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四章 異世界旅行編 3 セテロン国
368 谷を越え岩を抜け突き進む
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レラが水路上空を下流に向かい飛んでいると、茂みに隠れた小屋を見つけたと。
近付くと小屋には幾つもの穴が空き、調べようと近付いて中を覗いたらメテオバードが出て来たから、急いでその場を離れたと。
薄暗くてハッキリとは見えなかったが、小屋の中にバラバラになった木片と骨らしきものが見えたと、レラは話した。
「もしそれが人骨なら、私達が見た足跡をつけた本人かも知れないわね」
「だな。バラバラになった木片は、船だと思う」
「船?」
「この谷を渡る方法と言ったら、この水路だけ。つまり水路を船で行き来してたってこと」
「なるほど。きっと水路の点検にでも来たとたん、メテオバードに襲われたってところかしら。小屋に隠れたけど、屋根を突き破られて自分も船も」
「もしレラが見た骨が人骨なら、その可能性は高いな」
「あの、それで私達はどうやって向こう側に?」
「さすがに馬車を乗せられる船なんて、すぐに用意は出来ないわね。引き返す」
ビワの問いに、アレナリアは来た道を戻ろうかと言う。
「先も気になるし、橋を架けて渡ろう」
カズは地面に手を触れて〈ストーンウォール〉を使い石の橋を作った。
「これくらい頑丈なら、馬車が乗っても大丈夫だろ」
「一瞬でこんなに橋を作るなんて、相変わらずカズさんは凄いですね」
「大したことじゃないよ。土属性とある程度の魔法が使えれば誰でも作れるさ」
「作れたとしても、相当量の魔力を消費してバテるわよ」
「……」
カズが大したことをやっていると分からせるように、アレナリアはツッコミを入れる。
「まあいつもの事だからいいわ。気になるなら早く渡って、その小屋を見に行きましょう」
カズの魔法によって作られた橋は、馬車が乗った程度ではびくともしない。
橋を渡りきると、アレナリアとビワがホッと息を吐く。
やはり多少は怖かったようだ。
馬車を移動させてレラが見つけた小屋に近くに行き、カズとアレナリアが中を調べに入る。
予想通りバラバラになった木片は小船だったもの。
その木片の下敷きには、白骨した人の死体があった。
「状況から見ると、落下するメテオバードから身を守ろうとして、逆さにした船に隠れたんでしょうね」
「確かにそんな感じだ。長い間このままってことは、他に誰も来てないんだな」
「この人が近くに住んで、水路を一人で整備する仕事をしてるんだとしたら、放置状態なのも納得するのだけど、それらしき建物は見当たらないのよね」
「だとしたら、どこから何の目的でここ来てるのか不思議だよな。小屋も隠すようにしてるみたいだし」
「中を調べながら骨を集めて、外に埋めてあげましょう」
「そうだな」
小屋の中の骨を外に出し、近くに穴を掘って埋葬。
結局白骨者の手掛かりなりそうな物は見つからなかった。
水路整備の仕事をしてるのだとしたら、ギルドカードのような身分証を持っていてもよさそうだがそれも無い。
場所的に盗まれたとも考えにくい。
結局分からぬままその場所を離れ、水路沿いに馬車を先に進めた。
水路沿いの道に最近通ったような跡はやはりない。
引き返すことも考えたが、夢の事があったので、カズはそのまま進むことを選んだ。
谷を越えて暫くすると、一行の前に高さ30メートルはありそうな岩壁が現れた。
そこには水路と同じ幅に空けられた長方形の穴を通り、水は岩壁の向こうへと流れていた。
落石で壊れたのか、水路からジャバジャバとこぼれだした水で、岩壁の近くには大きな水溜まりが出来ていた。
水溜まりを避け岩壁の所まで移動して調べるが、抜けられそうな道は無く完全に行き止まった。
「この岩壁に水を流す穴を空けるなんて、大がかりな事をしたのね。あちら側には水源が無いのかしら?」
「湖からわざわざ水を引いてることを考えると、そうかも知れないな」
