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四章 異世界旅行編 3 セテロン国
374 セテロンでの奴隷にの在り方
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捕まえた女は売り飛ばし、男は奴隷にするのに狙われてるカズ一行。
後方の離れた場所から監視している奴隷の二人を警戒しつつ、四人は夕食を取る。
「今日も冷えるから、先にスープを飲んで内から身体が温めると良い。生姜を入れてあるから温まるぞ」
この日の夕食はカズが用意をして、ビワが取り分ける。
「あんな奴等にお金なんて渡さなければいいのに。あ、あちし具は多くねビワ」
「レラの言う通り、私もそう思うわ。でもセテロンを出るまでは、極力目立たないようにしようって決めたでしょ。私は具を少な目ねビワ」
「多少の金銭で面倒事を回避出来そうなら、それに越したことはないだろ。まあ、さっきの感じだと、何か企んでそうだけど」
「それじゃ、お金渡したのに意味ないじゃん」
「こっちが下手に出てれば、相手は自分の方が格上だと思って油断するだろ。だから意味なくはないんだよ。それに今は、ホースを気に掛けてやらないと(せめてセテロンを抜けるまでもてば)」
「あちしのごはん分けてあげるから、がんばって。あちし達ともっと旅をしようよぉ。あ! カズなら若返る特別なカードとか持ってるんじゃないの?」
「若返る……そんなのあるの!」
「あるわけないだろ! 適当なこと言うなレラ」
ホースの背中に乗り、元気付けながら馬鹿げたことを言うレラ。
いつものごとき楽しげなやり取りを聞き、それに答えるように、ヒヒィーンと一声鳴くホース。
何処と無くホースも嬉しそうな顔をしているように見えたのは、決して勘違いではないだろう。
◇◆◇◆◇
馬に乗った二人の男と接触した翌日のこと、後方から尾行し監視していた二人が、カズ達の馬車に追い付き姿を現した。
現れた二人は、ウサギと犬の獣人だった。
当然警戒をしてるため、殺気を出し近付いて来るなら、カズとアレナリアはそれ相応の対処はするつもりでいた。
だがしかし、二人の獣人が接触してきた理由は、空腹に耐えきれず昼食の匂いに誘われたからであった。
武器を持ち脅して食料を奪おうとするわけでもなく、頭を下げ少しでもいいから分けてほしいと言ってきた。
「こそこそとあちし達をつけてんの分かってるんだから! お腹が空いたなら、自分達で何とかしなさいよ!」
物怖じしないでハッキリと言うレラだが、実際はカズの後ろに隠れ顔を覗かせながらだ。
「威勢がいいのは良いんだが、毎回俺の後ろに隠れて言うなよ」
「だって急に怒りだして叩かれたら痛いでしょ。カズはあちしが怪我してもいいの」
「だったら一番最初に突っ掛かって行かなければいいだろ」
「ぅ……」
カズとレラの短いやり取りの間も、ぐぅ~ぎゅるるるとお腹を鳴らす二人の獣人。
「カズさん」
かわいそうだから食べ物を分けてあげたいと、目で訴えるビワ。
「どうするのカズ」
「少しくらいなら分けてやっても良いだろう。ただし、話を聞かせてもらうからな」
ビワが器にスープと入れ、パンにベーコンと野菜を挟んだものを二人の獣人に渡した。
スープを飲み身体を温めると、パンにかぶり付く二人の獣人。
よく見れば上下着ている物の裾はボロボロになり、痩せ細ってろくすっぽ食べてないことが分かる。
「食べたら話を聞かせてよね」
「だから俺の後ろに……まあいいや。幾つか尋ねる。答えられないことは、無理に答えなくていい」
空腹が満たされた二人の獣人に、カズは質問をする。
「何の目的で俺達をつけてるんだ?」
「おれらは昨日あんたに話し掛けた二人組の奴隷なんだ」
「僕らそいつらの命令で、あんた達が道を外れて他へ行かないよう、監視するように言われて」
「その二人組、今はいないんだから逃げればいいじゃん」
当然の疑問を投げ掛けるレラ。
「逃げても枷があるから、奴隷商に見つかったら、すぐに捕まえられて所有者の元に戻されるだけさ」
「あなた達が付けてるその枷に、奴隷を買った…つまり所有者の登録がしてあるの?」
奴隷だと言う獣人二人が話すことに疑問を持ったアレナリアも質問をする。
「国に登録してある奴隷商から奴隷を買うと、枷には登録した持ち主の情報が書き込まれるんだ。だからおれらは何処にも逃げられない」
「僕らの枷は死ぬまで外されることはないさ。生きるには、金持ちに気に入らるようにするか、言う通り道具として使われるか、女なら慰みものとされるかさ」
「奴隷の扱いに対しての規約はないの? 見たところあまり食べてないみたいだけど」
「この国ではあって無いようなものさ。奴隷にされるにしても、せめて他の国ならって思ったさ」
どうしようもないと分かってはいるが、話していると悲しくなり、つい項垂れてしまう二人の獣人奴隷。
「だったら枷を壊して逃げれば?」
「そんな簡単に壊せるなら、奴隷だけを置いてくもんか」
