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五章 テクサイス帝国編 1 大陸最大の国
410 洞窟奥のダンジョン
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二股の坑道を左に40メートル程進むと、人工的に掘った跡がなくなり、周囲からは今までとは違う魔素を感じる。
坑道は更に下へと続き、分かれ道はない。
これで迷って出て来れないということはないはず、そう思いながら更に十分程進む。
「ねえカズ、もう戻ろうよ。きっとヤトコのおっちゃんいないよ。一本道なんだから、迷うわけないんだから」
「確かにな。焚き火をした様子からすると、来たことには間違いなくとも、もう他へ行ってしまったのかも知れないな」
「きっとそうだよ! 早くこんなとこ出よ!」
「そうするか。また街に戻ったら、ヤトコさんの情報を集めないと」
ダンジョンでの捜索をやめて洞窟から出ようと、今来た坑道を戻る。
「あれ?」
「どうしの?」
「道が分かれてる。しかも……六股に」
「は?」
カズの懐に居るレラがもぞもぞと動き、上着から顔を出す。
「これが通路が変わるダンジョンなの? でも一本道だったよね?」
「ダンジョンにそういった常識は通じないってことだ」
「どうするの?」
カズは視線を視界の端に一瞬動かす。
「大丈夫だろ。どうせこうなったなら、もう少し調べてみよう(ヤトコさんが迷って出られなくなってるかも知れないからな)」
「うぅ……」
レラは嫌だという顔をするが、既に戻る坑道が分からなくなってしまっていたので、諦めてカズの上着の懐に潜り込む。
「さてと、このままこのダンジョンにもてあそばれて、時間を取られたくはないからな(これで何もわからなければ、壁を破壊してすぐにここを出る)」
カズはライトで出していた光球を消し【万物ノ眼】の効果を使用してダンジョンを調べると同時に【マップ】を確認しながら《探索 調査》を試みた。
すると次第にダンジョン内の通路が【マップ】に表示されだし、その通路が少しずつ形を変えるがわかった。
カズの居る場所からずっと奥に、モンスターの反応が数体あり、行き止まりになってる空間では動かない人の反応があるのを見つけた。
「人の反応があったから、そこに向かう。レラも暗視が使えるから、このまま行くぞ」
「……わかった」
ダンジョン内の通路が狭くなったり広くなったり、上ったり下ったりする通路を通り、人の反応があった場所に移動する。
「大丈夫かレラ?」
「別に大丈夫だもん」
「なら顔出して、付与した暗視がダンジョン内でも使えるか確かめてくれ」
暗いダンジョンに少しは慣れたのか、上着に隠れていたレラがゆっくりと顔を出す。
「……見えるよ。なんか壁がぐねぐねしてる」
「壁の中にモンスターいるんだよ。さっきまで奥に居たのに、こっちに移動してきたんだ。今のところ出てこないけど、いつ襲って来るかわからないから気を付けないと」
モンスターと聞いたレラが、すぼっと上着に隠れる。
「早くこんな所から出ようよぉ」
「もうすぐ反応があった所に着くから、もう少しだけ待ってくれ」
「うぅ……ダンジョンなんて大っ嫌い」
レラは完全に不貞腐った。
変化するダンジョンの通路を、人の反応があった近くまで【マップ】を見ながら移動する。
すると通路の先の暗闇に、座る人影が見えたので、カズは〈ライト〉を使用して光球を作り出した。
「ヤトコさんですか?」
「だ…れだ?」
「俺はカズ。頼まれてヤトコさんを探しに来た冒険者です」
カズはヤトコの正面に移動して、かがんで目線を合わせた。
「大丈夫ですか? 怪我してますか?」
「かすり傷程度だ。問題ない。ただ最後に水を飲んでから二日は経ってる。食い物も何日食ってないか」
飲まず食わずで数日を過ごしたヤトコは、疲れと精神的疲労から動くこともやっとの状態で、げっそりしているのが見て取れる。
カズは【アイテムボックス】から回復薬と食料を出した。
先に自作の回復薬を飲ませ、動けるようになったところで、水とパンを渡した。
数日振りの食べ物を手にしたヤトコは、一心不乱にかぶり付き、パンを詰まらせては水をがぶ飲みして、あっという間に食べ終わった。
「いやぁ助かった。出口もわからなくなって、さすがに今回は駄目かと思った」
「間に合ったようで良かった」
ヤトコはすぐ横に置いてあった小さな金属の箱を拾い上げる。
「これの効果もあと数十分てとこか。それまでにここを出るのは難しいか」
「何ですかそれは?」
「三十年くらい前に、鉱石を掘ってる時に見つけたアイテムだ。中に魔晶石を入れると、狭い範囲だがモンスターから発見されずらくなるって代物だ」
「なるほど。それで襲われずにいたんですか(ここを出たら鑑定させてもらうか)」
「動けるようになったから、出口を探す前に、こいつに入れる魔晶石を掘る。と、言いたいが、この辺りの鉱石は奴に殆ど食われたまった」
