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五章 テクサイス帝国編 1 大陸最大の国
428 初出勤 と 道具作り
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◇◆◇◆◇
翌朝朝食を済ませると、アレナリアが一人先に部屋を出て、クルエルを迎えにメリアスの家に向かった。
それから少しして、ビワをパフ手芸店に送るために、まだ眠気眼のレラを抱えカズ達は部屋を出る。
レラは寝かせたままでもよかったが、ビワを送り届けたあと、カズはヤトコの居る鍛冶場に行くつもりだったので連れて来た。
「あとでヤトコさんを連れて来るから、パフさんに言っておいて(アレナリアはまだ来てないか)」
「はい」
「ふぁ~。ビワいってらあ~」
カズの背であくびをするレラを落とさないようにして、ヤトコの所に向かうため街を出る。
カズと入れ替わるように、アレナリアがクルエルを連れてパフ手芸店にやって来る。
ビワやグレーツ達は裏口から難なく入れるが、アラクネのクルエルには少々狭い。
脚を折り縮めれば入れなくもないが、扉を壊し兼ねないと、出勤したら店の正面から入るようにとパフから言われている。
開いていなければ、一度裏口から声を掛けるようにとも。
クルエルは店の正面に回り、改めて店に入り奥の部屋へと移動する。
「今日から一緒に仕事するクルエルだよ。昨日会ったからもう知ってるね」
「昨日ぶりクルっち」
「あ、はい」
「今日からよろしく」
「よろしく、お願いします。ビワさんもお願いします」
「こちらこそ、よろしく…お願いします」
「特に急ぎの仕事はないから、やることはグレーツに聞くと言い。わたしは店の方に出てるからね。プフルはこっちで仕事だよ。ここに四人は狭いからね」
「なんであーしだけ」
「サボりそうだからじゃないの」
「ひどいよグレーツちゃん」
一通り何時もの流れでプフルを注意すると、店側に二人奥の部屋に三人と別れて、この日の仕事に取り掛かった。
クルエルを送り届けたアレナリアは、何時ものごとく冒険者ギルドに行き、夕方まで終わる依頼を探す。
カズとレラは北に歩いて小一時間の所にある、鍛冶場に向かいバイアステッチを出る。
人目が無い街の外を歩いていると、レラが飛んで良いかと聞いてきた。
鍛冶場を行き来する人と何時出会すか分からない、だからとレラに飛ぶなとは言えない。
「そうだなぁ……だったら姿を鳥にでも変えるか」
「鳥に!?」
「もちろん見た目だけどな」
「なんだ。あちしが本当に鳥になるのかと思った」
「んなわけない。今と同じで、レラに変化があるわけじゃない。他人から見たら、そう見えるってだけ」
「なら良いよ。早くやって」
「はいよ」
カズは〈イリュージョン〉を掛け直し、レラが小人から鳥に見えるようにした。
「これで大丈夫だとは思うぞ。一応言っておくが、鳥に見えてるわけだから、話す場合は念話か、俺の肩に止まるかして小声でな」
「了解。ビュビュ~」
言った側か擬音を口にしながら、レラは上空を飛び回る。
幸いヤトコが居る鍛冶場まで誰とも会うことはなく、着いた頃にはレラは疲れたと言い、満足そうにしてカズに抱えられている。
出入口の低い位置にある木の扉を開け、二人は鍛冶場に入る。
「昨日は扉なんて無かったのに、夜の内に作ったのか?」
「お! なんだ来たのか」
「一応迎えに。炉の方はどうです?」
「大丈夫そうだ。試しに使えなくなった扉を加工して、そこの扉を作ったんだが、即席にしては良いだろ」
鍛冶場に出入りする扉は、木の板に鉄の縁が付けられ、石壁の穴にも鉄の枠が付けられており、両方を蝶番で繋がれている結構立派な扉だ。
「あの鉄枠は作ったんですか?」
「使えなくなった扉を使ったと言ったろ。それを小さくしたんだ。枠と扉の縁は、炉で熱して形を変えて大きさを合わせただけだ。モンスターに見つからないための一時凌ぎにはなるだろ」
「十分だと思いますが、ヤトコさん寝たんですか?」
「三時間くらい寝た」
