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五章 テクサイス帝国編 2 魔導列車に乗って

461 報告は疑いから驚愕に

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 ◇◆◇◆◇


「おはようビワ」

「おはようございます。アレナリアさん」

「カズはまだ起きてないのね。レラは朝食が出来たら匂いで起きて来るか」

「毎回ごはんの匂いで起きたりしないもん!」

「なんだ、起きたの。まだ朝食出来てないわよ。あ! それとも、漏らしたの?」

「漏らしてないよ! 一緒のベッドで寝てたんだから知ってるでしょ。それに一回起きて、おしっこしたもん」

「アレナリアさん、あまりレラをからかうと、カズさんが怒りますよ」

「それは……でも、たまにはカズに怒られるのも嫌じゃないかも。こう…ベッドに押し付けられて、お仕置きを……ムフフフ」 

 カズが起きて来ないと聞いて、何やらいらやしい妄想をするアレナリア。

「ビワァ~。カズは?」

 妄想して頬が緩んだアレナリアを完全に無視し、レラは朝食を作るビワの隣に移動する。

「カズさんはならまだ寝てるわよ。疲れてるのかしら? イタズラしたら駄目よレラ」

「疲れてる? やっぱり夜、どっか行ってたのかな?」

「カズさん出掛けてたの?」

「おしっこするのに起きたら、カズが出掛けるみたいだったんだよね。あちしの気のせいかと思ったけど、まだ起きないんじゃ、やっぱりどっか行ってたのかな?」

「それ本当なの?」

「あれ、エロいことを考えるのもういいの? アレナリア」

「え、エロいことなんて考えて……」

「否定しないんだ。エロエロじゃん」

「う、うっさいわよレラ! それより、カズが深夜に出掛けたって本当なの?」

「う~ん……たぶん。おしっこしに起きた時に、なんかそんな格好してたから。あちしに聞くより、カズを起こして聞いた方が早いよ」

「……そうね。ビワ朝食は?」

「もうすぐ出来ます」

「なら、私がカズを起こすわ」

 すぐ隣の部屋なのに、アレナリアはキッチンを小走りで出て、カズが寝ている長椅子の所に行く。
 先ずは何度か声を掛けて、目を覚ますか様子を見る。
 駄目だと今度は身体を少し揺する。
 それでも起きないと分かると「起きないなら、襲っちゃうわよ」と耳元で囁いて、ゆっくりとカズに股がり唇を近づける。
 少し前の妄想が引き金となり、アレナリアの息は次第に荒くなる。
  あと数センチで、二人の唇が重なるとというところで、危険を察知してカズが目を覚ました。

「……ん!」

「あ……お、おはようカズ。目覚めのキスを」

「ていッ!」

「ひゃっ!」

 カズは無理矢理上半身を起こし、乗っかっているアレナリアを床に落とした。

「痛った~い。ヒドいよカズ」

「朝っぱらから寝込みを襲う奴が言えることか!」

「あ~あ。思った通りの事やってる。見てよビワ。あちしの言った通りっしょ。ぷぷ~」

 起きたカズとアレナリアのやり取りを聞き、レラがビワと共に朝食の支度が出来たと呼びに来る。
 カズに怒られて、床に転がされてるアレナリアを見て、予想通りだとレラは笑った。

「笑っちゃ駄目よ。それにレラの方が怒られる事多いでしょ」

「それはそれ。これはこれ。ビワもあちしみたいに、しょっちゅう怒られれば気持ちがわかるよ」

「ビワが二人みたいに、いたずらじみた事するわけないだろ」

 まだ眠たかったカズだが、これ以上寝ていたら、何をされるか分からなかったので、起きることにした。
 カズはあくびをしながら、朝食が用意されてる隣の部屋に移動した。
 目を覚ますのに、ミントのようなスッキリとしたハーブティーをビワに淹れてもらい、それを飲んで眠気を飛ばす。

