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五章 テクサイス帝国編 1 大陸最大の国
433 心配するひとの元に
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リビングルームで安静にして、二人の心配をするメリアスの耳に話し声が聞こえた。
「メリアスさん」
自分の名前を呼び名がらリビングルームに入ってきたのは、クルエルと一緒に連れていかれたはずのアレナリア。
「! アレナリア…さん?」
「怪我は大丈夫?」
「え…ええ。カズさんが全部治してくれはりました」
「よかった。クルエルも居るわ。気を失ってて、私じゃ運べないの。手伝ってもらえる?」
「もちろ…」
急に立ち上がると、メリアスは眩暈起こす。
「これだけ血を流したんだから、立ちくらみを起こしたのね」
「もう、大丈夫。クルエルを」
廊下で気を失っているクルエルを抱え、メリアスはリビングルームに運ぶ。
「無事でよかった。いったいどうやって? カズさんは?」
「ごめんなさい。私、ギルドに行かないとならないから。大丈夫だと思うけど、家からは出ないで」
クルエルをメリアスに任せ、アレナリアはギルドに走る。
ギルドに飛び込んだアレナリアは、掲示板に貼られた暗殺者の手配書をはがし、受付の職員に見せて簡潔に説明をする。
にわかには信じられない様子のギルド職員だったが、ワイバーンを討伐したBランク冒険者の言う事だからと、すぐに上の者に話を付け、アレナリアの案内で廃工場に急ぎ向かう。
メリアスの家にはサブ・ギルドマスターと、二人のギルド職員が話を聞きに。
廃工場にはギルド職員三人と、ギルドに来ていたCランク以上の冒険者六人がアレナリアと共に向かっている。
アレナリアとクルエルをゲートでメリアスの家に移動させたあと、カズは気絶してるアヘンと廃工場の外で倒れてるロイドを拘束。
カズに殴られ顔が陥没した狼の獣人と、武器ごと両腕を斬られ蹴り飛ばされたモルフィは、辛うじて息はあったものの、毒煙にやられ死んでしまっていた。
拘束した二人と死んでしまった二人を一ヶ所集めると、唯一意識のある熊の獣人に、今回の事で知っている事を話させた。
熊の獣人はカズに恐怖し、質問されたこと素直に話した。
最初はただクルエルをプルドの元まで連れて行くだけだった。
それが失敗に終わり、もう一度だけチャンスをくれと狼の獣人が交渉したが受け入れられなかった。
だが翌日、街の外れで次の指示を待つ様にと、プルドの名前で滞在費が入った手紙が来たのだと。
そして二日前の夜に街の外に呼び出され、そこに行くと手配されている三人の暗殺者が居て、自分と狼の獣人以外は殺されたと。
クルエルを運ぶ際に自分が必要だと生かされ、狼の獣人はその気性の荒い性格から気に入られ、今回の拉致に積極的に加担してたらしい。
それにアレナリアに邪魔をされた事を、ずっと根に持っていたからだとも言った。
カズは最後に、途中で出て行った男について聞いた。
「知らない」
「依頼主のプルドとかいうアラクネの指示で来たんじゃないのか?」
「今日ここで初めて会ったんだ。そもそも本当に、今回の依頼主がプルドなのかも知らない。おれは殺されないために、コイツらの指示にしたがってたんだ。本当だ信じてくれ」
アレナリアと数名の反応が廃工場の外まで来たのにカズは気付いた。
「おとなしく捕まって、隠さずに全て話すことだ」
「わ、わかってる…ます」
熊の獣人は項垂れ、その表情は完全に後悔していた。
廃工場内の毒煙は殆ど外に飛んでいき、アレナリア達が到着する頃には、ガスマスクをしてなくても廃工場に入れるようになっていた。
「もう少ししたら、常駐する国の兵士が来るわ」
「そうか。俺は行く所がある」
「どこに?」
「コイツに指示してた奴の所だ」
「待って。こんな街中で広範囲に広がる危険な毒煙を使ったんだから、ギルドと連携して国の方も動くわ。あとは任せましょう(カズを一人で行かせては駄目)」
