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五章 テクサイス帝国編 1 大陸最大の国
442 魔導列車の料金
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鉱山側から街の中央方面へと歩き駅を探す。
クラフトの住人らしからぬ格好をした人が、多く来た方向に足を進めると駅舎を発見。
乗車券を買うため売り場に行き、出発時間と料金を確かめる。
売り場の駅員に聞くと、少し前に発車した魔導列車が最後で、今日のはもう来ないとのこと。
カズ達が初めての魔導列車だと知った駅員が、時間があるからと色々教えてくれた。
乗車券を含む料金が一番上から、特等車金貨十枚、一等車金貨五枚、二等車金貨一枚、乗車券のみ銀貨六枚から銀貨一枚となっていた。
これは基本の料金で、遠くに行けば当然料金は上がる。
乗車券に差があるのは、街から街への移動ではなく、街の中だけの移動に使う者もいるからだと。
一部区間を除き街から街への移動は、最低銀貨六枚から。
同じ街中だけを移動する場合は、一部区間を除き一駅銀貨一枚銀貨五枚だと。
小さな街なら駅は一ヶ所か二ヶ所、大きな街や都市になると五ヶ所から十ヶ所にもなるらしい。
大きな都市の場合は、街中専用の魔導列車が走ってるのだと。
ちなみにクラフトに駅は二ヶ所あり、現在居るのが最西端の駅。
次の魔導列車が来るのが二日後の朝に到着し、魔力を補給して昼前には発車すると。
とりあえず次の街まで行くことにして、二等車の料金を四人分金貨四枚を支払い、指定席付きの乗車券を受け取り駅舎を離れた。
少し遅めの昼食を適当な店で済ませ、魔導列車が到着するまでの二日滞在する宿屋を取る。
「久しぶりのもつ煮込みは、濃い味付けで美味しかった。火酒屋のおばちゃんが作ったもつ煮込みも良かったけど、今回の店もなかなか。あとは麦シュワがあれば、もっと良かったのに」
「昼間っからもつ煮込みを肴に、酒を呷らない」
「魚じゃないもん。もつだもん。それに昨日は少しだけにしたんだから、今日は飲ませてくれても良かったじゃん」
「今日はアレナリアで、明日はレラが二日酔いとか勘弁してくれ。それにここんとこ依頼を受けてないから、お金がな」
「もしかして宿に数日しか泊まれないとかまで?」
「そこまでじゃない。セテロンに入る前の湖で捕らえた盗賊と、そいつらが持ってた盗品を売ったろ。その買い取りと報酬とかで入ったお金も、結構減っちゃたんだ。バイアステッチに着いてから、全然稼いでないからさ。俺」
「あとどれくらい残ってるの?」
「金貨が三百枚くらいかな」
「でもまだ十分あるわね。私の持ってるのは、金貨が六十枚と銀貨が二十枚。二人合わせて金貨が四百枚足らず。贅沢しなければ全然大丈夫ね」
「だとは思うが」
「あとは私がギルドに行けば、捕らえた暗殺者連中の懸賞金と報酬が貰えるんでしょ」
「ああ。午前中までバイアステッチに居たのに、いきなりクラフトのギルドで受け取るのは不味い。せめて十日以上先じゃないと」
クラフトに来る前にバイアステッチの冒険者ギルドで、懸賞金と報酬を受け取って来るべきだったかと少し後悔する。
「別にあちし達が貧乏になったわけじゃないんでしょ? 無くなる前に依頼を受けて稼げばいいじゃん」
「私もパフさんから貰ったお給金があります」
ビワが自分の財布をカズに差し出す。
「それはビワが働いて稼いだお金だから好きに使って。今すぐなんとかしないとって訳じゃないからさ」
「そうよビワ。それに帝都に向かうからって、そこまで物価は上がらないわよ」
「心配かけるようなこと言ったけど、一応お金はあるにはあるんだ。ただ、オリーブ国の貨幣なんだよ。帝国でも同額で使えるかどうか。今更なんだが」
「あれ? 今まで使ってなかったっけ?」
