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四章 異世界旅行編 3 セテロン国

393 報奨は食材の採取場所で

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 ワイバーンの件での報酬は不要だと言うアレナリアに、せめてギルドから何かしらの報奨を出したいと申してきた。
 それならばと、アレナリアはコロコロ鳥の卵と、ミルキーウッドの樹液の採取場所の情報を希望した。

 ギルド職員達は暫し相談すると、サードキャニオンに向かうように言ってきた。
 コロコロ鳥の卵とミルキーウッドの採取出来る一番近い場所は、サードキャニオンから北東にある森の中だとギルド職員は言う。
 これは〝春風の芽吹き〟のルクリアから聞いていた情報と大体は一致した。
 ギルド職員の話では、その森に入るにはサードキャニオンの冒険者ギルドが出す許可証が必要になると言う。
 なんでも今回の一件で、乱獲を防止するために設けることになったのだと。
 本来はギルドが入念に調査してからでなくては、森に入る許可と、コロコロ鳥の捕獲と卵の採取は出来ないようになるのだが、今回はワイバーンとコロコロ鳥の卵を売っていた商人の件の報奨として、セカンドキャニオンのギルドから森に入りコロコロ鳥の卵とミルキーウッドの樹液を採取出来るように、サードキャニオンの冒険者ギルド宛の紹介状を用意するとのことだった。
 アレナリアは喜びを表情には出さず、冷静にギルドからの報奨を受け取ると答えた。

 ギルドからの用件は終了し、アレナリアとカズは紹介状を受け取るためそのまま会議室で待つ。
 アレナリアは〝春風の芽吹き〟にセカンドキャニオンを立つと話をして別れを言う。
 それを聞いたノースとルクリアは、とても残念そうな顔をする。

「纏まった金も入ったから、帝都に行って新しい装備を探そうと決めただろ」

「そうだぞノース、ルクリア。目的地は同じなんだ。また会えるさ」

 タルヒとシシモラが、ノースとルクリアを励ます。

「あなた達も行くことにしたの」

「装備屋のおっちゃんに相談したら、一度帝都に行って、色々な装備品を見て来いって」

「変な物を掴まされないように、自分の目を養って来いって言われ、帝都にある知り合いの店を紹介してくれたんです」

「それは良いことね」

「だからアレナリアさん。帝都でまた会いましょう」

「それまでには、魔力操作が出来てるものと思っておくわよ。あなた達」

「が、がんばります」

 苦笑いを浮かべ、アレナリアと別れを告げた〝春風の芽吹き〟は、ワイバーンの買い取り金の一部を受け取とり、ギルドを出て修理代を支払いに行き付けの装備屋に向かった。
 カズとアレナリアはギルド職員から、サードキャニオンの冒険者ギルド宛の紹介状と受け取る。
 そしてサードキャニオンまで出ている乗り合い馬車のことを教えてもらった。
 カズとアレナリアはギルドを出て宿屋に戻り、出発の用意を整えたレラとビワと共に、乗り合い馬車の出ている場所まで向う。
 途中の店でハチミツ入り塩クッキーを目にしたレラが「そうだ! クッキー作ってもらってない」と言い出した。
 コロコロ鳥の卵のことで忘れていたのを思い出し、クッキークッキーと連呼してカズに要求する。

「塩入なら売ってるから、今食べられるぞ(もう少しで街を出れたのに、このタイミングで思い出したか)」

「しょっぱいのはお菓子じゃない。あちしはハチミツたっぷりのクッキーが食べたい」

「今更言っても作る場所なんてないんだから、次の街まで我慢しろ。それにプリンを食べたいって言うから、食材を集めに行くんだろ」

「……わかった。これでプリンが作れなかったら、カズの髪を全部引っこ抜いてやるもん」

「俺の髪に八つ当たりするな(そんな理由で、ハゲたくはない)」

 歩いて街の外れ近くまで行くと、一台の馬車が停まっていたので、操作席に居た人物に話し掛け、乗り合い馬車であることを確認した。
 馬車の定員は五人なのだが、既に二人が乗っていたため、次の乗り合い馬車が来る時間を聞く。
 するも三日以内には来るんじゃないかと、曖昧に返答された。
 カズが徒歩で向かおうか考えていると、貸し馬車があることを教えられ、そちらに向かった。

 貸し馬車屋には十人乗れる大きな馬車と、三人用の小さな馬車が残っていた。
 カズは貸し馬車屋から小さい方の馬車を借り、それでサードキャニオンまで向かうことにした。
 借りた馬車に屋根はなく、以前使った馬車と同様、荷物を運ぶ用の仕様になっている。
 馬車を引く馬は年老いていたが、ホースよりはまだ若かった。
 馬車に乗りセカンドキャニオンの街を後にする。
 するとすぐにアレナリアとレラがお尻が痛いと言い始めた。
 馬車の乗り心地は言うまでもなく悪い。
 と言っても、それは自分達が乗って来たこれまでの馬車に比べればだ。
 貸し馬車を改良するわけにもいかず、とりあえずは畳んだ毛布を座布団代わりにした。

