人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ

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四章 異世界旅行編 3 セテロン国

367 夢 と 水路 と 途切れた道

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 大きな湖を運搬船に乗って渡り、カキ街のギルドで報酬を受け取って、同じ依頼を受けたアスチルとヤカの二人と別れ湖沿いを南下。
 更に湖にから流れ出る川に沿って南東へ二日移動。

「この旧街道を行けば、村があるんじゃなかったの?」

「ギルドで聞いたからあってるはずなんだけど」

「アレナリアが報酬でごねったから、ウソの情報を教えられたりしたんじゃないの」

「なっ! あのギルド職員がけちったからよ。っていうより、元を正せばハイロが悪いんでしょ。私は働いた分の報酬を要求しただけ」

「……」

「なんで黙るのよ。追加報酬の要求を私に任せたのカズでしょ」

「ちょっとやり過ぎた感があったように思えたけど(対応した年配の男性あの職員には嫌われたろうな)」

「そんなことよりどうするのカズ。もう一度街に戻って道聞くの? それともこのまま行くの? あちしは的には、誰とも会わなければ気楽でいいから、このままでもいいけど」

「道を間違えたってこともあるし、もう一日このまま進んで、それで何も無ければ戻ることも考えよう。でもその場合はホースに一日は休んでもらわないと」

「もうかなり年だから、人の多い街道を行くよりは、こっちの方がいいかも知れないわね。あとは道がもう少し舗装してあれば良かったんだけど」

「旧街道ですから仕方ないですよ。カズさんの言う通り、のんびり行きましょう」

 一緒に旅をしてきたホースを気にかけながら川沿いを進むも、結局村を見つけることが出来ず日が暮れて、この日も野宿となった。


 ーーーーーーーーーーーーーーー


「──ぅ……」

むごいわね」

「子供ばっか」

「ビワはもう見ない方がいいわ。レラと馬車に戻ってて」

 どうしたのビワ? 子供ばっかって何があったんだアレナリア? ……アレナリア、レラ……声が届いてない?

「大丈夫……です。このままにするのは…かわいそう」

「そうね。でもここじゃ埋めることは出来ないわ」

「火葬してとむらってあげたては」

「周囲の魔素マナも淀んでるし、これ以上放置すると嫌なものが発生しかねないわね」

 このぼんやりとした感覚……夢か。
 しかしなんてリアルな夢なんだ。

「このままではこの子達の魂が……だから必ずここに来て」

 え?

 ーーーーーーーーーーーーーーー


 夢の中で振り返ったビワと目が合うと、カズの意識がフッと途切れ、 真夜中に目を覚ました。
 馬車で寝る三人を見に行くも、特に変わった様子はなく、気持ち良さそうに寝ていた。
 カズは焚き火の所に戻り、薪を焼べて見た夢を思い出そうとする。
 が、今見たばかりの夢だというのに、最後しか思い出せない。
 目が覚める寸前に、ビワにここに来てと言われたことだけ。
 いや正確には、本当にビワだったのか分からない。
 確かに声も姿もビワだったとカズは思った。
 考え悩むカズは、確かめるには引き返さずこのままの進むしかないと思い、夢の続きが見られればと横になった。


 ◇◆◇◆◇


 深夜におかしな夢で起き、続きが見れるのではと思いながら寝たが見るのとは出来なかった。
 カズは見た夢の事を、三人に話さなかった。
 自分に予知のようやスキルでもあれば話したろうが、そんなスキルは獲得してないから。
 少し気になることを思い出したが、今はまだ……。

 この日移動して何も無ければ引き返そうと、朝食を取りながら四人で話し、馬車に乗り川沿いを行く。
 なんの変わりもないまま人気のない道を進むと、川が二手に別れてる場所が先に見えた。
 流れの一方は、人工的に作られた水路を東に向かって。
 もう一方は、そのまま南東に向かって流れる自然の川。
 水路があるなどと聞いてなかったが、人の手が加わっているのであれば、先に人が住んでるに違いないと、水路沿いに馬車を進めることにした。
 水路沿いを選んだのは夢の事もあったが、他はなんてことない理由。
 南東へ流れる自然の川を選ぶにしても、川の反対側に渡らねばならならかったので、道なりにただ進める方を選んだだけだった。

 選ばなかった自然の川の先は、段々と川幅が細く水量を徐々に減らし、次第に水は地中へと染み込み消えていた。
 その先には水が流れた跡すらなく、草木が生え川の痕跡すらなくなっている。
 更にその先には、草木に覆われ朽ち果てた村が。
 水路を作った事により川の水量が激減し、元あった川沿いの村は作物を育てることが出来ず、生活が苦しくなり村人は長年住んだ土地を離れ他へと移る羽目に。
 そんな事などつゆ知らず、カズ達は水路沿いを進んでいた。

