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四章 異世界旅行編 3 セテロン国
398 迫る来る大兎 と 不評のお菓子
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三人が走り出した直後、一羽のヘビーラビットがカズに飛び掛かった。
おっと、やっぱり攻撃した俺を狙って来るか。
さてどうする? それほど強いわけではないが、あの体格とこの数は面倒だ。
一気に倒すにも、森に被害を与える訳にはいかないし。
迫るヘビーラビットの群れをどう対処法を考えてると、跳び跳ねて近付いて来る数多くのヘビーラビットが、カズの視界に入った。
「この数……(二、三羽を丸焦げにすれば、逃げてくれるだろうか)」
最初に姿を現したのと、今飛び掛かってきた二羽のヘビーラビットに狙いを定め、カズは丸焦げにする威力の〈ファイヤーボール〉を手の平から出現させて狙いを定める。
「待った! そいつらを殺さないでくれ」
突如大声てカズに話し掛けてきたのは、ギルドの臨時小屋から出てきたベアイだった。
「どういうこ…」
作り出した火の玉を消すと、二羽のヘビーラビットがカズに目掛けて飛び掛かる。
「…危な!」
寸前でヘビーラビット二羽の攻撃を避けるカズ。
「だったらどうしたらいいんですか!?」
カズはベアイに聞こえるように声を張り対処法を聞く。
「わからん。出来るだけ傷付けずになんとかしてくれ」
「攻撃してきてる相手に怪我を負わすなって言われても……(威力を最小限にしたライトニングショットでも、当たる場所によっては火傷や傷になるし、どうしたら。早くしないと、どんどん近付いて来る)」
カズは各属性の魔法を思い浮かべるが、傷付けずに大人しくさせるのが、眠りを誘う霧しか思い付かない。
使おうにも風が吹いているため、ヘビーラビットの風上に移動しなくてはならい。
それに興奮しているヘビーラビットに対して、必ずしも効果があるとは限らない。
少なくともカズを攻撃してきている数羽は、他に比べて興奮状態が高いので、眠りにつかない可能性があった。
威圧することも考えたが、混乱して同士討ちにてなったら意味がない。
そんなことを考えてる間に、接近するヘビーラビットの数は増す。
「大丈夫カズ? 手っ取り早くアレナリアに、ちゃちゃっと凍らせてもらう?」
「だから、傷付けないでくれと言っているだろ」
レラの発言に、ツッコミを入れるベアイ。
「なんでさ? 向かって来るんだから、やっつけちゃえばいいのに」
「ヘビーラビットがこの森からいなくなると、コロコロ鳥が危険になって、卵を産まなくなるんだぞ」
「え! なんでなんで?」
雪降る季節になると、コロコロ鳥とヘビーラビットが同じ巣で暮らすことを、ベアイはレラに話す。
ヘビーラビットの方が群の規模が大きいため、密両者やモンスターに襲われる率が低くり、コロコロ鳥を守ってくれているのだと。
ヘビーラビットはコロコロ鳥の護衛をしてるのと同じだと言う。
「そうなんだ。わかった。カズー、絶対に傷付けちゃ駄目だからね!」
ヘビーラビットの体当たりを避けていると、レラからも傷付けるなと注意が飛ぶ。
「なんでレラまで言い出すんだ(確か麻痺だったかな。それを使えば動きを止められるだろ。あとは全部とはいかなくても、九割に当てることが出来れば……!)」
レラに視線を向けたとき近くに居たアレナリア目に入ると、カズは一瞬考えた後【アイテムボックス】から1枚のトレカを取り出した。
「これでうまく行けば…『マルチプル・ロックオンシステム』」
カズは手に持つトレカを使用すると、トレカはスッも消滅した。
「……あれ?」
使用不可だったのかとカズは周囲を確認していると、視界の端に映る【マップ】に変化があったことに気付く。
ヘビーラビットの反応がある近くに、丸いマーカーが表示されていた。
脳内で【マップ】に表示されているマーカーをヘビーラビットに移動させると、選択出来るようになった。
マーカーは一つではなく、複数を選ぶことが出来た。
「マップから対象を選べるようになるのか。よし、これなら」
カズは【マップ】に表示されているヘビーラビットを脳内で選択してマーカーを付ける。
