上 下
488 / 793
五章 テクサイス帝国編 2 魔導列車に乗って

471 村に住むフェアリー と お菓子作りの許可

しおりを挟む
 ◇◆◇◆◇


 翌日朝食を済ませたところで、村長の使いだという一人の村人が呼びに来た。
 村に住むフェアリーと会う事が出来るので、村長宅まで来てほしいと言われ、四人は呼びに来た村人に付いて行った。
 村長宅に着くと、呼びに来た村人は自分の仕事に行き、四人は村長宅へと入った。
 するとガザニアが来ており、立会人をしてもらうと村長から四人に伝えられ、村に住む妖精族フェアリーの『ラプフ』が来るのを待つ。

 ラプフが来るまで、昨夜ビワと相談して決めた話をする事にした。
 先ずアレナリアがガザニアに、ビワがやろうとしてる内容の話をし、レオラが村にしている事の邪魔にならないかを聞く。(あえて甘いお菓子等の作り方を教えてないとも限らないので)
 ガザニアから特に問題はないだろうと聞き、今度はビワ自ら村長に、子供達にお菓子をあげたいと言い、気に入ってもらえれば、ハチミツを使ったクッキーの作り教えたいと伝えたと。

「この村落は決して裕福でははいのですが、手軽に子供達にお菓子を与えられるなら、願ってもないことです。甘い物は殆どレオラ様が来た時にしか口に出来ませんので。村人が作れるようになれば、とてもいことです」

「いいってさビワ」

「はい」

「クッキー作りを覚えたい者を集めるように、村人達に話を通しておきましょう」

「お願いします。使わせてもらってる家で準備はしておきますので、来れる方は昼食後にと」

「わかりました」

「菓子など買ってくればいいだけなのに、わざわざ教えるなんて変わった連中だ」

 ビワのやる事を聞き、ガザニアが茶々を入れる。

「村長が言ったでしょ。ここの村はそれほど裕福ではないと。それに村を出て買い出しに行く人だって限られてるでしょうし(レオラの側近が、村長の前でそれを言うかね)」

「軟弱者がワタシに意見を言うだと」

「カズの言う通りでしょ。今のは、お金に不自由しない人の意見よ。もしかしてレオラも村で、そんな事言ってるんじゃ?」

「レオラ様はそんな御方ではない!」

「なら言葉には気を付けないと、主人レオラを辱しめる行為になるんじゃないの?」

 ガザニアはぐうの音も出なかった。

「っ……申し訳ない村長。軽はずみな発言をした」

 アレナリアに注意されたガザニアは、レオラの恥になってはと、村を代表する村長に謝罪した。
 ガザニアが頭を下げて謝罪するのを見て、村長は慌てて頭を上げるようにお願いする。
 村としては実際にレオラの名前で保護され、少しながら援助も受けているので、その程度言われても怒るような事ではなかったのだが、ガザニアが謝罪をした事で、村長はより一層レオラとガザニアに信頼を置くようになった。
 レオラの客人であっても、立場が上のガザニアに、ただの冒険者であるカズとアレナリアが、強く意見を述べ注意した出来事も大きく関わった。

 本来なら皇族のレオラを呼び捨てにしているのは不敬だと思ってしまうところだが、敬称を付けずに呼ぶのを、レオラが許してると村長に宛てた手紙に書いてあった事で、前日の初見から敬称を付けず呼び捨てにしていた事を、村長は不敬と思っていなかった。

「堅苦しい話してるのね」

 突如として上から声がし、その場に居た全員が天井を見上げて声の主を探した。

「お待たせ村長」

 天井のはりからふわりと飛び、レラの前まで降りて来る。

「初めまして。わたしはラプフ。村長からレオラ様の言伝を聞いたわ。わたしに聞きたい事があるんだって?」

 ラプフは手を出して握手を求める。
 それに応じてレラはギュッと手を握り返し、もう一方の手で一人一人指をさして紹介する。

「あちしレラ。隣がビワで、そっちがカズ。ガザニアっちの方に居るのがアレナリアね」

「聞いてる。あなたの仲間ね」

 ラプフは一人一人の顔を、じっくりと見定める。
 それぞれレラに紹介されると、ビワは会釈して、アレナリアは「よろしく」と軽く挨拶をした。
 カズも「こんにちは」と言いながら、聞いたことがあるような声だと、ラプフのことが気になっていた。