「仕事に影響ないんですか?」
「鍛冶屋なんて二、三日寝ないでぶっ続けの仕事なんてざらだ。このくらいなんてことない」
「そうなんですか。でも、無理しないように。ここでは一人なんですから」
「そう思うなら、これからもたまに様子を見に来てくれ。食い物持って」
「そっちが目当てですか」
「数日分の買い出しも面倒なんでよ」
期待してると言わんばかりに、ヤトコは笑みを浮かべながら答える。
「ねぇねぇヤトコのおっちゃん。ビワ達の道具って、どれくらいで出来るの?」
「そうさなあ……鋏に針に毛抜きだろ。他にもあるが、鋏だけでも大小で最低二挺はいる。それに作っても、手に合うように調整も必要だから、一概に何日とは言えん」
「そんなに時間掛かるんだ」
武器や防具に比べて、もっとちゃちゃっと短時間で簡単に出来るのだと、レラは思っていたようだ。
「もし素材が足り無かったら、俺が取りに行ってきますから言ってください」
「いいのか? そんなに金は出せんぞ」
「せっかくビワの道具を作ってくれるなら、良い物にしてほしいですから。それくらいなら全然構いません。ただ、入手出来る場所がわかればの話ですが」
「ならその時は頼むとしよう」
「だったらあちしにも何か作ってよ」
「ん? なんだ裁縫道具が欲しいのか? だが、そこまで小さいのは難しいな」
「裁縫道具じゃなくて、あちし専用の武器が欲しいな。持ってないから」
「武器か。それでも難しい注文だな」
「こらこら、勝手に話を進めるなレラ」
急に武器が欲しいと言い出すレラをカズは止める。
「あちしだけ武器持ってないんだもん」
「ビワだって持ってないだろ」
「ほら、あちし一人で勝手に出歩くときあるじゃん」
「それ自分で言うか……?」
「だから護身用にね。小さい剣でもいいからなんか欲しいの」
「護身用ねえ(万が一の場合を考えて、懐にしまえるくらいの物なら……ってそれだと、針でいいんじゃないか?)」
レラはおもちゃを欲しがる子供の様な顔をしてカズを見上げる。
「って事なんですが、レラに扱えそうなの作ってもらえますか?」
「おう、任せとけ」
「やったー!」
レラは鍛冶場内を飛び回り喜ぶ。
「優先はビワ達ので、レラのは後回しだからな」
「いいよいいよ。作ってくれるなら」
「よし話は決まった。んじゃパフの店に行くか。手入れをする道具の回収と、新しく作る道具の使い手を見ないとならんからよ」
ヤトコの支度を待ち、三人はバイアステッチに戻って行く。
途中でこれは使えないかと、カズは【アイテムボックス】から鉱山のダンジョンで手に入れた、住壁鉱食大百足の一節を取り出し見せた。
「これがあの大百足の」
ヤトコは出された素材を叩いたり触ったりして調べる。
「無理だ。わかってはいたが、色々な鉱石を取り込んで出来た特殊な素材になってる。ワシには加工できん」
「そうですか(これどうしよう。錬金術のスキルでなんとか出来るかな?)」
「鍛冶屋組合に持ってくか、冒険者ギルドで調べてもらえば、加工出来る者が見つかるだろうが。まあなんだ、こんだけ珍しい素材だ、売ってくれと言われるだろうし、出所も聞かれるだろ」
「ですよね(やっぱ自分でなんとかするか、アイテムボックスの肥やしだな)」
住壁鉱食大百足の一節を、カズは【アイテムボックス】に戻し入れる。
バイアステッチに近づいたので、レラの姿を小人に見える様にする。
先ずは腹ごしらえだと、ヤトコは飲食店通りに足を進めた。
時間は昼少し前、まだそこまでは混んでなかったので、手早く食事を済ますことが出来た。
カズとレラも一緒に早めの昼食にした。
パフ手芸店に着くと、丁度昼休みの時間になった。
ビワだけではなくクルエルの分の道具も作るため、ヤトコは二人の休憩時間を少し貰い、手の大きさ等を調べる。
数日したら試作を幾つか作り持ってる来ると言い、手入れが必要な道具をパフから受け取り手芸店を出た。
レラをビワの所に置いて、カズは荷物持ちとして数日間のヤトコの食料と、パフから受け取った道具を持ち、少し前まで居た鍛冶場へと戻る。
