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四章 異世界旅行編 3 セテロン国
397 卵と樹液の採取 と 大兎
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◇◆◇◆◇
ロッジの窓から日が差し始め、そろそろコロコロ鳥の巣を見に行かなくてはという時間になった。
「二度寝すると中々起きないんだよなぁ。お~いレラ起きろ。明るくなってきたぞ」
「…もうちょっと」
「卵を取りに行くんだろ」
「……プリン!」
「いや、プリンじゃなくて卵だから」
目を覚ましガバッと毛布を剥いでレラは起き上がる。
「早くしないと産みたての卵を回収出来なくなるわよ」
「あちし早く起きてたもん。カズが寝ろって言うから」
「レラが起きたのまだ夜中だったろ。あのままずっと起きてたら、朝寝て確実に昼過ぎまで起きなかったぞ」
「ぅ……」
反論出来ずに黙るレラは、何か言い返せることがないか考えを巡らせる。
「大丈夫よレラ。まだ明るくなってきたばかりだから」
「あちし朝ごはんいらないから、早くコロコロ鳥の巣に行こう」
「レラだけじゃないわ。私もビワもカズも、まだ何も食べてないから。軽く何かお腹に入れてきましょう」
ここでレラはあることを思い出した。
「……クッキーだってまだ作ってもらってないのに、プリンも駄目だったらあちし死んじゃう」
ここでクッキーの話題を出されてしまい、かなりレラの機嫌が悪いとカズは感じた。
「いやいや、それくらいで死ぬな」
「卵が手に入っても、本当にプリンだって出来るかわからないんでしょ」
プリンに関しても、ミルキーウッドの樹液が使えるかどうか不明なことをレラに言われ、今度カズが返す言葉がなかった。
ホースの事を受け入れ元気になったレラに、以前通りの接し方をしたのが早計だったのかとカズは少し反省する。
「クッキーを作らなかったのはわるかった。俺も忘れてたんだよ。卵と樹液を採取して街に戻ったら、ちゃんと作るから。約束は守る」
「本当に本当だからね」
「わかってる。プリンだってきっと出来るさ」
「今度作ってくれなかったら、カズの髪全部引っこ抜くから」
「お…おぅ(なんで俺をハゲにしたがる)」
「朝食はパンと昨日の残ったスープで簡単に済ませましょう。スープは温めてあるから。はいレラ」
ビワがカップにスープを入れ、パンと一緒にレラとアレナリアに渡した。
カズはスープだけでいいと、ビワからカップだけを受け取った。
カズはスープを飲みながら【マップ】の範囲を広げて、コロコロ鳥が巣に戻って来ているかを確かめる。
そこには確かに獣の反応が十数あった。
軽い朝食を済ませると、暖炉の火を消して四人はベアイのロッジを出る。
前日ベアイに案内されたコロコロ鳥の巣の近くまで来ると、足音を出来るだけ立てないように静かに移動して、木の陰からそっと覗きコロコロ鳥の様子を見る。
四人はそこで初めてコロコロ鳥の姿を見て驚く。
少し大き目の鶏を思い浮かべていたが違っていた。
少しどころではなく、かなり大きかった。
巣にしゃがんではいるが、それでも80センチから1メートルくらいはあった。
大きな個体だと立ち上がれば、160センチ以上はありそう。
丸々として押せばコロコロと簡単に転がりそうだ。
カズ達はベアイから聞いたことに従い、コロコロ鳥が水場に移動するのを隠れて暫し待った。
コロコロ鳥の巣を見張り十分程が過ぎると、一羽また一羽と、コロコロ鳥が巣から離れて行く。
全てのコロコロ鳥が巣から離れ、姿が見えなくなったところで、カズ達は手分けして卵の回収に取り掛かる。
昨日と同じく落ち葉を優しくかき分けて、産みたて卵を探す。
コロコロ鳥が今まで居たことで、落ち葉は暖かく意外と快適だったりもする。
各自一つの巣から十個前後の卵を回収して、それをカズが【アイテムボックス】へと入れる。
続いてミルキーウッドを見て回り、樹液が多く出そうな木を勘で三本選び、傷をつけてそこにヘラを傾けて差し込む。
カズ、アレナリア、ビワの三人は、ベアイから買った容器のふたを外し、傾けたヘラの先に容器の口をつけ、そのままで樹液が溜まるのを待つ。
じんわりと傷口から白い樹液がヘラを伝い流れ、容器の底に少しずつ溜まっていく。
ほんのりと甘い香りがする樹液はとろみはあるが、ハチミツ程ではない。
