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四章 異世界旅行編 2 トカ国
345 街の名前通りの名物食材
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一通り説明が終わる頃には、いつの間にか周囲に観光客が集まり一緒になって話を聞いており、ガイド本を買い求める客が列をなしていた。
流れでカズも一冊買ってしまった。
「どうせなら服を買う前に、ガイド本を先に買えば安く買えたのにね」
「そうだ……いや、変わらないだろ」
「なんで?」
「今日行った服屋は、この本には載ってないと思うぞ。たぶん観光客相手の服屋じゃないから」
「そういえば、そういったお客を見なかったわね。で、これから観光でもする? ビワはどう?」
「それだとレラがかわいそうです」
「だな。今日はもう食料を買って、宿に戻ろう。観光するなら、明日でもいいたろ」
「なら決まりね」
揉め事にも巻き込まれず予定通り買い物を済ませて、宿屋に戻ることができた。
部屋に入ると鞄からレラが飛び出した。
「くっはぁー疲れた。一日入りっぱなしは辛い」
「お疲れさま」
「そういえばレラが入る新しい鞄買ってないわね」
「いーのいーの。中から見てたけど、良さそうなのなかったし。気に入ったの見つけたら合図するから、明日は観光がてらあちしのを買うのよ。今日はアレナリアとビワの服を買ったんでしょ」
レラはギルドを出た辺りから起きていたらしく、珍しく鞄の中で静かにしていたかというと、観光する場所を鞄に開けた穴から覗いて目星をつけていたとのことだ。
「観光するなら、明日はレラを出して行く?」
「う~ん……少しくらいなら大丈夫だろう」
「やったー!」
「ただし、一人で勝手に行動しないのと、小人族に見えてるんだから飛ばないことだ」
「了解で~す!」
喜び狭い部屋の中で飛び回るレラ。
「明日は俺が鞄を持つから。一日は大変だったでしょ」
「そん…そうですね。少し肩が凝りました」
「ならあちしが肩叩きしてあげる。いつもビワに運んでもらってるから」
ビワの肩をとんとん叩き、凝った肩をほぐすレラ。
「なら今日の夕食は俺が作ろう。街の名前に通りホタテ貝が名物らしく、あっちこっちで売ってたから大量に買っておいた」
トンネルの先は湖だと聞いたが、そこでホタテ貝が多く生息してるのだろうかと疑問が生じたが、今更何を、とカズは思った。
宿屋の裏手にある馬車置き場の一角を使わせてもらい、土魔法で焼き台を作ってホタテ貝を焼く。
カズの知ってるホタテ貝と同じではあったが、その大きさは倍以上。
外の貝は大きくても中が小さいなんてことはざらだと、開いた貝の殻を外すして中身を確かめる。
結果は中身たっぷり、大きな貝柱がでーん! とあった。
先ずはこのまま試しに一つ、いただきます。
カズは味見に一つ摘まんでみた。
ホタテのジューシーで濃厚な味は、何も味付けしなくても十分。
バターと軽く塩をふり一口、これも旨い。
続いて醤油はないが魚醤があるのでそれをつけて、バター醤油ならぬバター魚醤で一口、合わないわけがなかった。
大きな貝橋を三口で食べ終えた。
ホタテの貝ひもと肝(精巣と卵巣)部分はお酒の摘まみ最適だ。
アレナリアとレラがお酒を要求してきそうなので、先に量を決めて出すことにした。
カズは火の後始末をし、夕食を持って部屋に戻る。
食べ始めると案の定、アレナリアとレラがお酒を要求してきた。
それぞれ麦シュワと果実酒を二人の前に出した。
「ビワも飲む?」
「いえ、私は」
「そう。なら俺もいいや(耐性があって、並の量じゃ酔わないから)」
