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四章 異世界旅行編 3 セテロン国
375 セテロンで奴隷を持つ者の行動
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馬車からそっと顔を出し、カズに言われた方向に目を向けると、武器を持ち歩いて近付く四人と、先日に接触してきた馬に乗る二人の男の姿を見た。
「ビワとレラは馬車から出ないように。アレナリアは万が一の事を考えて、二人とホースを護ること。連中は俺一人で対処するから」
「あの程度、私だって出来るわよ。もちろん油断なんかしないわ。だからカズがレラとビワを護ってあげて」
カズは少し黙り考えて、今の心の内を話す。
「アレナリアがあの程度の連中に負けるとは思ってない。もちろん話した通り信用もしてる。だだこれは俺の覚悟を試す為でもあるんだ」
「もしか…」
「あの人達を…殺すんですか?」
カズの覚悟をという言葉が気になり、アレナリアの喋りを遮って、ビワがその思いを口に出す。
アレナリアも同じことを思っていたので、ビワの言ったことに頷き同意をしてカズを見る。
レラも真剣な話をしてると分かり、黙って口を出さないようにした。
心配そうにするビワの表情を見て、カズはビワの言ったことを否定する。
「覚悟と言っても、殺しすという意味じゃないよ。もちろん場合に寄っては、そういうこともあるかも知れない。でも出来るならば人は、もちろん人じゃなくて他の種族もだけど、簡単に命を奪おうなんて思ってない(それを言ったら、獣やモンスターの討伐はどうなんだと、レラにでも言われそうだが。さすがに今は言ってこないだろ)」
「そう…ですか。良かった」
ほっと安心するビワとレラ。
人を殺めて性格が変わってしまうカズなんて見たくないと、ビワとレラは思っていた。
そんなことにはならないだろうとアレナリアは思っていたが、もし人を殺めた事で、精神を病んで変わってしまったらと、少なからず心配はあった。
三人に今の気持ちを告げると、カズは馬車から降り、近づいて来る六人の方へ向かった。
「一人出て来たぞ。あの男を殺れば、あとは女だけだって話だろ」
「男も取っ捕まえてるんだよ。殺っちまったら、お前の分け前はねぇぞ」
「チッ、面倒だな。おい、テメェら三人が男を取っ捕まえてこい!」
馬に乗る一人の男から、カズも殺さずに捕らえろと注意され、左腕に傷のある男が舌打ちをして、首に枷をはめた奴隷に命令する。
主人の命令には逆らえず、所々錆びた短剣やナイフを構えカズを囲むように移動する。
馬に乗る二人はその様子を高みの見物を決め込み、奴隷三人に命令した左腕に傷のある男は、横目でカズの行動を監視しつつ一人馬車へと向かう。
「よしやれ! そいつを拘束したら連れて来い。自分の女が目の前で素っ裸にされ、オレになぶられるのをしっかりと見せてやるぜ」
左腕に傷のある男の言葉を聞き、馬に乗り少し離れた所から全員の動きを見る二人は顔を曇らせる。
「あいつめ」
「これだから奴を呼びたくはなかったんだ」
「そう言うな。奴の奴隷二人は戦闘に手慣れてる元盗賊だ。枷がなければ狙われるのは奴自身」
「物好きな奴だ。おれの奴隷を扱き使って、使い物にならなくしないだろうな」
「そんなことすれば分け前が減るんだ。奴だってそのくらいは奴隷に言い聞かせてあるだろ」
「見張りをさせてたお前の獣人奴隷は来ねぇのか?」
「腹でも減らせてへばってんだろ。こっちが片付くまでに来なければ売り飛ばす。獣人だから数日飯を食わせなくても使えるかと思ったんだが、てんで役に立たねぇ」
「なら今回の獲物を売った金で、役に立つ奴隷を買え」
既にカズ一行を捕らえ、奴隷商に売り渡す算段をする馬上の二人。
「さてどんなもんだ。先ずはおめぇが行け」