ヤトコを鍛冶場まで送り届けると、鍛冶仕事に集中できるよう、カズは預かった荷物を置きバイアステッチにとんぼ返りする。
翌朝朝食を済ませると、アレナリアが一人先に部屋を出て、クルエルを迎えにメリアスの家に向かった。
それから少しして、ビワをパフ手芸店に送るために、まだ眠気眼のレラを抱えカズ達は部屋を出る。
レラは寝かせたままでもよかったが、ビワを送り届けたあと、カズはヤトコの居る鍛冶場に行くつもりだったので連れて来た。
「あとでヤトコさんを連れて来るから、パフさんに言っておいて(アレナリアはまだ来てないか)」
「はい」
「ふぁ~。ビワいってらあ~」
カズの背であくびをするレラを落とさないようにして、ヤトコの所に向かうため街を出る。
カズと入れ替わるように、アレナリアがクルエルを連れてパフ手芸店にやって来る。
ビワやグレーツ達は裏口から難なく入れるが、アラクネのクルエルには少々狭い。
脚を折り縮めれば入れなくもないが、扉を壊し兼ねないと、出勤したら店の正面から入るようにとパフから言われている。
開いていなければ、一度裏口から声を掛けるようにとも。
クルエルは店の正面に回り、改めて店に入り奥の部屋へと移動する。
「今日から一緒に仕事するクルエルだよ。昨日会ったからもう知ってるね」
「昨日ぶりクルっち」
「あ、はい」
「今日からよろしく」
「よろしく、お願いします。ビワさんもお願いします」
「こちらこそ、よろしく…お願いします」
「特に急ぎの仕事はないから、やることはグレーツに聞くと言い。わたしは店の方に出てるからね。プフルはこっちで仕事だよ。ここに四人は狭いからね」
「なんであーしだけ」
「サボりそうだからじゃないの」
「ひどいよグレーツちゃん」
一通り何時もの流れでプフルを注意すると、店側に二人奥の部屋に三人と別れて、この日の仕事に取り掛かった。
クルエルを送り届けたアレナリアは、何時ものごとく冒険者ギルドに行き、夕方まで終わる依頼を探す。
カズとレラは北に歩いて小一時間の所にある、鍛冶場に向かいバイアステッチを出る。
人目が無い街の外を歩いていると、レラが飛んで良いかと聞いてきた。
鍛冶場を行き来する人と何時出会すか分からない、だからとレラに飛ぶなとは言えない。
「そうだなぁ……だったら姿を鳥にでも変えるか」
「鳥に!?」
「もちろん見た目だけどな」
「なんだ。あちしが本当に鳥になるのかと思った」
「んなわけない。今と同じで、レラに変化があるわけじゃない。他人から見たら、そう見えるってだけ」
「なら良いよ。早くやって」
「はいよ」
カズは〈イリュージョン〉を掛け直し、レラが小人から鳥に見えるようにした。
「これで大丈夫だとは思うぞ。一応言っておくが、鳥に見えてるわけだから、話す場合は念話か、俺の肩に止まるかして小声でな」
「了解。ビュビュ~」
言った側か擬音を口にしながら、レラは上空を飛び回る。
幸いヤトコが居る鍛冶場まで誰とも会うことはなく、着いた頃にはレラは疲れたと言い、満足そうにしてカズに抱えられている。
出入口の低い位置にある木の扉を開け、二人は鍛冶場に入る。
「昨日は扉なんて無かったのに、夜の内に作ったのか?」
「お! なんだ来たのか」
「一応迎えに。炉の方はどうです?」
「大丈夫そうだ。試しに使えなくなった扉を加工して、そこの扉を作ったんだが、即席にしては良いだろ」
鍛冶場に出入りする扉は、木の板に鉄の縁が付けられ、石壁の穴にも鉄の枠が付けられており、両方を蝶番で繋がれている結構立派な扉だ。
「あの鉄枠は作ったんですか?」
「使えなくなった扉を使ったと言ったろ。それを小さくしたんだ。枠と扉の縁は、炉で熱して形を変えて大きさを合わせただけだ。モンスターに見つからないための一時凌ぎにはなるだろ」
「十分だと思いますが、ヤトコさん寝たんですか?」
「三時間くらい寝た」
「仕事に影響ないんですか?」
「鍛冶屋なんて二、三日寝ないでぶっ続けの仕事なんてざらだ。このくらいなんてことない」
「そうなんですか。でも、無理しないように。ここでは一人なんですから」
