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四章 異世界旅行編 2 トカ国
338 心の内
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依頼を終えてギルドに着く頃には、外灯がつくほどの時間になっていた。
ギルドには受付にトリンタとギルドマスターのグリズが居るだけで、他の冒険者は一人もいなかった。
「暗くなるまでご苦労。終えた依頼書はトリンタに渡してくれ。三人は食い物持って、宿に戻ったぞ」
「そうですか。なら俺も宿に戻ります」
「また明日も頼むぞ」
「分かってます(外壁の修復以外にも、まだ色々とあるんだろうな。初心に返って数をこなすか)」
トリンタに依頼書を渡し、カズは三人が待つ宿に戻って行く。
「初日だから二、三件は残ったか?」
「ギルド長……」
「どうしたトリンタ」
「全部終わってます。町中の依頼から、外壁外の草刈りまで」
「おしッ! 大当たりを引いた」
拳を握りグリズは笑顔になる。
「喜んでるところすみませんが、これは本当なんでしょうか? 草刈りは町の周囲あちこちですよ」
「明日、一応わいが確かめに行ってくる。まあ大丈夫だろうが。トリンタは次カズにやってもらう依頼書を選んで出しといてくれ。それが終わったら今日は上がっていいぞ」
「こんな人手不足の時に来るなんて。ギルドとしては、ありがたいんですがね。もっとも、ギルド長が依頼をどんどんやってくれれば、こんなに溜まることはなかったんですけど」
「さてと、わいは自分の部屋に戻って、パーティー登録の書類を書き上げるか」
トリンタの小言から逃げるように、その場を後にするグリズだった。
宿に戻ったカズは、待っていた三人と町で買い揃えた夕食を取り、アレナリアとレラは麦シュワを飲みながら昼間のことを話した。
キ町の住人の殆どは裕福とは言えないが、幸せそうな暮らしをしている。
ビワに変わった様子もなく、皆でのんびりと町を散策して麦茶葉を買ったと。
レラがぶつぶつと文句を言っていたから、アレナリアがイリュージョンを使い、鳥の姿に見えるようにして外に出したとも。
常にグリズが一緒に居たので、試してみたようだ。
誰もが鳥だと信じ、フェアリーだと気付かれずいたから、次からはいつでも出れるとレラは喜んでいた。
水を差してはと思ったが、カズは場所を選んでだけど、とだけ付け加えておいた。
「疲れたし、そろそろ寝るか」
「そ、そうね。そうしましょう」
「? ……あ」
そわそわとするアレナリアを見て、カズは今朝言ったことを思い出した。
「あ、って何? もしかして約束忘れたの」
アレナリアは真顔になり、カズを凝視する。
「覚えてるって(一人でゆっくり寝たかった)」
「そう」
アレナリアは真顔から笑顔に変わる。
「ほんじゃあ寝ようかビワ。そっちはお楽しみのようだから」
「何も楽しまないっての」
「え!?」
「!? じゃないよ。寝るまで手を握るだけだから」
「朝までの間違いでしょ」
「アレナリアが離せば、それで終わり」
「絶対朝まで離さないから! ほら行くよ」
「待て待て、椅子を持ってくから」
つかつかと椅子を持って来るカズに、不満そうな顔をするアレナリア。
「一緒にベッドへ入ればいいのに」
昨夜ビワにした様に、カズは椅子に座りアレナリアがベッドへ横になる。
椅子に座り差し出したカズの左手を握るアレナリア。
「満足か?」
「とりあえずは」
「そう(まるで子供をあやしてるようだ)」
手を握ったままカズをじっと見て、アレナリアは寝ようとしない。