「それより今度はどうするの。壁を壊して進むの? まさかしないわよね。さすがに引き返すでしょカズ」
「……どこか岩壁の向こう側に行ける道があるんじゃないか。ちょっと上から見てくれないかレラ」
「いいけど、あの鳥いないよね」
「大丈夫。上から周りを見てくれるだけでいいから」
「分かった」
レラは馬車の真上に飛んで周囲を見渡し下りてくる。
「向こう方に道みたいなのが見えたよ」
「そうか。ならそっちに行こう。俺が草を刈って道を作るから、馬車を頼むよビワ。アレナリアは周囲を警戒しててくれ」
「分かりました」
「分かったわ」
風魔法で背丈より高い草を刈りながら、レラが指示した方向に進む。
カズの少し後を、ビワが操作する馬車が付いて行く。
アレナリアは引き返そうとしないカズの行動が気になっていた。
「なんでカズはそこまでしてこっちに行きたいのかしら?」
「それは私も思ってました。アレナリアさんは理由をしってるのかと」
「いいえ。私はビワが何か聞いてるのかと思ったけど、聞いてないみたいね(もしかするとアスチルの話を聞いて、できるだけセテロンの住人と会わないように道を選んでるのかしら。ビワのことを考えて)」
「はい」
セテロンでの奴隷の扱いをビワが見ることで、発作のような事が起きるのではとカズが考えてると思い、それをアレナリアは口にしなかった。
二人がそんな話をしてると知らず、カズは馬車が通れるように草を刈る続ける。
移動した先には、岩壁の裂け目に続いてる細い道があった。
道が続いてる裂け目の見ると、馬車がかろうじて通れそうな幅はあった。
岩壁の裂け目にある道からは風が吹いていたので、岩壁の向こう側に出られると考え、ビワから馬車の操作を代わり、カズは慎重に馬車を進ませた。
時折狭くなった場所で、壁に馬車が擦ったりもしたが、進めないことはなかった。
落石を退かしながら蛇行する裂け目に出来た道をなんとか通って行く。
次に待っていたのは、巨大な石が散乱する場所。
馬車が十分に通れる幅はあるのはいいが、ごろごろとある大きな石で先が見えない。
進んだ先が行き止まりで引き返して他の道へと、まるで岩と石の迷路。
水の流れる音が聞こえ、音のする方へと馬車を進める。
岩壁に消えていった水が、今度は岩を加工して作られた水路を流れていた。
川から伸びた水路に比べ幅は狭くなっていたが、深さが増していた。
「水の流れが向こうより速いね」
「狭くなってるからよ」
「ふ~ん」
石と岩ばかりに囲まれて、完全に飽きていたレラの一言を、サラっと答えて流すアレナリア。
「ここの岩って結構硬いわね。魔法かスキルを使って作ったとしても、かなりの人数でやったか、帝国で作られたそれ用の何かの魔道具使ったってとこかしら」
「どっちにしても、すっごい時間掛かるじゃん。それやった人達ってバカなの? カズみたいに水属性の魔法を使えば飲み水くらいなんとかなるでしょ。それか土属性の魔法が使えれば、井戸を掘ったりも出来るんだし、その方がもっと楽だとあちしは思うけど」
「誰しもがそんな簡単に、安定した魔法を持続して使えるわけじゃないと思うわよ」
「ビワの言う通りよレラ。それに水属性の魔法が使えても、飲める水を出せる人って少ないんだから。私は出来るけど。ましてや、魔力変換した水を飲めるなんて一人を除いて……」
アレナリアの視線がカズに刺さる。
「そうだったんだ。いつもカズがしてるから、水属性の魔法を使えれば、飲み水には苦労しないと思ってた」
「レラってカズと会う前は、王都で一人隠れて住んでたのよね?」
「そうだよ。フローラが食べ物なんかを持って来てくれたけどね。でないとあちしがこっそり、その辺から持ってきちゃうから」
「フローラ様大変だったのね。レラが隠れ住んでた家をカズに紹介した理由が分かったわ」
「どういう意味よ」
「そのまんまの意味」
睨み会うアレナリアとレラ。
「なんで喧嘩になるんですか。今は石の迷路から出ることが先決だと思います。本当になんでこんな事に」
「ご、ごめん。俺がこんな道を選らんだから……」
ビワに痛い所を衝かれて、しょぼんとするカズ。
「ち、違うんです。あの谷を渡らずに戻ってればなんて。私は少ししか」
