人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ

文字の大きさ
上 下
518 / 803
五章 テクサイス帝国編 3 帝都テクサイス

500 高額査定

しおりを挟む
 周囲を警戒するあまり、目付きがキツくなるアスターの尻をパンっとレオラが叩いた。

「レオラさ…ん。痛いです」

「お前達はこういう場所で、自然に行動出来るように少しは学ぶべきだ。アタシの側に居るつもりならばだが」

 アスターは周囲で楽しげに買い物をする人々を見て、自分達も同じ様に振る舞えるだろえかと考える。

「今度は眉間にしわが寄ってるぞ。警戒ならアタシもしている。カズとアレナリアだって自然としているだろう、冒険者なんだ。休暇だと思って楽にしろ。万が一の事があっても、アスターに責任は問わない」

万が一それが起きない為に、わたしが付いて来てます。レオラ様やカズ殿に比べれば、弱くはありますが」

「はぁ。今度はグラジオラスにも、街中を一般人として行動出来るように教えないとならんか。皇族としての身を隠して、秘密裏に行動するのは第六皇女アタシだけではないぞ」

「……わかりました。自然に振る舞えるように修練します」

「修練……か。だったらアレナリアにでも頼んでみるか。女同士なら気兼ねなく行動出来るだろ。指摘も遠慮なくしてくるはずだ」

「レオラさ…まに、お任せいたします」

「慣れだ、慣れ。もう少し気楽に考えろ。アタシはお前達三人を信頼してる」

 レオラとアスターが込み入った話をしているのだと気を使い、買ってもらったカステラを一人で先に頬張るレラを連れて、カズ達は二人から距離を取り商店を見て回った。
 少ししてレオラとアスターが合流すると、目的の物を買い家に戻って行く。
 屋敷でカーディナリスが作る夕食に間に合えばと、ギリギリまで居座ると思っていたカズだったが、そうはならなかった。

「今日はもう屋敷に戻る。三日後ギルドには、お前達だけで行ってくれ。日にちを指定してきたから、サイネリアが一階の受付に居るだろ」

「わかりました」

「当分はこの辺りを歩いて、周辺の道に慣れておくといい」

「そうします」

 橋を渡った辺りで、レオラとアスターの二人と別れた。
 家に戻るとカズが【アイテムボックス】から買ってきた布団を出し、それぞれのベッドに運んだ。
 それから調理器具や食器を棚に仕舞い、備え付けの冷蔵箱に入るだけの食材を入れ、ビワは夕食作りを始めた。
 カズはその間に浴槽に湯を溜めて、風呂に入れるよう準備をする。
 アレナリアとレラは自分達の衣服を、アイテムポケットが付与されたバッグから出し、自分の部屋にある収納タンスに片付けた。

 部屋割りは既に決めてあった。
 アレナリアとビワの部屋は二階に、レラは主にビワと同じ部屋を使うが、気が向けばアレナリアの部屋に移るらしい。
 カズは三階の一室を使い、レオラと守護騎士が来た時は、一階のリビングで寝ることにした。
 夕食は久し振りにビワの作りたて手料理を食べて、各自お風呂に入り、それぞれの寝室でゆっくりと休んだ。


 翌日と翌々日はレオラの言ったように、川のこちら側とあちら側を四人で歩き道を覚えた。
 三日目は帝都の冒険者ギルド本部に、渡したモンスター素材の買い取り金を受け取りに向かった。
 冒険者ギルドらしからぬ立派な建物のたたずまいに、少し緊張するカズをよそに、アレナリアは臆する事なくツカツカと入って行く。
 〝ユウヒの片腕〟が来たのに気付いたサイネリアが受付から出てきて、四人を個室へと案内した。
 四人が椅子に座ると、買い取り金を書いた紙をカズの前に置いた。

「こちらが先日お持ちくださった素材の買い取り額になります」

「いち…じゅう…ひゃく…せん…万……一桁多くありません?」

 サイネリアが提示してきた紙には、47,000,000GLと書かれていた。
 あまりの額の多さに間違いかと聞いたカズに、サイネリアが内訳を書いた別紙を見せて説明した。
 グラトニィ・ターマイトの卵二個で100,000GL。
 グラトニィ・ターマイトポーンが200,000GL。
 グラトニィ・ターマイト・ナイトと、グラトニィ・ターマイト・ルークが350,000GL。
 グラトニィ・ターマイト・キングが8,000,000GL。
 グラトニィ・ターマイト・クイーン・マザーが22,000,000GLで、その魔石コアが5,000,000GL。
 住壁鉱食大百足じゅうへきこうしょくおおむかでの一節が11,000,000GLだと。

