520 / 714
五章 テクサイス帝国編 3 帝都テクサイス
502 素材回収 と 急な依頼
しおりを挟む
アレナリアがギルドまで付いて来たのは、カズがサイネリアに敬語を使わないか確認するためだった。
一人で買い物行く子供を心配して、親がすぐ後ろから付いて来る場面が思い浮かび、子供扱いさてれるのかと、カズは少し複雑な気持ちになった。
アレナリアと別れたカズは、セントラル・ステーションから魔導列車に乗り、目的地に向けて出発した。
二等車両に揺られること二時間、込み合っていた列車内も席に座れるまで乗客が減り、窓の外を流れる景色も次第に変わりだす。
高い建物は減り、一軒家の住宅が多い。
更に列車に揺られること三時間、帝都最南部の駅に到着した。
小さな工場が建ち並び、せっせと働く人々。
だからと言って、仕事に追い込まれてるようには見えない。
何処となくテレビや本で見た、昭和の下町の風景ぽかった。
カズは渡された地図を見て、目的地の場所に向かい歩き出した。
駅を出て一時間程歩き、工場が建ち並ぶ場所を抜けて、町の外れに建つ冒険者ギルドに着いた。
ギルド内に冒険者は少なく、ギルド職員も四人しか居なかった。
カズは女性職員の居る受付に移動して、帝都の冒険者ギルド本部から運搬依頼を受けてきた事を伝え、ギルドカードを提示して職員宛の手紙を渡した。
五分程待つと、受付の女性職員から二階の個室へ案内された。
室内には倉庫の管理をしているという男性職員が居た。
鉱石などの素材と、冷凍してある獣やモンスターの素材は別々の倉庫だと説明された。
運搬方法を聞いてきたので、カズはアイテムボックスが使えることを伝えた。
どうやら職員宛の手紙に、そのことは書いてなかったらしい。
手紙に書かれた素材の受け渡し書類を作成するので、素材を取りに行くのは翌日と言われ、この日倉庫には行かなかった。
◇◆◇◆◇
カズは紹介された宿屋に泊まり、翌日男性職員の案内で倉庫に向かった。
最初は冒険者によって集められた、魔鉱石20キロと鉱石300キロを回収した。
次は地上一階、地下二階の冷凍倉庫に向かった。
モンスターの素材が集まっているので、万が一にも住人に被害が出ないようにと、住宅から離れた場所に建てられている。
倉庫の周りには5メートル程の壁が作られ、中を覗くことも出来ない。
男性職員が倉庫の出入口の錠を開け、中にカズを案内する。
一階の室温は十度前後になっており、地下一階が零下二十度程、地下二階が零下四十度程になっているとのことだった。
この日の気温は二十度程で、一階でも十度の温度差があった。
男性職員が一階に用意してある、ダウンジャケットのような分厚い上着をカズに渡し、それぞれ滞在出来る時間と、回収するモンスターが置いてある場所を伝える。
地下一階で長くて十分、地下二階では居れて三分だと。
地下一階に『メタル・スコーピオン』が四十二体、地下二階には『ロック・タートル』が三体保管してあると言う。
メタル・スコーピオンは名前の通り金属製の硬い外皮を持ち、強酸性の毒を尻尾の先端にある針から噴出させる。
この時にCランクの冒険者六人が強酸性の毒を浴びて重傷を負い、二人の冒険者が死亡していた。
八ヶ月程前に大量発生した際に討伐したのを、ギルド本部からの回収待ちで、ずっと置かれていたのだと。
ロック・タートルは倉庫に保管してあったマナの純度が高い魔鉱石を狙って、三ヶ月前に町から数百メートル離れた地中から現れたのを討伐したものだと。
狙った鉱石を食べて取り込むまで、諦める事なく突き進み続ける執念深さがロック・タートルの厄介さだと言う。
3メートル以上の大きさと、数百キロにもなる重さがあり、頑丈な甲羅で身を守っていることから討伐するのは一苦労で、難易度はBランクに位置付けられている。
その甲羅は素材として一級品しての価値があり、出来るだけ甲羅に傷を付けずに討伐すれば、かなりの買い取り額になる。
ただしその重さから、回収するのは非常に困難とも言われていた。
討伐された当時も、ギルド職員と町の冒険者が総出で運んだのだと。
本来ロック・タートルが食べるような鉱石がない町に現れたのは、魔鉱石を採取した冒険者パーティーが欲を掻き、がたついた荷台に魔鉱石を乗っけて運んできた事で、欠片を点々と落としてきたのをたどって来たのだと、後々の調べて判明したと男性職員は話した。