「奴に鉱石を食べられた?」
「壁の中を移動してる奴だ。奴のせいでダンジョンが変化して、坑道がめちゃくちゃになっちまったんだ」
「どういうことですか? わかるように説明を」
奴と言っているモンスターと、ダンジョンの変化がどう関係してるのか、今一つ要点を得ないカズは、ヤトコに説明を頼む。
「早くここを出ないとならんが、ここまでワシを探しに来てくれたお前さんには話しとかんとならんか。奴が出て来たらでは遅い、移動しながら手短に話す」
鉱石を食べて壁の中を移動するモンスターについてと、そのモンスターの影響でダンジョンの通路が激しく変化している理由をヤトコは話す。
現在このダンジョンに寄生している節足モンスターは、住壁鉱食大百足だと言う。
石や木や金属など、特定の物を食べ体を強化するモンスターはいるが、このモンスターは鉱石が多くある所に住み着き、その場所の鉱石を食べ尽くすのだと。
鉱石が無くなると、別の場所を探し移動する、と。
ヤトコは昔食べられた鉱山を見たことがあり、その鉱山は穴だらけになり、二ヶ月もしないうちに朽ちて崩れ去ったのだと。
鉱石を食べて穴が空いた所を崩壊しないように、ダンジョン自体が大量の魔素を使い修復している。
それがダンジョンの通路が頻繁に変わる理由らしい。
「そんなモンスターがいるのを知ってたのなら、なんでダンジョンに入ったんですか?」
「前に見たのは数十前だ。それも既に食い荒らかされて崩壊寸前の鉱山だぞ。ダンジョンにまで入り込むなんて、ワシも知らんかった」
遠くの方で聞こえていた壁の中を移動する音が、徐々に近付いて来ていた。
「こりゃまずいぞ。奴がこっちに来てる。話はここまでにして、先を急ぐぞ」
カズは【マップ】を見て、モンスターの位置を確かめると、確かに一体のモンスターが近付いて来ていた。
「どっちから来たか、方向は覚えてるか?」
「あっちです」
カズは少し右の壁を指差す方向を示す。
「変化してるといっても入口が堀作った坑道と繋がってるなら、その位置だけは変わらないはず、ならばその方向に進めば出れるはずだ」
ヤトコの言ってることは間違ってはいなかった。
ダンジョン内の通路は変化していたが、人口的に掘られた坑道と繋がってる所だけは変化していない。
それはカズも【マップ】で確認をして気付いていた。
ヤトコはそれを経験上から導き出していた。
「行くぞ。その光の玉を先に進めてくれ。ワシのランタンは逃げる際に落として壊れちまったんだ」
「わかりました」
ヤトコの進む方向にライトで出した光球を移動させる。
カズは【マップ】を見ながら、ヤトコ進む方向が間違ってないかを確認しながら移動する。
坑道は更に下へと続き、分かれ道はない。
これで迷って出て来れないということはないはず、そう思いながら更に十分程進む。
「ねえカズ、もう戻ろうよ。きっとヤトコのおっちゃんいないよ。一本道なんだから、迷うわけないんだから」
「確かにな。焚き火をした様子からすると、来たことには間違いなくとも、もう他へ行ってしまったのかも知れないな」
「きっとそうだよ! 早くこんなとこ出よ!」
「そうするか。また街に戻ったら、ヤトコさんの情報を集めないと」
ダンジョンでの捜索をやめて洞窟から出ようと、今来た坑道を戻る。
「あれ?」
「どうしの?」
「道が分かれてる。しかも……六股に」
「は?」
カズの懐に居るレラがもぞもぞと動き、上着から顔を出す。
「これが通路が変わるダンジョンなの? でも一本道だったよね?」
「ダンジョンにそういった常識は通じないってことだ」
「どうするの?」
カズは視線を視界の端に一瞬動かす。
「大丈夫だろ。どうせこうなったなら、もう少し調べてみよう(ヤトコさんが迷って出られなくなってるかも知れないからな)」
「うぅ……」
レラは嫌だという顔をするが、既に戻る坑道が分からなくなってしまっていたので、諦めてカズの上着の懐に潜り込む。
「さてと、このままこのダンジョンにもてあそばれて、時間を取られたくはないからな(これで何もわからなければ、壁を破壊してすぐにここを出る)」
カズはライトで出していた光球を消し【万物ノ眼】の効果を使用してダンジョンを調べると同時に【マップ】を確認しながら《探索 調査》を試みた。
すると次第にダンジョン内の通路が【マップ】に表示されだし、その通路が少しずつ形を変えるがわかった。
カズの居る場所からずっと奥に、モンスターの反応が数体あり、行き止まりになってる空間では動かない人の反応があるのを見つけた。
「人の反応があったから、そこに向かう。レラも暗視が使えるから、このまま行くぞ」
「……わかった」
ダンジョン内の通路が狭くなったり広くなったり、上ったり下ったりする通路を通り、人の反応があった場所に移動する。
「大丈夫かレラ?」
「別に大丈夫だもん」
「なら顔出して、付与した暗視がダンジョン内でも使えるか確かめてくれ」
暗いダンジョンに少しは慣れたのか、上着に隠れていたレラがゆっくりと顔を出す。