「最初からこうすれば良かった」

「本当ね。しかし馬車って、こんなに揺れたかしら?」

「今まで乗って来た馬車は、あまり揺れませんでしたね」

「三人とも忘れてないか? あれは俺が少し改良してただろ。その前はこれと同じ様に揺れてたぞ」

 あ! っと思い出す三人。

「だったら、そっちの馬車にしようよ。カズのアイテムボックスに入ってるんでしょ」

「人目があるから駄目。あと借り物だから、この馬車も改良出来ないからな」

「ええぇー」

 不満そうな顔をするレラ。

「何日移動すればサードキャニオンに着きそう?」

「貸し馬車屋の人の話では、五日から八日くらいだって言ってた」

 それを聞いたレラが、ビワの膝の上に移った。

「これは毎日寝る前に、私達三人のお尻をカズに揉んでもらわないと」

「なんでそうなる」

「乙女の柔肌がワイバーンの皮膚みたいに硬くなったら、カズだって嫌でしょ。だから毎日優しく揉んで。レラとビワ二人も、そう思うでしょ」

「あちしはいざとなったら、浮かんでればいいから」

 ビワの膝の上で、ごろりと横になりながら答えるレラ。

「わ…私は、自分で出来ます。で…でもしてもらえるなら……」

 久々に顔を赤らめ答えるビワ。

「……わかった。五分くらいな(まあそれくらいなら、コートの上からでもマッサージすればいいだろ)」

「「え!」」

 断ると思っていたカズの返答に、驚くアレナリアとビワ。
 そしてビワの顔は更に赤くなる。

「やってくれるの? ならあちしもね」

 一時いっときお尻を揉まれる事で頭がいっぱいになるアレナリアとビワだった。

 馬車を停めて小休止を何度か挟み、道を北上する。
 日が暮れる前に馬車を道の脇に停め、焚き火をして夕食の用意をする。
 道の先を見ると、所々に焚き火の明かりが見え、同じ様に野宿をする人達も。
 夜になるとぐっと気温は下がり、とても寒くなったので〈アースウォール〉を使い小屋を作り馬車ごと囲む。
 先程まで見えていた焚き火の明かりが見えなくなり、代わりに同じ様な形状の小屋らしき物が出来ていた。
 土属性の魔法が使える者は、誰しも考えることは同じのようだった。

 夜の間は借りた馬を凍死させないように、焚き火を絶やさないように気を付ける。
 夕食は香辛料で少しピリッと辛めにした、燻製肉ベーコンとジャガイモを使ったとろみのある温かいスープと、ハチミツをかけた焼き立てのパンを用意した。
 移動の疲れをハチミツの甘さで癒し、寒さをとろみのあるスープで身体を内から温める。
 暖房効果を使えるオーバーコートを着ていても、足下から上がってくる冷えは厳しく、寒冷耐性の指輪装備品を付けていなければ、今までの履き物では辛い。
 なので、サードキャニオンの街で寒い所用の履き物を探すことに決まった。

 アレナリア、レラ、ビワの三人は馬車の荷台で就寝し、カズは焚き火の番しながら馬の世話をすることに。

「コートを着て毛布を掛けてれば、寒くはないだろ。今日は慣れない馬車で疲れたろうから、早く寝ると良い」

「そうし…」

「その前に。ね、カズ」

「……何が?」

「何が? じゃないでしょ! 私達のお尻を揉んで、疲れをほぐして癒してくれる約束でしょ」

「あぁ……覚えてた?」

「忘れないでか!」

「わかったよ。マッサージすればいいんだろ。ただし冷えるから、コートの上からだぞ」

 アレナリアはにんまりとし、荷台に毛布を広げて防寒着を脱ぎ、うつ伏せになる。
 約束だから仕方がないかと、カズはオーバーコートの上からアレナリアの腰辺りを指圧する。

「そこはお尻じゃ、あ……でも気持ちいい」

「強さはこんなにもんか?」

「もう少し強くても。うッ、ちょっと強い」

 背中から腰にかけて、満遍なく指圧する。

「はい、五分経ったから終わり」

「まだ肝心なお尻ところが残ってるんだけど」

「尻は自分で出来るだろ」

「約束でしょ」

「ハァ……(ただ触ってほしいだけじゃないのか。よし、ならば)」

 お尻の肉を両手でぐっと押し上げて、それぞれを左右に広げて、円を書くようにマッサージする。

「ひゃッ! そんなに広げないでよ」

 珍しく恥ずかしそうに声を上げるアレナリア。

「運動不足で垂れたんじゃないか?」

「そ、そんなこと……」

「はい、終わり」

 最後にパンッとアレナリアのお尻を叩き、マッサージを終了する。
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