「うまくいってくれよ。痺れて動けなくなるだけでいいんだ。使用する魔力を加減して……〈パラライズショット〉」
向かって来るヘビーラビットに手をかざし魔法名を唱えると、ライトニングショットを放った時のような黄色く小さな発光体が、高速で分裂してロックオンした全てのヘビーラビット目掛け飛んでいく。
先ず始めに、カズに飛び掛かったヘビーラビット一羽に攻撃が命中すると、ばたりと倒れピクピクと痙攣して動かなくなる。
カズはすぐに《分析》を使い状態を調べる。
攻撃が命中したヘビーラビットは、ただ単に痺れて動けなくなっているだけ、狙いは成功した。
そうしている間に、分裂した発光体が次々とヘビーラビットに命中する。
勘の鋭い個体や俊敏な個体は、飛来する発光体を寸前で避ける。
が、逃げることは出来ず、避けた方へと方向を変え、発光体は確実に対象をとらえ直撃する。
ほんの数秒前まで動いていたヘビーラビットは、今では痺れて全て動きを止めていた。
倒れた際のかすり傷程度はあるものの、どのヘビーラビットも大きな傷は負ってない。
「っほ(トレカの効果がマップと連動するとは)」
ヘビーラビットを傷付けてはならない理由を聞こうと、カズはアレナリア、レラ、ビワと一緒に居るベアイの所に行く。
唖然とし倒れるヘビーラビットを見るベアイの顔の前でカズは手を振る。
「もしもし、ベアイさん?」
「お…おう……殺しちまったのか?」
「麻痺して動けないだけです。ちょっとしたかすり傷程度はしてるかも知れないですが。ところでなんでヘビーラビットを倒したら駄目なんですか?」
「あ…ああ。それはな─」
ベアイはレラに話したことを、カズにも話した。
「─てなことで、ここでヘビーラビットが殺られてしまったら、この森のコロコロ鳥がいなくなってしまうかも知れないんだ」
「コロコロ鳥とヘビーラビットにそういう生態があるなら、先に教えてほしかったです」
「すまん。今年はいつもより、ヘビーラビットがこの森に来るのが早いようだ」
「ヘビーラビットはこの森に住んでるんじゃないんですか?」
「ここよりもう少し北だ」
「ところでなんで私達を狙って来たの?」
アレナリアが気になったていたことをベアイに聞いた。
「卵を回収した時に、コロコロ鳥の巣にお前達の匂いがついて、コロコロ鳥の敵だと認識されてしまったんだろ」
「卵を何個かそのままにした方がよかった? 全部回収したのは間違いだったの?」
「そうだな。そうすれば追っ手までは来なかったかも知れん。今回はたまたま運が悪かったと思うしかあるまい」
「ヘビーラビットの麻痺が解ける前に、俺達は街に戻ります」
「その方がいいだろ。森から出れば追い掛けては来るまい」
「一応採取した樹液を確認してください」
ベアイに採取した樹液を見せた。
「濁ってない白だ。これは良いものだ」
「よかった」
「すまんがギルドに着いたら、ヘビーラビットが現れたから急ぎ人をよこしてくれと」
「わかりました」
ベアイに伝言を頼まれると、四人は森を出てサードキャニオンの街に戻って行く。
地面に雪がうっすりと積もりだし、足場は濡れて歩きずらく、森に向かうときより時間が掛かったが、昼を過ぎには街へ着いたので、そのままギルドに向かった。
ベアイからの伝言と、回収した産み立ての卵を一部渡して、パーティーとしてアレナリアが受けた依頼を終える。
報酬は翌日取りに来ると伝え、前日まで泊まっていた宿に行き、新たに部屋を借りた。
アレナリア、レラ、ビワが夕食まで休憩している間に、カズはレラと約束したクッキーを作ることにした。
宿屋の従業員に石窯があると聞きたので、使用料を気持ち程度払い調理場を借り、買っておいた材料を三割程度使って作り出す。
途中香ばしく焼けるクッキーの匂いに誘われ、アレナリアとレラが見に来たが、クッキーは石窯の中にあったので、まだ一口も食べてない。
カズは二人に大人しく待つように言い、部屋に戻られせた。
コロコロ鳥の卵とミルキーウッドの樹液が手に入ったことで、三種のクッキーを試しに作り、完成してものを先ずは自分で一個ずつ食べて味見をした。
一つ目はハチミツの香りが強く、少し入れ過ぎてしまった。
