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四章 異世界旅行編 3 セテロン国

385 〝春風の芽吹き〟との交流

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 街を散策しながら食材やら香辛料やらを買い揃えていると〝春風の芽吹き〟のノースとルクリアの二人とばったり出会う。

「あ、アレナリアさん」

「魔力は回復したようね」

「まだ完全にじゃないですけど」

「その分なら、あと一日も休めば大丈夫ね」

「アレナリアさん達は買い物ですか?」

「ええ。二人は……新しい装備を買いに?」

 アレナリアは二人が出て来た店に目を向けると、そこは小さな装備屋。

「安くて良いのがあればなんですけど、とりあえずは修理ですね」

「わたしは新しい弦と矢を買いに。あとは新しい防具を」

「街にはもっと品揃えが良さそうな大きな店があったけど、二人が出てきた店は行き付け?」

 アレナリアが言うように街には武器専門や防具専門の他に、戦闘に役立つ薬やマジックカプセルなどのアイテム専門の店がある。
 にもかかわらず二人が出て来たのは、剣に槍や斧などの武器だけではなく、盾や鎧などの防具や、その他のアイテムなども取り扱ってる店だった。 
 まさに町の小さな個人商店といった感じだ。

「そうなんですよ。お店はボロくて小さいですし、品揃え的には少ないんですけど、仕事はしっかりしてますし、店主のおっちゃんに頼めば、自分に合った装備品を探してくれるんです」

「ただ無愛想な店主なんで、なかなか新しいお客さんが付かないんですよ」

「もうルクリアったら、それを言ったらおっちゃんがかわいそうだよ」

「仕事がしっかりしてるなら無愛想でも良いじゃないか。それに自分の命を守る大事な装備を任せられる店があるっていうのは良いことだよ」

「そうなの。だから装備の状態を見ては、この街に来るようにしてるの。今回はワイバーンとの戦闘で防具がかなりやられちゃったから、おっちゃんに頼んで探してるところ」

「このまま立ち話もなんだから、このあと一緒に夕食でもどう?」

「それいいですね! ワタシもっとアレナリアさんにお話を聞きたいと思ってたんだ」

「だったらタルヒとシシモラを呼んで来ないと。わたし達だけアレナリアさん達と食事をしたなんて知ったら、あとがうるさいわよ」

「それなら後で落ち合いましょう。場所は……」

「アレナリアさん達が泊まってる宿の前でどうですか? ワタシ達が泊まってる宿もすぐ近くですし」

「それで良いわ。その時に私のパーティーメンバーも紹介するわね」

 アレナリアの後ろで話が終わるのを待っていたカズとビワが、ノースとルクリアに軽く会釈をすると、二人も同じ様に会釈をすると、タルヒとシシモラが待つ宿屋に戻っていった。
 レラは一人手を振っていた。

「アレナリアが食事に誘うとは思わなかった」

「彼女らのパーティーはこの辺りで活動してるみたいだし、話を聞くには良いでしょ。素直で良い子達だから」

「ノースって子は、アレナリアに興味津々って感じだな」

「私と同じで戦闘が魔法主体だからじゃないの。あと勝手に決めちゃったけど、レラとビワは大丈夫だった?」

「あちしは別に良いよ」

「私も…大丈夫です」

「ビワは人見知りだったわね」

「アレナリアも元々そうだろ(俺もだけも)」

「元々ね。ビワもさっきの二人となら大丈夫でしょ。レラはくれぐれも飛んだりしないようにね。見た目は小人なんだから」

「わかってるもん。それより夕食は甘いものも用意してよ」

「って言われてもなぁ。どこの店が良いかなんてわからないし、そこは彼女達に任せるしかない。だからその辺はアレナリアに伝えてもらおう」

「言ってみるわ」

 〝春風の芽吹き〟と合流するため、この日の買い物を終わりにして宿屋に戻る。
 宿屋の従業員にギルドから連絡があったかを尋ねたが、まだ連絡は来ていなかった。
 同席する〝春風の芽吹き〟の二人と出会ったことで、まだ連絡がないと予想はしていたが、一応宿屋に戻ったら聞くことにしてはいた。
 途中で魔法の効果が切れて、レラがフェアリーであることがバレないように、一度部屋に戻ってアレナリアがイリュージョンを掛け直した。
 決して悪いパーティーではないだろうが、知り合って二日しかたってない相手に、教えられる内容ではない。
 助けられた側だとはいえ、それは〝春風の芽吹き〟も同様の考えのはず。
 話せることと、話せないことはあるだろう。

 部屋で一休みし、時間を見計らって四人は宿屋を出る。
 五分程待つと〝春風の芽吹き〟の四人が防具を脱ぎ、厚手の服に着替えてやって来た。
 軽くアレナリアと言葉を交わすと、行き付けだと言う店に案内される。
 着いた飲食店は、カズ達が泊まっている宿屋から、歩いて十数分程の路地裏に場所だった。
 見た目的に油汚れで壁に模様が出来てるかと思えたが、店の中は薄汚れた外見とは違い、以外ときれいだなとカズ達は思った。

