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五章 テクサイス帝国編 1 大陸最大の国
437 ビワへの甘え と もう暫くの巣籠もり
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ビワの膝枕で寝ているだけでは物足りず、ビワの尻尾を抱き枕代わりにし、無意識とはいえ痛みを与えるほど強く抱いてしまったのが申し訳なさ過ぎて、平謝りするしかなかった。
「もう謝らないでください。嫌な夢でも見てたんですか? 寝汗をかいているみたいですけど」
「寝汗? あ……」
自分の衣服が湿っているのに、カズはようやく気付いた。
「ごめん。ビワは濡れてない? 汗臭かった?」
「大丈夫です。濡れてもないですし、臭いも気になりません」
「本当にごめん……」
カズの暗い表情を見て、ビワはとても心配する。
「どうかしたんですか? 昨日戻られてから、様子がおかしいように思えたんですが」
「ん? ああ、ちょっと……」
少し時間沈黙すると、カズが昨夜の出来事をビワに語りだした。
怒りに任せ、容易く人を殺めてしまいそうになった心の内を。
「カズさんでも怖いんですね。今までずっと見てきて、強い人だとばかり思ってました」
「元々俺は臆病者だよ。こんなステータスをしてるから強気でいられるだけで、本心は……って、こんなことビワに言っても困らせるだけだよな(何やってんだ俺は。仮眠のつもりが四時間以上寝てしまうは、ビワに心配かけるは)」
「そんなことないです! 私に出来ない事を、カズさんは沢山してくれました。助けてくれました。何が出来る訳ではないけれど、胸の内を聞くくらいなら私にだって。話すだけでも楽になるます。だからいつでも私に話して」
ビワの思わぬ熱弁に、カズの気持ちは少し楽になる。
「ありがとうビワ。その時はまたよろしく頼むよ」
「はい。いつでも話してください」
「そうだなぁ、出来ればビワの尻尾を抱えながらだと、もっと気持ちが楽になりそうなんだけどなぁ」
「し…しっぽを……」
うつ向くと左手の親指と人差し指を数センチ離し「す…少しだけなら。それでカズさんが安らぐなら、私は……」と、ビワがカズの提案を受け入れた。
「そ、そう…ありがとう(半分冗談のつもりだったんだけど。でもこれで、次からビワに話を聞いてもらう時は、尻尾をモフることが出来る)」
ひょんな事からビワのふわふわの柔らかい尻尾を、好きに撫で回すことが出来るというカズのちょっとした? 願望が叶なった……と、カズは都合の良く考えた。
もちろんビワからしたら、ちょこっとだけのつもりで言っているのだが、お互いの考えは大きく離れていた。
そしてカズが床からソファーに座り直すと、部屋の外から階段を駆け上がる足音が近付き、アレナリアが部屋に入ってきた。
「さてと、俺は買い出しに行ってこよう」
「お腹空いてないの? 寝てたからお昼食べてないでしょ」
「そんなに空いてない。腹が減ったら、適当に買って食べるさ」
カズはアレナリアとビワと一階に下り、メリアスから欲しい物を書いたメモとパフ宛の手紙を受け取り、店に居ないだろうと、自宅の場所を教えてもらった。
昨夜の出来事はまだ住人には知られておらず、街には何も変わらない日常がそこにはあった。
時間は昼をだいぶ過ぎたが、工場の仕事が終わる定時にはまだ早く、大通りや露店が建ち並ぶ通りも住人は少なくまばら。
パフ手芸店に着くも店は閉まっており、裏口に回るも中に人の居る気配はない。
カズはメリアスから教えられたパフの自宅へと足を向けた。
店から歩くこと十五分、着いたのは静かな通りに面した、小さな庭がある古い平屋。
「おや、カズさんじゃない」
玄関に向かおうとしていると、開いている窓からパフが顔を出し声を掛けてきた。
「メリアスさんにこちらを教えてもらって、ちょっと様子を見に」
「そうかい。ならそっちから入って、外にある椅子に座って待っててもらえるかい」
「じゃあ少しだけ、お邪魔します」
