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四章 異世界旅行編 3 セテロン国
390 運搬依頼は大丈夫か?
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〝春風の芽吹き〟の面々は、ギルド職員から低く見られる事に傷付きもしたが、自分達も同じ感想だったため、悲しくもうんうんと頷き同意してしまう。
それを見てギルド職員達は少し安心した様子を浮かべると、続いてアレナリアに幾つかの質問をした。
・アレナリア達のパーティーランクや、各個人のステータス。
・何処かのギルドに所属し、拠点登録して活動をしているのか?
・もしくは旅の途中なら、何処から来て何処へ行くのか?
・可能ならこの街に残って、このギルドを軸に冒険者として活動をしてくれないか、と。
最後はギルドとしての希望が込められていた。
話しても大丈夫だと判断したことだけ、アレナリアはギルド職員に話した。
パーティー名が〝ユウヒの片腕〟だと言い、自分はBランクで元々オリーブ王国の大都市で、冒険者ギルドのサブ・ギルドマスターをしていたこと。
それとパーティーの代表者は自分でないこと。
一旦の目的は帝国中心都市に行くこと。
この場にいないレラとビワに関しては話さなかった。
カズのことは、パーティーの代表者とだけ教えた。
ギルド職員はそのカズにも話を聞きたいとアレナリアに言う。
「カズなら朝一緒に来た人よ。まだギルドに居るかわからないけど」
アレナリアの言葉を聞いた男性職員の一人が会議室を出て、受付のある一階に下り、今朝見たカズを探した。
だがそこに目的のカズはいなかった。
探しに来た男性職員は、受付の女性職員に確認をすると。
「その人でしたら、コロコロ鳥の運搬依頼を受けて、少し前に出た行きましたよ。北にある倉庫から、街中の飲食店に運ぶだけなので、夕方には報告に戻って来ると思います。あ、でも配達する卵の量次第ですかね」
依頼内容を聞いた男性職員は、時間が掛かる依頼だと判断して、本日の話し合いに同席してもらうのを断念した。
それはコロコロ鳥の卵は割れやすく、時間の掛かる面倒な荷物だと知っていたからだった。
会議室に戻る男性職員の表情は曇っていた、それはカズを話し合いの場に同席させることが出来ないという意味ではなく、受けた依頼を聞いたからだった。
≪ 小一時間前のギルド一階 ≫
アレナリアが〝春風の芽吹き〟とギルド職員に案内された後、カズは依頼書が貼られた掲示板の前で、一通り出ている依頼に目を通していた。
さてと、そう都合よくコロコロ鳥と、ミルキーウッドの樹液に関する依頼があれば良いんだけど。
貼ってある依頼は、野菜や果物を他の街から運搬してくるものや、街での煙突掃除など。
モンスターの討伐依頼もあったりするが、街から数日移動しなければならない場所だったり、今回の一件で危険視されたワイバーンに関する調査依頼。
そんな中で目を引いたのは、コロコロ鳥とその卵を倉庫から街の飲食店に運ぶ依頼。
目的の一つが手に入る可能性があると、カズは迷わずその依頼書を持って受付に移動した。
依頼書とギルドカードを提示すると、カズは受付の女性職員から依頼内容と依頼書に書かれた注意事項を口頭で聞いた。
注意事項というのは、コロコロ鳥の卵の扱いについてだ。
聞くと商品のコロコロ鳥の卵の殻は薄く割れやすいので、大事に扱うということだった。
そのことはコロコロ鳥をよく食べるセカンドキャニオンでは誰もが知っていること。
だが、依頼を受けたのが明らか大峡谷を渡って来た冒険者だと感じたため、受付の女性職員は気をきかせ、口頭で依頼書に書かれた注意事項を伝えたのだった。
依頼の期限が昨日から明日までの三日しかないのにも関わらず、この依頼が残っていたのは、リスクが大きと判断して手に取る物が少なかったからだろう。
たまに依頼書に手を伸ばそうとすると者はいたが、依頼内容に気付くと伸ばした手を引いて、他の依頼書に目を移していた。
それも当然か、卵が割れたりヒビが入ってしまったら、状態によっては弁償金を払わなくてはならないからだ。
コロコロ鳥の卵は一個銀貨一枚(1,000GL)と結構な高額品らしい。
報酬が遠出の運搬依頼と変わらない金額だが、高い乗船代を払って船に乗って来た者なら、弁償金があるような物好きの依頼を受けたりはしないだろ。