見た目は牛乳よりも生クリームに近そうだった。
それから一時間程樹液は出続け、レラはビワの手伝いしながら容器を持ち、各自の持つ容器が一杯になったところで、木に差し込んだヘラを抜き取り樹液の採取を終了する。
こぼれないよう容器のふたをしっかりと締め、卵と同様カズが容器受け取り【アイテムボックス】にしまう。
「これで終わだな」
「容器を持って立ってるのだけって面倒ね。何が嫌って、動けないのがたまらないわ」
「こういったの作業は、容器の高さに合わせて台を作っておくとか、うまく木に縛り付けおくとかするんだろう(今回はベアイさんに道具を譲って貰ったけど、次からは容器を置く台とかも用意しないと。採取の仕方も、俺の知ってる方法と同じだったし)」
「なんでそうしなかったの? あたしもう腕が上がらないんだけど」
「自分で苦労して採取したんだ。それでこそ食べる喜びがあるだろ(樹液の方は十分も手伝ってなかったけどな。レラに容器をずっと持ってろと言って無理だから、そこは仕方がないんだが)」
「じゃあ街に戻りましょうか。ギルドにも報告しないと」
「そうだな。通り道だから、ベアイさんの所に顔を出して行こう(一応樹液を確認してもらいたいからな)」
「雲が厚くなってきた……雪?」
「だな。まだ降り始めで弱いから、急いで森を出よう」
コロコロ鳥の卵とミルキーウッドの樹液採取を終えた四人は、降り始めた雪が積もる前に、ベアイの待機する森の入口にあるギルドの臨時小屋に向かった。
コロコロ鳥の巣を離れてから少し、降り出した雪が強くなってきた。
吹雪いてないので、視界を妨げたり歩きにくかったりは今のところしない。
雪で地面がぬかるみ、歩きずらくなる前に森を抜けようと、三人は早足になる。
レラだけはカズ肩に乗っかり移動している。
吐く息白くなる一行の視線の先には、ギルドが臨時に作った小屋が小さく見えた。
カズは段々近付いて来る獣の反応が気になり、小屋の方は見てなかった。
もうすぐ森を抜けられるという所で、突如として木々の間から、一行の前に飛び出す生き物が。
立ち止まりその生き物を見ると、コロコロ鳥よりも少し大きいくらいのウサギだった。
明らかに一行が森から出ようとするのを邪魔していた。
カズは即座に《分析》を使用して、現れたウサギのことを調べる。
名前 : ヘビーラビット
種族 : 大兎
ランク: D
レベル: 20
力 : 300
魔力 : 68
敏捷 : 300
全長 : 180㎝前後
補足 : 生息する場所で体毛の色が変わり、兎と名の付く獣の中では最大。
・ 寒い場所を好んで生息し、多くの群れを成す。
・ ミルキーウッドの樹液を好み、雪降る季節になるとコロコロ鳥の巣に住み着き、雪が溶ける季節になるまで共に暮らす。
ヘビーラビットのステータスを確認したカズは【マップ】に映った数多くの反応が、同一の生物であると分かった。
数にしてざっと四十羽から五十羽。
今にも飛び掛かって来そうな好戦的なウサギを、カズはどう対処したものかと考える。
「でっかいウサギ。これが聞いてたヘビーラビット?」
「そうみたいだな」
「あのデブウサギ睨んでるんだけど。どうするの」
デブと言われた目の前のヘビーラビットは、言葉が解るのか、ただレラの態度が気にいらなかったのか、長い前歯をむき出しにして、カズの背中に隠れるレラに狙いを定めた。
「一言余計なこと(面倒なフラグを立てんな!)」
「そんなこと言ってないで向こう見て! 思い切り突っ込んで来てるんだけど!」
レラを注意していると、狙いを定めたヘビーラビットが、カズの後ろに隠れるレラ目掛けて勢いよく飛び掛かる。
カズは半歩下がって体を反らすと、飛び掛かるヘビーラビットの横から掌底を当てて方向を変える。
飛び掛かった勢いのまま、ヘビーラビットは木に激突した。
すると止まっていた獣の反応が動きだし、四人の居る場所に動き出してきていた。
「まずいな。今ので勝てないと思って逃げくれればよかったんだが、逆効果になったか」
「何がまずいの? ねえカズってば!」
カズの頭をペシペシ叩き、状況を説目しろと言うレラ。
「三人は小屋に居るベアイさんの所に」
「殺気が増えたわね」
「ヘビーラビットの仲間が、狙って来てるんだ。これ以上話してる暇はない。レラを連れて早く行ってくれ。あんなのが小屋にぶつかったら一溜りもない」