「ビワも言うようになったわね」
「あちしは嬉しいよ。あんなに引っ込み思案だったのに、ズバズバハッキリと言えるようになって」
「ちょっと二人とも喧嘩してたん…そうじゃなくて、そんなこと言わないで!」
滅多にないビワの愚痴に、追い討ちをかけるアレナリアとレラ。
その言葉を聞いたカズは精神的ダメージを負う。
「とうとうビワもカズに遠慮が無くなったのね。あ、でも今以上に親しくなるってことは、私にとってはまずいわね」
「別に良いじゃん。今までも他に知り合った女の人はいたけど、結局はあちし達を選んでくれてるんだから。これからもビワには遠慮しないで、カズになんでも言ってもらはないと」
「もうッ、アレナリアさんもレラも、いい加減にして!」
久々にビワをからかうアレナリアとレラは嬉しくなり、その一方でカズとズーンと肩を落とす。
「ごめん。俺のせいで(アレナリアとレラに言われるのは慣れてるけど、ビワに言われることないから、応えるなぁ)」
「だから違うんですカズさん。あの…ごめんなさい」
「ビワが謝る必要ないよ。道を選んだのは確かに俺なんだから。これからも悪いと思ったら、遠慮しないで言ってよ(とは言うものの、あまり言ってほしくないな)」
「反省するのはいいけど、道が見えてる内に早く先に進みましょう。暗くなるわよ」
「分かってる。ギルドで聞いた通り、水路じゃなくて川沿いの旧街道行けばよかったのか」
「今さら何言ってるの。このままここから出られなかったらカズの責任だからね」
「ここに来る道を見つけたのレラでしょ」
「それはカズに頼まれたから」
「だから俺が悪かったって。レラに責任はないから、そう言うなよアレナリア」
「言われなくても分かってるわよ。今回はカズが悪い」
「はいはい、俺が悪いです。ごめんなさい」
アレナリアとレラの苛立ちを押さえ、岩の迷路を抜け出すため、マッピングをしながら馬車を進めるカズ。
行き止まれば迂回し、水路沿いに移動出来れば進み、行き止まればまた迂回。
夕方になると岩と石に囲まれた道は完全に暗くなり〈ライト〉を使い道を照らしながら、休める場所を探して馬車を進める。
次第に水路から離れて行くと、広くなった場所へと出た。
近付くと小屋には幾つもの穴が空き、調べようと近付いて中を覗いたらメテオバードが出て来たから、急いでその場を離れたと。
薄暗くてハッキリとは見えなかったが、小屋の中にバラバラになった木片と骨らしきものが見えたと、レラは話した。
「もしそれが人骨なら、私達が見た足跡をつけた本人かも知れないわね」
「だな。バラバラになった木片は、船だと思う」
「船?」
「この谷を渡る方法と言ったら、この水路だけ。つまり水路を船で行き来してたってこと」
「なるほど。きっと水路の点検にでも来たとたん、メテオバードに襲われたってところかしら。小屋に隠れたけど、屋根を突き破られて自分も船も」
「もしレラが見た骨が人骨なら、その可能性は高いな」
「あの、それで私達はどうやって向こう側に?」
「さすがに馬車を乗せられる船なんて、すぐに用意は出来ないわね。引き返す」
ビワの問いに、アレナリアは来た道を戻ろうかと言う。
「先も気になるし、橋を架けて渡ろう」
カズは地面に手を触れて〈ストーンウォール〉を使い石の橋を作った。
「これくらい頑丈なら、馬車が乗っても大丈夫だろ」
「一瞬でこんなに橋を作るなんて、相変わらずカズさんは凄いですね」
「大したことじゃないよ。土属性とある程度の魔法が使えれば誰でも作れるさ」
「作れたとしても、相当量の魔力を消費してバテるわよ」
「……」
カズが大したことをやっていると分からせるように、アレナリアはツッコミを入れる。
「まあいつもの事だからいいわ。気になるなら早く渡って、その小屋を見に行きましょう」
カズの魔法によって作られた橋は、馬車が乗った程度ではびくともしない。
橋を渡りきると、アレナリアとビワがホッと息を吐く。
やはり多少は怖かったようだ。
馬車を移動させてレラが見つけた小屋に近くに行き、カズとアレナリアが中を調べに入る。
予想通りバラバラになった木片は小船だったもの。