「私に遠慮しないで、飲んでください。後片付けはしますから」
「大丈夫大丈夫。あの二人が飲み過ぎないように見てないと(逆に気を使わせてしまったな)」
「この貝、美味しいです」
「街を出発する前に買い溜めるわよカズ。アツっ! はふはふ」
「焦って食べるから」
口に頬張り火傷しそうになるアレナリアは、果実酒を一口。
「この肝がお酒に合うわ。こっちの貝ひもも良いわね」
「うまうま!」
レラも食べる手を止めない。
バターと黒胡椒味の貝柱を一口頬張ると、続けて麦シュワを流し込む。
「もう少しゆっくり食べたらどうだ?」
「街中だと人目があるでしょ」
「そりゃそうだが(仕事終わりで、次の日が休みの人の飲み方だな。まったく)」
満足した夕食を終え、二人はベッドに寝転んだ。
食器類はビワが宿屋の水場で洗ってくると、持って部屋から出た。
「食べてすぐ寝ると牛になるぞ」
「なにそれ? どんな呪いよ」
「言っても知らないか(逆流性食道炎になる、とか言っても同じ反応するだろうな)」
「貝を食べて牛になるの? おもし…ゲップ~」
「なら言い直す。食べてすぐ寝ると、ぶくぶくに肥るぞ。前みたいに」
肥るの言葉にアレナリアは勢いよく起き、ちょこんとベッドの端に座って、静かに自分のお腹を見て太った頃を思い出す。
気付くとその隣でレラも同じ様にしていた。
「真剣な顔して何かあったんですか?」
ビワが戻るなり、アレナリアとレラの表情を見て心配する。
「なんでもないよ。自分の不摂生を直すように言っただけだから。ビワには関係ないね」
「そんなことは…」
「食事に気を使ってる様だし、すらっとして綺麗でかわぃ……(またやってしまった)」
ゆっくりビワを見ると、顔を真っ赤にしたままカズから顔を背けていた。
その様子を見ていたアレナリアとレラは、この天然すけこましまたやりやがった、と言いたげな表情をしていた。
「ぽっちゃり体型のあちしとアレナリアは、どうせ綺麗でもないし、かわいくもないから、食べてすぐに寝るもん!」
「そうね。どうせだから!」
アレナリアとレラがベッドに横になり、布団を被ってそのままふて寝した。
「アレナリア」
「話なら明日にして!」
「レ…レラ」
「うるさい、あちしはもう寝るの! そしてぶくぶく太るんだもん!」
これは駄目だと、この日カズは部屋で寝るのをやめた。
「ごめんビワ。俺、他で寝るから二人のこと頼むね」
小声で部屋を出ることをビワに告げたカズ。
「え、でも」
「大丈夫。俺に腹を立ててるだけだから、寝て起きたら少しは機嫌が良くなるはず。いつもの事さ」
「カズさんは何処で?」
「俺はそうだな……馬車にでも行って寝るさ」
カズが部屋を出てから数時間、アレナリアが不意に目を覚まし、カズがいないことに気付く。
そして寝ているビワに声を掛けた。
「ねぇビワ」
アレナリアは声を掛けるがビワは起きない。
悪いと思いつつ、ビワを揺すって起こす。
「寝てるところごめんなさい」
「……は…い?」
「カズはどうしたの?」
寝ぼけ眼で目を覚ましたビワが、少し間を置きアレナリアの問に答える。
「カズさんなら……」
「何処に行ったか、ビワも知らないの?」
「二人の機嫌が……その」
「あ……そうね。お酒が入って気が大きくなって、言い過ぎたわ。それでカズは?」
「自分は馬車で寝ると」
「謝らないと……私ちょっと行って連れて来るわ。ビワはレラを見てて。起きないと思うけど」
「分かりました」
「夜中に起こしてごめんなさい」
「大丈夫です。私も気になってたので」
一人部屋を出たアレナリアは、宿屋の裏手にある馬車置場に、夜中なので静かに移動する。
馬車に近付き音を立てず中をこっそりと除き込む。
「あれ……カズ?」
馬車で寝てるはずの、カズの姿が何処にも見当たらなかった。