「今回持ち込まれた素材は大変貴重な素材となりましたので、これだけ高額となりました」

「どうしてそんなに? いくらなんでも高額過ぎない?」

 カズより先にアレナリアがその疑問を、サイネリアに問い掛けた。
 今は無きセテロンがモンスターを兵器として造り出したとされるグラトニィ・ターマイトが、各種揃っていて状態が良いことだったのと、大きなコア魔石と卵があったことで、研究材料としてだけではなく、素材としても十分な価値があった。
 住壁鉱食大百足じゅうへきこうしょくおおむかでに関しては、魔力を含んだ様々な鉱物が見つかったのが大きな要因らしい。
 中にはミスリルやアダマンタイトも、少量ながら見つかったのだと。
 全ての素材が貴重であり、現在素材その物が不足しているから、これだけの金額になったとサイネリアは説明した。

「なるほど(アダマンタイトはダンジョン・ゴーレムから吸収したやつだろうな)」

「これで実力が証明されましたので、パーティー〝ユウヒの片腕〟をギルド本部に登録しました。依頼につきましては、こちらでご要望に添う依頼をご用意いたします。もちろん断ってもらっても構いません。ただし三度続けて断られますと、場合によってはギルド本部での登録を抹消して、ランクが下がる事にもなりかねませんので、ご了承ください」

「ちょっと面倒なのね」

「そうですね。でも報酬は地方のギルドで受ける依頼よりも高額になりますし、貴族の方々とお知り合いになれば、更に高額で指名依頼を受けることが出来ます」

「いえ、俺達は…」

「そうですよね。皆様は既に皇女様であられるレオラ様とお知り合いですもんね」

「ええ。だから今さら貴族と知り合いにならなくてもいいわ」

「次にお伝えすることは、ランクに関してです。パーティーランクをBに、カズ様はAランクに昇格です」

「Aランクになると、確かステータスを」

「それですがレオラ様の要望で、ステータスの開示はしなくて大丈夫です」

「レオラ様が?」

「はい。上の者が、守護者の称号を持つレオラ様が知っているならと」

「そうですか(いつの間にステータスを見られたんだ? それともハッタリか?)」

「買い取り金の方はどうしましょう。ギルド本部に登録された方であれば、お預かりすることも出来ます。もちろんいつでもお引き出し出来ますし、お預かりの手数料なども掛かったりはしません。レオラ様もお預けになられてます。金額の方はお教えすることは出来ませんが」

「それって他の冒険者ギルドでも、引き出せたりします?」

「帝国内でしたら、殆どのギルドで可能です。ただし金額に関しては、そのギルド運営費によって比例してしまいます。もちろん引き出されたお金は、ここ帝都のギルド本部がそのギルドに送ります」

「例えば地方の小さなギルドで、数百万を急に引き出すのは難しいと」

「そうなります。これは一部の冒険者だけが出来る事になりますので、地方の小さなギルドですと、ギルド職員からもやっかみを受ける事もあるかと」

「まあ、そうですよね。例えば装備もしてない冒険者らしからぬ格好をした俺がそれをしたら、なんであんな奴がとなりますよね」

「そうで…そのような事はないかと」

「……(冒険者らしからぬ俺の見た目から、本音が出そうになったな)」

「失礼しました」

 一瞬から笑いを浮かべたサイネリアだったが、自分の失言を無かった事にしてはいけないと、反省し謝罪した。
 カズは慣れていたので、特に気分を悪くする様なことはなかった。

「ギルドカードを持ってる冒険者の誰もが、それを使えれば便利じゃないの?」

「使う側からしたら便利だろうけど、それをやったら最低でも手数料とか何らかの料金は掛かるだろ。それに冒険者ギルドでそれをやったら、そういった仕…」

「すみません。そこからはわたくしが」

 アレナリアの疑問に答えているカズの話を遮り、サイネリアがギルド職員として説明をと買ってでた。
しおりを挟む
感想 84

あなたにおすすめの小説

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜

ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった! 謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。 教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。 勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。 元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。 力を持っていても順応できるかは話が別だった。 クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。 ※ご注意※ 初投稿、試作、マイペース進行となります。 作品名は今後改題する可能性があります。 世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。 旅に出るまで(序章)がすごく長いです。 他サイトでも同作を投稿しています。 更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。

