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四章 異世界旅行編 2 トカ国

357 お礼 と 謝罪 と 真相

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 ヒューケラの母親が亡くなってから、甘やかし過ぎた自分にも原因があると、コーラルはヒューケラを強く叱らなかった。
 謝罪はすべきと、コーラルは事務所の男性に助けてもらったお礼を言うと、次は娘のヒューケラが、ぎこちなく男性に頭を下げ謝罪する。
 あの時のように怒鳴ってくるものだと覚悟していたヒューケラだが、男性は素直に謝罪を受け入れることができなかった。
 不思議がる二人に男性は話し出す。
 コーラルを襲った犯人のことを。

「コーラルどのの馬車に接触して、脅したのは自分の元部下、正確には部下のふりをしていた盗賊だ」

「は?」

 コーラルはいきなりの事で、すぐに理解できなかった。

「今まで隠れて何度も同じ様な事をしてたが証拠がなく、冒険者ギルドに捕まえるため協力するよう依頼を出したんだが、既に動いているからと受理されなかつた。それで仕方なく自分達でやることに。今回泳がせてやっと尻尾を掴んだ。仲間と連携して狙われた人に危険が及ばないようにするつもりだったが、尾行してたのに気付かれて襲うのを止められなかった。だからコーラルどのに謝罪しなければならないのはこちら。申し訳ない」

 話を聞いたコーラルとヒューケラは驚き、言葉が出なかった。

「今日うちの代表が留守なのは、今回の件で街の領主と冒険者ギルドに呼び出されてるんだ。安全だと言われてるトンネルの街道を、運搬業者の荷運び特権を利用して……次あったらただじゃおか……し、失礼した」

 話してる内に怒りが込み上げる男性。

「お嬢さん」

「え、はい。なんでしょうか」

「お嬢さんに言われた通り、仲間と盗賊を見分けられないくらい、おれ達は調子に乗っていたようだ。あの時はすまなかった」

「いえ……」

 更に今回捕まった内の三人は、あの時一緒に居た武器を所持していた者だと。
 もし護衛がいなければ、ヒューケラに大怪我をさせてしまっていたかもと、その大きな体がヒューケラよりも小さく見えるほど男性は後悔して落ち込む。
 コーラルはヒューケラの死最悪の結果にならなかったのだからと、男性に優しい言葉をかけ、それと同時にこの先も〝ユウヒの片腕〟彼らに護衛を頼もうと決意する。

 運搬業者へのお礼と謝罪を終えたブロンディ親子は、護衛依頼をなんとしても受理してもらうべく、そのまま冒険者ギルドに向かい馬車を走らせた。


 同日の冒険者ギルドの一室。

「護衛依頼ご苦労さん。予定より長引いたんだって」

「あのう、なんでここに居るんですか?」

 朝からアコヤ街の冒険者ギルドに来ていカズは、湖を渡る定期船のことを聞きこうと受付に行くと、パーティー名を確認されギルドカードの提示を求められた。
 指名護衛の事もあったので、それの確認かと思い言われた通りにした。
 すると、なぜかサブ・ギルドマスターの執務室に案内された。
 理由わけも分からず案内された執務室に入ると、そこにはホタテ街のサブ・ギルドマスターのハイロの姿が。

「ここアコヤ街の冒険者ギルドと、ホタテ街の冒険者ギルドは同じ管轄でね。オレも向こうとこちらを行き来してるんだ。ほんと面倒で辞めようかと思うぜ。こんな仕事」

「そういうことですか」

「来た早々にトンネル内での騒ぎだ。それが各運搬業者で働いてた連中がやってた事らしい。このところ問題になってた連中を捕らえたのは大きいが」

「各運搬業者?」

「情報が漏れると流通に影響が出るから話さないようにしようと思ったが、まあ少しくらいならいいだろ」

 今回捕まえた連中は各運搬業者に潜り込み、顧客情報を集めてた盗賊だった。
 簡単に隠し持ち運びができ、単価の高い品物を扱ってる商人を狙っていたらしい。
 カズを指名依頼したコーラル・ブロンディは、まさに狙われやすかったってことだ。
 いつもはお抱えの冒険者と共に移動していたようだが、今回に限っては別々に行動していたから狙われたんだろ。
 各運搬業者も被害者だが、部下の行動を管理してなかった責任はある。
 注意していれば、顧客情報を盗まれることはなかったはずたからな。
 関わってた運搬業者には、何かしらのペナルティが課せられるだろう。