「あ、その表情を見ると、外と同じで中も汚れてると思ってたでしょ」

 ノースがアレナリアの顔を見てズバリ言い当てた。

「そんなことは……顔に出てた?」

「なんとなくですけど。うちのリーダーが初めてのひとを連れて来ると、必ず言うんですよ。だからワタシが先に言ってみただけです」

「ノースがタルヒと同じことしなくていいの」

「ルクリアの言う通りだぞ。でないとタルヒみたいに友達なくすぞ」

「え! リーダー友達いないの?」

「おい、ちょっとまて! 誰が友達いないだ!」

「だよね。友達の十人や二十人いるよね」

「オレにだって……」

「ちなみに、ワタシやルクリアやシシモラは、仲間であって友達じゃないよ」

「……オヤジ、八人だから二階の個室に使わせてもらうぜ。オレはいつものな。アレナリア達も注文してから上がって来い」

「ええ(誤魔化したわね)」

「はい(誤魔化したのはいいが、いきなり雰囲気を悪くしないでほしい)」

「あちしはとりあえずお肉ね(友達いないんだ。かわいそ)」

 ばつが悪いと感じたタルヒは、一人で先に店の二階に上がっていってしまった。

友達がいないそのことは言わないって言ったでしょ」

「すまん。つい口走った」

 シシモラが余計なことを言ったと謝る。

「ノースもよ。その話題を広げないの」

「えへへ、ごめんルクリア。冗談で皆を和ませようとしたんだけど、裏目に出ちゃった」

「ごめんなさいアレナリアさん。ほら二人も」

 ルクリアに言われて、ノースとシシモラは、アレナリアやカズ達に謝った。

「ごめんなさいアレナリアさん。みなさんも」

「私達もその程度の口喧嘩はよくするから、別に気にしないわ」

「俺も気にしてないですから」

「その程度じゃ、あちしとアレナリアの口喧嘩には程遠いわね」

「一言多いわよレラ。ビワも気にしてないわよね」

「はい…大丈夫です」

 相手が女性とは言え、やはりビワはまだ人見知りをする。

「ありがとう。とりあえず好きなもの頼んで、二階の個室に行きましょう。足りなければ後で追加注文すればいいから」

 ルクリアに言われ、各自料理を一品二品と飲み物を頼み、先に二階へ上がったタルヒの所に向かった。
 二階にある二つの個室の内片方は裏路地に面しているため窓があり、もう一方の部屋は出入口の扉しかなく窓はない。
 内密の話ならば後者の部屋を選ぶだろうが、今回の楽しく食事をするのが目的なので、タルヒは前者の部屋を選んだ。
 部屋には中央にテーブルが一台と、椅子が六脚しかなかったので、タルヒがもう一方の部屋から二脚運んできていた。

 各自テーブルの左右に別れて座り、料理が運ばれて来る前に、改めて自己紹介をる。
 カズは当たり障りのない紹介をする。
 パーティーのリーダーが自分だと教えると、一緒に戦闘した四人はアレナリアがパーティーのリーダーだと思ってたという反応をした。
 そう思ってくれるならと、カズはアレナリアがやろうとしなかったので、自分がしているというていで話した。
 アレナリアは何か言いたそうだったが、察して話を合わせてくれた。
 レラに関しては魔法で見た目を変えているので、そのまま小人ということにし、ビワも狐の獣人ということで通した。
 二人はアレナリアが紹介した。
 ビワは人見知りをしていたから。
 レラに関しては、余計なことを言うかもしれないから、と。
 黄色い毛をした狐の獣人は珍しいらしく〝春風の芽吹き〟の面々がじっとビワを見る。
 ビワが下を向いて顔を隠したので、カズやアレナリアが注意をしようとした。
 が、その前にルクリアが、はッ! と気付き、仲間の三人に目を向けた。

「こら! タルヒ、シシモラ、女性をまじまじと見るんじゃない!」

 ルクリアに言われ、二人は顔を上や横に向けて、ビワから視線を外す。

「すまない」

「わるい」

「うちの男どもがごめんなさい」

「い…いえ……大丈夫…です」

「ビワはちょっと人見知りで、特に男性には。だから二人も、あまり気にしないで」

「ごめんなさいビワさん。ってノースあんたはいつまで見てんのよ!」

「え? ワタシ女だから良いでしょ」

「同じ女でも、ずっとじろじろと見られたら嫌でしょうが」

「わかったから、そんなに怒らないでよ。ごめんなさいビワさん」

「は…はい。こちらこそ」

 お互い自己紹介が終わったところで、頼んだ料理と飲み物が運ばれてきた。
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