若返ったオバさんは異世界でもうどん職人になりました

mabu
ファンタジー
聖女召喚に巻き込まれた普通のオバさんが無能なスキルと判断され追放されるが国から貰ったお金と隠されたスキルでお店を開き気ままにのんびりお気楽生活をしていくお話。 なるべく1日1話進めていたのですが仕事で不規則な時間になったり投稿も不規則になり週1や月1になるかもしれません。 不定期投稿になりますが宜しくお願いします🙇 感想、ご指摘もありがとうございます。 なるべく修正など対応していきたいと思っていますが皆様の広い心でスルーして頂きたくお願い致します。 読み進めて不快になる場合は履歴削除をして頂けると有り難いです。 お返事は何方様に対しても控えさせて頂きますのでご了承下さいます様、お願い致します。

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ
ファンタジー
 グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。  それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。  と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。  洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。  カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。

その無能、実は世界最強の魔法使い 〜無能と蔑まれ、貴族家から追い出されたが、ギフト《転生者》が覚醒して前世の能力が蘇った〜

蒼乃白兎
ファンタジー
15歳になると、人々は女神様からギフトを授かる。  しかし、アルマはギフトを何も授かることは出来ず、実家の伯爵家から無能と蔑まれ、追い出されてしまう。  だが実はアルマはギフトを授からなかった訳では無かった。  アルマは既にギフト《転生者》を所持していたのだ──。  実家から追い出された直後にギフト《転生者》が発動し、アルマは前世の能力を取り戻す。  その能力はあまりにも大きく、アルマは一瞬にして世界最強の魔法使いになってしまった。  なにせアルマはギフト《転生者》の能力を最大限に発揮するために、一度目の人生を全て魔法の探究に捧げていたのだから。  無能と蔑まれた男の大逆転が今、始まる。  アルマは前世で極めた魔法を利用し、実家を超える大貴族へと成り上がっていくのだった。

異世界転移した町民Aは普通の生活を所望します!!

コスモクイーンハート
ファンタジー
異世界転移してしまった女子高生の合田結菜はある高難度ダンジョンで一人放置されていた。そんな結菜を冒険者育成クラン《炎樹の森》の冒険者達が保護してくれる。ダンジョンの大きな狼さんをもふもふしたり、テイムしちゃったり……。 何気にチートな結菜だが、本人は普通の生活がしたかった。 本人の望み通りしばらくは普通の生活をすることができたが……。勇者に担がれて早朝に誘拐された日を境にそんな生活も終わりを告げる。 何で⁉私を誘拐してもいいことないよ⁉ 何だかんだ、半分無意識にチートっぷりを炸裂しながらも己の普通の生活の(自分が自由に行動できるようにする)ために今日も元気に異世界を爆走します‼ ※現代の知識活かしちゃいます‼料理と物作りで改革します‼←地球と比べてむっちゃ不便だから。 #更新は不定期になりそう #一話だいたい2000字をめどにして書いています(長くも短くもなるかも……) #感想お待ちしてます‼どしどしカモン‼(誹謗中傷はNGだよ?) #頑張るので、暖かく見守ってください笑 #誤字脱字があれば指摘お願いします! #いいなと思ったらお気に入り登録してくれると幸いです(〃∇〃) #チートがずっとあるわけではないです。(何気なく時たまありますが……。)普通にファンタジーです。

異世界キャンパー~無敵テントで気ままなキャンプ飯スローライフ?

夢・風魔
ファンタジー
仕事の疲れを癒すためにソロキャンを始めた神楽拓海。 気づけばキャンプグッズ一式と一緒に、見知らぬ森の中へ。 落ち着くためにキャンプ飯を作っていると、そこへ四人の老人が現れた。 彼らはこの世界の神。 キャンプ飯と、見知らぬ老人にも親切にするタクミを気に入った神々は、彼に加護を授ける。 ここに──伝説のドラゴンをもぶん殴れるテントを手に、伝説のドラゴンの牙すら通さない最強の肉体を得たキャンパーが誕生する。 「せっかく異世界に来たんなら、仕事のことも忘れて世界中をキャンプしまくろう!」

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

処理中です...