「目を開けてたら、寝れないぞ」
「まだ眠くない」
「なら少し話そう」
「ええ、良いわ」
二人っきりで嬉しそうにするアレナリア。
「ビワのことなんだが」
アレナリアの笑顔がスッと消えた。
「またビワの話……?」
「そう言うな。ビワが奴隷を見て不安になったのは、ビワも種族売買の連中に捕まっていた事があったから起きたんだと思う。ビワ自身では、まだハッキリと気付いてないようだけど」
「……どういう事?」
「ビワ自身のことだから、俺はあまり言いたくないんだけど、これから先のことを考えると、アレナリアにも知ってもらってた方が良いだろ」
カズはジルバと別れる前に、ビワに関することを聞いた内容、それをアレナリアに話した。
元々種族売買をしていた者達からマーガレットが救いだし、屋敷で面倒を見るようになったこと。
旅の目的はビワを故郷に連れて行くだけではなく、嫌な事から自身を守るため、忘れてしまっている記憶を思い出すこと。
それはビワ自身も望み、勇気を出して旅に出たということ。
「だからそんなにビワに気を使っているのね。奴隷を見て不安がったのも」
「たぶん思い出したわけじゃなくて」
「身体が反応したみたいな事ね」
「ああ。だから常にビワを気に掛けてやってほしいんだ」
「分かったわ」
「ありがとう」
少し眠気が差してきたのか、アレナリアの瞼が重くなってきていた。
「眠くなってきたか?」
「ええ。でももう少し話をしても?」
「ああ」
うとうとしながら、アレナリアが聞きたかったことをカズにぶつける。
「どうしてあれから……一度しか抱いてくれないの?」
「そういう話は……」
「私が嫌い? なら話してくれなくても」
「……これは俺が異世界に来る前の話なんだが」
カズは元居た世界での話をアレナリアにした。
子供を作った責任を取らず、育児をしないで死なせてしまう者。
産んだ子供を面倒見れず、放置して死なせるならと、それを受け入れるポストというものが作られ、あると。
「どこの世界でもあるのね。でも良いことじゃない。小さな命が救われらなら、素晴らしいことだと思うわ」
「そうだな」
一言だけ言うと、カズは話を続けた。
命が救われのは良いことだ、がそれが当たり前になり、子供を作るという行為が安直になってしまっているのも事実。
国は人口減少で先行きが不安になり、子供を作り人口を増やすことを進め、その結果捨てられる子供も増えてしまった。
俺はそんな無責任なことをするつもりはない、だからそういった行為を気安くするつもりもない。
何故なら俺の身近にも、そんな無責任な人が居たから。
幸い死という方向にはいかなかったが、産みの親が育児放棄をしたため、俺は親とその子供を育てる事に……。
もし避妊魔法というものがなく、アレナリアとキッシュに子供が出来たら、元の世界に帰るのを諦め、責任を取るつもりでいた。
「真面目…過ぎ、固い考え……ね」
片方の目を薄く開けて、眠たそうに途切れ途切れの声でアレナリアは話す。
「それは自分でも分かってる」
「私は…平気。カズの子供が……幸…せ……」
話し声が途切れると、アレナリアはスゥスゥと寝息を立て眠てしまった。
寝たことで手の力は抜け、カズはゆっくりとアレナリアから手を離した。
「ありがとう(病んでる事もあったが、純粋で優しいところもある。泣かせるような事はしたくないな)」
カズはアレナリアにそっと毛布を掛け直して、静かに部屋を出た。
隣の部屋で椅子に座り、自分のこれからについて考えだした。
俺は元の世界に帰る必要……意味があるんだろうか……?