「ペナルティですか」

「と言っても、それほど重くはないだろうがな」

 少しと言いながら、結構話すハイロ。

「じゃあ、あの連中もそうだったりして」

「あの連中?」

「トンネルの休憩場所で、運搬業者に絡まれまして」

「ほう。その連中はどうしたんだ? まさか盗賊だったのか」

「盗賊かどうかは知りません。なんせ先に因縁をつけたのは、護衛対象だったので(違うのかな?)」

「なんだそりゃ?」

「まあ色々と。それより俺を呼んだのは、その話をするためですか? 他に何もなければ船の時間を調べたいので失礼しますが」

「まあオレの用事は単なる顔見せだ。それと船だが、定期船なら一昨日出たはずだ。次は五日後だと思ったが」

「五日後……」

「早い方がよければ、運搬船に乗せてもらえばどうだ? それなら明日の午後に出港する。この状況で人手不足になってるから、運搬の依頼を受ければそのまま乗れるぞ」

「運搬船かあ。掲示板に貼ってある依頼書の内容を見て考えます」

「それはいいが、護衛の指名依頼が入ってるがどうする?」

「同じブロンディさんですよね。前回はハイロさんに頼まれたので受けましたが、パーティーランク的に無理でしょう」

「それはそうだが、依頼料を倍出すと言われてはな。ギルドとしては受けて欲しいんだが」

「現金ですね。ギルドの規約的に、それはいいんですか?」

「依頼人の希望であり、今回の件で実績ができたからな」

「今回の件で実績? さっき話したトンネルの休憩場所での揉め事のことですか?」

「いや違う。深い傷だった依頼主を治したそうじゃないか。それも一瞬で」

「一瞬だなんてそんな(ちょっとコーラルさん、そんな事まで報告しちゃったの?)」

「詳しく聞かせてくれないか?」

「持っていた回復薬と、俺が使える回復魔法で治療しただけですよ(なんか雲行きが怪しくなってきた)」

「ほう。どんな回復薬で、どんな回復魔法なんだ?」

「どこにでもある回復薬ですよ」

「回復魔法はヒーリング系か? それともキュア系か?」

「そのーまぁ……どちらも」

「どちらも、か。なるほど」

「俺もう行っていいですか? (何が、なるほどなんだよ? 面倒になる前に早く行こ)」

「ああ、いいぞ」

「では失礼します(お、意外とすんなり)」

 ハイロの執務室から出たカズは、掲示板に運搬依頼が貼り出されてるか確かめに行った。
 カズが出て行き執務室で一人になったハイロは、ぶつぶつと独り言を口にしていた。

 運搬船に乗り込めば、最近湖上で発生してる霧に遭遇する可能性が高いな。
 グリズの旦那から片腕のパーティー名を与えられたんだ。
 カズには悪いが、なんとかしてくれると期待しよう。
 ハイヒールが使えるなら、ちょっとやそっとの怪我くらいなんともないだろ。
 オレの権限で護衛依頼をまた任せてもよかったが、湖上の霧の件の方が厄介だからな。
 依頼主のブロンディには申し訳ないが、代わりに人当たりの良いパーティーを紹介するように手配させよう。
 年頃の女の子が居るということだから、出来るだけ女性が多いパーティーが良いだろ。

 ハイロの思わくをよそに、運搬船に乗るための依頼見つけ、受付に依頼書を持っていくカズ。
 しかし残念なことに、その依頼は少し前に来たパーティーに決まってしまったと言われた。
 すると受付の女性職員から、ちょうど入った運搬船に乗る依頼があると紹介された。
 他にも同じ依頼を受けたパーティーいるが、馬車持ちなら有利だと聞き、カズはまさに渡りに船だと、その依頼を受けることにして、受付の女性職員から話を聞いた。

「時間は明日の朝、港の第4番倉庫に現地集合です。現在この手の依頼は日に何件も入ってきますので、依頼主の運搬業者は増えるかも知れません。なので現地で依頼主を探して作業内容を聞いてください。依頼主の運搬業者は怪力千万かいりきせんばんです」

「分かりました(怪力千万? スゴい社名だな)」

 依頼書を受け取ったカズは三人の待つ宿屋に戻り、受けた依頼の話した。
 レラはもうヒューケラ子供の相手をしなくてよくなったと喜んでいた。
 アレナリアも同様の気持ちはあったが、わがままな子を相手にする親の気持ち感じたのか、少し寂しく思っているようだった。

 翌日の出発が決まり、カズは馬車の点検とホースの調子を見に。
 アレナリアはレラを〈イリュージョン〉で小人の姿に見えるようにして、ビワと三人で気晴らしというなの買い物に出掛けた。
 一応目的は酔い止めの薬を買うこと。
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