カズの袖を掴み、アレナリアは行かせまいとする。
「……わかった。国とギルドがどう対象するか様子を見る」
「この連中を吐かせれば、全て明らかになるわ。だからそんな顔しないで」
冷静になってるつもりだが、カズの怒りは収まってはおらず表情に出ていた。
「ビワとレラの所に戻りましょう。メリアスさんの家には、ギルドのサブマスが行ってるから大丈夫」
ビワとレラの顔が浮かび、カズの表情が少し和らぐ。
「そう…だな。二人の所に戻ろう」
アレナリアはそれを見て、ほっと胸を撫で下ろす。
「ここに来るまでに説明しておいたから、ギルド職員達に一言いって来るわね」
翌日話をすると説得して、アレナリアはカズと共にビワとレラの待つ部屋へと戻って行く。
廃工場を出ると強い雨は止んでいた。
水溜まりの多い通りを、避けようともせずに、カズとアレナリアは足下を濡らし歩いて行く。
バイアステッチの住人はすぐ近くに暗殺者が潜み、間近で多くの人々が死に至る毒が使われたと知るよしもなく、何時もと同じ日常が過ぎている。
メリアスとクルエルは冒険者ギルドから護衛が付き、手厚く保護されている。
廃工場で捕らえられた暗殺者のアヘンとロイドは、目を覚ますまで一時的に冒険者ギルドの牢で監視付きで捕らえられ、熊の獣人は冒険者ギルドで、兵士に事情聴取されていた。
◇◆◇◆◇
事件から一夜明け、アレナリアは何時もより遅く目を覚ました。
「おはようございます。アレナリアさん」
「おはようビワ。……カズは?」
「カズならギルドに行ってるよ」
「ギルドに?」
「今朝ギルド職員の方が来て、アレナリアさんとカズさんに昨日の話を聞きたいと」
「今日話すとは言ったけど、朝っぱらから呼びに来たの!?」
「捕まえた連中の聴取が終わったから、現場にいた二人に話を聞きたいんだって」
「それでカズが一人で?」
「アレナリアさんは疲れてるからと、カズさんが一人で」
「起こしてくれれば……私もすぐに行くわ」
アレナリアは急いで出掛ける準備をする。
「話をしたら一旦戻って来ると言ってましたから、アレナリアには待ってるように言われてます。それに、朝食がまだ」
部屋を出ようと支度したアレナリアのお腹が、大きくぐぅ~っと鳴る。
「ほらお腹は正直じゃん。座った座った」
「そ、そうね。戻って来るなら待ちましょう」
アレナリアは杖を置き、オーバーコートを脱いで椅子に掛け、一人遅めの朝食を取る。
昨夜の事もあり、パフ手芸店は本日臨時休業になった。
あの後ギルド職員が、パフにも話を聞きに行き、急きょ決めたことだった。
ビワには今朝来たギルド職員が、そのことを伝えていった。
アレナリアが起きて一時間程すると、カズが冒険者ギルドから戻って来る。
その表情は何時もと変わりはない様だが、気配というか雰囲気が若干暗く感じた。
それはアレナリアだけではなく、ビワも感じていたことだった。
「おはようアレナリア」
「お、おはようカズ」
「メリアスさんの家にサブマスが居るから、そっちに行って話をしてくれってギルドで言われた」
「そう、わかったわ。二人もクルエルのことが気になってるでしょ。たがら一緒に行きましょう」
「それがいい」
昨夜アレナリアとクルエルが危険な目にあったとビワとレラに話しはしたが、詳しくは教えてない。
四人は部屋を出てメリアスの家に行く。
メリアスの家の前には国の兵士が二人と、冒険者が二人屋外で警備をしている。
カズはメリアスの家に行くとギルドに話しており、連絡が既に通っていたので、すんなり? 中に入れた。
壊された扉の錠は新しく頑丈な物に変えられ、床に広がっていたメリアスの血はある程度拭き取られ、残ったり染みになったのはギルド職員の魔法できれいにされていた。
昨夜訪れたサブ・ギルドマスターが、念の為にと二人の護衛としてメリアスの家に残った。
バイアステッチの冒険者ギルドマスターとサブ・ギルドマスターは、街の特徴柄どちらも女性がしている。
メリアスの家に入るのは、女性職員だけと通達もしていたことで、警備をしている男性冒険者は、呼ばれたりしなければ屋内には入れない。