帰ったところで待ってるのは、寝て起きて安い給金で働き、腹に溜まればというだけで適当な物を食べ、ストレスを溜めないために酒を飲み、それを繰り返す毎日……このままこちらの世界に居た方が……。
カズの視線は隣の部屋で寝る三人に向いた。
自分の目的に霧がかかり、迷走したまま眠りについた。
ーーーーーーーーーーーーーーー
「お疲れぃ」
「今日もやっと終わったな」
あの二人仕事以外でも、家族ぐるみで遊んでるだったな。
俺には関係ないけど。
「金曜だし飲みに行くか?」
「オレは遠慮しとく。嫁がうるせぇから。ほれ、アイツでも誘ったらどうだ?」
「仕事上では話すけど、一緒に飲みたいとは思わねえよ。悪い奴じゃないんだろうが」
「同感。オタクはちょっと」
「だよな。失敗してもバカ正直に言ってよ。黙ってても、分かりゃしねえのに」
「だよな。今日あった失敗だって、オレだったら黙ってるぜ」
「うるせぇ客はいるけどよお、それ以外は適当でいいんだよ。忙しくなったって、安い給料で働いてるんだから」
「同感だ」
「さてと、仕方がねぇから一人でガールズバーでも寄ってくか」
「お! ガールズバーか。ならオレも少しだけ」
「おいおい、嫁に知られたらどうすんだ?」
「それを言うならお前もだろ」
「お先です(早く帰ろ)」
「「お疲れ」」
「……独身は自由でいいよな」
「何年か前まで、子供の面倒見てたとか聞いたぞ」
「確か姉貴の子供だって話だろ。何で姉貴の子供なんかを面倒見てたんだ?」
「その姉貴が、子供よりも男を選んだってオレは聞いたぞ。それで親が戸籍を移して、仕方なくアイツも面倒見てたとか」
「それじゃ義理の弟か妹ってことか?」
「親子程に年が離れた、な」
「お前この話、誰から聞いたんだ?」
「噂だよ、うわさ。でも本当らしいぜ。今はもう面倒見てないらしいが」
「何でだ?」
「その姉貴ってのが、新しい子供を連れて戻って来たって話だ。改心して目を覚ましたのか、父親違いの子供を一緒に実家で育ててるとか」
「それで追い出されて、アラフォーの栓山が一人暮らしか。不憫な奴だな」
「ああ。でもよぉ、よくそれまで一人でいたな」
「それもそうだな」
「例えば振られてから女性恐怖性になって、未だに童貞だとか」
「あり得る。冴えない面してるもんな」
「「だはっはっはっ」」
忘れ物して取りに戻ったら、またこれか……。
まあその噂話は、大体が本当の事だけど。
自分は口が固いから相談に乗る、とか言っておきながら、ここだけの話とか言ってすぐに喋るんだ。
口の軽い連中ばかりだ。
ハァ、忘れた物は明日でいい…あ、明日休みか。
こんな気分も悪い所から離れて、次の連休は何処かに出掛けてみるかな。
旅なんてしたことないけど、久々にトレカ持って、地方のショップにでも──
ーーーーーーーーーーーーーーー
◇◆◇◆◇
「ッ!」
ガタッと椅子から落ちそうになり、カズは目を覚ました。
ギルドには受付にトリンタとギルドマスターのグリズが居るだけで、他の冒険者は一人もいなかった。
「暗くなるまでご苦労。終えた依頼書はトリンタに渡してくれ。三人は食い物持って、宿に戻ったぞ」
「そうですか。なら俺も宿に戻ります」
「また明日も頼むぞ」
「分かってます(外壁の修復以外にも、まだ色々とあるんだろうな。初心に返って数をこなすか)」
トリンタに依頼書を渡し、カズは三人が待つ宿に戻って行く。
「初日だから二、三件は残ったか?」
「ギルド長……」
「どうしたトリンタ」
「全部終わってます。町中の依頼から、外壁外の草刈りまで」
「おしッ! 大当たりを引いた」
拳を握りグリズは笑顔になる。
「喜んでるところすみませんが、これは本当なんでしょうか? 草刈りは町の周囲あちこちですよ」
「明日、一応わいが確かめに行ってくる。まあ大丈夫だろうが。トリンタは次カズにやってもらう依頼書を選んで出しといてくれ。それが終わったら今日は上がっていいぞ」
「こんな人手不足の時に来るなんて。ギルドとしては、ありがたいんですがね。もっとも、ギルド長が依頼をどんどんやってくれれば、こんなに溜まることはなかったんですけど」
「さてと、わいは自分の部屋に戻って、パーティー登録の書類を書き上げるか」
トリンタの小言から逃げるように、その場を後にするグリズだった。