カズに乗っかるレラを抱えたビワは、アレナリアと共に走って森の入口にある小屋に向かった。
ロッジの窓から日が差し始め、そろそろコロコロ鳥の巣を見に行かなくてはという時間になった。
「二度寝すると中々起きないんだよなぁ。お~いレラ起きろ。明るくなってきたぞ」
「…もうちょっと」
「卵を取りに行くんだろ」
「……プリン!」
「いや、プリンじゃなくて卵だから」
目を覚ましガバッと毛布を剥いでレラは起き上がる。
「早くしないと産みたての卵を回収出来なくなるわよ」
「あちし早く起きてたもん。カズが寝ろって言うから」
「レラが起きたのまだ夜中だったろ。あのままずっと起きてたら、朝寝て確実に昼過ぎまで起きなかったぞ」
「ぅ……」
反論出来ずに黙るレラは、何か言い返せることがないか考えを巡らせる。
「大丈夫よレラ。まだ明るくなってきたばかりだから」
「あちし朝ごはんいらないから、早くコロコロ鳥の巣に行こう」
「レラだけじゃないわ。私もビワもカズも、まだ何も食べてないから。軽く何かお腹に入れてきましょう」
ここでレラはあることを思い出した。
「……クッキーだってまだ作ってもらってないのに、プリンも駄目だったらあちし死んじゃう」
ここでクッキーの話題を出されてしまい、かなりレラの機嫌が悪いとカズは感じた。
「いやいや、それくらいで死ぬな」
「卵が手に入っても、本当にプリンだって出来るかわからないんでしょ」
プリンに関しても、ミルキーウッドの樹液が使えるかどうか不明なことをレラに言われ、今度カズが返す言葉がなかった。
ホースの事を受け入れ元気になったレラに、以前通りの接し方をしたのが早計だったのかとカズは少し反省する。
「クッキーを作らなかったのはわるかった。俺も忘れてたんだよ。卵と樹液を採取して街に戻ったら、ちゃんと作るから。約束は守る」
「本当に本当だからね」
「わかってる。プリンだってきっと出来るさ」
「今度作ってくれなかったら、カズの髪全部引っこ抜くから」
「お…おぅ(なんで俺をハゲにしたがる)」
「朝食はパンと昨日の残ったスープで簡単に済ませましょう。スープは温めてあるから。はいレラ」
ビワがカップにスープを入れ、パンと一緒にレラとアレナリアに渡した。
カズはスープだけでいいと、ビワからカップだけを受け取った。
カズはスープを飲みながら【マップ】の範囲を広げて、コロコロ鳥が巣に戻って来ているかを確かめる。
そこには確かに獣の反応が十数あった。
軽い朝食を済ませると、暖炉の火を消して四人はベアイのロッジを出る。
前日ベアイに案内されたコロコロ鳥の巣の近くまで来ると、足音を出来るだけ立てないように静かに移動して、木の陰からそっと覗きコロコロ鳥の様子を見る。
四人はそこで初めてコロコロ鳥の姿を見て驚く。
少し大き目の鶏を思い浮かべていたが違っていた。
少しどころではなく、かなり大きかった。
巣にしゃがんではいるが、それでも80センチから1メートルくらいはあった。
大きな個体だと立ち上がれば、160センチ以上はありそう。
丸々として押せばコロコロと簡単に転がりそうだ。
カズ達はベアイから聞いたことに従い、コロコロ鳥が水場に移動するのを隠れて暫し待った。
コロコロ鳥の巣を見張り十分程が過ぎると、一羽また一羽と、コロコロ鳥が巣から離れて行く。
全てのコロコロ鳥が巣から離れ、姿が見えなくなったところで、カズ達は手分けして卵の回収に取り掛かる。
昨日と同じく落ち葉を優しくかき分けて、産みたて卵を探す。
コロコロ鳥が今まで居たことで、落ち葉は暖かく意外と快適だったりもする。
各自一つの巣から十個前後の卵を回収して、それをカズが【アイテムボックス】へと入れる。
続いてミルキーウッドを見て回り、樹液が多く出そうな木を勘で三本選び、傷をつけてそこにヘラを傾けて差し込む。
カズ、アレナリア、ビワの三人は、ベアイから買った容器のふたを外し、傾けたヘラの先に容器の口をつけ、そのままで樹液が溜まるのを待つ。
じんわりと傷口から白い樹液がヘラを伝い流れ、容器の底に少しずつ溜まっていく。
ほんのりと甘い香りがする樹液はとろみはあるが、ハチミツ程ではない。
見た目は牛乳よりも生クリームに近そうだった。
それから一時間程樹液は出続け、レラはビワの手伝いしながら容器を持ち、各自の持つ容器が一杯になったところで、木に差し込んだヘラを抜き取り樹液の採取を終了する。