二つ目は卵の味が際立つクッキーが出来たが、焼き過ぎたらしくぼそぼそとしていた。
三つ目はミルキーウッドの樹液を入れたことで、クリーミーな甘さがほんのりとしたものができ、他の二つに比べ少しはましだった。
ただどれも今一つだと感じたカズは、匂いだけで期待を膨らませてしまったからと、三人に食べさせる前にハードルを下げることを考えた。
それぞれ各十五個ずつ出来たので、五個ずつを三人に割り振ることにして作業を終えた。
その後、夕食を食べ終えると「プリンは?」と、レラが言ってきた。
「クッキーを作ってたから作れなかった」
「だったらクッキー食べたいから出して」
「今飯を食べたばかりだろ」
「ずっと我慢してたんだからいいじゃん!」
クッキーを食べたいと駄々を捏ねたので、仕方がないと三人分に分けておいた、今一つのクッキーを【アイテムボックス】から出し渡した。
「これだ…ぐっぷ…け?」
「ゲップしてるじゃないか。ほら返せ(満腹の時に食べたら、余計に美味しくないと言いそうだ)」
取り上げられまいと、レラは渡されたクッキーを口に頬張りむせ返る。
「大丈夫レラ。お茶よ。まだいれ…」
むせるレラに食後に飲むよう入れたハーブティを渡すビワ。
レラは大きく一口飲む。
「熱っちいぃ!」
まだ熱いハーディーを口にしたことで、レラは舌に軽い火傷を負った。
「淹れたばっかだから、気を付けてって」
「もっほはやふひっへよ。ほれはっはら、おひずほうだいひょ」
「まったくレラは、食い意地張ってるんだから(舌を火傷して、味がどうのと言われなくてよか…)」
「このクッキー……今一つね」
レラからクッキーの味に文句が出ないことでホッとしようとしたカズだったが、一口食べたアレナリアから不満が声が飛んだ。
「……ごめん上手く出来なかった(三種類も作らなければ)」
「カズの失敗は珍しいわね」
「だ…大丈夫です。私はそれぞれ、それなりに良いと思い…ますよ」
「ぅ……今度はビワに頼むよ。料理はビワの方が美味しく作れるから」
それほど美味しくはないと分かっていたが、アレナリアにハッキリと言われ、ビワに気を使われたのが結構応えた。
「あ…ありがとうございます」
自分の作る料理が美味しくと言われたことが嬉しく、ビワから笑みがこぼれる。
おっと、やっぱり攻撃した俺を狙って来るか。
さてどうする? それほど強いわけではないが、あの体格とこの数は面倒だ。
一気に倒すにも、森に被害を与える訳にはいかないし。
迫るヘビーラビットの群れをどう対処法を考えてると、跳び跳ねて近付いて来る数多くのヘビーラビットが、カズの視界に入った。
「この数……(二、三羽を丸焦げにすれば、逃げてくれるだろうか)」
最初に姿を現したのと、今飛び掛かってきた二羽のヘビーラビットに狙いを定め、カズは丸焦げにする威力の〈ファイヤーボール〉を手の平から出現させて狙いを定める。
「待った! そいつらを殺さないでくれ」
突如大声てカズに話し掛けてきたのは、ギルドの臨時小屋から出てきたベアイだった。
「どういうこ…」
作り出した火の玉を消すと、二羽のヘビーラビットがカズに目掛けて飛び掛かる。
「…危な!」
寸前でヘビーラビット二羽の攻撃を避けるカズ。
「だったらどうしたらいいんですか!?」
カズはベアイに聞こえるように声を張り対処法を聞く。
「わからん。出来るだけ傷付けずになんとかしてくれ」
「攻撃してきてる相手に怪我を負わすなって言われても……(威力を最小限にしたライトニングショットでも、当たる場所によっては火傷や傷になるし、どうしたら。早くしないと、どんどん近付いて来る)」
カズは各属性の魔法を思い浮かべるが、傷付けずに大人しくさせるのが、眠りを誘う霧しか思い付かない。
使おうにも風が吹いているため、ヘビーラビットの風上に移動しなくてはならい。
それに興奮しているヘビーラビットに対して、必ずしも効果があるとは限らない。
少なくともカズを攻撃してきている数羽は、他に比べて興奮状態が高いので、眠りにつかない可能性があった。
威圧することも考えたが、混乱して同士討ちにてなったら意味がない。
そんなことを考えてる間に、接近するヘビーラビットの数は増す。
「大丈夫カズ? 手っ取り早くアレナリアに、ちゃちゃっと凍らせてもらう?」