「それに枷を壊そうにも、そんな都合の良い道具や武器なんてないさ。剣や斧でなら壊せるかもだけど、そんなことしたら腕ごとバッサリ。腕を失って逃げても、この国のに居る限りまた奴隷にされるだけさ」
「そういうこと。枷があるから逃げられないんだよ。今みたいに自由に動けるだけ、奴隷としてはましなんだ。それにうまく枷だけ壊れても、解除せずに外れると爆発する仕組みなんだ」
二人の獣人奴隷から、現状セテロンでの奴隷の在り方を聞き、アスチルから聞いたかつてのセテロンと違えばと、少しは考えていたが、それを完全に否定されたように思えた。
「あなた達これからどうするの? 監視する対象の私達と接触しちゃったけど」
二人の獣人奴隷は顔を見合わせる。
「また離れた所から監視するさ。襲えとは言われてないから、何もするつもりもない。ま、命令されなければだけど。食い物ありがとう。何時ぶりかの温かい飯は旨かった」
「それがおれ達のやることだから。それと気を付けろ、街の近くで何かしてくるはずだ」
「それを言っていいの?」
「食い物のお礼だ。おれらに出来るのはこのくらいだから。……もし来れたら、もう一度はくらいは、旨い飯を恵んで欲しいものだ」
「その時は、また話を聞かせてもらうわよ」
二人の獣人奴隷は立ち上がると、片手を上げることで返事をし、暗闇の荒野を歩いて元居た場所へ戻って行った。
「あの二人が言ってたこと本当だと思う?」
「嘘は言ってないんじゃないか(これから先で見かける奴隷も、あの二人みたいに奴隷から解放されるのを諦めている目をしてるんだろうか)」
尾行して監視をしていた奴隷から食べ物を分けてほしいと、なんとも変わった事が起きた。
だがそのお陰で、セテロンの現状を少しでも知れたのは大きかった。
迂回して街を避けることも考えたが、昨日の二人が何をしてくるのか気になったので、このまま進むことにした。
知らなければ危険もあったが、獣人の奴隷から話を聞き、仕掛けて来るのは分かっている。
街を迂回しても追って来るのだとしたら、それこそホースの負担になる。
だったらこのまま進んだ方が、仕掛けてくると知っている分対処はしやすい。
カズはこのことを話し、三人から同意を得て進むことにした。
もちろんホースからも。
そしてこの日の夕暮れ頃になり、遠くに建物を視界に捕らえた。
一先ずの目的地が見えたので、この日はここまでにした。
周囲には尾行する二人の獣人奴隷の気配はあるものの、他の反応は今のところまだない。
◇◆◇◆◇
昨日の夕食や今朝の朝食の匂いに誘われ、また獣人奴隷の二人が来るものだと思っていたが、街に近付いたからだろうか、お腹を鳴らして来ることはなかった。
所有者に会うまでには、空腹状態になってなければまずいと考えたのであろう。
そしてカズ一行が乗る馬車は昼を過ぎた頃、所々穴の空いたボロボロの外壁を、肉眼で目視出来るくらいまで街の近くに来ていた。
「全然現れないけど、嘘だったんじゃないの?」
「それならそれでいいじゃない。それともレラは、そんなにあの時の二人に襲われたいの?」
「そんなんじゃないもん」
「噂をすれば、だ。一…二……六人だな。見えるだろ」
後方の離れた場所から監視している奴隷の二人を警戒しつつ、四人は夕食を取る。
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「あんな奴等にお金なんて渡さなければいいのに。あ、あちし具は多くねビワ」
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いつものごとき楽しげなやり取りを聞き、それに答えるように、ヒヒィーンと一声鳴くホース。
何処と無くホースも嬉しそうな顔をしているように見えたのは、決して勘違いではないだろう。
◇◆◇◆◇
馬に乗った二人の男と接触した翌日のこと、後方から尾行し監視していた二人が、カズ達の馬車に追い付き姿を現した。
現れた二人は、ウサギと犬の獣人だった。
当然警戒をしてるため、殺気を出し近付いて来るなら、カズとアレナリアはそれ相応の対処はするつもりでいた。
だがしかし、二人の獣人が接触してきた理由は、空腹に耐えきれず昼食の匂いに誘われたからであった。
武器を持ち脅して食料を奪おうとするわけでもなく、頭を下げ少しでもいいから分けてほしいと言ってきた。
「こそこそとあちし達をつけてんの分かってるんだから! お腹が空いたなら、自分達で何とかしなさいよ!」
物怖じしないでハッキリと言うレラだが、実際はカズの後ろに隠れ顔を覗かせながらだ。
「威勢がいいのは良いんだが、毎回俺の後ろに隠れて言うなよ」
「だって急に怒りだして叩かれたら痛いでしょ。カズはあちしが怪我してもいいの」
「だったら一番最初に突っ掛かって行かなければいいだろ」
「ぅ……」
カズとレラの短いやり取りの間も、ぐぅ~ぎゅるるるとお腹を鳴らす二人の獣人。
「カズさん」
かわいそうだから食べ物を分けてあげたいと、目で訴えるビワ。
「どうするのカズ」
「少しくらいなら分けてやっても良いだろう。ただし、話を聞かせてもらうからな」