こぼれないよう容器のふたをしっかりと締め、卵と同様カズが容器受け取り【アイテムボックス】にしまう。
「これで終わだな」
「容器を持って立ってるのだけって面倒ね。何が嫌って、動けないのがたまらないわ」
「こういったの作業は、容器の高さに合わせて台を作っておくとか、うまく木に縛り付けおくとかするんだろう(今回はベアイさんに道具を譲って貰ったけど、次からは容器を置く台とかも用意しないと。採取の仕方も、俺の知ってる方法と同じだったし)」
「なんでそうしなかったの? あたしもう腕が上がらないんだけど」
「自分で苦労して採取したんだ。それでこそ食べる喜びがあるだろ(樹液の方は十分も手伝ってなかったけどな。レラに容器をずっと持ってろと言って無理だから、そこは仕方がないんだが)」
「じゃあ街に戻りましょうか。ギルドにも報告しないと」
「そうだな。通り道だから、ベアイさんの所に顔を出して行こう(一応樹液を確認してもらいたいからな)」
「雲が厚くなってきた……雪?」
「だな。まだ降り始めで弱いから、急いで森を出よう」
コロコロ鳥の卵とミルキーウッドの樹液採取を終えた四人は、降り始めた雪が積もる前に、ベアイの待機する森の入口にあるギルドの臨時小屋に向かった。
コロコロ鳥の巣を離れてから少し、降り出した雪が強くなってきた。
吹雪いてないので、視界を妨げたり歩きにくかったりは今のところしない。
雪で地面がぬかるみ、歩きずらくなる前に森を抜けようと、三人は早足になる。
レラだけはカズ肩に乗っかり移動している。
吐く息白くなる一行の視線の先には、ギルドが臨時に作った小屋が小さく見えた。
カズは段々近付いて来る獣の反応が気になり、小屋の方は見てなかった。
もうすぐ森を抜けられるという所で、突如として木々の間から、一行の前に飛び出す生き物が。
立ち止まりその生き物を見ると、コロコロ鳥よりも少し大きいくらいのウサギだった。
明らかに一行が森から出ようとするのを邪魔していた。
カズは即座に《分析》を使用して、現れたウサギのことを調べる。
名前 : ヘビーラビット
種族 : 大兎
ランク: D
レベル: 20
力 : 300
魔力 : 68
敏捷 : 300
全長 : 180㎝前後
補足 : 生息する場所で体毛の色が変わり、兎と名の付く獣の中では最大。
・ 寒い場所を好んで生息し、多くの群れを成す。
・ ミルキーウッドの樹液を好み、雪降る季節になるとコロコロ鳥の巣に住み着き、雪が溶ける季節になるまで共に暮らす。
ヘビーラビットのステータスを確認したカズは【マップ】に映った数多くの反応が、同一の生物であると分かった。
数にしてざっと四十羽から五十羽。
今にも飛び掛かって来そうな好戦的なウサギを、カズはどう対処したものかと考える。
「でっかいウサギ。これが聞いてたヘビーラビット?」
「そうみたいだな」
「あのデブウサギ睨んでるんだけど。どうするの」
デブと言われた目の前のヘビーラビットは、言葉が解るのか、ただレラの態度が気にいらなかったのか、長い前歯をむき出しにして、カズの背中に隠れるレラに狙いを定めた。
「一言余計なこと(面倒なフラグを立てんな!)」
「そんなこと言ってないで向こう見て! 思い切り突っ込んで来てるんだけど!」
レラを注意していると、狙いを定めたヘビーラビットが、カズの後ろに隠れるレラ目掛けて勢いよく飛び掛かる。
カズは半歩下がって体を反らすと、飛び掛かるヘビーラビットの横から掌底を当てて方向を変える。
飛び掛かった勢いのまま、ヘビーラビットは木に激突した。
すると止まっていた獣の反応が動きだし、四人の居る場所に動き出してきていた。
「まずいな。今ので勝てないと思って逃げくれればよかったんだが、逆効果になったか」
「何がまずいの? ねえカズってば!」
カズの頭をペシペシ叩き、状況を説目しろと言うレラ。
「三人は小屋に居るベアイさんの所に」
「殺気が増えたわね」
「ヘビーラビットの仲間が、狙って来てるんだ。これ以上話してる暇はない。レラを連れて早く行ってくれ。あんなのが小屋にぶつかったら一溜りもない」
カズに乗っかるレラを抱えたビワは、アレナリアと共に走って森の入口にある小屋に向かった。
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