「だから、傷付けないでくれと言っているだろ」
レラの発言に、ツッコミを入れるベアイ。
「なんでさ? 向かって来るんだから、やっつけちゃえばいいのに」
「ヘビーラビットがこの森からいなくなると、コロコロ鳥が危険になって、卵を産まなくなるんだぞ」
「え! なんでなんで?」
雪降る季節になると、コロコロ鳥とヘビーラビットが同じ巣で暮らすことを、ベアイはレラに話す。
ヘビーラビットの方が群の規模が大きいため、密両者やモンスターに襲われる率が低くり、コロコロ鳥を守ってくれているのだと。
ヘビーラビットはコロコロ鳥の護衛をしてるのと同じだと言う。
「そうなんだ。わかった。カズー、絶対に傷付けちゃ駄目だからね!」
ヘビーラビットの体当たりを避けていると、レラからも傷付けるなと注意が飛ぶ。
「なんでレラまで言い出すんだ(確か麻痺だったかな。それを使えば動きを止められるだろ。あとは全部とはいかなくても、九割に当てることが出来れば……!)」
レラに視線を向けたとき近くに居たアレナリア目に入ると、カズは一瞬考えた後【アイテムボックス】から1枚のトレカを取り出した。
「これでうまく行けば…『マルチプル・ロックオンシステム』」
カズは手に持つトレカを使用すると、トレカはスッも消滅した。
「……あれ?」
使用不可だったのかとカズは周囲を確認していると、視界の端に映る【マップ】に変化があったことに気付く。
ヘビーラビットの反応がある近くに、丸いマーカーが表示されていた。
脳内で【マップ】に表示されているマーカーをヘビーラビットに移動させると、選択出来るようになった。
マーカーは一つではなく、複数を選ぶことが出来た。
「マップから対象を選べるようになるのか。よし、これなら」
カズは【マップ】に表示されているヘビーラビットを脳内で選択してマーカーを付ける。
「うまくいってくれよ。痺れて動けなくなるだけでいいんだ。使用する魔力を加減して……〈パラライズショット〉」
向かって来るヘビーラビットに手をかざし魔法名を唱えると、ライトニングショットを放った時のような黄色く小さな発光体が、高速で分裂してロックオンした全てのヘビーラビット目掛け飛んでいく。
先ず始めに、カズに飛び掛かったヘビーラビット一羽に攻撃が命中すると、ばたりと倒れピクピクと痙攣して動かなくなる。
カズはすぐに《分析》を使い状態を調べる。
攻撃が命中したヘビーラビットは、ただ単に痺れて動けなくなっているだけ、狙いは成功した。
そうしている間に、分裂した発光体が次々とヘビーラビットに命中する。
勘の鋭い個体や俊敏な個体は、飛来する発光体を寸前で避ける。
が、逃げることは出来ず、避けた方へと方向を変え、発光体は確実に対象をとらえ直撃する。
ほんの数秒前まで動いていたヘビーラビットは、今では痺れて全て動きを止めていた。
倒れた際のかすり傷程度はあるものの、どのヘビーラビットも大きな傷は負ってない。
「っほ(トレカの効果がマップと連動するとは)」
ヘビーラビットを傷付けてはならない理由を聞こうと、カズはアレナリア、レラ、ビワと一緒に居るベアイの所に行く。
唖然とし倒れるヘビーラビットを見るベアイの顔の前でカズは手を振る。
「もしもし、ベアイさん?」
「お…おう……殺しちまったのか?」
「麻痺して動けないだけです。ちょっとしたかすり傷程度はしてるかも知れないですが。ところでなんでヘビーラビットを倒したら駄目なんですか?」
「あ…ああ。それはな─」
ベアイはレラに話したことを、カズにも話した。
「─てなことで、ここでヘビーラビットが殺られてしまったら、この森のコロコロ鳥がいなくなってしまうかも知れないんだ」
「コロコロ鳥とヘビーラビットにそういう生態があるなら、先に教えてほしかったです」
「すまん。今年はいつもより、ヘビーラビットがこの森に来るのが早いようだ」
「ヘビーラビットはこの森に住んでるんじゃないんですか?」
「ここよりもう少し北だ」
「ところでなんで私達を狙って来たの?」
アレナリアが気になったていたことをベアイに聞いた。
「卵を回収した時に、コロコロ鳥の巣にお前達の匂いがついて、コロコロ鳥の敵だと認識されてしまったんだろ」