本来なら魔鉱石を採取したパーティーに処罰を与えるところだが、責任を感じてロック・タートルの討伐に先陣をきって参加して事で、町の清掃活動と報酬減額で許されたらしい。
男性職員の話を聞きながら、カズは地下一階に下りて、全てのメタル・スコーピオンを【アイテムボックス】に回収し、続けて地下二階に移動して三体のロック・タートルも同様の回収。
目的を終えて冒険者ギルドに戻り、カズは受け渡しの書類を男性職員から受け取った。
依頼を終えて駅に向かおうとするカズに、この日セントラル・ステーション行きの魔導列車はないと聞かされて、もう一泊する事になった。
昼を過ぎたばかりで、カズは時間にもて余すはめになった。
町の大衆食堂で昼飯を済ませ、建ち並ぶ工場を見て周り、ギルドに戻って周辺の情報の資料でも見て時間を潰すことにした。
と言っても線路の先、帝都南部から外がどうなってるかを調べることくらいしかなった。
ギルド職員に周囲の地図や、生息する獣やモンスターの情報が書かれている資料を聞き、一階の片隅で冒険者なら誰でも閲覧出来る資料を見ながら時間を潰した。
獣やモンスターの情報は大体知っているものだったので、地理に関する事くらいしか見るところがなかった。
それでも周辺の情報は少し分かったので、終わりにして閲覧した資料を返すことにした。
夕食には大分早いが、下町の食堂でゆっくりとお酒を飲みながら過ごすのも、たまには有りかと思い、資料をギルド職員に返しに受付に移動した。
「資料ありがとうございました。明日、中央駅に行きの列車に乗って戻ります。案内してくれた方によろしくお伝えください」
「は……? はあ」
受付の女性職員は、何言ってるのこの人は? みたいな表情をした。
「ぁ……で、では(敬語使うなって、アレナリアに言われたっけ)」
資料を受付の女性職員に渡して、走って入ってきた冒険者と入れ替わるようにギルドを出た。
ギルドから数十メートル離れた所で、倉庫に案内してくれた男性職員が、慌ててカズを追い掛けてきた。
何かと話を聞くと『バレルボア』の回収を頼みたいと言ってきた。
バレルボアは果実酒などを貯蔵しておく大樽のように太っており、その身はまるで熟成された旨味の強い肉。
繁殖力が強いことから、年に数回冒険者によって一定数になるまで狩りが行われる。
その時期になると、ランクの低い冒険者が稼ぎに他所から集まるほど。
町には多くの新鮮で旨い肉が入るので、バレルボアの肉を買いに多くの商人もやって来る。
帝都南部の工場が建ち並ぶこの町の外には、バレルボアが毎年多く出現する場所として、一部の者にとっては有名な町。
カズが到着した日の前日にバレルボアが現れ始め、冒険者が狩りに出ていたことが、ギルドに冒険者が少ない理由だった。
カズと入れ替わりギルドに入った冒険者は、バレルボアの出現状況を偵察に行っていた冒険者。
バレルボアの発生状況に応じて、そのまま狩りを行う事になっていたが、連絡に戻って来たというのは問題が発生した事になる。
冒険者から報告を聞いた男性職員が、大容量のアイテムボックスを使用出来きるカズに頼みに来た。
「アイテムボックスにまだ余裕があるのでしたら、お願いしたいのです」
「それは大丈夫だけど、いつもはどうやって回収してきてるの?」
「二十匹程度でしたら、荷台を馬に引かせて運んで来るのですが、今回は数が多いようで。一応、アイテムボックスを使用出来る冒険者が一人居るのですが、容量がバレルボアだと十匹も入らないようで」
「報酬は」
「もちろんギルドからお払いします」
「出来れば現物を貰えないかな? バレルボアの肉は旨いと聞く(資料で見た情報で、食べたい事はないんだけど)」
「それでよろしければ。出来れば討伐の方は、現地に居る冒険者に任せてください」
「低ランク冒険者のレベル上げ? それとも報酬を減らさないため?」
「両方ですが、どちらかと言えば後者の方です」
「わかった。現地で手伝いを求められたら、俺も狩らせてもらう。暗くなる前に戻って来たいから、時間が掛かりそうなら参戦するが」
「それで構いません。報告によると、二つの群れが現れたとの事だったので、狩りは問題ないかと」
「そう。じゃあ場所を教えてくれる。すぐに向かう」
「では地図で説明します。今一度ギルドに」
「了解(旨味の強い肉か。これは良い土産が出来そうだ)」