「あちしのことは、レラでいいよ~ん」

「そう。わたしもラプフでいいわ」

「んじゃ、よろしくね。ラプフちゃん」

「お仲間さんもラプフと呼んでくれていいわ。ただし敬称に『っち』とか、その『ちゃん』はやめてもらえる。小さな子供じゃないんだから」

「じゃあ……プゥちんか、ラップンか、ラプラプなんてどう?」

「ラプフでいいって言ってるでしょ」

「ええ~。それじゃあ、つまんないよ。なら、ツンケン?」

「つん…けん?」

「なんか話してたら、態度がツンケンしてるから」

「失礼よレラ。ごめんなさいラプフさん。レラはこういう性格なの」

 ビワに言われても、どれが良い? と、言わんばかりの表情で、ラプフの顔を見るレラ。

「最後は名前ですらないのね。もう最初ので良いわ(他のよりまし)」

 ビワの言葉を聞いたラプフは、この手の性格をしてる相手は、こういったどうでもよいことに限って何を言っても引かず、こちらが折れなければ、余計に面倒臭くなると悟り、自分が折れた。

「ビワさん助言ありがとう」

「レラなんかより礼儀正しいわね。同じフェアリーとは思えない」

「あちしだって礼儀くらい……」

「礼儀くらい、なに?」 

「えっと……」

「ないのね。わかってた」

「アレナリアは、一言ひとこと二言ふたこと三言ひみこと余計なの!」

「レラには負けるわ」

 せっかくレラ以外の妖精族フェアリーと会えたというのに、恒例の口喧嘩が始まる。

「こらッ。せっかくラプフさんが会ってくれたのに、ケンカするな。失礼だろう。そうであっても、アレナリアは思った事を口にしない。レラもだそ」

「ごめんなさい」

「ごめんな……そうであっても? カズも同じ様に思ってたっての!」

「あ、すまん。口が滑った」

「滑んな!」

「ふッ……アハハハハは!」

 三人のやり取りを見ていたラプフが、声を潜めクスクスと笑っていたが、耐えられなくなり、皆に聞こえるような大きな声で笑い出して、今度はラプフに注目が集まる。

「そんなに笑ってはならん。やめんかラプフ」

 客人に失礼だと、村長がラプフに注意する。

「だって、レオラ様からの手紙には、変わったパーティーだと書いてあったんでしょ。まさかとは思ったけど、こんなに面白いだなんて」

「レオラの手紙にはそう書いてあったの?」

 アレナリアが確認を取ると、言いづらそうにしながらも、村長は正直に答える。

「えーまあ、なんと言いますか。少々風変わりとは……」

「あなた方に対する警戒心は、少し解けたわ」

「これはあちし達的に、喜んでいいの?」

「いいんじゃないか。ちょっと複雑だけど」

「レラ。二人で話しましょうか?」

「そだね。ちょっくしラプフと行って来るよ」

「ああ。レラが変なこと言ったら、遠慮なく、怒ってもらって構わないから」

「なんなら、つねってもいいわよ」

「でも、強くはしないであげて」

 三者共レラが失礼な事を言うだろうと確信していた。

「そうね。もしそうなら、やらせてもらうわ」

「しなくていいから」

「アハハ。それはレラ次第ね」

「もう。ラプフまで」

「行きましょう」

 ラプフは楽しげにレラを誘い、二人で村長宅の開いた窓から外に出て行く。

「俺とビワはクッキー作りの準備をするから、アレナリアはここでレラが戻って来るのを待っててくれ。いいですか? 村長さん」

「ええ、どうぞ。ただし、わたしは昼まで染め物の仕事を手伝う事になっているので、出てしまいます。もちろん居てもらっても結構です」

「だって。どうするアレナリア?」

「レラのことだから、クッキーの匂いを嗅ぎ付けて、そっちに行くかも知れないけど」

「それは……あり得るな」

「まあいいわ。ガザニアと話でもして、ここで待たせてもらうわ」

「そうか。なら頼む。行こうかビワ」

「はい」

 カズとビワは村長宅を出て、借りている家屋に戻る。

「なぜワタシが?」

「どうせ暇でしょ。やる事といっても、私達の見張りなんでしょ」

「ええ、そう」

「今のみたいに、それぞれ別で行動した場合、誰か一人を監視するとしたらカズ。でも、ガザニアはカズが嫌い」

「ッ……そうだ」

「だったら、私を監視してるのが一番楽でしょ。レラはラプフと出てったし、ビワはカズと一緒」

 アレナリアの都合の言いように、説得されているのではとガザニアは思った。
 少々気に障ったところもあったが、今はそれが自分にとって最善だと考え、ガザニアはアレナリアを監視する事が自分の仕事だと割り切った。
しおりを挟む
感想 84