カズは植木を避けて庭に入り、外に置かれている小さなテーブルの横にある、二脚の椅子の片方に座り待つ。
二人分のハーブティーと請け菓子を持ち、パフが向かいの椅子に座る。
「安物だけど摘まんどくれ」
「いただきます」
ハーブティーを一口飲み、出されたハチミツ入りクッキーを摘まむ。
「今日来たのは、クルエルとメリアスが無事だってのを、知らせに来てくれたってとこかね」
「ええ。よくわかりましたね」
「ギルド職員から少し話を聞かせてもらったからね」
「今、二人の所にはビワとレラが。アレナリアは護衛として一緒に。家の外には国の兵士と冒険者も居ますので、安心してください」
「無事なら良かった。念の為に店は二、三日休みにした。プフルとグレーツには、道具の整備をするからって言ってあるんだよ。心配掛けたくないからね。ヤトコに会ったら口裏を会わせてもらうのに、残りの道具を持っていかないと」
「でしたらそれは俺が。道具はここにありますか? あれば持ってきます(昨日荷物置いて、急に鍛冶小屋を出たから説明しないとならないし)」
「そうかい。なら頼むよ」
「はい。それとこれはメリアスさんからの預かった手紙です」
「カズさんが無事だと知らせてくれただけで十分なんだがね。わざわざ手紙をよこすなんて、メリアスらしいね」
昨夜の出来事やプルドが毒殺された事等は話さず、カズはハーブティーを飲み終えて、メリアスからの手紙を渡すと、パフから道具を受け取り家を後にする。
まだ監視は付いてなさそうだな。
走って行けば夕食の買い物をして、メリアスさんの家に戻るには十分間に合うだろ。
ゲートを使えばすぐたが、今はやめておこう。
常にメリアスさんの家を【マップ】に表示させ注意しておけば、不審者が来た場合にゲートで移動して対象出来る。
早くヤトコさんに届けて戻って来ないと。
バイアステッチを出たカズは、ヤトコ鍛冶小屋に向かい走って行く。
当然ヤトコから「昨日急にどうしたんだ?」と聞かれた。
詳しくは後日説明をすると約束し、パフから預かった道具を渡して、口裏を合わせてくれるように頼んだ。
「了解だ。ワシは仕事に専念するとしよう」
「助かります。数日中には話せると思うので」
用を済ませたカズは、バイアステッチにとんぼ返りし、買い物をしてメリアスの家に戻る。
メリアスの家の外に居た男性冒険者が、女性冒険者二人に代わっていた。
引き継ぎはしっかりされていたため、カズが来ても怪しまれることはなかった。
話し掛けられたので少し相手をすると、アレナリアと一緒にハウリングウルフの討伐に行ったと聞かされた。
話し方からして二人の女性冒険者は、アレナリアを慕っているのが分かった。
「お待たせ」
「結構時間掛かったのね」
「パフさんの所に行った後で、ヤトコさんの所に行ったから」
「パフ姐さんどうでしたか?」
「心配してましたよ。でも無事だと聞いて安心してました」
「そうですか。早く会って、自分の口から話したいわ」
「無事なら良かったと。話す前に俺が行ったことで、それを知らせに来たとすぐにわかったみたいです。店は二、三日休みにすると言ってました。数日すれば会えますよ」
「あとはサブマスからの連絡待ちね」
「夕食の支度は私が手伝います」
ビワが率先して、メリアスの手伝いを買って出る。
「あちしはクルエルと遊んでるよ」
レラが居ることで、クルエルの表情も明るくなってきていた。
「俺は借りてる部屋に戻るよ」
「みんながここに居るんやから、カズさんも居てもらって構いませんよ」
出て行こうとするカズを引き留めるメリアス。
だが女性だけの家に泊まったとニラが知れば、カズに対する態度が余計に強くなると考えた。
「このまま泊まると、サブマスに何言われるやら」
考えてることがつい声に出てしまった。
「は?」
「いえこっちの事です。一応数日は外に出ないようサブマスから言われてるでしょうから、その間の買い物は俺が行きます。多目に買っておいたので、明日は昼前にくらいにまた来ます。頼んだぞアレナリア 」
「今度は大丈夫。任せて」