一人で買い物行く子供を心配して、親がすぐ後ろから付いて来る場面が思い浮かび、子供扱いさてれるのかと、カズは少し複雑な気持ちになった。
アレナリアと別れたカズは、セントラル・ステーションから魔導列車に乗り、目的地に向けて出発した。
二等車両に揺られること二時間、込み合っていた列車内も席に座れるまで乗客が減り、窓の外を流れる景色も次第に変わりだす。
高い建物は減り、一軒家の住宅が多い。
更に列車に揺られること三時間、帝都最南部の駅に到着した。
小さな工場が建ち並び、せっせと働く人々。
だからと言って、仕事に追い込まれてるようには見えない。
何処となくテレビや本で見た、昭和の下町の風景ぽかった。
カズは渡された地図を見て、目的地の場所に向かい歩き出した。
駅を出て一時間程歩き、工場が建ち並ぶ場所を抜けて、町の外れに建つ冒険者ギルドに着いた。
ギルド内に冒険者は少なく、ギルド職員も四人しか居なかった。
カズは女性職員の居る受付に移動して、帝都の冒険者ギルド本部から運搬依頼を受けてきた事を伝え、ギルドカードを提示して職員宛の手紙を渡した。
五分程待つと、受付の女性職員から二階の個室へ案内された。
室内には倉庫の管理をしているという男性職員が居た。
鉱石などの素材と、冷凍してある獣やモンスターの素材は別々の倉庫だと説明された。
運搬方法を聞いてきたので、カズはアイテムボックスが使えることを伝えた。
どうやら職員宛の手紙に、そのことは書いてなかったらしい。
手紙に書かれた素材の受け渡し書類を作成するので、素材を取りに行くのは翌日と言われ、この日倉庫には行かなかった。
◇◆◇◆◇
カズは紹介された宿屋に泊まり、翌日男性職員の案内で倉庫に向かった。
最初は冒険者によって集められた、魔鉱石20キロと鉱石300キロを回収した。
次は地上一階、地下二階の冷凍倉庫に向かった。
モンスターの素材が集まっているので、万が一にも住人に被害が出ないようにと、住宅から離れた場所に建てられている。
倉庫の周りには5メートル程の壁が作られ、中を覗くことも出来ない。
男性職員が倉庫の出入口の錠を開け、中にカズを案内する。
一階の室温は十度前後になっており、地下一階が零下二十度程、地下二階が零下四十度程になっているとのことだった。
この日の気温は二十度程で、一階でも十度の温度差があった。
男性職員が一階に用意してある、ダウンジャケットのような分厚い上着をカズに渡し、それぞれ滞在出来る時間と、回収するモンスターが置いてある場所を伝える。
地下一階で長くて十分、地下二階では居れて三分だと。
地下一階に『メタル・スコーピオン』が四十二体、地下二階には『ロック・タートル』が三体保管してあると言う。
メタル・スコーピオンは名前の通り金属製の硬い外皮を持ち、強酸性の毒を尻尾の先端にある針から噴出させる。
この時にCランクの冒険者六人が強酸性の毒を浴びて重傷を負い、二人の冒険者が死亡していた。
八ヶ月程前に大量発生した際に討伐したのを、ギルド本部からの回収待ちで、ずっと置かれていたのだと。
ロック・タートルは倉庫に保管してあったマナの純度が高い魔鉱石を狙って、三ヶ月前に町から数百メートル離れた地中から現れたのを討伐したものだと。
狙った鉱石を食べて取り込むまで、諦める事なく突き進み続ける執念深さがロック・タートルの厄介さだと言う。
3メートル以上の大きさと、数百キロにもなる重さがあり、頑丈な甲羅で身を守っていることから討伐するのは一苦労で、難易度はBランクに位置付けられている。
その甲羅は素材として一級品しての価値があり、出来るだけ甲羅に傷を付けずに討伐すれば、かなりの買い取り額になる。
ただしその重さから、回収するのは非常に困難とも言われていた。
討伐された当時も、ギルド職員と町の冒険者が総出で運んだのだと。
本来ロック・タートルが食べるような鉱石がない町に現れたのは、魔鉱石を採取した冒険者パーティーが欲を掻き、がたついた荷台に魔鉱石を乗っけて運んできた事で、欠片を点々と落としてきたのをたどって来たのだと、後々の調べて判明したと男性職員は話した。
本来なら魔鉱石を採取したパーティーに処罰を与えるところだが、責任を感じてロック・タートルの討伐に先陣をきって参加して事で、町の清掃活動と報酬減額で許されたらしい。