「アレナリア」
名前を呼ばれたアレナリアは、キョロキョロと周りを見渡し、馬車置場を出て屋根を見ると、そこには蒼く淡い月光に照らされたカズがいた。
物音を立てないようにして、カズは静かに屋根から下りる。
「あんな所で何してたの?」
「ちょっと寝付けなかったもんで、月を見てたんだ。慣れたつもりだけど、やっぱり月が二つあるのは、少し不思議な感じだ」
「カズが居た世界では一つだって言ってたわね」
「ああ。向こうとはだいぶ違うな。こっちでは月の光も大きさも様々に変わる」
「今はちょうど同じくらいの大きさに見える頃ね。段々と互いの月が離れて大きさも変わるわ。この辺りは魔素の影響で、月の光が蒼く見えるみたいね。高い所で山脈と湖のマナが混じりあってるんじゃないかしら」
「その場所やマナの状況で月明かりが変わるのは、旅の楽しみにの一つだな」
「月明かりが変わるのを気に掛けるのなんて、そうはないわ。せいぜい吟遊詩人くらいじゃないの」
「吟遊詩人か……俺に詩の才はないな。アレナリアはこんな深夜にどうしたんだ? 酔い潰れて朝まで起きないと思ったんだけど」
「そんなに飲んでないわよ。だだちょっと目が覚めちゃって。ビワに聞いたら、カズは馬車で寝てるって言うから。その、謝ろうと……ごめんなさい」
「気にしてない。それに俺の言い方も悪かった」
「なら部屋に戻って寝ましょう。朝まではまだ時間があるから」
「いや、俺は馬車で寝るよ」
「どうして? やっぱり怒ってる……の」
カズは首を横に振る。
「昨日馬車の荷物を狙って侵入したのがいたって話したろ。だから今夜は見張ってみようかと思ってさ。盗まれる物はないけど、馬車を持っていかれたら困るから」
「なら私が交代して」
「アレナリアは部屋で寝てくれ。レラとビワだけじゃ心配だから」
「そう言っても、何かしらのことはしてくれてあるんでしょ」
「いつもと同じさ」
「そう、分かったわ。いつまでも月見てないで、カズ早く寝なさいよ」
「ああ。おやすみ(俺も寝るか)」
流れでカズも一冊買ってしまった。
「どうせなら服を買う前に、ガイド本を先に買えば安く買えたのにね」
「そうだ……いや、変わらないだろ」
「なんで?」
「今日行った服屋は、この本には載ってないと思うぞ。たぶん観光客相手の服屋じゃないから」
「そういえば、そういったお客を見なかったわね。で、これから観光でもする? ビワはどう?」
「それだとレラがかわいそうです」
「だな。今日はもう食料を買って、宿に戻ろう。観光するなら、明日でもいいたろ」
「なら決まりね」
揉め事にも巻き込まれず予定通り買い物を済ませて、宿屋に戻ることができた。
部屋に入ると鞄からレラが飛び出した。
「くっはぁー疲れた。一日入りっぱなしは辛い」
「お疲れさま」
「そういえばレラが入る新しい鞄買ってないわね」
「いーのいーの。中から見てたけど、良さそうなのなかったし。気に入ったの見つけたら合図するから、明日は観光がてらあちしのを買うのよ。今日はアレナリアとビワの服を買ったんでしょ」
レラはギルドを出た辺りから起きていたらしく、珍しく鞄の中で静かにしていたかというと、観光する場所を鞄に開けた穴から覗いて目星をつけていたとのことだ。
「観光するなら、明日はレラを出して行く?」
「う~ん……少しくらいなら大丈夫だろう」
「やったー!」
「ただし、一人で勝手に行動しないのと、小人族に見えてるんだから飛ばないことだ」
「了解で~す!」
喜び狭い部屋の中で飛び回るレラ。
「明日は俺が鞄を持つから。一日は大変だったでしょ」
「そん…そうですね。少し肩が凝りました」
「ならあちしが肩叩きしてあげる。いつもビワに運んでもらってるから」