それはクルエルの事があっての計らいだった。
ただしメリアスを助けて、クルエルを救出したカズだけは、それに該当しなかった。
「メリアスさん」
自分の名前を呼び名がらリビングルームに入ってきたのは、クルエルと一緒に連れていかれたはずのアレナリア。
「! アレナリア…さん?」
「怪我は大丈夫?」
「え…ええ。カズさんが全部治してくれはりました」
「よかった。クルエルも居るわ。気を失ってて、私じゃ運べないの。手伝ってもらえる?」
「もちろ…」
急に立ち上がると、メリアスは眩暈起こす。
「これだけ血を流したんだから、立ちくらみを起こしたのね」
「もう、大丈夫。クルエルを」
廊下で気を失っているクルエルを抱え、メリアスはリビングルームに運ぶ。
「無事でよかった。いったいどうやって? カズさんは?」
「ごめんなさい。私、ギルドに行かないとならないから。大丈夫だと思うけど、家からは出ないで」
クルエルをメリアスに任せ、アレナリアはギルドに走る。
ギルドに飛び込んだアレナリアは、掲示板に貼られた暗殺者の手配書をはがし、受付の職員に見せて簡潔に説明をする。
にわかには信じられない様子のギルド職員だったが、ワイバーンを討伐したBランク冒険者の言う事だからと、すぐに上の者に話を付け、アレナリアの案内で廃工場に急ぎ向かう。
メリアスの家にはサブ・ギルドマスターと、二人のギルド職員が話を聞きに。
廃工場にはギルド職員三人と、ギルドに来ていたCランク以上の冒険者六人がアレナリアと共に向かっている。
アレナリアとクルエルをゲートでメリアスの家に移動させたあと、カズは気絶してるアヘンと廃工場の外で倒れてるロイドを拘束。
カズに殴られ顔が陥没した狼の獣人と、武器ごと両腕を斬られ蹴り飛ばされたモルフィは、辛うじて息はあったものの、毒煙にやられ死んでしまっていた。
拘束した二人と死んでしまった二人を一ヶ所集めると、唯一意識のある熊の獣人に、今回の事で知っている事を話させた。
熊の獣人はカズに恐怖し、質問されたこと素直に話した。
最初はただクルエルをプルドの元まで連れて行くだけだった。
それが失敗に終わり、もう一度だけチャンスをくれと狼の獣人が交渉したが受け入れられなかった。
だが翌日、街の外れで次の指示を待つ様にと、プルドの名前で滞在費が入った手紙が来たのだと。
そして二日前の夜に街の外に呼び出され、そこに行くと手配されている三人の暗殺者が居て、自分と狼の獣人以外は殺されたと。
クルエルを運ぶ際に自分が必要だと生かされ、狼の獣人はその気性の荒い性格から気に入られ、今回の拉致に積極的に加担してたらしい。
それにアレナリアに邪魔をされた事を、ずっと根に持っていたからだとも言った。
カズは最後に、途中で出て行った男について聞いた。
「知らない」
「依頼主のプルドとかいうアラクネの指示で来たんじゃないのか?」
「今日ここで初めて会ったんだ。そもそも本当に、今回の依頼主がプルドなのかも知らない。おれは殺されないために、コイツらの指示にしたがってたんだ。本当だ信じてくれ」
アレナリアと数名の反応が廃工場の外まで来たのにカズは気付いた。
「おとなしく捕まって、隠さずに全て話すことだ」
「わ、わかってる…ます」
熊の獣人は項垂れ、その表情は完全に後悔していた。
廃工場内の毒煙は殆ど外に飛んでいき、アレナリア達が到着する頃には、ガスマスクをしてなくても廃工場に入れるようになっていた。
「もう少ししたら、常駐する国の兵士が来るわ」
「そうか。俺は行く所がある」
「どこに?」
「コイツに指示してた奴の所だ」
「待って。こんな街中で広範囲に広がる危険な毒煙を使ったんだから、ギルドと連携して国の方も動くわ。あとは任せましょう(カズを一人で行かせては駄目)」
カズの袖を掴み、アレナリアは行かせまいとする。
「……わかった。国とギルドがどう対象するか様子を見る」
「この連中を吐かせれば、全て明らかになるわ。だからそんな顔しないで」
冷静になってるつもりだが、カズの怒りは収まってはおらず表情に出ていた。