その木片の下敷きには、白骨した人の死体があった。
「状況から見ると、落下するメテオバードから身を守ろうとして、逆さにした船に隠れたんでしょうね」
「確かにそんな感じだ。長い間このままってことは、他に誰も来てないんだな」
「この人が近くに住んで、水路を一人で整備する仕事をしてるんだとしたら、放置状態なのも納得するのだけど、それらしき建物は見当たらないのよね」
「だとしたら、どこから何の目的でここ来てるのか不思議だよな。小屋も隠すようにしてるみたいだし」
「中を調べながら骨を集めて、外に埋めてあげましょう」
「そうだな」
小屋の中の骨を外に出し、近くに穴を掘って埋葬。
結局白骨者の手掛かりなりそうな物は見つからなかった。
水路整備の仕事をしてるのだとしたら、ギルドカードのような身分証を持っていてもよさそうだがそれも無い。
場所的に盗まれたとも考えにくい。
結局分からぬままその場所を離れ、水路沿いに馬車を先に進めた。
水路沿いの道に最近通ったような跡はやはりない。
引き返すことも考えたが、夢の事があったので、カズはそのまま進むことを選んだ。
谷を越えて暫くすると、一行の前に高さ30メートルはありそうな岩壁が現れた。
そこには水路と同じ幅に空けられた長方形の穴を通り、水は岩壁の向こうへと流れていた。
落石で壊れたのか、水路からジャバジャバとこぼれだした水で、岩壁の近くには大きな水溜まりが出来ていた。
水溜まりを避け岩壁の所まで移動して調べるが、抜けられそうな道は無く完全に行き止まった。
「この岩壁に水を流す穴を空けるなんて、大がかりな事をしたのね。あちら側には水源が無いのかしら?」
「湖からわざわざ水を引いてることを考えると、そうかも知れないな」
「それより今度はどうするの。壁を壊して進むの? まさかしないわよね。さすがに引き返すでしょカズ」
「……どこか岩壁の向こう側に行ける道があるんじゃないか。ちょっと上から見てくれないかレラ」
「いいけど、あの鳥いないよね」
「大丈夫。上から周りを見てくれるだけでいいから」
「分かった」
レラは馬車の真上に飛んで周囲を見渡し下りてくる。
「向こう方に道みたいなのが見えたよ」
「そうか。ならそっちに行こう。俺が草を刈って道を作るから、馬車を頼むよビワ。アレナリアは周囲を警戒しててくれ」
「分かりました」
「分かったわ」
風魔法で背丈より高い草を刈りながら、レラが指示した方向に進む。
カズの少し後を、ビワが操作する馬車が付いて行く。
アレナリアは引き返そうとしないカズの行動が気になっていた。
「なんでカズはそこまでしてこっちに行きたいのかしら?」
「それは私も思ってました。アレナリアさんは理由をしってるのかと」
「いいえ。私はビワが何か聞いてるのかと思ったけど、聞いてないみたいね(もしかするとアスチルの話を聞いて、できるだけセテロンの住人と会わないように道を選んでるのかしら。ビワのことを考えて)」
「はい」
セテロンでの奴隷の扱いをビワが見ることで、発作のような事が起きるのではとカズが考えてると思い、それをアレナリアは口にしなかった。
二人がそんな話をしてると知らず、カズは馬車が通れるように草を刈る続ける。
移動した先には、岩壁の裂け目に続いてる細い道があった。
道が続いてる裂け目の見ると、馬車がかろうじて通れそうな幅はあった。
岩壁の裂け目にある道からは風が吹いていたので、岩壁の向こう側に出られると考え、ビワから馬車の操作を代わり、カズは慎重に馬車を進ませた。
時折狭くなった場所で、壁に馬車が擦ったりもしたが、進めないことはなかった。
落石を退かしながら蛇行する裂け目に出来た道をなんとか通って行く。
次に待っていたのは、巨大な石が散乱する場所。
馬車が十分に通れる幅はあるのはいいが、ごろごろとある大きな石で先が見えない。
進んだ先が行き止まりで引き返して他の道へと、まるで岩と石の迷路。
水の流れる音が聞こえ、音のする方へと馬車を進める。
岩壁に消えていった水が、今度は岩を加工して作られた水路を流れていた。
川から伸びた水路に比べ幅は狭くなっていたが、深さが増していた。