コロコロ鳥の卵の採取依頼を冒険者ギルドが出し、そのまま運搬も請け負っていれば、ある程度の弁償金は出るだろうが、そうでない場合は、依頼を請け負った者が破損した物の代金を払う事になるという、珍しく厳しい依頼だ。
そんな依頼を受けて解決すれば、この街の冒険者ギルドに有益だと判断してもらえると考え、依頼を受ける者はいる。
カズも少なからずそう考える一人、残り物には福あるだ。
カズは依頼を受けると、指定された目的地に向かいギルドを出る。
街の北側にある倉庫に向かっていると、荷物を持ちゆっくりと歩く冒険者らしき人とすれ違った。
大事そうに抱えているのを見ると、コロコロ鳥の卵を運んでいるのだと分かる。
目的の倉庫には依頼主と、同じ依頼を受けて来ていた冒険者が居たが、何やら揉めてるようだった。
少しすると、その冒険者は何も持たずに倉庫を出て行ってしまった。
依頼主にギルドから依頼を受けて来たことを伝えると、機嫌を悪くしたまま依頼の説明しだす。
「依頼は難しいことじゃない。注文があっあ店に商品を届けるだけだ。わかってると思うが、卵を割ったら弁償してもらうことになる。今の奴みたいに、知らなかったじゃ困るぞ」
依頼主の話では、たった今出て行った冒険者が卵を運んだが、扱いが悪く割ってしまい、届けた店から受け取りのサインをしてもらってないとのことだった。
それを弁償するように話すと「そんなのは聞いていない。配達はしたんだから依頼書にサインをしろ」と迫ったらしい。
そこで言い合いになり、怒った冒険者は倉庫を出て行ってしまったんだと。
「弁償のことは聞いてますので大丈夫です。どこに配達するか教えてください」
配達先をカズが聞くと、依頼主の男性は一枚の紙を渡してきた。
「それが配達先のリストだ」
紙には三十以上の店の名前か書かれていた。
「上から注文のを受けた順だ。明日までに全部配達しなけりゃならないのに、近場の四軒しか終わってない。今一人が卵を持って配達に行ってるんだが、時間が掛かってまだ一軒しか回ってない」
「二日目にして、まだ四軒だけ」
「おれが配達に出たら、倉庫はがら空きだから行けねえ。あんたはどれだけ運べそうだ?」
「俺一人で全部やったら、同じ依頼を受けに来た人に悪いですし、とりあえずはリストに書かれた半分を遠い方から回ってきます」
「おいおい、卵は多目に用意してあるが、割られ過ぎると店に渡せなくなるんだぞ!」
「わかってます。取り扱いには気を付けますから」
「半分と行ったが、どうやって運ぶんだ? 馬車の揺れでも割れちまうことがあるんだぞ」
「一つ聞きますが、そんなデリケートな卵を、どうやってここまで運んできたんですか? (馬車の揺れでも割れるなら、ただの荷運びには無理だろ)」
「たまたまアイテムボックスを使える者を雇うことが出来たんだ。本当はそいつに全部やってもらいたかったが、それをすると赤字になっちまうから出来なかった。くそがッ、足もと見やがって」
結構な報酬を要求されたのか、思い出して苛立つ依頼主の男性。
「無事配達したら、報酬とは別に俺から一つ頼みがあるんですが?」
「何!」
嫌な顔をする依頼主の男性。
「多く用意してあるなら、残った卵を少し安く売ってくれません? (本当は買い付けた場所を聞きたいんだけど、商売人だから言えないだろし、もっと機嫌が悪くなるだろうからな)」
腕を組み考える依頼主の男性。
「良いだろ。ただしリストに乗ってる店の半分を配達するのが最低条件だ。自分が言い出したことだ、文句はないな」
「わかりました」
「で、お前はどうやって運ぶんだ?」
カズはリストに書かれた量の卵と、コロコロ鳥の肉を【アイテムボックス】に入れる。
「俺もアイテムボックスを使えるので。容量は少ないですが(久しぶりに容量のこと言ったな)」
依頼主の男性は呆けた顔をしたあと、一瞬ニヤリと笑ったかのようカズには見えた。
「アイテムボックスを使えるのか。なら始めから言え。それと言っておくが、アイテムボックスが使えるからって、報酬の上乗せはしないぞ」
「追加で仕事をしない限り、依頼書通りの報酬額なのはわかってます。その代わり卵のことお願いします(後からせしめるような、そんなセコいことするか)」
依頼主の男性の言葉を聞いて、内心この依頼は大丈夫なのかと不安になるカズ。
それを見てギルド職員達は少し安心した様子を浮かべると、続いてアレナリアに幾つかの質問をした。
・アレナリア達のパーティーランクや、各個人のステータス。
・何処かのギルドに所属し、拠点登録して活動をしているのか?