ビワの肩をとんとん叩き、凝った肩をほぐすレラ。
「なら今日の夕食は俺が作ろう。街の名前に通りホタテ貝が名物らしく、あっちこっちで売ってたから大量に買っておいた」
トンネルの先は湖だと聞いたが、そこでホタテ貝が多く生息してるのだろうかと疑問が生じたが、今更何を、とカズは思った。
宿屋の裏手にある馬車置き場の一角を使わせてもらい、土魔法で焼き台を作ってホタテ貝を焼く。
カズの知ってるホタテ貝と同じではあったが、その大きさは倍以上。
外の貝は大きくても中が小さいなんてことはざらだと、開いた貝の殻を外すして中身を確かめる。
結果は中身たっぷり、大きな貝柱がでーん! とあった。
先ずはこのまま試しに一つ、いただきます。
カズは味見に一つ摘まんでみた。
ホタテのジューシーで濃厚な味は、何も味付けしなくても十分。
バターと軽く塩をふり一口、これも旨い。
続いて醤油はないが魚醤があるのでそれをつけて、バター醤油ならぬバター魚醤で一口、合わないわけがなかった。
大きな貝橋を三口で食べ終えた。
ホタテの貝ひもと肝(精巣と卵巣)部分はお酒の摘まみ最適だ。
アレナリアとレラがお酒を要求してきそうなので、先に量を決めて出すことにした。
カズは火の後始末をし、夕食を持って部屋に戻る。
食べ始めると案の定、アレナリアとレラがお酒を要求してきた。
それぞれ麦シュワと果実酒を二人の前に出した。
「ビワも飲む?」
「いえ、私は」
「そう。なら俺もいいや(耐性があって、並の量じゃ酔わないから)」
「私に遠慮しないで、飲んでください。後片付けはしますから」
「大丈夫大丈夫。あの二人が飲み過ぎないように見てないと(逆に気を使わせてしまったな)」
「この貝、美味しいです」
「街を出発する前に買い溜めるわよカズ。アツっ! はふはふ」
「焦って食べるから」
口に頬張り火傷しそうになるアレナリアは、果実酒を一口。
「この肝がお酒に合うわ。こっちの貝ひもも良いわね」
「うまうま!」
レラも食べる手を止めない。
バターと黒胡椒味の貝柱を一口頬張ると、続けて麦シュワを流し込む。
「もう少しゆっくり食べたらどうだ?」
「街中だと人目があるでしょ」
「そりゃそうだが(仕事終わりで、次の日が休みの人の飲み方だな。まったく)」
満足した夕食を終え、二人はベッドに寝転んだ。
食器類はビワが宿屋の水場で洗ってくると、持って部屋から出た。
「食べてすぐ寝ると牛になるぞ」
「なにそれ? どんな呪いよ」
「言っても知らないか(逆流性食道炎になる、とか言っても同じ反応するだろうな)」
「貝を食べて牛になるの? おもし…ゲップ~」
「なら言い直す。食べてすぐ寝ると、ぶくぶくに肥るぞ。前みたいに」
肥るの言葉にアレナリアは勢いよく起き、ちょこんとベッドの端に座って、静かに自分のお腹を見て太った頃を思い出す。
気付くとその隣でレラも同じ様にしていた。
「真剣な顔して何かあったんですか?」
ビワが戻るなり、アレナリアとレラの表情を見て心配する。
「なんでもないよ。自分の不摂生を直すように言っただけだから。ビワには関係ないね」
「そんなことは…」
「食事に気を使ってる様だし、すらっとして綺麗でかわぃ……(またやってしまった)」
ゆっくりビワを見ると、顔を真っ赤にしたままカズから顔を背けていた。
その様子を見ていたアレナリアとレラは、この天然すけこましまたやりやがった、と言いたげな表情をしていた。
「ぽっちゃり体型のあちしとアレナリアは、どうせ綺麗でもないし、かわいくもないから、食べてすぐに寝るもん!」
「そうね。どうせだから!」
アレナリアとレラがベッドに横になり、布団を被ってそのままふて寝した。
「アレナリア」
「話なら明日にして!」
「レ…レラ」