「水の流れが向こうより速いね」
「狭くなってるからよ」
「ふ~ん」
石と岩ばかりに囲まれて、完全に飽きていたレラの一言を、サラっと答えて流すアレナリア。
「ここの岩って結構硬いわね。魔法かスキルを使って作ったとしても、かなりの人数でやったか、帝国で作られたそれ用の何かの魔道具使ったってとこかしら」
「どっちにしても、すっごい時間掛かるじゃん。それやった人達ってバカなの? カズみたいに水属性の魔法を使えば飲み水くらいなんとかなるでしょ。それか土属性の魔法が使えれば、井戸を掘ったりも出来るんだし、その方がもっと楽だとあちしは思うけど」
「誰しもがそんな簡単に、安定した魔法を持続して使えるわけじゃないと思うわよ」
「ビワの言う通りよレラ。それに水属性の魔法が使えても、飲める水を出せる人って少ないんだから。私は出来るけど。ましてや、魔力変換した水を飲めるなんて一人を除いて……」
アレナリアの視線がカズに刺さる。
「そうだったんだ。いつもカズがしてるから、水属性の魔法を使えれば、飲み水には苦労しないと思ってた」
「レラってカズと会う前は、王都で一人隠れて住んでたのよね?」
「そうだよ。フローラが食べ物なんかを持って来てくれたけどね。でないとあちしがこっそり、その辺から持ってきちゃうから」
「フローラ様大変だったのね。レラが隠れ住んでた家をカズに紹介した理由が分かったわ」
「どういう意味よ」
「そのまんまの意味」
睨み会うアレナリアとレラ。
「なんで喧嘩になるんですか。今は石の迷路から出ることが先決だと思います。本当になんでこんな事に」
「ご、ごめん。俺がこんな道を選らんだから……」
ビワに痛い所を衝かれて、しょぼんとするカズ。
「ち、違うんです。あの谷を渡らずに戻ってればなんて。私は少ししか」
「ビワも言うようになったわね」
「あちしは嬉しいよ。あんなに引っ込み思案だったのに、ズバズバハッキリと言えるようになって」
「ちょっと二人とも喧嘩してたん…そうじゃなくて、そんなこと言わないで!」
滅多にないビワの愚痴に、追い討ちをかけるアレナリアとレラ。
その言葉を聞いたカズは精神的ダメージを負う。
「とうとうビワもカズに遠慮が無くなったのね。あ、でも今以上に親しくなるってことは、私にとってはまずいわね」
「別に良いじゃん。今までも他に知り合った女の人はいたけど、結局はあちし達を選んでくれてるんだから。これからもビワには遠慮しないで、カズになんでも言ってもらはないと」
「もうッ、アレナリアさんもレラも、いい加減にして!」
久々にビワをからかうアレナリアとレラは嬉しくなり、その一方でカズとズーンと肩を落とす。
「ごめん。俺のせいで(アレナリアとレラに言われるのは慣れてるけど、ビワに言われることないから、応えるなぁ)」
「だから違うんですカズさん。あの…ごめんなさい」
「ビワが謝る必要ないよ。道を選んだのは確かに俺なんだから。これからも悪いと思ったら、遠慮しないで言ってよ(とは言うものの、あまり言ってほしくないな)」
「反省するのはいいけど、道が見えてる内に早く先に進みましょう。暗くなるわよ」
「分かってる。ギルドで聞いた通り、水路じゃなくて川沿いの旧街道行けばよかったのか」
「今さら何言ってるの。このままここから出られなかったらカズの責任だからね」
「ここに来る道を見つけたのレラでしょ」
「それはカズに頼まれたから」
「だから俺が悪かったって。レラに責任はないから、そう言うなよアレナリア」
「言われなくても分かってるわよ。今回はカズが悪い」
「はいはい、俺が悪いです。ごめんなさい」
アレナリアとレラの苛立ちを押さえ、岩の迷路を抜け出すため、マッピングをしながら馬車を進めるカズ。
行き止まれば迂回し、水路沿いに移動出来れば進み、行き止まればまた迂回。
夕方になると岩と石に囲まれた道は完全に暗くなり〈ライト〉を使い道を照らしながら、休める場所を探して馬車を進める。
次第に水路から離れて行くと、広くなった場所へと出た。
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