうふ
ファンタジー
2024年8月、更新再開しました! 佐藤良太はとある高校に通う極普通の高校生である。いつものように彼女の伶奈と一緒に歩いて下校していたところ、信号無視のトラックが猛スピードで突っ込んで来るのが見えた。良太は咄嗟に彼女を突き飛ばしたが、彼は迫り来るトラックを前に為すすべも無く、あっけなくこの世を去った。 彼が最後に見たものは、驚愕した表情で自分を見る彼女と、完全にキメているとしか思えない、トラックの運転手の異常な目だった... (...伶奈、ごめん...) 異世界に転生した良太は、とりあえず父の勧める通りに冒険者を目指すこととなる。学校での出会いや、地球では体験したことのない様々な出来事が彼を待っている。 初めて投稿する作品ですので、温かい目で見ていただければ幸いです。 誤字・脱字やおかしな表現や展開など、指摘があれば遠慮なくお願い致します。 1話1話はとても短くなっていますので、サクサク読めるかなと思います。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

俺のチートが凄すぎて、異世界の経済が破綻するかもしれません。

埼玉ポテチ
ファンタジー
不運な事故によって、次元の狭間に落ちた主人公は元の世界に戻る事が出来なくなります。次元の管理人と言う人物(?)から、異世界行きを勧められ、幾つかの能力を貰う事になった。 その能力が思った以上のチート能力で、もしかしたら異世界の経済を破綻させてしまうのでは無いかと戦々恐々としながらも毎日を過ごす主人公であった。 

処理中です...