人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ

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四章 異世界旅行編 2 トカ国

349 新しい衣服 と 護衛依頼

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 ◇◆◇◆◇


 宿代を払い一足先に宿屋を出てギルドにやって来たカズは、イパチェスに案内されてサブマスのハイロと会う。
 さすがに今回は、扉をノックして静かに開けるイパチェスだった。

「おう、来たか。あったぞほれ」

「なんですかこれ?」

 ふたつに折られた一枚の紙をハイロはカズに渡した。

「昨日言ったろ。護衛の依頼だ」

「へ? パーティーでの護衛依頼は、パーティーランクが最低C以上じゃないと受けられないって」

「通常はそうなんだが、名指しの依頼なら別だ」

「名指し!? いったい誰が?」

「行けばわかる。詳しい依頼内容は、イパチェスに聞いてくれ。もちろん名指しの依頼だから断るのはなしだ」

「強制ですか」

「悪い話じゃないだろ。トンネルは無料で通れてルートも安全。さらに報酬も貰えるんだ。望んでも中々受けられる依頼じゃないんだぞ」

「分かりました(貴族や面倒臭そうな依頼人じゃなければいいんだけど)」

「ならそれを持って、イパチェスと受付に行ってくれ」

 ハイロの元から一階の受付に下りてきたカズは、イパチェスに依頼内容と依頼主が泊まっている宿屋の場所を教えられた。
 時間は正午、準備を整えて宿屋の前に来るようにとのことだった。
 依頼書を受け取ってギルドを出たカズは、馬車に乗ってこちらに向かって来ているアレナリア達と合流する。
 馬車の操作をアレナリアと代わり、依頼主と待ち合わせの場所に向かう。
 護衛依頼を受けることになったのを、目的地に向かいながら三人に話す。

「ブロンディ? 知らないわ」

「だよな。でも名指しでの依頼なんだよ」

「ギルドを通しての正式な依頼だから、騙されてるってことはないでしょうけど」

「なんでもいいじゃん。あのでっかい穴通ると近道で安全なんでしょ。しかもタダだって言うなら」

「約束の時間は正午なんですよね」

「そうだけど、どっか寄りたい所でもあるのビワ? 時間ならあるから、行きたい所あるなら言って」

「いえ、依頼主の方と会う前に、昼食を早目に取った方がいいかと。カズさん朝は食べてないようなので」

「ああ、そうだな。依頼主と会ったら、そのまま出発するかも知れないし、その辺の店で適当に買って、馬車の中で軽く食べようか」

 昼食を買うと大通りから少し外れ、停めた馬車の中で軽食を取った。

「さて、腹も膨れたから動くか」

「それはいいんだけど、一言くらいあっても良いんじゃないの?」

「そうそう。どう、あちしは?」

 手を広げて、その場でくるりと回るレラ。
 アレナリアも立ち上り、右手を頭の後ろに、左手を腰に当ててホーズを決める。
 さすがにそんなことをされたら、黙ってるわけにはいかない。

「ああ、よく似合ってる(俺にファッションセンスを求められても回答に困る。自分で気に入っているなら良いと思う。露出が多くなければ)」

 カズは馬車の操作をするため前に移動し、背中越しに三人が着ている服の説明を聞いた。

 レラはショートパンツと丈が短いワンピース、ショートパンツは飛んだときに下着が見えないようにだと。
 色は緑系の色で。

 アレナリアはアンダーシャツの上からカーディガン、下はハーフパンツと動きやすい格好にしたと。
 こちらは白や水色でまとめている。

 ビワは白と黄色の二色のワンピースと、紺色のロングパンツ。 

 レラとビワは戦闘になっても参加しないから、ひらひらとした女性らしい服装にさせたとアレナリアが言う。
 だったらメイド服みたいなものでいいとビワが言ったが、アレナリアが却下した。
 三人とも少し薄着では? と、カズが聞いたら、お揃いのオーバーコートがあるから大丈夫だと。
 お揃いだと言うが、色はそれぞれ今着ている服の色と同じ、レラが緑、アレナリアが水色、ビワが黄色だった。

 三人の色については、それぞれのイメージカラーだと。
 レラは風属性のフェアリーだから緑。
 アレナリアはスノーエルフと言われ水属性が得意だから水色。
 以前はスノーエルフと言われるのを嫌がっていたのに、今ではそれがない。
 二人は自分で決めていたが、ビワの場合は耳と尻尾の色に合わせてはと、アレナリアとレラに進められ黄色になったと。
 オーバーコートはリバーシブルなっており、ひっくり返すと三人とも黒で統一されていた。
 カズは黒にした理由を聞こうとしたが、依頼主と待ち合わせの場所が近くなったので、それはまた今度にした。

「あそこを曲がって少し行った辺りが、依頼主と待ち合わせの高級宿が建ち並ぶ二等地だ」

 周りの建物に見覚えがあるアレナリアは、昨日のヒューケラ女の子の顔が頭に浮かんだ。

「……まさかね」

 待ち合わせの場所には二台の馬車が停まっていた。
 一台は二頭の馬が引く、黒塗りの見るからに高級な馬車。
 もう一台はカズ達が乗っているような荷運び用の馬車。(旅用に作り変える前の)
 ただし荷台は倍以上もあり、それを引くのはただの馬ではなくモンスター。