「……見えるよ。なんか壁がぐねぐねしてる」
「壁の中にモンスターいるんだよ。さっきまで奥に居たのに、こっちに移動してきたんだ。今のところ出てこないけど、いつ襲って来るかわからないから気を付けないと」
モンスターと聞いたレラが、すぼっと上着に隠れる。
「早くこんな所から出ようよぉ」
「もうすぐ反応があった所に着くから、もう少しだけ待ってくれ」
「うぅ……ダンジョンなんて大っ嫌い」
レラは完全に不貞腐った。
変化するダンジョンの通路を、人の反応があった近くまで【マップ】を見ながら移動する。
すると通路の先の暗闇に、座る人影が見えたので、カズは〈ライト〉を使用して光球を作り出した。
「ヤトコさんですか?」
「だ…れだ?」
「俺はカズ。頼まれてヤトコさんを探しに来た冒険者です」
カズはヤトコの正面に移動して、かがんで目線を合わせた。
「大丈夫ですか? 怪我してますか?」
「かすり傷程度だ。問題ない。ただ最後に水を飲んでから二日は経ってる。食い物も何日食ってないか」
飲まず食わずで数日を過ごしたヤトコは、疲れと精神的疲労から動くこともやっとの状態で、げっそりしているのが見て取れる。
カズは【アイテムボックス】から回復薬と食料を出した。
先に自作の回復薬を飲ませ、動けるようになったところで、水とパンを渡した。
数日振りの食べ物を手にしたヤトコは、一心不乱にかぶり付き、パンを詰まらせては水をがぶ飲みして、あっという間に食べ終わった。
「いやぁ助かった。出口もわからなくなって、さすがに今回は駄目かと思った」
「間に合ったようで良かった」
ヤトコはすぐ横に置いてあった小さな金属の箱を拾い上げる。
「これの効果もあと数十分てとこか。それまでにここを出るのは難しいか」
「何ですかそれは?」
「三十年くらい前に、鉱石を掘ってる時に見つけたアイテムだ。中に魔晶石を入れると、狭い範囲だがモンスターから発見されずらくなるって代物だ」
「なるほど。それで襲われずにいたんですか(ここを出たら鑑定させてもらうか)」
「動けるようになったから、出口を探す前に、こいつに入れる魔晶石を掘る。と、言いたいが、この辺りの鉱石は奴に殆ど食われたまった」
「奴に鉱石を食べられた?」
「壁の中を移動してる奴だ。奴のせいでダンジョンが変化して、坑道がめちゃくちゃになっちまったんだ」
「どういうことですか? わかるように説明を」
奴と言っているモンスターと、ダンジョンの変化がどう関係してるのか、今一つ要点を得ないカズは、ヤトコに説明を頼む。
「早くここを出ないとならんが、ここまでワシを探しに来てくれたお前さんには話しとかんとならんか。奴が出て来たらでは遅い、移動しながら手短に話す」
鉱石を食べて壁の中を移動するモンスターについてと、そのモンスターの影響でダンジョンの通路が激しく変化している理由をヤトコは話す。
現在このダンジョンに寄生している節足モンスターは、住壁鉱食大百足だと言う。
石や木や金属など、特定の物を食べ体を強化するモンスターはいるが、このモンスターは鉱石が多くある所に住み着き、その場所の鉱石を食べ尽くすのだと。
鉱石が無くなると、別の場所を探し移動する、と。
ヤトコは昔食べられた鉱山を見たことがあり、その鉱山は穴だらけになり、二ヶ月もしないうちに朽ちて崩れ去ったのだと。
鉱石を食べて穴が空いた所を崩壊しないように、ダンジョン自体が大量の魔素を使い修復している。
それがダンジョンの通路が頻繁に変わる理由らしい。
「そんなモンスターがいるのを知ってたのなら、なんでダンジョンに入ったんですか?」
「前に見たのは数十前だ。それも既に食い荒らかされて崩壊寸前の鉱山だぞ。ダンジョンにまで入り込むなんて、ワシも知らんかった」
遠くの方で聞こえていた壁の中を移動する音が、徐々に近付いて来ていた。
「こりゃまずいぞ。奴がこっちに来てる。話はここまでにして、先を急ぐぞ」
カズは【マップ】を見て、モンスターの位置を確かめると、確かに一体のモンスターが近付いて来ていた。
「どっちから来たか、方向は覚えてるか?」
「あっちです」
カズは少し右の壁を指差す方向を示す。
「変化してるといっても入口が堀作った坑道と繋がってるなら、その位置だけは変わらないはず、ならばその方向に進めば出れるはずだ」
ヤトコの言ってることは間違ってはいなかった。
ダンジョン内の通路は変化していたが、人口的に掘られた坑道と繋がってる所だけは変化していない。
それはカズも【マップ】で確認をして気付いていた。
ヤトコはそれを経験上から導き出していた。
「行くぞ。その光の玉を先に進めてくれ。ワシのランタンは逃げる際に落として壊れちまったんだ」
「わかりました」
ヤトコの進む方向にライトで出した光球を移動させる。
カズは【マップ】を見ながら、ヤトコ進む方向が間違ってないかを確認しながら移動する。
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