・もしくは旅の途中なら、何処から来て何処へ行くのか?
・可能ならこの街に残って、このギルドを軸に冒険者として活動をしてくれないか、と。
最後はギルドとしての希望が込められていた。
話しても大丈夫だと判断したことだけ、アレナリアはギルド職員に話した。
パーティー名が〝ユウヒの片腕〟だと言い、自分はBランクで元々オリーブ王国の大都市で、冒険者ギルドのサブ・ギルドマスターをしていたこと。
それとパーティーの代表者は自分でないこと。
一旦の目的は帝国中心都市に行くこと。
この場にいないレラとビワに関しては話さなかった。
カズのことは、パーティーの代表者とだけ教えた。
ギルド職員はそのカズにも話を聞きたいとアレナリアに言う。
「カズなら朝一緒に来た人よ。まだギルドに居るかわからないけど」
アレナリアの言葉を聞いた男性職員の一人が会議室を出て、受付のある一階に下り、今朝見たカズを探した。
だがそこに目的のカズはいなかった。
探しに来た男性職員は、受付の女性職員に確認をすると。
「その人でしたら、コロコロ鳥の運搬依頼を受けて、少し前に出た行きましたよ。北にある倉庫から、街中の飲食店に運ぶだけなので、夕方には報告に戻って来ると思います。あ、でも配達する卵の量次第ですかね」
依頼内容を聞いた男性職員は、時間が掛かる依頼だと判断して、本日の話し合いに同席してもらうのを断念した。
それはコロコロ鳥の卵は割れやすく、時間の掛かる面倒な荷物だと知っていたからだった。
会議室に戻る男性職員の表情は曇っていた、それはカズを話し合いの場に同席させることが出来ないという意味ではなく、受けた依頼を聞いたからだった。
≪ 小一時間前のギルド一階 ≫
アレナリアが〝春風の芽吹き〟とギルド職員に案内された後、カズは依頼書が貼られた掲示板の前で、一通り出ている依頼に目を通していた。
さてと、そう都合よくコロコロ鳥と、ミルキーウッドの樹液に関する依頼があれば良いんだけど。
貼ってある依頼は、野菜や果物を他の街から運搬してくるものや、街での煙突掃除など。
モンスターの討伐依頼もあったりするが、街から数日移動しなければならない場所だったり、今回の一件で危険視されたワイバーンに関する調査依頼。
そんな中で目を引いたのは、コロコロ鳥とその卵を倉庫から街の飲食店に運ぶ依頼。
目的の一つが手に入る可能性があると、カズは迷わずその依頼書を持って受付に移動した。
依頼書とギルドカードを提示すると、カズは受付の女性職員から依頼内容と依頼書に書かれた注意事項を口頭で聞いた。
注意事項というのは、コロコロ鳥の卵の扱いについてだ。
聞くと商品のコロコロ鳥の卵の殻は薄く割れやすいので、大事に扱うということだった。
そのことはコロコロ鳥をよく食べるセカンドキャニオンでは誰もが知っていること。
だが、依頼を受けたのが明らか大峡谷を渡って来た冒険者だと感じたため、受付の女性職員は気をきかせ、口頭で依頼書に書かれた注意事項を伝えたのだった。
依頼の期限が昨日から明日までの三日しかないのにも関わらず、この依頼が残っていたのは、リスクが大きと判断して手に取る物が少なかったからだろう。
たまに依頼書に手を伸ばそうとすると者はいたが、依頼内容に気付くと伸ばした手を引いて、他の依頼書に目を移していた。
それも当然か、卵が割れたりヒビが入ってしまったら、状態によっては弁償金を払わなくてはならないからだ。
コロコロ鳥の卵は一個銀貨一枚(1,000GL)と結構な高額品らしい。
報酬が遠出の運搬依頼と変わらない金額だが、高い乗船代を払って船に乗って来た者なら、弁償金があるような物好きの依頼を受けたりはしないだろ。
コロコロ鳥の卵の採取依頼を冒険者ギルドが出し、そのまま運搬も請け負っていれば、ある程度の弁償金は出るだろうが、そうでない場合は、依頼を請け負った者が破損した物の代金を払う事になるという、珍しく厳しい依頼だ。
そんな依頼を受けて解決すれば、この街の冒険者ギルドに有益だと判断してもらえると考え、依頼を受ける者はいる。