「そう思うなら、これからもたまに様子を見に来てくれ。食い物持って」
「そっちが目当てですか」
「数日分の買い出しも面倒なんでよ」
期待してると言わんばかりに、ヤトコは笑みを浮かべながら答える。
「ねぇねぇヤトコのおっちゃん。ビワ達の道具って、どれくらいで出来るの?」
「そうさなあ……鋏に針に毛抜きだろ。他にもあるが、鋏だけでも大小で最低二挺はいる。それに作っても、手に合うように調整も必要だから、一概に何日とは言えん」
「そんなに時間掛かるんだ」
武器や防具に比べて、もっとちゃちゃっと短時間で簡単に出来るのだと、レラは思っていたようだ。
「もし素材が足り無かったら、俺が取りに行ってきますから言ってください」
「いいのか? そんなに金は出せんぞ」
「せっかくビワの道具を作ってくれるなら、良い物にしてほしいですから。それくらいなら全然構いません。ただ、入手出来る場所がわかればの話ですが」
「ならその時は頼むとしよう」
「だったらあちしにも何か作ってよ」
「ん? なんだ裁縫道具が欲しいのか? だが、そこまで小さいのは難しいな」
「裁縫道具じゃなくて、あちし専用の武器が欲しいな。持ってないから」
「武器か。それでも難しい注文だな」
「こらこら、勝手に話を進めるなレラ」
急に武器が欲しいと言い出すレラをカズは止める。
「あちしだけ武器持ってないんだもん」
「ビワだって持ってないだろ」
「ほら、あちし一人で勝手に出歩くときあるじゃん」
「それ自分で言うか……?」
「だから護身用にね。小さい剣でもいいからなんか欲しいの」
「護身用ねえ(万が一の場合を考えて、懐にしまえるくらいの物なら……ってそれだと、針でいいんじゃないか?)」
レラはおもちゃを欲しがる子供の様な顔をしてカズを見上げる。
「って事なんですが、レラに扱えそうなの作ってもらえますか?」
「おう、任せとけ」
「やったー!」
レラは鍛冶場内を飛び回り喜ぶ。
「優先はビワ達ので、レラのは後回しだからな」
「いいよいいよ。作ってくれるなら」
「よし話は決まった。んじゃパフの店に行くか。手入れをする道具の回収と、新しく作る道具の使い手を見ないとならんからよ」
ヤトコの支度を待ち、三人はバイアステッチに戻って行く。
途中でこれは使えないかと、カズは【アイテムボックス】から鉱山のダンジョンで手に入れた、住壁鉱食大百足の一節を取り出し見せた。
「これがあの大百足の」
ヤトコは出された素材を叩いたり触ったりして調べる。
「無理だ。わかってはいたが、色々な鉱石を取り込んで出来た特殊な素材になってる。ワシには加工できん」
「そうですか(これどうしよう。錬金術のスキルでなんとか出来るかな?)」
「鍛冶屋組合に持ってくか、冒険者ギルドで調べてもらえば、加工出来る者が見つかるだろうが。まあなんだ、こんだけ珍しい素材だ、売ってくれと言われるだろうし、出所も聞かれるだろ」
「ですよね(やっぱ自分でなんとかするか、アイテムボックスの肥やしだな)」
住壁鉱食大百足の一節を、カズは【アイテムボックス】に戻し入れる。
バイアステッチに近づいたので、レラの姿を小人に見える様にする。
先ずは腹ごしらえだと、ヤトコは飲食店通りに足を進めた。
時間は昼少し前、まだそこまでは混んでなかったので、手早く食事を済ますことが出来た。
カズとレラも一緒に早めの昼食にした。
パフ手芸店に着くと、丁度昼休みの時間になった。
ビワだけではなくクルエルの分の道具も作るため、ヤトコは二人の休憩時間を少し貰い、手の大きさ等を調べる。
数日したら試作を幾つか作り持ってる来ると言い、手入れが必要な道具をパフから受け取り手芸店を出た。
レラをビワの所に置いて、カズは荷物持ちとして数日間のヤトコの食料と、パフから受け取った道具を持ち、少し前まで居た鍛冶場へと戻る。
ヤトコを鍛冶場まで送り届けると、鍛冶仕事に集中できるよう、カズは預かった荷物を置きバイアステッチにとんぼ返りする。
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