元盗賊の奴隷が、馬に乗る男の奴隷にカズを攻撃しろと命令する。
自分より格上だと知っている男は、元に盗賊の言うことを聞き、カズにナイフを突き付ける。
「36…43…45、あっちの二人が41(一人馬車に向かってるアイツがレベル52のスキル持ち)」
カズはこの時既に、六人のステータスを把握していた。
「ぶつぶつとなに言ってやがる!」
ナイフを突き付ける男が、脅して言うことを聞かせるようと、手始めにカズの頬を狙いナイフを持つ腕を振る。
カズの頬を切りつけたと思った時には、ナイフを持った腕を捻りあげられ、次の瞬間には地面に叩き付けらた。
痛みを感じたのはほんの一瞬、男の意識は遠のき気を失う。
目の前でカズの動きを見た二人の元盗賊奴隷は、顔から余裕の笑みが消える。
武器を持つ手に力を入れ強く地面を蹴り、カズとの間合いを詰める。
元盗賊奴隷の二人は左右からカズの頭部と足を狙い、錆びた短剣と欠けた剣を振るう。
余裕の笑みが消えた時から、二人の頭からはカズを捕らえ拘束するという命令が難しいと判断し、仕留める方向へと思考が切り替わった。
「あいつら本気になりやがった。男は取っ捕まえろと言ったのに。まあいいだろ。たまには本気で殺らせて発散させねぇと、オレの寝首を掻かれねぇ」
左腕に傷のある男は、馬車まであと数十メートルの所にまで迫る。
視線を奴隷から馬車に移し、馬車に隠れる女を想像して舌なめずりをする。
馬車まであと数メートルの所で、後ろ腰に携える短剣を鞘から抜き構える。
「汚ねぇ馬車を燃やして、女をあぶり出してやるぜ。おらッ燃やせ〈ファイヤーボール〉」
魔法名を口にすると、短剣にはめ込まれた赤い色の水晶が輝き、拳大の火の玉が短剣の先から放たれた。
直撃した火の玉がボッと燃え上がる。
「うぁ!! 熱い熱い! 火を消し…」
左腕に傷のある男が放ったファイヤーボールは、馬車ではなく馬に乗る男の一人に直撃した。
男は地面を転が回り、自分を取り巻く火を消そうとする。
馬に乗るもう一人の男が、自分の上着を脱ぎ、転げ回り燃える男に被せ火を消した。
川から距離があったため、とっさにしたことだった。
「おい! 何しやがる!」
常につるんでいた仲間が攻撃を受け、火を消した男が左腕に傷のある男を怒鳴り付ける。
「どういうことだ? オレは確かに馬車を狙って」
ぐるりと周囲を見渡すと、近くには奴隷三人が倒れ、今まで自分が居た場所には、馬車で来たカズが立っていた。
≪ 五分前 ≫
左腕に傷のある男が視線をカズから馬車に向けた直後、元盗賊の奴隷が持つ欠けた剣と頭部を狙った錆びた短剣が、薄い膜に阻まれると同時に、ガキィンという音とともに折れた。
カズは攻撃を受ける直前に〈バリア・フィールド〉使用し、自分を囲むよう小さく張っていた。
目を凝らせばうっすらと光る半透明の膜のようなものが見えるが、それにまったく気付いてなかった元盗賊の奴隷二人は、なぜ武器が折れたのか皆目見当がつかなかった。
一歩大きく後退した元盗賊の奴隷二人は、目の前で起きた出来事に驚き、狙ったカズと折れた武器を交互に見て動きを止めた。
カズはスッと二人の背後に回って襟首の辺りに手をかざし、威力を下げた〈ライトニングショット〉を使用した。
元盗賊の奴隷二人は感電し、白目を向きバタリと倒れた。
使い勝手が良く便利だと、改めて実感するカズ。
馬車目前で武器を持ち、魔法を放とうとしてるのに気付いたカズは〈チェンジ〉を使用し、自分と左腕に傷のある男の場所を入れ替えた。
それに気付かず左腕に傷のある男は、短剣にはめ込まれた赤い水晶に付与された〈ファイヤーボール〉を放った。
放たれた火の玉は、くしくも馬に乗る二人の男の内一人に命中した。
≪ そして今現在 ≫
「あと二人片付けたら終わるから、もう少し待っててくれ」
「何か手伝おうか?」
「今は大丈夫。ただ、もうすぐ昨日の獣人二人が来るから、近づかないように言っておいて。あと終わったら話を聞きたいからって」