「通った街のギルドで稼いだ報酬で色々と払えるようになってからは、使わなくなった。貨幣の大きさや絵柄も変わってきてたもんで」
今まで当たり前の様に使っていたので、アレナリアはそんなの気にも止めてなかった。
それも当然、アレナリアはオリーブ王国の領土から出た事はほぼなく、街に住むまでは人里離れた所で、一人で暮らしていたのだから。
レラはお金を使う事が殆どなかったので、貨幣の絵柄や大きさが変わってようが、使えればどうでもよかった。
ビワは買い物で慣れていたため、街が変われば売る品物も変わり、同じ物でも値段は変わるのは当たり前だと気付いていた。
なので貨幣が変わっても、然程驚きはしていなかった。
「当分は手持ちの帝国貨幣で大丈夫でしょ。オリーブ国の貨幣は、今度ギルドで聞いてみましょう」
「やっぱり含有率とか調べたりするのかな?」
「……アレナリア、がんゆうって?」
「金貨で例えると、銀や銅を混ぜて作られた純度の低いのがあったりするのよ。当然金の純度が高い方が高価で、銀や銅を多く混ぜて作られた金貨の方が価値が低いのよ」
「混ぜ物? それ偽金じゃないの?」
「一応国が作ってるから偽造貨幣でないのよ。でも新たに作られる貨幣…金貨なら金の純度が低くなってたら、その国の経済が下がってるって事になるわね。当然その国の貨幣価値と信頼も下がるわ」
「じゃあオリーブの金貨の、がんゆうりつ? が帝国の金貨より高ければ、同じ金貨でもいっぱい買えるってこと?」
「まあ、そんなとこね。国同士の取引か、名のある商人や冒険者なら、正当な価値で扱ってくれると思うのだけど、私達のパーティーランクだと厳しいわね。グリズの名を使えば別でしょうけど」
「今まで通り立ち寄った街で依頼を受けて、贅沢しなければそうそうなくなりはしないだろ」
「貨幣価値は折を見て調べましょう。それでいいわよねカズ?」
「そうだな(まだ金貨四百枚近くあるんだから、そこまで心配することじゃなかったか)」
「ビワとレラも貨幣価値を調べるまで、オリーブ国のお金は使わないようにして」
「わかりました」
「あちしが買い物する時は皆と一緒だから、使うことないかな」
「とりあえず明日は街でも見て歩るき、のんびり過ごそう。冒険者ギルドと鉱山方面行かなければ、気付かれることはないだろ。一日、二日で来れる距離だとは思ってないだろうし」
四人は二日後の魔導列車が到着するまで、クラフトの街を見て回る事にした。
◇◆◇◆◇
カズが目を覚ますと、珍しく朝から起きていたアレナリアのレラに、朝食は外で取るから先に宿屋の外で待つように言われ、部屋を追い出された。
カズは宿屋の外で、近くある店を見渡し物色して待った。
他の街から来たお客を相手にしてるのか、靴や鞄などの修理をする店があった。
各店には色々な事が書かれた紙が貼られている。
革靴がこの金額で即座に修理可。
引っ掛け穴の空いた鞄が新品同様に!
一時的ならこちらで、新しくするなら東の三番通りにある工房にどうぞ!
今なら下取りしてお安く!
もう一つ買うと次回の修理代が三割引きに! など様々。
宿屋の外で待つこと十数分、最初に出て来たのはイリュージョンで小人に見えるようになっているレラ。
続いてアレナリアとビワが宿屋から出て来る。
三人とも服が新しくなっていた。
アレナリアは冒険者として依頼を受け、戦闘とする場合もあるので、今までと同じ様な動きやすい格好をしている。
戦闘の邪魔になるからとお洒落な服装はせず、変わりに所々に小さな花の刺繍が施されていた。
レラは刺繍の入ったワンピースと、まだ肌寒いからと、パンツを組み合わせたシンプル格好。
ビワもワンピースかと思いきや、薄手の服にロングスカートを履き、上からトレンチコートを着ていた。
どうと言わんばかりに、アレナリアとレラはポーズを決める。
毎回新しい服を見せる際にするのが決まりなのだろうか?