「卵を何個かそのままにした方がよかった? 全部回収したのは間違いだったの?」
「そうだな。そうすれば追っ手までは来なかったかも知れん。今回はたまたま運が悪かったと思うしかあるまい」
「ヘビーラビットの麻痺が解ける前に、俺達は街に戻ります」
「その方がいいだろ。森から出れば追い掛けては来るまい」
「一応採取した樹液を確認してください」
ベアイに採取した樹液を見せた。
「濁ってない白だ。これは良いものだ」
「よかった」
「すまんがギルドに着いたら、ヘビーラビットが現れたから急ぎ人をよこしてくれと」
「わかりました」
ベアイに伝言を頼まれると、四人は森を出てサードキャニオンの街に戻って行く。
地面に雪がうっすりと積もりだし、足場は濡れて歩きずらく、森に向かうときより時間が掛かったが、昼を過ぎには街へ着いたので、そのままギルドに向かった。
ベアイからの伝言と、回収した産み立ての卵を一部渡して、パーティーとしてアレナリアが受けた依頼を終える。
報酬は翌日取りに来ると伝え、前日まで泊まっていた宿に行き、新たに部屋を借りた。
アレナリア、レラ、ビワが夕食まで休憩している間に、カズはレラと約束したクッキーを作ることにした。
宿屋の従業員に石窯があると聞きたので、使用料を気持ち程度払い調理場を借り、買っておいた材料を三割程度使って作り出す。
途中香ばしく焼けるクッキーの匂いに誘われ、アレナリアとレラが見に来たが、クッキーは石窯の中にあったので、まだ一口も食べてない。
カズは二人に大人しく待つように言い、部屋に戻られせた。
コロコロ鳥の卵とミルキーウッドの樹液が手に入ったことで、三種のクッキーを試しに作り、完成してものを先ずは自分で一個ずつ食べて味見をした。
一つ目はハチミツの香りが強く、少し入れ過ぎてしまった。
二つ目は卵の味が際立つクッキーが出来たが、焼き過ぎたらしくぼそぼそとしていた。
三つ目はミルキーウッドの樹液を入れたことで、クリーミーな甘さがほんのりとしたものができ、他の二つに比べ少しはましだった。
ただどれも今一つだと感じたカズは、匂いだけで期待を膨らませてしまったからと、三人に食べさせる前にハードルを下げることを考えた。
それぞれ各十五個ずつ出来たので、五個ずつを三人に割り振ることにして作業を終えた。
その後、夕食を食べ終えると「プリンは?」と、レラが言ってきた。
「クッキーを作ってたから作れなかった」
「だったらクッキー食べたいから出して」
「今飯を食べたばかりだろ」
「ずっと我慢してたんだからいいじゃん!」
クッキーを食べたいと駄々を捏ねたので、仕方がないと三人分に分けておいた、今一つのクッキーを【アイテムボックス】から出し渡した。
「これだ…ぐっぷ…け?」
「ゲップしてるじゃないか。ほら返せ(満腹の時に食べたら、余計に美味しくないと言いそうだ)」
取り上げられまいと、レラは渡されたクッキーを口に頬張りむせ返る。
「大丈夫レラ。お茶よ。まだいれ…」
むせるレラに食後に飲むよう入れたハーブティを渡すビワ。
レラは大きく一口飲む。
「熱っちいぃ!」
まだ熱いハーディーを口にしたことで、レラは舌に軽い火傷を負った。
「淹れたばっかだから、気を付けてって」
「もっほはやふひっへよ。ほれはっはら、おひずほうだいひょ」
「まったくレラは、食い意地張ってるんだから(舌を火傷して、味がどうのと言われなくてよか…)」
「このクッキー……今一つね」
レラからクッキーの味に文句が出ないことでホッとしようとしたカズだったが、一口食べたアレナリアから不満が声が飛んだ。
「……ごめん上手く出来なかった(三種類も作らなければ)」
「カズの失敗は珍しいわね」
「だ…大丈夫です。私はそれぞれ、それなりに良いと思い…ますよ」
「ぅ……今度はビワに頼むよ。料理はビワの方が美味しく作れるから」
それほど美味しくはないと分かっていたが、アレナリアにハッキリと言われ、ビワに気を使われたのが結構応えた。
「あ…ありがとうございます」
自分の作る料理が美味しくと言われたことが嬉しく、ビワから笑みがこぼれる。
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