「分かったわ」
正面から馬車を覗きのみ、アレナリアに現状の報告をして、残りの二人の所に向かった。
「ビワとレラは馬車から出ないように。アレナリアは万が一の事を考えて、二人とホースを護ること。連中は俺一人で対処するから」
「あの程度、私だって出来るわよ。もちろん油断なんかしないわ。だからカズがレラとビワを護ってあげて」
カズは少し黙り考えて、今の心の内を話す。
「アレナリアがあの程度の連中に負けるとは思ってない。もちろん話した通り信用もしてる。だだこれは俺の覚悟を試す為でもあるんだ」
「もしか…」
「あの人達を…殺すんですか?」
カズの覚悟をという言葉が気になり、アレナリアの喋りを遮って、ビワがその思いを口に出す。
アレナリアも同じことを思っていたので、ビワの言ったことに頷き同意をしてカズを見る。
レラも真剣な話をしてると分かり、黙って口を出さないようにした。
心配そうにするビワの表情を見て、カズはビワの言ったことを否定する。
「覚悟と言っても、殺しすという意味じゃないよ。もちろん場合に寄っては、そういうこともあるかも知れない。でも出来るならば人は、もちろん人じゃなくて他の種族もだけど、簡単に命を奪おうなんて思ってない(それを言ったら、獣やモンスターの討伐はどうなんだと、レラにでも言われそうだが。さすがに今は言ってこないだろ)」
「そう…ですか。良かった」
ほっと安心するビワとレラ。
人を殺めて性格が変わってしまうカズなんて見たくないと、ビワとレラは思っていた。
そんなことにはならないだろうとアレナリアは思っていたが、もし人を殺めた事で、精神を病んで変わってしまったらと、少なからず心配はあった。
三人に今の気持ちを告げると、カズは馬車から降り、近づいて来る六人の方へ向かった。
「一人出て来たぞ。あの男を殺れば、あとは女だけだって話だろ」
「男も取っ捕まえてるんだよ。殺っちまったら、お前の分け前はねぇぞ」
「チッ、面倒だな。おい、テメェら三人が男を取っ捕まえてこい!」
馬に乗る一人の男から、カズも殺さずに捕らえろと注意され、左腕に傷のある男が舌打ちをして、首に枷をはめた奴隷に命令する。
主人の命令には逆らえず、所々錆びた短剣やナイフを構えカズを囲むように移動する。
馬に乗る二人はその様子を高みの見物を決め込み、奴隷三人に命令した左腕に傷のある男は、横目でカズの行動を監視しつつ一人馬車へと向かう。
「よしやれ! そいつを拘束したら連れて来い。自分の女が目の前で素っ裸にされ、オレになぶられるのをしっかりと見せてやるぜ」
左腕に傷のある男の言葉を聞き、馬に乗り少し離れた所から全員の動きを見る二人は顔を曇らせる。
「あいつめ」
「これだから奴を呼びたくはなかったんだ」
「そう言うな。奴の奴隷二人は戦闘に手慣れてる元盗賊だ。枷がなければ狙われるのは奴自身」
「物好きな奴だ。おれの奴隷を扱き使って、使い物にならなくしないだろうな」
「そんなことすれば分け前が減るんだ。奴だってそのくらいは奴隷に言い聞かせてあるだろ」
「見張りをさせてたお前の獣人奴隷は来ねぇのか?」
「腹でも減らせてへばってんだろ。こっちが片付くまでに来なければ売り飛ばす。獣人だから数日飯を食わせなくても使えるかと思ったんだが、てんで役に立たねぇ」
「なら今回の獲物を売った金で、役に立つ奴隷を買え」
既にカズ一行を捕らえ、奴隷商に売り渡す算段をする馬上の二人。
「さてどんなもんだ。先ずはおめぇが行け」
元盗賊の奴隷が、馬に乗る男の奴隷にカズを攻撃しろと命令する。
自分より格上だと知っている男は、元に盗賊の言うことを聞き、カズにナイフを突き付ける。
「36…43…45、あっちの二人が41(一人馬車に向かってるアイツがレベル52のスキル持ち)」
カズはこの時既に、六人のステータスを把握していた。