カズも少なからずそう考える一人、残り物には福あるだ。
カズは依頼を受けると、指定された目的地に向かいギルドを出る。
街の北側にある倉庫に向かっていると、荷物を持ちゆっくりと歩く冒険者らしき人とすれ違った。
大事そうに抱えているのを見ると、コロコロ鳥の卵を運んでいるのだと分かる。
目的の倉庫には依頼主と、同じ依頼を受けて来ていた冒険者が居たが、何やら揉めてるようだった。
少しすると、その冒険者は何も持たずに倉庫を出て行ってしまった。
依頼主にギルドから依頼を受けて来たことを伝えると、機嫌を悪くしたまま依頼の説明しだす。
「依頼は難しいことじゃない。注文があっあ店に商品を届けるだけだ。わかってると思うが、卵を割ったら弁償してもらうことになる。今の奴みたいに、知らなかったじゃ困るぞ」
依頼主の話では、たった今出て行った冒険者が卵を運んだが、扱いが悪く割ってしまい、届けた店から受け取りのサインをしてもらってないとのことだった。
それを弁償するように話すと「そんなのは聞いていない。配達はしたんだから依頼書にサインをしろ」と迫ったらしい。
そこで言い合いになり、怒った冒険者は倉庫を出て行ってしまったんだと。
「弁償のことは聞いてますので大丈夫です。どこに配達するか教えてください」
配達先をカズが聞くと、依頼主の男性は一枚の紙を渡してきた。
「それが配達先のリストだ」
紙には三十以上の店の名前か書かれていた。
「上から注文のを受けた順だ。明日までに全部配達しなけりゃならないのに、近場の四軒しか終わってない。今一人が卵を持って配達に行ってるんだが、時間が掛かってまだ一軒しか回ってない」
「二日目にして、まだ四軒だけ」
「おれが配達に出たら、倉庫はがら空きだから行けねえ。あんたはどれだけ運べそうだ?」
「俺一人で全部やったら、同じ依頼を受けに来た人に悪いですし、とりあえずはリストに書かれた半分を遠い方から回ってきます」
「おいおい、卵は多目に用意してあるが、割られ過ぎると店に渡せなくなるんだぞ!」
「わかってます。取り扱いには気を付けますから」
「半分と行ったが、どうやって運ぶんだ? 馬車の揺れでも割れちまうことがあるんだぞ」
「一つ聞きますが、そんなデリケートな卵を、どうやってここまで運んできたんですか? (馬車の揺れでも割れるなら、ただの荷運びには無理だろ)」
「たまたまアイテムボックスを使える者を雇うことが出来たんだ。本当はそいつに全部やってもらいたかったが、それをすると赤字になっちまうから出来なかった。くそがッ、足もと見やがって」
結構な報酬を要求されたのか、思い出して苛立つ依頼主の男性。
「無事配達したら、報酬とは別に俺から一つ頼みがあるんですが?」
「何!」
嫌な顔をする依頼主の男性。
「多く用意してあるなら、残った卵を少し安く売ってくれません? (本当は買い付けた場所を聞きたいんだけど、商売人だから言えないだろし、もっと機嫌が悪くなるだろうからな)」
腕を組み考える依頼主の男性。
「良いだろ。ただしリストに乗ってる店の半分を配達するのが最低条件だ。自分が言い出したことだ、文句はないな」
「わかりました」
「で、お前はどうやって運ぶんだ?」
カズはリストに書かれた量の卵と、コロコロ鳥の肉を【アイテムボックス】に入れる。
「俺もアイテムボックスを使えるので。容量は少ないですが(久しぶりに容量のこと言ったな)」
依頼主の男性は呆けた顔をしたあと、一瞬ニヤリと笑ったかのようカズには見えた。
「アイテムボックスを使えるのか。なら始めから言え。それと言っておくが、アイテムボックスが使えるからって、報酬の上乗せはしないぞ」
「追加で仕事をしない限り、依頼書通りの報酬額なのはわかってます。その代わり卵のことお願いします(後からせしめるような、そんなセコいことするか)」
依頼主の男性の言葉を聞いて、内心この依頼は大丈夫なのかと不安になるカズ。
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