「そうだ。私達が寝た後どこかに行ったの? 出掛ける格好をしてたのを、レラが見たって言ってたけど」

 肝心なことを思い出したアレナリアは、口の中に残るパンをフルーツミルクで流し込んでカズに聞く。

「ん? ああ、それなんだけど、レオラからの仕事を終わらせて来たんだ」

「そうなんだ……今、なんて?」

「グラトニィ・ターマイトの討伐と回収を終わらせて来たって言ったの」

「え? は? なんで皆が寝てる深夜に?」

「昨夜寝付けなくてマップを見てたら、聞いてた場所より街に近づいてたから行って来たんだ」

「今日まで待てなかったの?」

「それだと、街のすぐ近くどころか、街の中に入った来てたかも知れない」

「だったら私を起こしてくれれば、一緒に行ったのに」

「聞いてた通りなら、それ程時間は掛からないと思ったんだ。違ったけどな」

「違った? グラトニィ・ターマイトって、どんなのだったの? シロアリなんでしょ」

「食事中にするような話じゃないから、食べ終わったら話す」

 朝食を済ませると、レラはうじゃうじゃわらわら系の話は聞きたくないと、カズはアレナリアと二人で寝室に移り、深夜宿屋を出てからグラトニィ・ターマイトを討伐して戻るまでの話をした。
 時折アレナリアの「二百体以上!?」「羽! 壁?」「大鎌に糸!? 8メートル!!」と、寝室から驚きの声が響いた。

「俺は報告に言って来る。三人は街でもぶらついて時間を潰しててくれ」

「なら、そうしようかしら」

「終わったら合流する」

「わかったわ」

 アレナリアに話を終えると、カズは木製食器店ギンコに向かった。
 店が見える辺りまで来ると路地裏に移り、裏口から店内に入った。
 カズが来たのを見て、これから討伐に向かうのかとギンナンは思った。

「早く向かわないと、街の近くまで来るぞ。それとも、何か問題でものか?」

「問題か、確かにな」

 不思議そうな顔をするギンナンに、仕事が終った事をカズは報告した。
 当然それを聞いたギンナンは『何言ってんだコイツ』という反応をしたので、カズはグラトニィ・ターマイト・クイーン・マザーの一部と、50センチ弱のコア魔石を【アイテムボックス】から出して見せた。

「! もしかして、夜中に北の方で少しだけ明るくなった後、地響きが起きたのはカズあんたの仕業……だよな」

 ギンナンの視線は、カズが持つコア魔石に釘付けになる。

「地響きが伝わったなら分かると思うが、聞いていた情報とかなり違ってた」

コアそれを見れば分かる。なぜ昨日の今日でコアそんな物を持ってるのか、詳しく聞かせてくれ」

 カズは何度も質問を受けながら、ギンナンに調査した各グラトニィ・ターマイトの特徴を話した。
 スキルと魔法とトレカ武器についても聞かれたが、そこは言葉を濁した。
 目の前の大きなコア魔石とカズの報告で、少々頭が混乱してしまい、言葉を濁されてあやふやになっても、しつこく質問する気にはなれなかった。

「それで、仕事が終った俺達は、これからどこに行けばいい?」

「四、五日待ってくれ。連絡して指示を仰ぐ(どう報告すりゃいいんだ……)」

 平然を装っているが、内心ギンナンは頭を抱えていた。

「わかった。様子を見て四、五日したら来る。それまでギルドで適当に依頼を受けてる」

「そうしててくれ」

 出したグラトニィ・ターマイト・クイーン・マザーの一部とコア魔石を【アイテムボックス】に戻し入れて、カズは店を出てギンナンの元を去る。
 思っていたよりも報告が長くなってしまい【マップ】で三人の居る場所を確認して合流する。
 その後、三人と街の飲食店で昼食を取り、午後はギルドで街の雑用の依頼を受けて、レラとビワのギルドカードの更新をする。
 掲示板に貼ってある依頼書には、ターマイトの緊急討伐依頼が出されていた。

「ただのターマイトね」

「そうだな(誰かに見られてた覚えはないし、ギンナンがギルドに連絡でもしたのかな?)」

 緊急の討伐依頼がグラトニィ・ターマイトではなく、通常のターマイトになっていた。
 その理由をカズ達が知るのは、後日の事だった。
 レオラに言われた仕事を終わらせてギンナンに報告はしたが、報酬お金が入った訳ではない。(カズが報酬は情報でと言ったのもあるかもしれないが)
 ギンナンの報告がレオラに届き、次の指示を受けるまでの五日程は、ギルドで依頼を受けて、宿代を稼がなければならなかった。
 帝国のお金をまだ持ってはいたが、移動の魔導列車代やらで、思ったよりも減りが早かったからだ。
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