「迷惑かけるなよレラ」
「かけないも~ん」
「レラのおもり頼んだよビワ」
「はい」
「だから、かけないってば!」
カズは一人でメリアスの家を出て、借りている部屋に戻って行く。
「もう謝らないでください。嫌な夢でも見てたんですか? 寝汗をかいているみたいですけど」
「寝汗? あ……」
自分の衣服が湿っているのに、カズはようやく気付いた。
「ごめん。ビワは濡れてない? 汗臭かった?」
「大丈夫です。濡れてもないですし、臭いも気になりません」
「本当にごめん……」
カズの暗い表情を見て、ビワはとても心配する。
「どうかしたんですか? 昨日戻られてから、様子がおかしいように思えたんですが」
「ん? ああ、ちょっと……」
少し時間沈黙すると、カズが昨夜の出来事をビワに語りだした。
怒りに任せ、容易く人を殺めてしまいそうになった心の内を。
「カズさんでも怖いんですね。今までずっと見てきて、強い人だとばかり思ってました」
「元々俺は臆病者だよ。こんなステータスをしてるから強気でいられるだけで、本心は……って、こんなことビワに言っても困らせるだけだよな(何やってんだ俺は。仮眠のつもりが四時間以上寝てしまうは、ビワに心配かけるは)」
「そんなことないです! 私に出来ない事を、カズさんは沢山してくれました。助けてくれました。何が出来る訳ではないけれど、胸の内を聞くくらいなら私にだって。話すだけでも楽になるます。だからいつでも私に話して」
ビワの思わぬ熱弁に、カズの気持ちは少し楽になる。
「ありがとうビワ。その時はまたよろしく頼むよ」
「はい。いつでも話してください」
「そうだなぁ、出来ればビワの尻尾を抱えながらだと、もっと気持ちが楽になりそうなんだけどなぁ」
「し…しっぽを……」
うつ向くと左手の親指と人差し指を数センチ離し「す…少しだけなら。それでカズさんが安らぐなら、私は……」と、ビワがカズの提案を受け入れた。
「そ、そう…ありがとう(半分冗談のつもりだったんだけど。でもこれで、次からビワに話を聞いてもらう時は、尻尾をモフることが出来る)」
ひょんな事からビワのふわふわの柔らかい尻尾を、好きに撫で回すことが出来るというカズのちょっとした? 願望が叶なった……と、カズは都合の良く考えた。
もちろんビワからしたら、ちょこっとだけのつもりで言っているのだが、お互いの考えは大きく離れていた。
そしてカズが床からソファーに座り直すと、部屋の外から階段を駆け上がる足音が近付き、アレナリアが部屋に入ってきた。
「さてと、俺は買い出しに行ってこよう」
「お腹空いてないの? 寝てたからお昼食べてないでしょ」
「そんなに空いてない。腹が減ったら、適当に買って食べるさ」
カズはアレナリアとビワと一階に下り、メリアスから欲しい物を書いたメモとパフ宛の手紙を受け取り、店に居ないだろうと、自宅の場所を教えてもらった。
昨夜の出来事はまだ住人には知られておらず、街には何も変わらない日常がそこにはあった。
時間は昼をだいぶ過ぎたが、工場の仕事が終わる定時にはまだ早く、大通りや露店が建ち並ぶ通りも住人は少なくまばら。
パフ手芸店に着くも店は閉まっており、裏口に回るも中に人の居る気配はない。
カズはメリアスから教えられたパフの自宅へと足を向けた。
店から歩くこと十五分、着いたのは静かな通りに面した、小さな庭がある古い平屋。
「おや、カズさんじゃない」
玄関に向かおうとしていると、開いている窓からパフが顔を出し声を掛けてきた。
「メリアスさんにこちらを教えてもらって、ちょっと様子を見に」
「そうかい。ならそっちから入って、外にある椅子に座って待っててもらえるかい」
「じゃあ少しだけ、お邪魔します」
カズは植木を避けて庭に入り、外に置かれている小さなテーブルの横にある、二脚の椅子の片方に座り待つ。
二人分のハーブティーと請け菓子を持ち、パフが向かいの椅子に座る。
「安物だけど摘まんどくれ」
「いただきます」
ハーブティーを一口飲み、出されたハチミツ入りクッキーを摘まむ。