「ぶつぶつとなに言ってやがる!」
ナイフを突き付ける男が、脅して言うことを聞かせるようと、手始めにカズの頬を狙いナイフを持つ腕を振る。
カズの頬を切りつけたと思った時には、ナイフを持った腕を捻りあげられ、次の瞬間には地面に叩き付けらた。
痛みを感じたのはほんの一瞬、男の意識は遠のき気を失う。
目の前でカズの動きを見た二人の元盗賊奴隷は、顔から余裕の笑みが消える。
武器を持つ手に力を入れ強く地面を蹴り、カズとの間合いを詰める。
元盗賊奴隷の二人は左右からカズの頭部と足を狙い、錆びた短剣と欠けた剣を振るう。
余裕の笑みが消えた時から、二人の頭からはカズを捕らえ拘束するという命令が難しいと判断し、仕留める方向へと思考が切り替わった。
「あいつら本気になりやがった。男は取っ捕まえろと言ったのに。まあいいだろ。たまには本気で殺らせて発散させねぇと、オレの寝首を掻かれねぇ」
左腕に傷のある男は、馬車まであと数十メートルの所にまで迫る。
視線を奴隷から馬車に移し、馬車に隠れる女を想像して舌なめずりをする。
馬車まであと数メートルの所で、後ろ腰に携える短剣を鞘から抜き構える。
「汚ねぇ馬車を燃やして、女をあぶり出してやるぜ。おらッ燃やせ〈ファイヤーボール〉」
魔法名を口にすると、短剣にはめ込まれた赤い色の水晶が輝き、拳大の火の玉が短剣の先から放たれた。
直撃した火の玉がボッと燃え上がる。
「うぁ!! 熱い熱い! 火を消し…」
左腕に傷のある男が放ったファイヤーボールは、馬車ではなく馬に乗る男の一人に直撃した。
男は地面を転が回り、自分を取り巻く火を消そうとする。
馬に乗るもう一人の男が、自分の上着を脱ぎ、転げ回り燃える男に被せ火を消した。
川から距離があったため、とっさにしたことだった。
「おい! 何しやがる!」
常につるんでいた仲間が攻撃を受け、火を消した男が左腕に傷のある男を怒鳴り付ける。
「どういうことだ? オレは確かに馬車を狙って」
ぐるりと周囲を見渡すと、近くには奴隷三人が倒れ、今まで自分が居た場所には、馬車で来たカズが立っていた。
≪ 五分前 ≫
左腕に傷のある男が視線をカズから馬車に向けた直後、元盗賊の奴隷が持つ欠けた剣と頭部を狙った錆びた短剣が、薄い膜に阻まれると同時に、ガキィンという音とともに折れた。
カズは攻撃を受ける直前に〈バリア・フィールド〉使用し、自分を囲むよう小さく張っていた。
目を凝らせばうっすらと光る半透明の膜のようなものが見えるが、それにまったく気付いてなかった元盗賊の奴隷二人は、なぜ武器が折れたのか皆目見当がつかなかった。
一歩大きく後退した元盗賊の奴隷二人は、目の前で起きた出来事に驚き、狙ったカズと折れた武器を交互に見て動きを止めた。
カズはスッと二人の背後に回って襟首の辺りに手をかざし、威力を下げた〈ライトニングショット〉を使用した。
元盗賊の奴隷二人は感電し、白目を向きバタリと倒れた。
使い勝手が良く便利だと、改めて実感するカズ。
馬車目前で武器を持ち、魔法を放とうとしてるのに気付いたカズは〈チェンジ〉を使用し、自分と左腕に傷のある男の場所を入れ替えた。
それに気付かず左腕に傷のある男は、短剣にはめ込まれた赤い水晶に付与された〈ファイヤーボール〉を放った。
放たれた火の玉は、くしくも馬に乗る二人の男の内一人に命中した。
≪ そして今現在 ≫
「あと二人片付けたら終わるから、もう少し待っててくれ」
「何か手伝おうか?」
「今は大丈夫。ただ、もうすぐ昨日の獣人二人が来るから、近づかないように言っておいて。あと終わったら話を聞きたいからって」
「分かったわ」
正面から馬車を覗きのみ、アレナリアに現状の報告をして、残りの二人の所に向かった。
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