人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ

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四章 異世界旅行編 3 セテロン国

386 両パーティー揃っての食事会

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「お、きたきた。全員それぞれ飲み物持ってくれ」

 テーブルには数多くの料理と、麦シュワと温めた果実酒がテーブルに並べられた。
 一通り店の店員が料理を運び終え個室を出ると、麦シュワの入ったコップを持ちタルヒが立ち上がった。

「全員用意は良いか?」

 全員が飲み物の入ったコップを持ったか、タルヒが確認する。

「えー、先ずは渡船でオレ達に加勢してくれたアレナリアに、改めて礼を言う。そしてワイバーンをオレ達パーティーに譲ってくれたことも、改めて感謝する。そして…」

「リーダー長いよ」

「お礼を言うのは良いけど、飲み物持たせたままで長話は失礼じゃないの」

 ノースとルクリアに突っ込まれ、更に話を続けようとしたタルヒは言葉を飲み込んだ。

「そうだな。では乾杯!」

 タルヒの掛け声で、全員飲み物が入った容器を掲げる。
 タヒチとシシモラはぐいっと一気に中身を飲み干し、同じ飲み物を注文し、女性の面々は飲み物を一口飲むと、テーブルに並べられた料理に手を伸ばした。
 ほぼ肉類の料理だが、少しは野菜も使われいた。
 アレナリアやレラは気にせず食べていたが、ビワはあまり手が伸びてなかった。
 〝春風の芽吹き〟では、ルクリアが脂っこい肉には手を出そうとせず、鶏肉のようなサッパリとした肉を選んで食べていた。

「ビワさん、よかったらこれ食べてみて。『コロコロ鳥』の串焼き」

「あ…はい」

 一口大に切られた肉が、五個から六個串に刺されて焼かれた、言うところの焼き鳥。
 せっかく勧めてくれたのだからと、ビワは一串手に取り、一切れ口にする。

「ぁ……美味しい」

「良かった。わたしも脂の多いお肉が苦手でね。でもコロコロ鳥なら脂分が少くて、好きなの。香辛料で味付けした串焼きなら、少しくらい食べ過ぎても胃もたれしないわよ」

「ありがとうございます。コロコロ鳥なんてかわいい名前ですね」

「実物見るとわかるのだけど、丸くてコロコロしてるの。あれは完全に見た目で付けられた名前よ。お肉も良いけど、卵も美味しいわよ」

「たまご!」

 鳥の卵と聞いて、レラが声を上げルクリアを見る。

「え、ええ。コロコロ鳥の卵だけど、それが何?」

「美味しいって言った?」

「う、うん。黄身の味が濃くて、とっても」

「とっても! 欲しい! どこで売ってるの?」

 レラがルクリアの隣に移動し、コロコロ鳥の卵が欲しい詰め寄る。

「落ち着いてレラ。それじゃあ話が出来ないわよ」

 ビワはレラを抱き上げてルクリアから引き剥がし、自分が座っていた椅子に座らせ落ち着かせる。
 ほッとするルクリアの隣には、いつの間にかアレナリアの姿が。

「で、どこで買えるの」

「わ! アレナリアさんもですか? (いつ横に来たの?)」

「買えないのであれば、そのコロコロ鳥がどこに生息してるか教えてくれない?」

 真面目な顔をして聞くアレナリア。

「そんなに食べたいんですか?」

「まあ、その、レラがねレラが。ちょうど卵を探してたのだけど、どこにも売ってなくて」

 食い意地が張ってるとルクリアに思われたら、自分に対しての尊敬が失われるのでは、とアレナリアは考えていた。
 ルクリアとアレナリアのやり取りを見ていたカズは、今までレラと一緒になって肉をがっついてやつが、何を取り繕うとしてるんだ、と思っていた。