「今日来たのは、クルエルとメリアスが無事だってのを、知らせに来てくれたってとこかね」
「ええ。よくわかりましたね」
「ギルド職員から少し話を聞かせてもらったからね」
「今、二人の所にはビワとレラが。アレナリアは護衛として一緒に。家の外には国の兵士と冒険者も居ますので、安心してください」
「無事なら良かった。念の為に店は二、三日休みにした。プフルとグレーツには、道具の整備をするからって言ってあるんだよ。心配掛けたくないからね。ヤトコに会ったら口裏を会わせてもらうのに、残りの道具を持っていかないと」
「でしたらそれは俺が。道具はここにありますか? あれば持ってきます(昨日荷物置いて、急に鍛冶小屋を出たから説明しないとならないし)」
「そうかい。なら頼むよ」
「はい。それとこれはメリアスさんからの預かった手紙です」
「カズさんが無事だと知らせてくれただけで十分なんだがね。わざわざ手紙をよこすなんて、メリアスらしいね」
昨夜の出来事やプルドが毒殺された事等は話さず、カズはハーブティーを飲み終えて、メリアスからの手紙を渡すと、パフから道具を受け取り家を後にする。
まだ監視は付いてなさそうだな。
走って行けば夕食の買い物をして、メリアスさんの家に戻るには十分間に合うだろ。
ゲートを使えばすぐたが、今はやめておこう。
常にメリアスさんの家を【マップ】に表示させ注意しておけば、不審者が来た場合にゲートで移動して対象出来る。
早くヤトコさんに届けて戻って来ないと。
バイアステッチを出たカズは、ヤトコ鍛冶小屋に向かい走って行く。
当然ヤトコから「昨日急にどうしたんだ?」と聞かれた。
詳しくは後日説明をすると約束し、パフから預かった道具を渡して、口裏を合わせてくれるように頼んだ。
「了解だ。ワシは仕事に専念するとしよう」
「助かります。数日中には話せると思うので」
用を済ませたカズは、バイアステッチにとんぼ返りし、買い物をしてメリアスの家に戻る。
メリアスの家の外に居た男性冒険者が、女性冒険者二人に代わっていた。
引き継ぎはしっかりされていたため、カズが来ても怪しまれることはなかった。
話し掛けられたので少し相手をすると、アレナリアと一緒にハウリングウルフの討伐に行ったと聞かされた。
話し方からして二人の女性冒険者は、アレナリアを慕っているのが分かった。
「お待たせ」
「結構時間掛かったのね」
「パフさんの所に行った後で、ヤトコさんの所に行ったから」
「パフ姐さんどうでしたか?」
「心配してましたよ。でも無事だと聞いて安心してました」
「そうですか。早く会って、自分の口から話したいわ」
「無事なら良かったと。話す前に俺が行ったことで、それを知らせに来たとすぐにわかったみたいです。店は二、三日休みにすると言ってました。数日すれば会えますよ」
「あとはサブマスからの連絡待ちね」
「夕食の支度は私が手伝います」
ビワが率先して、メリアスの手伝いを買って出る。
「あちしはクルエルと遊んでるよ」
レラが居ることで、クルエルの表情も明るくなってきていた。
「俺は借りてる部屋に戻るよ」
「みんながここに居るんやから、カズさんも居てもらって構いませんよ」
出て行こうとするカズを引き留めるメリアス。
だが女性だけの家に泊まったとニラが知れば、カズに対する態度が余計に強くなると考えた。
「このまま泊まると、サブマスに何言われるやら」
考えてることがつい声に出てしまった。
「は?」
「いえこっちの事です。一応数日は外に出ないようサブマスから言われてるでしょうから、その間の買い物は俺が行きます。多目に買っておいたので、明日は昼前にくらいにまた来ます。頼んだぞアレナリア 」
「今度は大丈夫。任せて」
「迷惑かけるなよレラ」
「かけないも~ん」
「レラのおもり頼んだよビワ」
「はい」
「だから、かけないってば!」
カズは一人でメリアスの家を出て、借りている部屋に戻って行く。
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