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五章 テクサイス帝国編 3 帝都テクサイス
513 新しい乗り物
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「一年くらい前に会った時は、カミーリアはアスターと同程度の実力だったか。あれから腕を上げたか?」
「日々鍛練しておりますので、アスターには負けはせぬと自負しております」
待機していたアスターがそれを聞きムッとした顔をする。
「ならこの後、模擬戦をやらせてみるか」
「出発前に疲れさせてどうするの、レオラちゃん。カミーリアも挑発じみた発言はおやめなさい」
「申し訳ございません、アイリス様。もしよろしければ、またレオラ様にご指導をいただければと思っております」
「だったら、今回もし戦闘にでもなったら、カズの戦い方でも見ておくことだ。ついでに言っておくと、相手によっては護衛じゃなく足手まといになるぞ」
「レオラ様がそのように言うのであれば、カズ殿の実力は……」
レオラの言葉を聞き、カミーリアは黙ってカズを直視する。
「今回は調査に行くんですから、大袈裟な戦闘にはならないですよ(面倒なフラグを立てないでくれ。余計に胃が痛くなりそうだ)」
「急がせて申し訳ありませんが、昼食が済みましたら、すぐに出発してください。カミーリアも今の内に支度をしてください」
「直ちに」
そしてこの後、移動に使う乗り物と昼食の用意がされるまでの間に、アイリス皇女から説明があった。
目的地までの中間地点にあるシダー村で一泊し、翌朝早く出発して順調に進めば、夕方前に源流の森の側にある村に到着する筈だと。
用意された昼食を済ませると、カズとカミーリアは乗り物が用意された屋敷倉庫に移動した。
小型化された新型の魔素還元式原動機で動く乗り物は、レオラも初見で興味深く見入っていた。
その変わった乗り物を見て、アレナリアとレラは本当に馬よりも速く動くのか、不思議そうな顔をしていた。
カズは似た乗り物を元の世界で見ていた。
前輪が一つに後輪が二つ、見た目がほぼ二人乗りの大型バイクで『トライク』と呼ばれていた。
カズはカミーリアの運転で、最初の目的地のシダー村に向かった。
カズと一緒に来たアレナリアとレラは、レオラが送り届ける事になった。
アイリス皇女の屋敷を出てから一時間半程が経過すると、カミーリアはトライクの魔素還元式原動機を停止させた。
トライクに使われている小型化された新型の魔素還元式原動機は、積み込まれた魔力蓄積型人工鉱石に溜められた魔力を使い走行する。
今回は急だった事で、魔力蓄積型人工鉱石に二割程度しか魔力が補給されてないかった。
ただ、溜められた魔力だけで長距離を移動するのは難しく、補給をしなくても走れるように、運転者の魔力を使い走行する事も可能性になっている。
なので今回は、ほぼカミーリアの魔力で走行している。
カミーリアがトライクを停止させたのは、自身の魔力が三割以下まで消費したのを感じたからだった。
安全に走行する為に、アイリス皇女から一時間置きに休憩するように言われていたのだが。
「申し訳ありません、カズ殿。魔力を使い過ぎてしまい、回復するまで少し長めに休憩を」
「アイリス様に言われた通り、一時間置きに休憩を取った方が良かったのでは」
「明るい内にシダー村に着こうと、少し無理をしました。私の魔力量なら着けると思ったのですが」
「それって俺が乗っているから、消費魔力が増えたんのでは?」
「……不覚でした」
走行訓練をしていたカミーリアは、自分の魔力量でどの程度の距離を走れるか分かっているつもりだった。
だが、走行訓練は一人乗りでしていたため、二人乗りした場合に消費する魔力が増えるという事を、すっかり忘れていた。
「近くに襲って来そうな獣やモンスターもいませんし、今日中にシダー村に着けばいいんですから、ゆっくり休憩してください」
「こんな見通しの悪い林の中で、生き物の居る場所がわかるのですか?」
「一応、長旅をしてきた冒険者ですから、常に周囲を警戒するようにしてます(まあ、魔力や気配を探らなくても、マップで確認出来るんだけど)」
「レオラ様が認められた方だけのことはあります」
「大した事では、この程度でしたらカミーリアさんもすぐに出来ますよ(トライクって、俺でも運転していいのかな?)」
「ご謙遜を」
「もし大丈夫であれば、俺が運転してもいいですか? その方が早くシダー村に着けますが」
「カズ殿がですか? トライクを動かした事は?」
「魔力を補充して動かす船はあるんですけど。あ、資格みたいなのが必要ですか?」
「今のところ資格のような物は必要ありませが、操作するのに訓練する必要があります。乗ってわかったと思いですが、馬よりはるかに速いので、流れる景色に慣れなければバランスを崩すかも知れません。それに魔力消費に気を付けなければ、走行中に魔力の枯渇で気を失う危険もあります」