「三人とも似合ってる。けど、いつの間に買ったんだ?」
「パフさんとメリアスさんが、内緒で作ってくれたの。クルエルはそれに刺繍しくれたのよ」
「へえ、さすがだね。そこらで売ってる物より良いじゃないか」
「でしょでしょ」
「私とアレナリアさんはこれだけなんですが、レラのはあと二着あるんですよ」
「あちしだけ三着もあるんだよ! 本当は最後にこれ着てお別れするつもりだったんだけど、アレナリアが二日酔いで」
「ぅ……わ、悪いと思ってるわよ」
アレナリアは痛いところを突かれ、レラに言い返せない。
「そんなこと言わないの。レラだって起きなかったでしょ」
「いやいや。そこは突っ込んじゃ駄目だよビワ」
「そ…そうなの?」
「あちしはいつのも事だから良いの」
「それこそ、いやいやだろ。それに自分で良い言うな。自分で」
段々と暖かくなってきそうだと感じたカズは、冷暖房機能があったっても、気温の高くなった街中で、流石にオーバーコートは着れないかと思った。
「このあとちょっと歩いて探すか(オーバーコートに施したような付与を、目立たない装備品にして、三人に持たせないと)」
「え? 何か探し物でもあるの?」
「ん……? 靴を新しくしたらどうかと思ってさ」
「そうね。馬車移動が多かったとはいえ、新しく変えないと、もうボロボロね」
「んじゃ、朝ごはん食べたら、靴や探しだ!」
「レラは必要ないんじゃないの? あんまり歩かないんだから」
「二人が買うなら、あちしも欲しいの! 服が新しくなっても、足元がボロかったら嫌じゃん」
「レラに合う靴が売ってるかな?」
「探す! 見つかるまで、あちし探すもん!」
「はぁ……。とりあえず朝飯食べて、靴屋を探そう。今日一日時間あるから」
四人は近くの食堂に入り朝食を済ませ、駅舎方面に移動する。
職人の街でも宿屋や駅舎周辺には、魔導列車の乗客を相手にした店が数多く軒を並べる。
靴屋を何軒か回り、それぞれ使いやすく気に入った靴を探して購入する。
職人と言うのは会ったこともない種族に合った物を、独自に調べて作ったりなんかもしているようで、レラの合う靴はそう簡単に見つからないと思っていたが、以外と早く見つかった……のだが「色が嫌ッ形が角張っていて可愛くない」と、昼を過ぎても探し回る羽目に。
結局買い物が終わったのは夕方近くになってしまっていた。
途中調理器具を売ってる店を見つけ、安い木製の食器を買った。
鍋やフライパンは焚き火の煤で黒くなってはいたが、まだ使えるので買い替えはしなかった。
どうせ新しくしても、焚き火で使えば外側は煤で黒くなってしまうのだからと。
前日お金の心配をしておきながら、何だかんだと色々と買ってしまった。
だが生活で使うものだから良しと、カズは自分に言い聞かせ、夕食を買って宿屋に戻り、一日を費やした買い物疲れを癒すため早く寝た。
クラフトの住人らしからぬ格好をした人が、多く来た方向に足を進めると駅舎を発見。
乗車券を買うため売り場に行き、出発時間と料金を確かめる。
売り場の駅員に聞くと、少し前に発車した魔導列車が最後で、今日のはもう来ないとのこと。
カズ達が初めての魔導列車だと知った駅員が、時間があるからと色々教えてくれた。
乗車券を含む料金が一番上から、特等車金貨十枚、一等車金貨五枚、二等車金貨一枚、乗車券のみ銀貨六枚から銀貨一枚となっていた。
これは基本の料金で、遠くに行けば当然料金は上がる。
乗車券に差があるのは、街から街への移動ではなく、街の中だけの移動に使う者もいるからだと。
一部区間を除き街から街への移動は、最低銀貨六枚から。
同じ街中だけを移動する場合は、一部区間を除き一駅銀貨一枚銀貨五枚だと。
小さな街なら駅は一ヶ所か二ヶ所、大きな街や都市になると五ヶ所から十ヶ所にもなるらしい。
大きな都市の場合は、街中専用の魔導列車が走ってるのだと。
ちなみにクラフトに駅は二ヶ所あり、現在居るのが最西端の駅。
次の魔導列車が来るのが二日後の朝に到着し、魔力を補給して昼前には発車すると。
とりあえず次の街まで行くことにして、二等車の料金を四人分金貨四枚を支払い、指定席付きの乗車券を受け取り駅舎を離れた。
少し遅めの昼食を適当な店で済ませ、魔導列車が到着するまでの二日滞在する宿屋を取る。
「久しぶりのもつ煮込みは、濃い味付けで美味しかった。火酒屋のおばちゃんが作ったもつ煮込みも良かったけど、今回の店もなかなか。あとは麦シュワがあれば、もっと良かったのに」
「昼間っからもつ煮込みを肴に、酒を呷らない」
「魚じゃないもん。もつだもん。それに昨日は少しだけにしたんだから、今日は飲ませてくれても良かったじゃん」