「広い水路ですね」

「あの川からこんなに水を引いて、下流は大丈夫なのかしら?」

「大丈夫じゃないの。あんなでっかい湖から流れてるんだから。まっ、あちしにはどうでもいいけど」

「これだけの水路を作ってるのなら、広い田畑があるんじゃないんでしょうか?」

「そうかもね」

「行ってみれば分かるでしょ。あ~あ退屈退屈。なんか変わったことでもないかなぁ~」

 荷台ではアレナリアとビワが水路を眺め、レラはごろごろして文句ばかり。
 そして水路沿いを馬車で移動すること数時間、突然深い谷が現れ道が完全に途切れた。

 谷には水路の橋が架けられ、水は落ちることなく向こう側へと流れていく。
 反対側までの距離は約20メートル。
 谷を越えた水路の先を見るが、周りには背の高い草が多く建物らしき物を確認出来ない。
 迂回するも他に橋らしきものも見当たらない。
 ただここまで来る間に、人の足跡を確認していた。

「これからどうするのカズ?」

「う~ん……(マップを見る限りでは、人の反応は無いんだよな。戻った方が良いんだろうけど、あの夢が……)」

「ならあちしちょっと行って見にてくる」

「あ、おい」

 レラが馬車を出てひとっ飛びし、谷を越えて水路の先を見に行った。

「ここから見ても水路の先を見ても何も無いのに、上から何か見つかるのかしら?」

「川沿いを行けば村があると聞いたんだけど、水路こっちじゃなかったか。こんなことならもっとしっかり道を聞いておけばよかった」

「カズさんにしては珍しいミスですね」

「ビワの言う通りだ。申し訳ない」

「しかし凄いわね。この谷にこれだけ大きな水路の橋を架けて、川から水を引くなんて」

「本当ですね。どのくらい前に作られたんでしょうか?」

「さあ。でも結構経ってるんじゃないかしら。ここまでにあった足跡は、水路の整備に来た人のでしょうね。だとしたら十年とか二十年。もっとかしら」

「足跡が消えかかってたのが少し気になったけどな。最近は来てないのか、こちら側には滅多に来ないのか」

「あちらに渡る橋は無いのに、その人はどこから来たんでしょうか?」

「それは…」

「レラが戻って来たわよカズ」

「何か見つけたかも知れない」

 三人が戻って来るレラに見ると、その後ろから多くの鳥がレラを追っかけて飛んできていた。

「いーやぁー助けてー」

「あれはメテオバードね。ビワはレラと馬車の中に隠れてた方がいいわ」

「レラこっちよ。早く早く」

 涙目になりながら、ビワの胸に飛び込むレラ。
 ビワはレラを抱いて、アレナリアに言われたように馬車の中に避難する。
 三十羽以上の群れで飛んで来たメテオバードが羽を畳み、馬車に向かって高速で急降下する。

「メテオバードのくちばしは鋭くとても硬いから気を付けて。あれの直撃は鉄の鎧も簡単に貫くわ」

「なら馬車は土と石の二種の壁で囲んでおこう」

 カズは〈アースウォール〉〈ストーンウォール〉を使用し、土と石を何層にもした壁を作り出し、馬車をメテオバードから守った。
 アレナリアは〈エアバースト〉で落下してくるメテオバードのスピードを減速させ〈フリーズ〉で凍らせる。
 氷漬けにしたメテオバードが馬車を囲む壁に突き刺さり止まる。
 カズは自分とアレナリアに向かって、回転しながら急降下してくるメテオバードの群れに〈ライトニングバースト〉を放った。
 十数羽のメテオバードの群れは、拡散した電撃に焼かれ、勢いを失いバタバタと落下して地面に落ちる。
 数羽残ったメテオバードは、方向を変えて飛び去った。

「もう大丈夫そうだな」

「ええ。残った何羽かは逃げてったわ」

 周囲に敵対反応がないのを確認したカズは、馬車を守るために作った二種の壁を解除する。

「倒したメテオバードは回収しておいて、くちばしの部分が良い材料になるからギルドで買い取ってもらいましょう」

「分かった。俺が集めとくらから、アレナリアはレラに話を聞いといて」

 カズは周囲に転がっているメテオバードを回収し、アレナリアはレラからこうなった経緯を聞く。
 メテオバードの回収を終えたカズが馬車に戻り一緒に話を聞く。
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