「でしたら始めはゆっくり走りますから、カミーリアさんが速く走っても問題ないか判断してください」
「……わかしました。ここで私の魔力が回復するのを待つより、その方が早くシダー村に着けるでしょう」
「ならお願いします(魔力譲渡のスキルを使ってカミーリアさんに魔力を渡すより、俺の魔力を使って走った方が速いだろうからな)」
トライクに乗り込み、カミーリアに運転方法を教わって、先ずはゆっくりと発進させる。
最初はとろとろと時速10キロくらいで走り、慣れてくるとカミーリアが運転していた時と同じ、時速約50キロまで速度を上げた。
カズは魔力消費がどれ程のものかと思っていたが、湖で操縦した船より魔力消費は少なかった。
後ろに乗るカミーリアに道案内をしてもらって、暗くなる前にシダー村に着く事ができ、村で一番高級な宿屋に入った。(アイリス皇女に言われており、支払いはカミーリアがした)
夕食の際に翌日の予定をカミーリアから聞き、その後それぞれの部屋で就寝した。
◇◆◇◆◇
翌朝早く朝食を済ませ、魔力が回復したカミーリアの運転でシダー村を出発した。
三十分もすると道の舗装は無くなり、道幅も狭くなった。
現在二人の乗ったトライクは速度を落として、森林の中を走っている。
昨夜夕食の時に聞いたカミーリアの説明では、行ける所までトライクで進み、それから徒歩で目的地を目指すとの事だった。
本来ならシダー村から船に乗り換えるのだが、二日も掛かってしまうので、二人ならこちらの方が早いのだと。
カズとしは森の中だろうと、山の中だろうと、旅で慣れていたので特に問題なかった。
そして道が行き止まりになると、トライクを降りて徒歩で獣道を森林の奥へと向かう。
最短のルートを選んだと言うのに、カミーリアの歩み遅かった。
その動きを見たカズは、遅い理由が何となく分かり、前日のトライクを運転した時と同様カミーリアに方向を聞き、カズが草木を分けながら先を進む。
そして三十分程歩くと川が現れ、今度はそれを上流へと向かう。
すると水が落ちる音が聞こえ、次第に木々の間から建物と滝が見えてきた。
森林の奥までトライクに乗って来た事で、予定より早く目的地の村に着くとこが出来た。
外に出ている村人は誰一人として居らず、聞こえるのは滝の音だけ。
先ずはカミーリアの案内で村長の家に向かた。
カミーリアが一軒の平屋の前で声を掛け中に入ると、村長代理だと言う中年男性が出て来た。
アイリス第五皇女の命で、源流の森の調査に来た事を伝え、カミーリアは許可証の入った封筒を渡した。
時間的に昼食時だったので、村長代理の中年男性と食事を取りながら近況を聞いた。
「日々鍛練しておりますので、アスターには負けはせぬと自負しております」
待機していたアスターがそれを聞きムッとした顔をする。
「ならこの後、模擬戦をやらせてみるか」
「出発前に疲れさせてどうするの、レオラちゃん。カミーリアも挑発じみた発言はおやめなさい」
「申し訳ございません、アイリス様。もしよろしければ、またレオラ様にご指導をいただければと思っております」
「だったら、今回もし戦闘にでもなったら、カズの戦い方でも見ておくことだ。ついでに言っておくと、相手によっては護衛じゃなく足手まといになるぞ」
「レオラ様がそのように言うのであれば、カズ殿の実力は……」
レオラの言葉を聞き、カミーリアは黙ってカズを直視する。
「今回は調査に行くんですから、大袈裟な戦闘にはならないですよ(面倒なフラグを立てないでくれ。余計に胃が痛くなりそうだ)」
「急がせて申し訳ありませんが、昼食が済みましたら、すぐに出発してください。カミーリアも今の内に支度をしてください」
「直ちに」
そしてこの後、移動に使う乗り物と昼食の用意がされるまでの間に、アイリス皇女から説明があった。
目的地までの中間地点にあるシダー村で一泊し、翌朝早く出発して順調に進めば、夕方前に源流の森の側にある村に到着する筈だと。
用意された昼食を済ませると、カズとカミーリアは乗り物が用意された屋敷倉庫に移動した。
小型化された新型の魔素還元式原動機で動く乗り物は、レオラも初見で興味深く見入っていた。
その変わった乗り物を見て、アレナリアとレラは本当に馬よりも速く動くのか、不思議そうな顔をしていた。
カズは似た乗り物を元の世界で見ていた。
前輪が一つに後輪が二つ、見た目がほぼ二人乗りの大型バイクで『トライク』と呼ばれていた。
カズはカミーリアの運転で、最初の目的地のシダー村に向かった。
カズと一緒に来たアレナリアとレラは、レオラが送り届ける事になった。
アイリス皇女の屋敷を出てから一時間半程が経過すると、カミーリアはトライクの魔素還元式原動機を停止させた。
トライクに使われている小型化された新型の魔素還元式原動機は、積み込まれた魔力蓄積型人工鉱石に溜められた魔力を使い走行する。
今回は急だった事で、魔力蓄積型人工鉱石に二割程度しか魔力が補給されてないかった。