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

スキル盗んで何が悪い!

大都督
ファンタジー
"スキル"それは誰もが欲しがる物 "スキル"それは人が持つには限られた能力 "スキル"それは一人の青年の運命を変えた力  いつのも日常生活をおくる彼、大空三成(オオゾラミツナリ)彼は毎日仕事をし、終われば帰ってゲームをして遊ぶ。そんな毎日を繰り返していた。  本人はこれからも続く生活だと思っていた。  そう、あのゲームを起動させるまでは……  大人気商品ワールドランド、略してWL。  ゲームを始めると指先一つリアルに再現、ゲーマーである主人公は感激と喜び物語を勧めていく。  しかし、突然目の前に現れた女の子に思わぬ言葉を聞かさせる……  女の子の正体は!? このゲームの目的は!?  これからどうするの主人公!  【スキル盗んで何が悪い!】始まります!

王女の夢見た世界への旅路

ライ
ファンタジー
侍女を助けるために幼い王女は、己が全てをかけて回復魔術を使用した。 無茶な魔術の使用による代償で魔力の成長が阻害されるが、代わりに前世の記憶を思い出す。 王族でありながら貴族の中でも少ない魔力しか持てず、王族の中で孤立した王女は、理想と夢をかなえるために行動を起こしていく。 これは、彼女が夢と理想を求めて自由に生きる旅路の物語。 ※小説家になろう様にも投稿しています。

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜

ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった! 謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。 教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。 勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。 元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。 力を持っていても順応できるかは話が別だった。 クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。 ※ご注意※ 初投稿、試作、マイペース進行となります。 作品名は今後改題する可能性があります。 世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。 旅に出るまで(序章)がすごく長いです。 他サイトでも同作を投稿しています。 更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

聖女の紋章 転生?少女は女神の加護と前世の知識で無双する わたしは聖女ではありません。公爵令嬢です!

幸之丞
ファンタジー
2023/11/22~11/23  女性向けホットランキング1位 2023/11/24 10:00 ファンタジーランキング1位  ありがとうございます。 「うわ~ 私を捨てないでー!」 声を出して私を捨てようとする父さんに叫ぼうとしました・・・ でも私は意識がはっきりしているけれど、体はまだ、生れて1週間くらいしか経っていないので 「ばぶ ばぶうう ばぶ だああ」 くらいにしか聞こえていないのね? と思っていたけど ササッと 捨てられてしまいました~ 誰か拾って~ 私は、陽菜。数ヶ月前まで、日本で女子高生をしていました。 将来の為に良い大学に入学しようと塾にいっています。 塾の帰り道、車の事故に巻き込まれて、気づいてみたら何故か新しいお母さんのお腹の中。隣には姉妹もいる。そう双子なの。 私達が生まれたその後、私は魔力が少ないから、伯爵の娘として恥ずかしいとかで、捨てられた・・・  ↑ここ冒頭 けれども、公爵家に拾われた。ああ 良かった・・・ そしてこれから私は捨てられないように、前世の記憶を使って知識チートで家族のため、公爵領にする人のために領地を豊かにします。 「この子ちょっとおかしいこと言ってるぞ」 と言われても、必殺 「女神様のお告げです。昨夜夢にでてきました」で大丈夫。 だって私には、愛と豊穣の女神様に愛されている証、聖女の紋章があるのです。 この物語は、魔法と剣の世界で主人公のエルーシアは魔法チートと知識チートで領地を豊かにするためにスライムや古竜と仲良くなって、お力をちょっと借りたりもします。 果たして、エルーシアは捨てられた本当の理由を知ることが出来るのか? さあ! 物語が始まります。

処理中です...