「美味しいと言っても、卵なんて焼くが茹でるかですよ。生じゃ食べられませんし、それとも他に食べ方が?」

「ちょっとね」

「それは興味深い。アレナリアさんになら教えても良いですけど、その他の食べ方をわたしにも教えてくれません?」

 暫し考えるアレナリアは、チラッとカズを見る。

「残念だけど、うちの食事担当はカズとビワなのよ」

「男の人が食事担当ですか……ではビワさん。アレナリアさんが言ってる料理を教えてくれない?」

「え…あ……その、卵だけじゃ足りなくて。あと牛乳が……」

「牛の乳かぁ……似たものならあるんだけど」

「牛乳がある!? だったらプリンが出来るじゃん!」

 座っておとなしくなったレラが、今度は牛乳と聞き興奮する。

「落ち着きなさいレラ。最後まで話を聞くのよ。ルクリアは牛乳に似たものと言ったの」

 レラをルクリアに詰め寄らせまいと、アレナリアが制止する。

「ごめんなさい。それでその牛乳に似たものって?」

「樹液です。食用になり牛の乳みたいなので『ミルキーウッド』と言われてます」

「コロコロ鳥の卵とミルキーウッドの樹液は、この街で売ってるの?」

「たまに出回ることはありますが、どこの店かはわからないですね。その店が独自に仕入れたり、常連の冒険者なんかに頼んで採取したり様々ですから。それに値が張ります」

「だから見つからなかったのね。じゃあ、どこで入手出来るか教えてくれる?」

「良いですけど、その前に教えてください。レラその子が言ったプリンて何ですか?」

「簡単に言えばデザートね」

「干し果物の蜂蜜漬けなら知ってますけど、卵とミルキーウッドの樹液から作るデザートですか? ……パンしか思いつかない」

「甘くて柔らかくて美味しいんだよ」

「甘い? 蜂蜜よりも?」

「砂糖を使ってるから、蜂蜜と甘さは少し違うかな」

「卵とミルキーウッドの樹液と砂糖……(わからないけど、美味しそう)」

 レラがプリンを食べた時の感想を教えると、ルクリアは未知のデザートに生唾を飲み込んだ。

「プリンのこと教えたんだから、卵とその樹液が採れる所教えてよ」

 入手場所が何処なのかと急かすレラ。

「一番近い所だと、ここから北東にある森の一部が、ミルキーウッドの群生地だったはず。ギルドに行けば、採取の依頼が出てるかも知れないわ」

「コロコロ鳥は?」

「運が良ければ同じ場所に現れます。コロコロ鳥はミルキーウッドの樹液が好物ですから」

「同じ場所なんて、それは好都合ね」

「あちしカズに教えてくる」

 タルヒとシシモラの二人と酒を交わすカズの所に行き、卵と牛乳に似た樹液のことをレラは話す。
 その時ルクリアは、わたしにもプリンを食べさせてくれませんか? と、アレナリアにお願いをしようか迷っていた。

「ねぇルクリア。甘くて柔らかくて、スゴく美味しいデザートがあるって聞こえたけど」

「なんだノース、聞いてたのか?」

「途中からね。それで本当なの?」

「アレナリアさん達が言うに、そうらしい」

「いいなぁ。ねぇアレナリアさん。それワタシにも食べさせてくれない?」

 ルクリアは自分が頼もうかと考え悩んでいたのに、ノースは遠慮なくアッサリとその言葉を口にした。

「な! だったらわたしも」

「卵はともかく、樹液が使えるかわからないから、先ずは現物を手に入れないと、なんとも言えないわね」

「ええ! 甘くて柔らかいデザートが……」

「そう…ですか」

 プリン未知のデザートが食べられないと思い、ガクリと肩を落とすノースとルクリア。

「じゃあじゃあ、もし樹液でも代用出来たら、ワタシとルクリアにも分けてもらえますか?」

「情報を教えてもらったからね。少しくらいは良いわよ」

「楽しみにしてます!」

「わたしも」

 プリンがまだ何かも知らないのに、ノースとルクリアの期待は大きくなる。

「おいおい、なに女だけで盛り上ってるんだ。オレ達も混ぜてくれよ」

「ちょっとタルヒ、飲むペースが早いわよ。ちゃんと見ててよシシモラ」

「今日くらいは良いじゃないか。昨日はワイバーン相手に、死ぬかどうかのギリギリの戦いをしたんだ」

「それはそうだけど……はぁ、明日は二日酔いで休みね。ギルドから呼び出しがなければいいのだけど」

 タルヒの顔は赤くなり、完全に酔っていた。

「お! そうだ。アレナリア達にオレ達パーティーの話を聞かせよう」

 タルヒが手に持ったコップに入ってる果実酒を一気に飲み干すと、パーティーを組んでからのことを語りだした。

「あ~あ、またリーダーの話癖が」

「わたし達だけじゃないんだから、簡潔に話してよ(始まったら酔い潰れて寝るか、気が済むまで話さないとおさまらないんだから)」

「わかってるって、手短にな手短に。えーオレ達が─」
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