「今日はアレナリアで、明日はレラが二日酔いとか勘弁してくれ。それにここんとこ依頼を受けてないから、お金がな」
「もしかして宿に数日しか泊まれないとかまで?」
「そこまでじゃない。セテロンに入る前の湖で捕らえた盗賊と、そいつらが持ってた盗品を売ったろ。その買い取りと報酬とかで入ったお金も、結構減っちゃたんだ。バイアステッチに着いてから、全然稼いでないからさ。俺」
「あとどれくらい残ってるの?」
「金貨が三百枚くらいかな」
「でもまだ十分あるわね。私の持ってるのは、金貨が六十枚と銀貨が二十枚。二人合わせて金貨が四百枚足らず。贅沢しなければ全然大丈夫ね」
「だとは思うが」
「あとは私がギルドに行けば、捕らえた暗殺者連中の懸賞金と報酬が貰えるんでしょ」
「ああ。午前中までバイアステッチに居たのに、いきなりクラフトのギルドで受け取るのは不味い。せめて十日以上先じゃないと」
クラフトに来る前にバイアステッチの冒険者ギルドで、懸賞金と報酬を受け取って来るべきだったかと少し後悔する。
「別にあちし達が貧乏になったわけじゃないんでしょ? 無くなる前に依頼を受けて稼げばいいじゃん」
「私もパフさんから貰ったお給金があります」
ビワが自分の財布をカズに差し出す。
「それはビワが働いて稼いだお金だから好きに使って。今すぐなんとかしないとって訳じゃないからさ」
「そうよビワ。それに帝都に向かうからって、そこまで物価は上がらないわよ」
「心配かけるようなこと言ったけど、一応お金はあるにはあるんだ。ただ、オリーブ国の貨幣なんだよ。帝国でも同額で使えるかどうか。今更なんだが」
「あれ? 今まで使ってなかったっけ?」
「通った街のギルドで稼いだ報酬で色々と払えるようになってからは、使わなくなった。貨幣の大きさや絵柄も変わってきてたもんで」
今まで当たり前の様に使っていたので、アレナリアはそんなの気にも止めてなかった。
それも当然、アレナリアはオリーブ王国の領土から出た事はほぼなく、街に住むまでは人里離れた所で、一人で暮らしていたのだから。
レラはお金を使う事が殆どなかったので、貨幣の絵柄や大きさが変わってようが、使えればどうでもよかった。
ビワは買い物で慣れていたため、街が変われば売る品物も変わり、同じ物でも値段は変わるのは当たり前だと気付いていた。
なので貨幣が変わっても、然程驚きはしていなかった。
「当分は手持ちの帝国貨幣で大丈夫でしょ。オリーブ国の貨幣は、今度ギルドで聞いてみましょう」
「やっぱり含有率とか調べたりするのかな?」
「……アレナリア、がんゆうって?」
「金貨で例えると、銀や銅を混ぜて作られた純度の低いのがあったりするのよ。当然金の純度が高い方が高価で、銀や銅を多く混ぜて作られた金貨の方が価値が低いのよ」
「混ぜ物? それ偽金じゃないの?」
「一応国が作ってるから偽造貨幣でないのよ。でも新たに作られる貨幣…金貨なら金の純度が低くなってたら、その国の経済が下がってるって事になるわね。当然その国の貨幣価値と信頼も下がるわ」
「じゃあオリーブの金貨の、がんゆうりつ? が帝国の金貨より高ければ、同じ金貨でもいっぱい買えるってこと?」
「まあ、そんなとこね。国同士の取引か、名のある商人や冒険者なら、正当な価値で扱ってくれると思うのだけど、私達のパーティーランクだと厳しいわね。グリズの名を使えば別でしょうけど」
「今まで通り立ち寄った街で依頼を受けて、贅沢しなければそうそうなくなりはしないだろ」
「貨幣価値は折を見て調べましょう。それでいいわよねカズ?」
「そうだな(まだ金貨四百枚近くあるんだから、そこまで心配することじゃなかったか)」
「ビワとレラも貨幣価値を調べるまで、オリーブ国のお金は使わないようにして」
「わかりました」
「あちしが買い物する時は皆と一緒だから、使うことないかな」
「とりあえず明日は街でも見て歩るき、のんびり過ごそう。冒険者ギルドと鉱山方面行かなければ、気付かれることはないだろ。一日、二日で来れる距離だとは思ってないだろうし」
四人は二日後の魔導列車が到着するまで、クラフトの街を見て回る事にした。
◇◆◇◆◇
カズが目を覚ますと、珍しく朝から起きていたアレナリアのレラに、朝食は外で取るから先に宿屋の外で待つように言われ、部屋を追い出された。
カズは宿屋の外で、近くある店を見渡し物色して待った。
他の街から来たお客を相手にしてるのか、靴や鞄などの修理をする店があった。
各店には色々な事が書かれた紙が貼られている。
革靴がこの金額で即座に修理可。
引っ掛け穴の空いた鞄が新品同様に!
