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五章 テクサイス帝国編 2 魔導列車に乗って
455 仕えた姫の為に
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夕食もレオラの案内で、宿屋から程近い路地裏の店に行った。
やはりレオラの素性を知っているようで、五人を奥の個室に通して扉を閉めると、店主がレオラに頭を下げて敬語で挨拶をした。
「またか。その必要はないと、来る度に言ってあるだろ」
「自分の忠義の証だと、この挨拶だけでも御許しください。姫様」
「わかったが姫はよせ。アタシの柄じゃない」
「畏まりました。レオラ様」
「腹が減った。いつものを頼むぞ」
「すぐに御持ちします」
店主の男性は個室を出て調理場に戻り、入れ替わりで女性従業員が飲み物を持って来た。
それぞれの前に飲み物を置くと、やはり女性従業員も店主と同じ様に、レオラに挨拶して仕事に戻った。
「ここにはよく?」
「こちらの方面に来た時には寄る」
「二人とは親しそうだけど」
「アタシが冒険者になる前からだ」
レオラはリンゴ酒を一口飲み、二人との関係を話そうとした時に、いつもの料理が運ばれてきた。
50センチはある木製の楕円形プレートに、熱々で肉汁たっぷりのスパイスが効いた肉の塊と、その周りに大きく切られた数種類の野菜が並べられた豪快な料理。
レオラとレラを除いた三人は、明らかに重い料理を見てドン引きした。
カズ達の前にも同じ料理が並べられたが、量はレオラに出された半分程だったが、肉だけでも1キロ近くはあるんじゃないだろうかという量。
レラは興奮していたが、レオラの半分でもまだ多い料理見たアレナリアとビワは、完全に顔が引き攣っていた。
「カズは食えるだろうが、三人は無理して全部食う必要なないぞ。余ったらカズに食わせれば良い」
「ま、任せて(食え…るか? 食べるふりして、アイテムボックスに入れてしまおうかな)」
冷める前に出された料理を食べ、残りが三割程のところでリンゴ酒に口を付けて、周りに野菜で箸休めし、レオラは話の続きをした。
二人は元々レオラに使えていた近衛兵だったが、レオラが冒険者になる時に、条件として二人も冒険者登録をして、レオラとパーティーを組み警護をする事になった。
冒険者として活動している間の食事は、二人が率先して作っていたと。
レオラのレベルが上がるのが早く、二人はその強さに付いてけなくなってしまった。
レオラのパーティーメンバーとしてこのまま一緒に居たとしても、足手まといになるのが明らかだと二人は気付いた。
しかしレオラの元を離れて、近衛兵に戻ろうとはしなかった。
そこで冒険者の匂いが染み付いてしまった二人に、自分が気兼ねなく飲み食い出来る店を作ってくれとレオラに頼まれ事で、近衛兵を辞めて、現在この場所で飲食店を始めたのだとレオラは語った。
店で出される料理の殆どは、冒険者が野営で作るものに近しいもの。
だから店には、豪快な料理が多い。
その後同じ守護者のグリズとミゼットの話をしたり、話をしながら食事を取った。
食事を終えて宿屋に戻ろうとすると、店主の男性がレオラを呼び止めたので、カズ達は先に店を出て待った。
数分で出て来たレオラと共に、宿泊する宿屋に戻る途中話があると言われた。
ビワとレラの二人を先に宿泊する部屋に送り、カズとアレナリアはレオラの部屋に移動した。
「早速だが仕事だ」
「いきなりだな」
「さっきの店は、情報を得る場所でもあるんでしょ」
「アレナリアは察しがいい」
「こんな首都の端に、皇女行き付けの店を作るんだから、そのくらいの事は考えるでしょ」
信頼する元近衛兵に、自分が気兼ねなく食事が出来るだけの場所を作らせる訳がないと、アレナリアは聞いた時から感ずいていた。
「っで、仕事ってのは?」
「ヒッコリーに行ってくれ」
「ヒッコリー?」
「確かウッド・タウンの次に着く街だ。畜産の街じゃなくて、もう一方の」
「ああ、線路が分岐した先の。せっかく帝都に着いたのに逆戻りね」
「本来なら客人として、我が家に入ってもらってから、帝都で仕事をしてもらうつもりだったんだが、思ったより早く動き出したらしい」
「動き出した? 材木の街で誰かを捕まえるのか?」
「ギルドでモンスター討伐の依頼を受ける事だ」
「あれ? レオラからの仕事じゃないのか?」
「これも仕事の一つだ。討伐モンスターは行けばわかる。間に合えば緊急依頼が出てるはずだ」
「私達だけで行くのよね? レオラは何をするの?」
「アタシにだって用はある」
この性格で皇女で守護者の冒険者なら、自由気ままにしてるのだと、カズとアレナリアは思っていたので、以外な返しだった。
「もし私達が居なかったら、さっきの店の人達が代わりに行ってたってこと?」
「連中には店があって生活もあるんだ。そんな事まではさせない」
「なら各街に溶け込んで暮らす仲間が?」
「その辺は仕事が片付いたら、追い追い話す」
「追い追いって、今話しても…」
「もういいよアレナリア。このまま聞いても話す気はないんだろ」
「働きに期待してる」
「これだとなんか、私達レオラの家来みたいね」
「レオラの屋敷に厄介になると、端からはそう見えるんだろう。ところで、情報は貰えるんだろうか?」
「もちろん。報酬はこの件が片付き、アタシの屋敷に来てからだが」
「わかった。アレナリアもそれで良いか?」
「カズが良いならね」
アレナリアの了承を取り、カズはレオラに仕事の詳細を尋ねる。
「とりあえずは、さっき言った通りギルドで討伐依頼を受けて、表向き冒険者としての活動をしてくれ。追って連絡する」
「どうやって連絡取るんだ?」
「さっきの店みたいに、レオラの息が掛かった人が、各街に居るってことでしょ」
「その言い方だと、アタシが何か良からぬことを企んでるみたいだぞ」
「現状そう取ってもらっても構わないわ。レラとビワだってそう思ってるはず」
「おい、アレナリア。気分を悪くしたならすまないレオラ」
「慎重な考えだ。ただそう思ったのなら、どうしてここまで付いて来た?」
「カズが決めたから。それが私達の基準」
「アレナリアは男に尽くすタイプなのか? どちらかと言えば、ビワの方がそれだと思ったが」
「私達は他の男に興味なんてないの。カズだけ居れば」
恥ずかしくもなく、カズを中心とした考えを述べるアレナリア。
「そこまで言わすとは少し興味が出る。一度味わってみるのも一興か」
レオラは下から上へと、舐めるようにカズを見る。
「ちょ、ダメダメっ! カズはそんなに軽くないんだから。レオラなら他に幾らでも選べるでしょ」
「だからカズを選んでみたんだぞ。なんなら、今夜どうだ?」
「皇女が恥じらいもなく、何言ってんの! カズもハッキリと断りなさいよ!」
「冗談でもやめてくれ。勘違いしたアレナリアに、後ろから刺されかねん」
「ハッハッは! 悪い悪い。だが気が変わったらいつでも来い。一度くらいなら相手してやるぞ」
「皇女らしき上から目線! いや、そんなことはどうでもいい。冗談はもう止めてくれって言ってるだろ。早く連絡方法を教えてくれ。レオラ」
楽しそうに笑いながら、レオラは連絡場所を教えた。
「ヒッコリーの駅から二十分程歩いた所に、ギンコという小さな店がある。そこでお前達のパーティー名を言い、これを見せろ」
レオラは金と赤の、両面が異なる二色のメダルをカズに渡した。
金色の面には虎が、赤い面には獅子が彫刻されていた。
彫刻は細かく、とても手の込んだ作りになっている。
「それがアタシの使いだという印だ。絶対に無くすな。この意味はわかるだろ。それとそれを見せれば、ある程度の場所になら入れる。見せる相手を間違えるな。持っている者は限られているから、それを使って良からぬ事をしたらすぐにわかるぞ」
「返すよ。不意にそんな権力を持たさせれも困る」
「却下だ。アタシの仕事を手伝うんだ持ってろ。多用しなければいいだけの事だ。ビワとレラが仕事の邪魔になるようなら、アタシが連れて行くぞ」
「いやそれはいい。二人も連れて行く」
レオラに渡されたメダルを無くさないように、カズは【アイテムボックス】に渋々収納した。
「そうか。とりあえずこれで話は終わりだ。アタシはもう寝る。二人も部屋に戻っていいぞ」
レオラは手を振り、自分達の寝床に戻れと、カズとアレナリアを部屋から追い出す。
「勝手ね」
「明日出発前にでも聞けばいい。さあ部屋に戻ろう。二人が待ってる」
カズとアレナリアは、最上階のレオラの部屋を静かに出た。
やはりレオラの素性を知っているようで、五人を奥の個室に通して扉を閉めると、店主がレオラに頭を下げて敬語で挨拶をした。
「またか。その必要はないと、来る度に言ってあるだろ」
「自分の忠義の証だと、この挨拶だけでも御許しください。姫様」
「わかったが姫はよせ。アタシの柄じゃない」
「畏まりました。レオラ様」
「腹が減った。いつものを頼むぞ」
「すぐに御持ちします」
店主の男性は個室を出て調理場に戻り、入れ替わりで女性従業員が飲み物を持って来た。
それぞれの前に飲み物を置くと、やはり女性従業員も店主と同じ様に、レオラに挨拶して仕事に戻った。
「ここにはよく?」
「こちらの方面に来た時には寄る」
「二人とは親しそうだけど」
「アタシが冒険者になる前からだ」
レオラはリンゴ酒を一口飲み、二人との関係を話そうとした時に、いつもの料理が運ばれてきた。
50センチはある木製の楕円形プレートに、熱々で肉汁たっぷりのスパイスが効いた肉の塊と、その周りに大きく切られた数種類の野菜が並べられた豪快な料理。
レオラとレラを除いた三人は、明らかに重い料理を見てドン引きした。
カズ達の前にも同じ料理が並べられたが、量はレオラに出された半分程だったが、肉だけでも1キロ近くはあるんじゃないだろうかという量。
レラは興奮していたが、レオラの半分でもまだ多い料理見たアレナリアとビワは、完全に顔が引き攣っていた。
「カズは食えるだろうが、三人は無理して全部食う必要なないぞ。余ったらカズに食わせれば良い」
「ま、任せて(食え…るか? 食べるふりして、アイテムボックスに入れてしまおうかな)」
冷める前に出された料理を食べ、残りが三割程のところでリンゴ酒に口を付けて、周りに野菜で箸休めし、レオラは話の続きをした。
二人は元々レオラに使えていた近衛兵だったが、レオラが冒険者になる時に、条件として二人も冒険者登録をして、レオラとパーティーを組み警護をする事になった。
冒険者として活動している間の食事は、二人が率先して作っていたと。
レオラのレベルが上がるのが早く、二人はその強さに付いてけなくなってしまった。
レオラのパーティーメンバーとしてこのまま一緒に居たとしても、足手まといになるのが明らかだと二人は気付いた。
しかしレオラの元を離れて、近衛兵に戻ろうとはしなかった。
そこで冒険者の匂いが染み付いてしまった二人に、自分が気兼ねなく飲み食い出来る店を作ってくれとレオラに頼まれ事で、近衛兵を辞めて、現在この場所で飲食店を始めたのだとレオラは語った。
店で出される料理の殆どは、冒険者が野営で作るものに近しいもの。
だから店には、豪快な料理が多い。
その後同じ守護者のグリズとミゼットの話をしたり、話をしながら食事を取った。
食事を終えて宿屋に戻ろうとすると、店主の男性がレオラを呼び止めたので、カズ達は先に店を出て待った。
数分で出て来たレオラと共に、宿泊する宿屋に戻る途中話があると言われた。
ビワとレラの二人を先に宿泊する部屋に送り、カズとアレナリアはレオラの部屋に移動した。
「早速だが仕事だ」
「いきなりだな」
「さっきの店は、情報を得る場所でもあるんでしょ」
「アレナリアは察しがいい」
「こんな首都の端に、皇女行き付けの店を作るんだから、そのくらいの事は考えるでしょ」
信頼する元近衛兵に、自分が気兼ねなく食事が出来るだけの場所を作らせる訳がないと、アレナリアは聞いた時から感ずいていた。
「っで、仕事ってのは?」
「ヒッコリーに行ってくれ」
「ヒッコリー?」
「確かウッド・タウンの次に着く街だ。畜産の街じゃなくて、もう一方の」
「ああ、線路が分岐した先の。せっかく帝都に着いたのに逆戻りね」
「本来なら客人として、我が家に入ってもらってから、帝都で仕事をしてもらうつもりだったんだが、思ったより早く動き出したらしい」
「動き出した? 材木の街で誰かを捕まえるのか?」
「ギルドでモンスター討伐の依頼を受ける事だ」
「あれ? レオラからの仕事じゃないのか?」
「これも仕事の一つだ。討伐モンスターは行けばわかる。間に合えば緊急依頼が出てるはずだ」
「私達だけで行くのよね? レオラは何をするの?」
「アタシにだって用はある」
この性格で皇女で守護者の冒険者なら、自由気ままにしてるのだと、カズとアレナリアは思っていたので、以外な返しだった。
「もし私達が居なかったら、さっきの店の人達が代わりに行ってたってこと?」
「連中には店があって生活もあるんだ。そんな事まではさせない」
「なら各街に溶け込んで暮らす仲間が?」
「その辺は仕事が片付いたら、追い追い話す」
「追い追いって、今話しても…」
「もういいよアレナリア。このまま聞いても話す気はないんだろ」
「働きに期待してる」
「これだとなんか、私達レオラの家来みたいね」
「レオラの屋敷に厄介になると、端からはそう見えるんだろう。ところで、情報は貰えるんだろうか?」
「もちろん。報酬はこの件が片付き、アタシの屋敷に来てからだが」
「わかった。アレナリアもそれで良いか?」
「カズが良いならね」
アレナリアの了承を取り、カズはレオラに仕事の詳細を尋ねる。
「とりあえずは、さっき言った通りギルドで討伐依頼を受けて、表向き冒険者としての活動をしてくれ。追って連絡する」
「どうやって連絡取るんだ?」
「さっきの店みたいに、レオラの息が掛かった人が、各街に居るってことでしょ」
「その言い方だと、アタシが何か良からぬことを企んでるみたいだぞ」
「現状そう取ってもらっても構わないわ。レラとビワだってそう思ってるはず」
「おい、アレナリア。気分を悪くしたならすまないレオラ」
「慎重な考えだ。ただそう思ったのなら、どうしてここまで付いて来た?」
「カズが決めたから。それが私達の基準」
「アレナリアは男に尽くすタイプなのか? どちらかと言えば、ビワの方がそれだと思ったが」
「私達は他の男に興味なんてないの。カズだけ居れば」
恥ずかしくもなく、カズを中心とした考えを述べるアレナリア。
「そこまで言わすとは少し興味が出る。一度味わってみるのも一興か」
レオラは下から上へと、舐めるようにカズを見る。
「ちょ、ダメダメっ! カズはそんなに軽くないんだから。レオラなら他に幾らでも選べるでしょ」
「だからカズを選んでみたんだぞ。なんなら、今夜どうだ?」
「皇女が恥じらいもなく、何言ってんの! カズもハッキリと断りなさいよ!」
「冗談でもやめてくれ。勘違いしたアレナリアに、後ろから刺されかねん」
「ハッハッは! 悪い悪い。だが気が変わったらいつでも来い。一度くらいなら相手してやるぞ」
「皇女らしき上から目線! いや、そんなことはどうでもいい。冗談はもう止めてくれって言ってるだろ。早く連絡方法を教えてくれ。レオラ」
楽しそうに笑いながら、レオラは連絡場所を教えた。
「ヒッコリーの駅から二十分程歩いた所に、ギンコという小さな店がある。そこでお前達のパーティー名を言い、これを見せろ」
レオラは金と赤の、両面が異なる二色のメダルをカズに渡した。
金色の面には虎が、赤い面には獅子が彫刻されていた。
彫刻は細かく、とても手の込んだ作りになっている。
「それがアタシの使いだという印だ。絶対に無くすな。この意味はわかるだろ。それとそれを見せれば、ある程度の場所になら入れる。見せる相手を間違えるな。持っている者は限られているから、それを使って良からぬ事をしたらすぐにわかるぞ」
「返すよ。不意にそんな権力を持たさせれも困る」
「却下だ。アタシの仕事を手伝うんだ持ってろ。多用しなければいいだけの事だ。ビワとレラが仕事の邪魔になるようなら、アタシが連れて行くぞ」
「いやそれはいい。二人も連れて行く」
レオラに渡されたメダルを無くさないように、カズは【アイテムボックス】に渋々収納した。
「そうか。とりあえずこれで話は終わりだ。アタシはもう寝る。二人も部屋に戻っていいぞ」
レオラは手を振り、自分達の寝床に戻れと、カズとアレナリアを部屋から追い出す。
「勝手ね」
「明日出発前にでも聞けばいい。さあ部屋に戻ろう。二人が待ってる」
カズとアレナリアは、最上階のレオラの部屋を静かに出た。
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