「ビワとレラの所に戻りましょう。メリアスさんの家には、ギルドのサブマスが行ってるから大丈夫」
ビワとレラの顔が浮かび、カズの表情が少し和らぐ。
「そう…だな。二人の所に戻ろう」
アレナリアはそれを見て、ほっと胸を撫で下ろす。
「ここに来るまでに説明しておいたから、ギルド職員達に一言いって来るわね」
翌日話をすると説得して、アレナリアはカズと共にビワとレラの待つ部屋へと戻って行く。
廃工場を出ると強い雨は止んでいた。
水溜まりの多い通りを、避けようともせずに、カズとアレナリアは足下を濡らし歩いて行く。
バイアステッチの住人はすぐ近くに暗殺者が潜み、間近で多くの人々が死に至る毒が使われたと知るよしもなく、何時もと同じ日常が過ぎている。
メリアスとクルエルは冒険者ギルドから護衛が付き、手厚く保護されている。
廃工場で捕らえられた暗殺者のアヘンとロイドは、目を覚ますまで一時的に冒険者ギルドの牢で監視付きで捕らえられ、熊の獣人は冒険者ギルドで、兵士に事情聴取されていた。
◇◆◇◆◇
事件から一夜明け、アレナリアは何時もより遅く目を覚ました。
「おはようございます。アレナリアさん」
「おはようビワ。……カズは?」
「カズならギルドに行ってるよ」
「ギルドに?」
「今朝ギルド職員の方が来て、アレナリアさんとカズさんに昨日の話を聞きたいと」
「今日話すとは言ったけど、朝っぱらから呼びに来たの!?」
「捕まえた連中の聴取が終わったから、現場にいた二人に話を聞きたいんだって」
「それでカズが一人で?」
「アレナリアさんは疲れてるからと、カズさんが一人で」
「起こしてくれれば……私もすぐに行くわ」
アレナリアは急いで出掛ける準備をする。
「話をしたら一旦戻って来ると言ってましたから、アレナリアには待ってるように言われてます。それに、朝食がまだ」
部屋を出ようと支度したアレナリアのお腹が、大きくぐぅ~っと鳴る。
「ほらお腹は正直じゃん。座った座った」
「そ、そうね。戻って来るなら待ちましょう」
アレナリアは杖を置き、オーバーコートを脱いで椅子に掛け、一人遅めの朝食を取る。
昨夜の事もあり、パフ手芸店は本日臨時休業になった。
あの後ギルド職員が、パフにも話を聞きに行き、急きょ決めたことだった。
ビワには今朝来たギルド職員が、そのことを伝えていった。
アレナリアが起きて一時間程すると、カズが冒険者ギルドから戻って来る。
その表情は何時もと変わりはない様だが、気配というか雰囲気が若干暗く感じた。
それはアレナリアだけではなく、ビワも感じていたことだった。
「おはようアレナリア」
「お、おはようカズ」
「メリアスさんの家にサブマスが居るから、そっちに行って話をしてくれってギルドで言われた」
「そう、わかったわ。二人もクルエルのことが気になってるでしょ。たがら一緒に行きましょう」
「それがいい」
昨夜アレナリアとクルエルが危険な目にあったとビワとレラに話しはしたが、詳しくは教えてない。
四人は部屋を出てメリアスの家に行く。
メリアスの家の前には国の兵士が二人と、冒険者が二人屋外で警備をしている。
カズはメリアスの家に行くとギルドに話しており、連絡が既に通っていたので、すんなり? 中に入れた。
壊された扉の錠は新しく頑丈な物に変えられ、床に広がっていたメリアスの血はある程度拭き取られ、残ったり染みになったのはギルド職員の魔法できれいにされていた。
昨夜訪れたサブ・ギルドマスターが、念の為にと二人の護衛としてメリアスの家に残った。
バイアステッチの冒険者ギルドマスターとサブ・ギルドマスターは、街の特徴柄どちらも女性がしている。
メリアスの家に入るのは、女性職員だけと通達もしていたことで、警備をしている男性冒険者は、呼ばれたりしなければ屋内には入れない。
それはクルエルの事があっての計らいだった。
ただしメリアスを助けて、クルエルを救出したカズだけは、それに該当しなかった。
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