一時的ならこちらで、新しくするなら東の三番通りにある工房にどうぞ!
今なら下取りしてお安く!
もう一つ買うと次回の修理代が三割引きに! など様々。
宿屋の外で待つこと十数分、最初に出て来たのはイリュージョンで小人に見えるようになっているレラ。
続いてアレナリアとビワが宿屋から出て来る。
三人とも服が新しくなっていた。
アレナリアは冒険者として依頼を受け、戦闘とする場合もあるので、今までと同じ様な動きやすい格好をしている。
戦闘の邪魔になるからとお洒落な服装はせず、変わりに所々に小さな花の刺繍が施されていた。
レラは刺繍の入ったワンピースと、まだ肌寒いからと、パンツを組み合わせたシンプル格好。
ビワもワンピースかと思いきや、薄手の服にロングスカートを履き、上からトレンチコートを着ていた。
どうと言わんばかりに、アレナリアとレラはポーズを決める。
毎回新しい服を見せる際にするのが決まりなのだろうか?
「三人とも似合ってる。けど、いつの間に買ったんだ?」
「パフさんとメリアスさんが、内緒で作ってくれたの。クルエルはそれに刺繍しくれたのよ」
「へえ、さすがだね。そこらで売ってる物より良いじゃないか」
「でしょでしょ」
「私とアレナリアさんはこれだけなんですが、レラのはあと二着あるんですよ」
「あちしだけ三着もあるんだよ! 本当は最後にこれ着てお別れするつもりだったんだけど、アレナリアが二日酔いで」
「ぅ……わ、悪いと思ってるわよ」
アレナリアは痛いところを突かれ、レラに言い返せない。
「そんなこと言わないの。レラだって起きなかったでしょ」
「いやいや。そこは突っ込んじゃ駄目だよビワ」
「そ…そうなの?」
「あちしはいつのも事だから良いの」
「それこそ、いやいやだろ。それに自分で良い言うな。自分で」
段々と暖かくなってきそうだと感じたカズは、冷暖房機能があったっても、気温の高くなった街中で、流石にオーバーコートは着れないかと思った。
「このあとちょっと歩いて探すか(オーバーコートに施したような付与を、目立たない装備品にして、三人に持たせないと)」
「え? 何か探し物でもあるの?」
「ん……? 靴を新しくしたらどうかと思ってさ」
「そうね。馬車移動が多かったとはいえ、新しく変えないと、もうボロボロね」
「んじゃ、朝ごはん食べたら、靴や探しだ!」
「レラは必要ないんじゃないの? あんまり歩かないんだから」
「二人が買うなら、あちしも欲しいの! 服が新しくなっても、足元がボロかったら嫌じゃん」
「レラに合う靴が売ってるかな?」
「探す! 見つかるまで、あちし探すもん!」
「はぁ……。とりあえず朝飯食べて、靴屋を探そう。今日一日時間あるから」
四人は近くの食堂に入り朝食を済ませ、駅舎方面に移動する。
職人の街でも宿屋や駅舎周辺には、魔導列車の乗客を相手にした店が数多く軒を並べる。
靴屋を何軒か回り、それぞれ使いやすく気に入った靴を探して購入する。
職人と言うのは会ったこともない種族に合った物を、独自に調べて作ったりなんかもしているようで、レラの合う靴はそう簡単に見つからないと思っていたが、以外と早く見つかった……のだが「色が嫌ッ形が角張っていて可愛くない」と、昼を過ぎても探し回る羽目に。
結局買い物が終わったのは夕方近くになってしまっていた。
途中調理器具を売ってる店を見つけ、安い木製の食器を買った。
鍋やフライパンは焚き火の煤で黒くなってはいたが、まだ使えるので買い替えはしなかった。
どうせ新しくしても、焚き火で使えば外側は煤で黒くなってしまうのだからと。
前日お金の心配をしておきながら、何だかんだと色々と買ってしまった。
だが生活で使うものだから良しと、カズは自分に言い聞かせ、夕食を買って宿屋に戻り、一日を費やした買い物疲れを癒すため早く寝た。
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