男性職員の話を聞きながら、カズは地下一階に下りて、全てのメタル・スコーピオンを【アイテムボックス】に回収し、続けて地下二階に移動して三体のロック・タートルも同様の回収。
目的を終えて冒険者ギルドに戻り、カズは受け渡しの書類を男性職員から受け取った。
依頼を終えて駅に向かおうとするカズに、この日セントラル・ステーション行きの魔導列車はないと聞かされて、もう一泊する事になった。
昼を過ぎたばかりで、カズは時間にもて余すはめになった。
町の大衆食堂で昼飯を済ませ、建ち並ぶ工場を見て周り、ギルドに戻って周辺の情報の資料でも見て時間を潰すことにした。
と言っても線路の先、帝都南部から外がどうなってるかを調べることくらいしかなった。
ギルド職員に周囲の地図や、生息する獣やモンスターの情報が書かれている資料を聞き、一階の片隅で冒険者なら誰でも閲覧出来る資料を見ながら時間を潰した。
獣やモンスターの情報は大体知っているものだったので、地理に関する事くらいしか見るところがなかった。
それでも周辺の情報は少し分かったので、終わりにして閲覧した資料を返すことにした。
夕食には大分早いが、下町の食堂でゆっくりとお酒を飲みながら過ごすのも、たまには有りかと思い、資料をギルド職員に返しに受付に移動した。
「資料ありがとうございました。明日、中央駅に行きの列車に乗って戻ります。案内してくれた方によろしくお伝えください」
「は……? はあ」
受付の女性職員は、何言ってるのこの人は? みたいな表情をした。
「ぁ……で、では(敬語使うなって、アレナリアに言われたっけ)」
資料を受付の女性職員に渡して、走って入ってきた冒険者と入れ替わるようにギルドを出た。
ギルドから数十メートル離れた所で、倉庫に案内してくれた男性職員が、慌ててカズを追い掛けてきた。
何かと話を聞くと『バレルボア』の回収を頼みたいと言ってきた。
バレルボアは果実酒などを貯蔵しておく大樽のように太っており、その身はまるで熟成された旨味の強い肉。
繁殖力が強いことから、年に数回冒険者によって一定数になるまで狩りが行われる。
その時期になると、ランクの低い冒険者が稼ぎに他所から集まるほど。
町には多くの新鮮で旨い肉が入るので、バレルボアの肉を買いに多くの商人もやって来る。
帝都南部の工場が建ち並ぶこの町の外には、バレルボアが毎年多く出現する場所として、一部の者にとっては有名な町。
カズが到着した日の前日にバレルボアが現れ始め、冒険者が狩りに出ていたことが、ギルドに冒険者が少ない理由だった。
カズと入れ替わりギルドに入った冒険者は、バレルボアの出現状況を偵察に行っていた冒険者。
バレルボアの発生状況に応じて、そのまま狩りを行う事になっていたが、連絡に戻って来たというのは問題が発生した事になる。
冒険者から報告を聞いた男性職員が、大容量のアイテムボックスを使用出来きるカズに頼みに来た。
「アイテムボックスにまだ余裕があるのでしたら、お願いしたいのです」
「それは大丈夫だけど、いつもはどうやって回収してきてるの?」
「二十匹程度でしたら、荷台を馬に引かせて運んで来るのですが、今回は数が多いようで。一応、アイテムボックスを使用出来る冒険者が一人居るのですが、容量がバレルボアだと十匹も入らないようで」
「報酬は」
「もちろんギルドからお払いします」
「出来れば現物を貰えないかな? バレルボアの肉は旨いと聞く(資料で見た情報で、食べたい事はないんだけど)」
「それでよろしければ。出来れば討伐の方は、現地に居る冒険者に任せてください」
「低ランク冒険者のレベル上げ? それとも報酬を減らさないため?」
「両方ですが、どちらかと言えば後者の方です」
「わかった。現地で手伝いを求められたら、俺も狩らせてもらう。暗くなる前に戻って来たいから、時間が掛かりそうなら参戦するが」
「それで構いません。報告によると、二つの群れが現れたとの事だったので、狩りは問題ないかと」
「そう。じゃあ場所を教えてくれる。すぐに向かう」
「では地図で説明します。今一度ギルドに」
「了解(旨味の強い肉か。これは良い土産が出来そうだ)」
応援ありがとうございます!
1
お気に入りに追加
492
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる