人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ

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五章 テクサイス帝国編 2 魔導列車に乗って

463 久々の野宿 と 場所不明な目的地

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 降りる駅のあるシックス・タウン 町に入るまで、カズはまた窓の外に目を移し、流れる景色を見て残りの乗車時間を過ごした。


「……ふぇ?」

「寝起きの一言がそれ。夢でも見てたの?」

「……くぅ」

「寝ないで起きてレラ。降りるわよ」

「もうちょっと……」

「駄目だなこりゃ。しょうがない、俺が連れて行くよ。ビワは座…クッショクを」

「持ちました」

 魔導列車がシックス・タウンに入り三人を起こすが、レラだけは駅に着いても完全に目を覚まさず、カズが抱えて行く事に。
 駅員に冒険者ギルトと南の村の場所を聞いたが、魔導列車が通ってない小さな村のことは知らないと言われてしまった。
 しかもシックス・タウンには冒険者ギルトが無いと言われ、仕方なく駅周辺にある商店で聞く事にした。

 数軒聞き込みをした後、喫茶店に入って遅めの昼食を取る。
 ここでも南の村について聞くが、見ず知らずの相手には話せないという雰囲気を出され、結局目的地の情報は入らなかった。
 それから近くの商店を回って聞いてみたが、知っている様だったが口は重く、村の場所を教えてはもらえなかった。
 日が暮れる前に宿屋を探して泊まろうも、このシックス・タウンには宿屋が無かった。

「一軒くらい宿があってもいいのに」

「列車に乗れば帝都もすぐだからな。それにギルトの無いときたもんだ。住宅の町に降りて泊まる人は居ないんだろ。居たとしても、それはここに知り合いが住んでるとかじゃないか」

「どうします? カズさん」

「一般住宅地で野宿するわけにも……」

「だったら町を出て南に向かう? カズならマップのスキルがあるから、どこにあるかわかるでしょ」

「来たことないから、ハッキリとはわからない。少しでも視界に入れば、マップに表示されるんだが」

「? でもヒッコリーでは」

「列車の窓から遠くを見てたのもあって、ギリギリ表示内に反応が出たんだ(マップを介して探索スキルを使えば、表示外でも探れる……と、思った。たぶん)」

「ふ~ん。どっちにしても、南の村に向かうのは決まってるんだから行きましょう。シックス・タウンここじゃ馬車あしを確保出来そうにないから、どっちにしろ歩いて行かないとなならないでしょ。だったら結局野宿はするんだから」

「それはそうだが」

「数ヶ月ぶりだけど、二人とも野宿しても大丈夫よね?」

「大丈夫です。お二人が居れば安全です」

「えぇ~野宿するの。硬くてもベッドで寝たい」

「硬いと文句言うだろう」

「ビワが作ってくれた座布団クッションがあるからいいでしょ。さぁ、そうと決まれば町を出て、今日野宿する場所を探すわよ」

 急にアレナリアが仕切りだして先頭を歩いて行く。
 エイト・タウン程ではないが外壁が町を囲み、兵士が中と外を行き来する出入口を警備している。
 町の住人は安全の為に、おいそれと外壁の外に出ることは出来ないが、Bランクの冒険者であるカズとアレナリアが居る〝ユウヒの片腕〟は、ギルトカードを提示することで、町の外に出る事が出来る。
 場合によっては、レオラから渡されたメダルを見せれば、容易に通る事は出来るだろうが、町を出るだけのために使おうとは、カズもアレナリアも思わなかった。
 もしその為だけに使ったとしたら、レオラの呆れる顔が目に浮かぶ。

 四人がシックス・タウンを出て南に向かい、砂利道を二時間程歩くと、次第に日が低くなって来たので、野宿の準備に取り掛かった。
 薪になりそうな枝を探して集め、火を起こして夕食にする。

「嫌がってたわりには、小枝集め楽しそうね。レラ」

「なんかこの感じ、なつぅ~。的な」

「なつ……?」

「わかんないかなぁ? 砂漠とか広野とか、四人でわいわいしながら旅してた感じ」

「わいわいしてたのは、ほぼレラじゃなかったか? ビワに同意を求めても無理だろ」

「ねぇねぇカズ。そこはサラッと流して、楽しい旅の思い出を言うところでしょ。砂漠ではカニが美味しかったね。とか、リザードマンの村では、魚がお腹かいっぱい食べれて良かったとか、寒かったけど…」

「はいはい、おしまい。レラの話は、食べ物の事ばかり。皆が印象に残った事を話したいのなら、丸々と肥太った自分の事でも言ったら」

「なッ! アレナリアだって、バクバク食べて、ガブガブお酒のんでたじゃん」

「そんな事してないわよ」

「うっそだぁ。メリアスの家で二日酔いになってたじゃん」

「あれはお別れ会で、進められたからであって」

「嫌々じゃないんしょ」

「そこまで。明日も一日歩くんだから、早く飯食って寝る」

 段々と雰囲気が怪しくなって来たので、カズは二人の間に入り、喧嘩になる前に止めた。

「ここで寝るの? ゴツゴツしてて、背中が痛くなりそうなんだけど」

「こんな事なら、テントを探しとくべきだったわね」

「だな。でもまぁ、大丈夫」

 カズは【アイテムボックス】から馬車を出す。

馬車これがあるら、三人はここで寝ればいい」

「……ねぇねぇカズ」

「なんだレラ?」

「どうせだったら家を買って、それをアイテムボックスに入れたら? そうすれば野外でも快適にじゃん」

「良いわねそれ! さすがに人通りの多い街道じゃ目立つから無理だけど、こういった場所ならありよね」

「家を持ち運びって……(考えてもみなかった)」

 突拍子もないレラの提案に、カズ的にはアリかナシで言えばだった。

「お家を運ぶなんて、無理ですよねカズさん?」

「……出来ると思う。四人で住む一軒家程度なら(容量的には、貴族のでかい屋敷とかでも問題なく出来るけど、黙っておこう)」

「出来るんですか!」

「やった! なら家探しだね。あちしは…」

「待て待て、いくらすると思ってるんだ」

「知らな~い。でもカズはもう家買ったんだから、驚く事ないんじゃないの」

「王都のあの家は、曰く付きだったから安く買えたんだ。簡単に家なんて買えるか」

「王国で稼いだお金だったらあるんだよね。それで買えないの?」

「価値が同じなら買えなくもないと思うが、そうしたら旅そのものが大変になる」

「なんだ。ざんね~ん」

 何時かは家を持ち運びして旅を出来たらと、三人は夢を見る。
 ビワだけは現実離れした話に付いて行けなかった。


 ◇◆◇◆◇


 シックス・タウンを出て二日目の昼頃、一行は未だ見えない村を探して、南に向かって歩いていた。
 進行方向とその左には大小様々な丘があり、高い丘に上がってみなければ、その先がどうなっているかは分からない。

「あの向こうに村あるの? ここまで道らしい道も無かったんだよ。あちし疲れた。お腹すいた」

「俺が一番高い丘の上まで行って先を見て来るから、三人はここ休憩して昼飯にしててくれ」

 ビワが作り置きしたサンドイッチと、フルーツミルクを、カズが【アイテムボックス】から出して三人に渡した。

「私が行こうか? カズ」

「丘に上がれば視界が広がって、マップの表示範囲も広がる。だから俺が行って見て来る」

「わかった。ここで待ってる」

「近くに獣やモンスター反応は無いが、一応警戒はしてくれ」

「ええ」

 三人が昼食を取ってる間に、カズは一足先に丘へと向かった。
 進行方向にある一番高い丘まで上がり、周囲を見渡して地形を確かめる。
 北には遠くに出発したシックス・タウンの外壁と、丘の手前で昼食を取る三人の姿が見える。
 何やらアレナリアとレラが揉めてる様だが、いつもの事だとスルーして他の方角を確認する。
 西には少し離れた所から草原になっており、東には波のようにうねった低い丘がずっと続いてた。
 肝心の南には丘を越えた所から、20メートルから40メートル程の樹木が鬱蒼うっそうと茂った森が広がっていた。

「村なんか見えないんですけど(仕方ない。マップの範囲を広げて、人が集まってる反応を探すか。村が一ヶ所だけならいいんだが)」

 常時自分を中心として、半径50メートル程にしてる範囲を少しずつ広げ、およそ10キロにまでなった所で、三十人程の反応が出た。

「ここだな。距離的には今日中に着きそうだけど……(場所もわかったし、とりあえず三人の所に戻ろ)」

 村だと思われる場所を確かめたカズは【アイテムボックス】からタマゴサンドを出し、小高い丘を下りながら食べ歩き、丘の手前で待つ三人の元に戻って行く。
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