「あれは『バルヤール』」

 荷馬車に繋がれた大きな馬を見て、アレナリアが驚く。

「バルヤール?」

「見た目は馬だけどモンスターよ」

「モンスターが街中にって、大丈夫なの?」

 モンスターと聞いてレラがアレナリアに問う。

「荷馬車を引っ張るってことは、テイムされてるのよ。バルヤールをテイム出来てるのなら、余程優秀なテイマーがいるってことね」

「へぇ。デカイ馬だな」

「今は3メートルくらいだけど、もっと大きくなれるはずよ」

「大きさが変えられるの?」

「ええ、大きくも小さくも」

「暴れたりしないの?」

「元々温和な性格をしてるから、こちらから何かしなければ暴れたりしないわよ」

「レラは気を付けるんだな」

「なんで?」

「勝手に乗ったり、たてがみを引っ張ったりしそうだから」

「そんなことしないもん!」

「冗談だよ、冗談(最近はイタズラもしなくなったからな)」

 二台の馬車から少し離れた所に、カズは自分達の馬車を停め、バルヤールの近くに居るテイマーらしき人の所へ挨拶に向かった。
 アレナリアはカズに代わりホースの手綱を、レラとビワは馬車の中で待つ。
 予想通りバルヤールの近くに居たのはテイマーの『ジョキー』依頼主ブロンディ家お抱えの冒険者、ランクはB。
 急きょ低ランクパーティーを連れて行くと、依頼主から話は通っていた。

「護衛に期待はあまりできないが、一人娘お嬢の相手をしてくれれば、とオレは聞いてる。本当はもう数日滞在する予定だったみたいだが、急に一緒に行くと言い出したんだとさ」

 ジョキーがカズに話をしていると、ちょうどその一人娘が姿を現した。
 カズに気付くと辺りを見渡し、アレナリアの姿を見つけ走り出す。

「待ってましたわ。アレナリアお姉さま!」

「ヒューケラ! やっぱりあなただったの。依頼主がブロンディと聞いたから違うと思ったのだけど、この場所に来たからまさかと思ったのよ」

「昨日お姉さまにパーティー名を聞いて、お父さまにお願いしたんです」

 カズはジョキーの所から自分達の馬車に戻った。

「どういうこと? アレナリアは知ってたの?」

「昨日ここまでこのヒューケラを送った別れ際に、パーティー名を聞かれたのよ。今日、街を出るから別にいいかなって教えたら……まさか名指しで依頼を出してくるなんて」

「これで一緒に居られますね! ささ、お姉さまとレラさんはわたくしとあちらの馬車へ。ビワさんも良いですよ。私しとお揃いの髪色ということで」

 カズを無視して話を進めるヒューケラ。

「ちょっと待って。護衛の依頼として来てるんだから、私達はこの馬車で後ろから付いて行くわ」

「急いで依頼を出したので、話がちゃんと伝わってませんでしたのね。お姉さま方には、わたくしと一緒の馬車に乗ってもらいますのよ」

「え!? そうなのカズ?」

「俺もテイマーのジョキーさんから、今聞いた。依頼を受けたんだからしょうがない、アレナリアは一緒の馬車に乗って子守り護衛をしてくれ」

「あなた何を言ってるんですの。レラさんも一緒だと聞いてなかったのですか?」

「護衛はアレナリアだけで…」

「レラさんの……わかりますよね」

 弱味を握っているから言うことを聞け、と言わんばかりの態度をカズに対してとるヒューケラ。

「そんな言い方するなら、今からこの依頼辞めるわよ。別にギルドから注意されようと、ランクが落ちようと、私達は気にしないから」

 アレナリアの辞めると言う言葉を聞いて、ヒューケラは泣きそうな顔をする。

「ごめんなさい。わたくし言い過ぎました。だから辞めないで、一緒に来てください」

 ヒューケラはアレナリアの手を握り、顔を近付けて懇願する。

「いいこと、レラのことは誰にも話さない」

「わかりました!」

「カズにしてる態度を改めなさい」

「ど、努力します」

 ヒューケラはアレナリアから目を反らす。

「次に脅すような事をしたら、貴女を守ってあげられないわよ」

「わかりました。ごめんなさい、お姉さま」

「ってことだから、私とレラは向こうに乗るわ」

「しっかり護衛頼む」

 レラは不満な顔をしながらも、アレナリアと共に黒塗りの馬車に乗った。
 少しして準備が整い、馬車はトンネルに向けて出発した。
 先頭はバルヤールが引く大きな荷馬車、続いて黒塗りの高級馬車、最後はその後ろからカズとビワが乗る馬車が後を付いて行く。
 既に通行料は払ってあり、トンネル入口で一時的に停止しただけで、すぐに門を通りトンネル内に入って行く。
 停止したのは、先頭を行く荷馬車に乗るジョキーが、門を管理する兵士に通行書を提示したからだ。
 カズとビワは兵士に顔を見せるようにと、出発前にジョキーから言われていた。
 ジョキーが見せた通行書に、カズ達の馬車の分も含まれていたため、止められるようなことはなかった。
 もちろん通行料を払うことも。
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