ビワが器にスープと入れ、パンにベーコンと野菜を挟んだものを二人の獣人に渡した。
スープを飲み身体を温めると、パンにかぶり付く二人の獣人。
よく見れば上下着ている物の裾はボロボロになり、痩せ細ってろくすっぽ食べてないことが分かる。
「食べたら話を聞かせてよね」
「だから俺の後ろに……まあいいや。幾つか尋ねる。答えられないことは、無理に答えなくていい」
空腹が満たされた二人の獣人に、カズは質問をする。
「何の目的で俺達をつけてるんだ?」
「おれらは昨日あんたに話し掛けた二人組の奴隷なんだ」
「僕らそいつらの命令で、あんた達が道を外れて他へ行かないよう、監視するように言われて」
「その二人組、今はいないんだから逃げればいいじゃん」
当然の疑問を投げ掛けるレラ。
「逃げても枷があるから、奴隷商に見つかったら、すぐに捕まえられて所有者の元に戻されるだけさ」
「あなた達が付けてるその枷に、奴隷を買った…つまり所有者の登録がしてあるの?」
奴隷だと言う獣人二人が話すことに疑問を持ったアレナリアも質問をする。
「国に登録してある奴隷商から奴隷を買うと、枷には登録した持ち主の情報が書き込まれるんだ。だからおれらは何処にも逃げられない」
「僕らの枷は死ぬまで外されることはないさ。生きるには、金持ちに気に入らるようにするか、言う通り道具として使われるか、女なら慰みものとされるかさ」
「奴隷の扱いに対しての規約はないの? 見たところあまり食べてないみたいだけど」
「この国ではあって無いようなものさ。奴隷にされるにしても、せめて他の国ならって思ったさ」
どうしようもないと分かってはいるが、話していると悲しくなり、つい項垂れてしまう二人の獣人奴隷。
「だったら枷を壊して逃げれば?」
「そんな簡単に壊せるなら、奴隷だけを置いてくもんか」
「それに枷を壊そうにも、そんな都合の良い道具や武器なんてないさ。剣や斧でなら壊せるかもだけど、そんなことしたら腕ごとバッサリ。腕を失って逃げても、この国のに居る限りまた奴隷にされるだけさ」
「そういうこと。枷があるから逃げられないんだよ。今みたいに自由に動けるだけ、奴隷としてはましなんだ。それにうまく枷だけ壊れても、解除せずに外れると爆発する仕組みなんだ」
二人の獣人奴隷から、現状セテロンでの奴隷の在り方を聞き、アスチルから聞いたかつてのセテロンと違えばと、少しは考えていたが、それを完全に否定されたように思えた。
「あなた達これからどうするの? 監視する対象の私達と接触しちゃったけど」
二人の獣人奴隷は顔を見合わせる。
「また離れた所から監視するさ。襲えとは言われてないから、何もするつもりもない。ま、命令されなければだけど。食い物ありがとう。何時ぶりかの温かい飯は旨かった」
「それがおれ達のやることだから。それと気を付けろ、街の近くで何かしてくるはずだ」
「それを言っていいの?」
「食い物のお礼だ。おれらに出来るのはこのくらいだから。……もし来れたら、もう一度はくらいは、旨い飯を恵んで欲しいものだ」
「その時は、また話を聞かせてもらうわよ」
二人の獣人奴隷は立ち上がると、片手を上げることで返事をし、暗闇の荒野を歩いて元居た場所へ戻って行った。
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尾行して監視をしていた奴隷から食べ物を分けてほしいと、なんとも変わった事が起きた。
だがそのお陰で、セテロンの現状を少しでも知れたのは大きかった。
迂回して街を避けることも考えたが、昨日の二人が何をしてくるのか気になったので、このまま進むことにした。
知らなければ危険もあったが、獣人の奴隷から話を聞き、仕掛けて来るのは分かっている。
街を迂回しても追って来るのだとしたら、それこそホースの負担になる。
だったらこのまま進んだ方が、仕掛けてくると知っている分対処はしやすい。
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もちろんホースからも。
そしてこの日の夕暮れ頃になり、遠くに建物を視界に捕らえた。
一先ずの目的地が見えたので、この日はここまでにした。
周囲には尾行する二人の獣人奴隷の気配はあるものの、他の反応は今のところまだない。
◇◆◇◆◇
昨日の夕食や今朝の朝食の匂いに誘われ、また獣人奴隷の二人が来るものだと思っていたが、街に近付いたからだろうか、お腹を鳴らして来ることはなかった。
所有者に会うまでには、空腹状態になってなければまずいと考えたのであろう。
そしてカズ一行が乗る馬車は昼を過ぎた頃、所々穴の空いたボロボロの外壁を、肉眼で目視出来るくらいまで街の近くに来ていた。
「全然現れないけど、嘘だったんじゃないの?」
「それならそれでいいじゃない。それともレラは、そんなにあの時の二人に襲われたいの?」
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