「うるさい、あちしはもう寝るの! そしてぶくぶく太るんだもん!」
これは駄目だと、この日カズは部屋で寝るのをやめた。
「ごめんビワ。俺、他で寝るから二人のこと頼むね」
小声で部屋を出ることをビワに告げたカズ。
「え、でも」
「大丈夫。俺に腹を立ててるだけだから、寝て起きたら少しは機嫌が良くなるはず。いつもの事さ」
「カズさんは何処で?」
「俺はそうだな……馬車にでも行って寝るさ」
カズが部屋を出てから数時間、アレナリアが不意に目を覚まし、カズがいないことに気付く。
そして寝ているビワに声を掛けた。
「ねぇビワ」
アレナリアは声を掛けるがビワは起きない。
悪いと思いつつ、ビワを揺すって起こす。
「寝てるところごめんなさい」
「……は…い?」
「カズはどうしたの?」
寝ぼけ眼で目を覚ましたビワが、少し間を置きアレナリアの問に答える。
「カズさんなら……」
「何処に行ったか、ビワも知らないの?」
「二人の機嫌が……その」
「あ……そうね。お酒が入って気が大きくなって、言い過ぎたわ。それでカズは?」
「自分は馬車で寝ると」
「謝らないと……私ちょっと行って連れて来るわ。ビワはレラを見てて。起きないと思うけど」
「分かりました」
「夜中に起こしてごめんなさい」
「大丈夫です。私も気になってたので」
一人部屋を出たアレナリアは、宿屋の裏手にある馬車置場に、夜中なので静かに移動する。
馬車に近付き音を立てず中をこっそりと除き込む。
「あれ……カズ?」
馬車で寝てるはずの、カズの姿が何処にも見当たらなかった。
「アレナリア」
名前を呼ばれたアレナリアは、キョロキョロと周りを見渡し、馬車置場を出て屋根を見ると、そこには蒼く淡い月光に照らされたカズがいた。
物音を立てないようにして、カズは静かに屋根から下りる。
「あんな所で何してたの?」
「ちょっと寝付けなかったもんで、月を見てたんだ。慣れたつもりだけど、やっぱり月が二つあるのは、少し不思議な感じだ」
「カズが居た世界では一つだって言ってたわね」
「ああ。向こうとはだいぶ違うな。こっちでは月の光も大きさも様々に変わる」
「今はちょうど同じくらいの大きさに見える頃ね。段々と互いの月が離れて大きさも変わるわ。この辺りは魔素の影響で、月の光が蒼く見えるみたいね。高い所で山脈と湖のマナが混じりあってるんじゃないかしら」
「その場所やマナの状況で月明かりが変わるのは、旅の楽しみにの一つだな」
「月明かりが変わるのを気に掛けるのなんて、そうはないわ。せいぜい吟遊詩人くらいじゃないの」
「吟遊詩人か……俺に詩の才はないな。アレナリアはこんな深夜にどうしたんだ? 酔い潰れて朝まで起きないと思ったんだけど」
「そんなに飲んでないわよ。だだちょっと目が覚めちゃって。ビワに聞いたら、カズは馬車で寝てるって言うから。その、謝ろうと……ごめんなさい」
「気にしてない。それに俺の言い方も悪かった」
「なら部屋に戻って寝ましょう。朝まではまだ時間があるから」
「いや、俺は馬車で寝るよ」
「どうして? やっぱり怒ってる……の」
カズは首を横に振る。
「昨日馬車の荷物を狙って侵入したのがいたって話したろ。だから今夜は見張ってみようかと思ってさ。盗まれる物はないけど、馬車を持っていかれたら困るから」
「なら私が交代して」
「アレナリアは部屋で寝てくれ。レラとビワだけじゃ心配だから」
「そう言っても、何かしらのことはしてくれてあるんでしょ」
「いつもと同じさ」
「そう、分かったわ。いつまでも月見てないで、カズ早く寝なさいよ」
「ああ。おやすみ(俺も寝るか)」
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