ただ、溜められた魔力だけで長距離を移動するのは難しく、補給をしなくても走れるように、運転者の魔力を使い走行する事も可能性になっている。
なので今回は、ほぼカミーリアの魔力で走行している。
カミーリアがトライクを停止させたのは、自身の魔力が三割以下まで消費したのを感じたからだった。
安全に走行する為に、アイリス皇女から一時間置きに休憩するように言われていたのだが。
「申し訳ありません、カズ殿。魔力を使い過ぎてしまい、回復するまで少し長めに休憩を」
「アイリス様に言われた通り、一時間置きに休憩を取った方が良かったのでは」
「明るい内にシダー村に着こうと、少し無理をしました。私の魔力量なら着けると思ったのですが」
「それって俺が乗っているから、消費魔力が増えたんのでは?」
「……不覚でした」
走行訓練をしていたカミーリアは、自分の魔力量でどの程度の距離を走れるか分かっているつもりだった。
だが、走行訓練は一人乗りでしていたため、二人乗りした場合に消費する魔力が増えるという事を、すっかり忘れていた。
「近くに襲って来そうな獣やモンスターもいませんし、今日中にシダー村に着けばいいんですから、ゆっくり休憩してください」
「こんな見通しの悪い林の中で、生き物の居る場所がわかるのですか?」
「一応、長旅をしてきた冒険者ですから、常に周囲を警戒するようにしてます(まあ、魔力や気配を探らなくても、マップで確認出来るんだけど)」
「レオラ様が認められた方だけのことはあります」
「大した事では、この程度でしたらカミーリアさんもすぐに出来ますよ(トライクって、俺でも運転していいのかな?)」
「ご謙遜を」
「もし大丈夫であれば、俺が運転してもいいですか? その方が早くシダー村に着けますが」
「カズ殿がですか? トライクを動かした事は?」
「魔力を補充して動かす船はあるんですけど。あ、資格みたいなのが必要ですか?」
「今のところ資格のような物は必要ありませが、操作するのに訓練する必要があります。乗ってわかったと思いですが、馬よりはるかに速いので、流れる景色に慣れなければバランスを崩すかも知れません。それに魔力消費に気を付けなければ、走行中に魔力の枯渇で気を失う危険もあります」
「でしたら始めはゆっくり走りますから、カミーリアさんが速く走っても問題ないか判断してください」
「……わかしました。ここで私の魔力が回復するのを待つより、その方が早くシダー村に着けるでしょう」
「ならお願いします(魔力譲渡のスキルを使ってカミーリアさんに魔力を渡すより、俺の魔力を使って走った方が速いだろうからな)」
トライクに乗り込み、カミーリアに運転方法を教わって、先ずはゆっくりと発進させる。
最初はとろとろと時速10キロくらいで走り、慣れてくるとカミーリアが運転していた時と同じ、時速約50キロまで速度を上げた。
カズは魔力消費がどれ程のものかと思っていたが、湖で操縦した船より魔力消費は少なかった。
後ろに乗るカミーリアに道案内をしてもらって、暗くなる前にシダー村に着く事ができ、村で一番高級な宿屋に入った。(アイリス皇女に言われており、支払いはカミーリアがした)
夕食の際に翌日の予定をカミーリアから聞き、その後それぞれの部屋で就寝した。
◇◆◇◆◇
翌朝早く朝食を済ませ、魔力が回復したカミーリアの運転でシダー村を出発した。
三十分もすると道の舗装は無くなり、道幅も狭くなった。
現在二人の乗ったトライクは速度を落として、森林の中を走っている。
昨夜夕食の時に聞いたカミーリアの説明では、行ける所までトライクで進み、それから徒歩で目的地を目指すとの事だった。
本来ならシダー村から船に乗り換えるのだが、二日も掛かってしまうので、二人ならこちらの方が早いのだと。
カズとしは森の中だろうと、山の中だろうと、旅で慣れていたので特に問題なかった。
そして道が行き止まりになると、トライクを降りて徒歩で獣道を森林の奥へと向かう。
最短のルートを選んだと言うのに、カミーリアの歩み遅かった。
その動きを見たカズは、遅い理由が何となく分かり、前日のトライクを運転した時と同様カミーリアに方向を聞き、カズが草木を分けながら先を進む。
そして三十分程歩くと川が現れ、今度はそれを上流へと向かう。
すると水が落ちる音が聞こえ、次第に木々の間から建物と滝が見えてきた。
森林の奥までトライクに乗って来た事で、予定より早く目的地の村に着くとこが出来た。
外に出ている村人は誰一人として居らず、聞こえるのは滝の音だけ。
先ずはカミーリアの案内で村長の家に向かた。
カミーリアが一軒の平屋の前で声を掛け中に入ると、村長代理だと言う中年男性が出て来た。
アイリス第五皇女の命で、源流の森の調査に来た事を伝え、カミーリアは許可証の入った封筒を渡した。
時間的に昼食時だったので、村長代理の中年男性と食事を取りながら近況を聞いた。
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