宿に戻ったカズは、待っていた三人と町で買い揃えた夕食を取り、アレナリアとレラは麦シュワを飲みながら昼間のことを話した。
キ町の住人の殆どは裕福とは言えないが、幸せそうな暮らしをしている。
ビワに変わった様子もなく、皆でのんびりと町を散策して麦茶葉を買ったと。
レラがぶつぶつと文句を言っていたから、アレナリアがイリュージョンを使い、鳥の姿に見えるようにして外に出したとも。
常にグリズが一緒に居たので、試してみたようだ。
誰もが鳥だと信じ、フェアリーだと気付かれずいたから、次からはいつでも出れるとレラは喜んでいた。
水を差してはと思ったが、カズは場所を選んでだけど、とだけ付け加えておいた。
「疲れたし、そろそろ寝るか」
「そ、そうね。そうしましょう」
「? ……あ」
そわそわとするアレナリアを見て、カズは今朝言ったことを思い出した。
「あ、って何? もしかして約束忘れたの」
アレナリアは真顔になり、カズを凝視する。
「覚えてるって(一人でゆっくり寝たかった)」
「そう」
アレナリアは真顔から笑顔に変わる。
「ほんじゃあ寝ようかビワ。そっちはお楽しみのようだから」
「何も楽しまないっての」
「え!?」
「!? じゃないよ。寝るまで手を握るだけだから」
「朝までの間違いでしょ」
「アレナリアが離せば、それで終わり」
「絶対朝まで離さないから! ほら行くよ」
「待て待て、椅子を持ってくから」
つかつかと椅子を持って来るカズに、不満そうな顔をするアレナリア。
「一緒にベッドへ入ればいいのに」
昨夜ビワにした様に、カズは椅子に座りアレナリアがベッドへ横になる。
椅子に座り差し出したカズの左手を握るアレナリア。
「満足か?」
「とりあえずは」
「そう(まるで子供をあやしてるようだ)」
手を握ったままカズをじっと見て、アレナリアは寝ようとしない。
「目を開けてたら、寝れないぞ」
「まだ眠くない」
「なら少し話そう」
「ええ、良いわ」
二人っきりで嬉しそうにするアレナリア。
「ビワのことなんだが」
アレナリアの笑顔がスッと消えた。
「またビワの話……?」
「そう言うな。ビワが奴隷を見て不安になったのは、ビワも種族売買の連中に捕まっていた事があったから起きたんだと思う。ビワ自身では、まだハッキリと気付いてないようだけど」
「……どういう事?」
「ビワ自身のことだから、俺はあまり言いたくないんだけど、これから先のことを考えると、アレナリアにも知ってもらってた方が良いだろ」
カズはジルバと別れる前に、ビワに関することを聞いた内容、それをアレナリアに話した。
元々種族売買をしていた者達からマーガレットが救いだし、屋敷で面倒を見るようになったこと。
旅の目的はビワを故郷に連れて行くだけではなく、嫌な事から自身を守るため、忘れてしまっている記憶を思い出すこと。
それはビワ自身も望み、勇気を出して旅に出たということ。
「だからそんなにビワに気を使っているのね。奴隷を見て不安がったのも」
「たぶん思い出したわけじゃなくて」
「身体が反応したみたいな事ね」
「ああ。だから常にビワを気に掛けてやってほしいんだ」
「分かったわ」
「ありがとう」
少し眠気が差してきたのか、アレナリアの瞼が重くなってきていた。
「眠くなってきたか?」
「ええ。でももう少し話をしても?」
「ああ」
うとうとしながら、アレナリアが聞きたかったことをカズにぶつける。
「どうしてあれから……一度しか抱いてくれないの?」
「そういう話は……」
「私が嫌い? なら話してくれなくても」
「……これは俺が異世界に来る前の話なんだが」
カズは元居た世界での話をアレナリアにした。
子供を作った責任を取らず、育児をしないで死なせてしまう者。
産んだ子供を面倒見れず、放置して死なせるならと、それを受け入れるポストというものが作られ、あると。
「どこの世界でもあるのね。でも良いことじゃない。小さな命が救われらなら、素晴らしいことだと思うわ」
「そうだな」
一言だけ言うと、カズは話を続けた。
命が救われのは良いことだ、がそれが当たり前になり、子供を作るという行為が安直になってしまっているのも事実。
国は人口減少で先行きが不安になり、子供を作り人口を増やすことを進め、その結果捨てられる子供も増えてしまった。
俺はそんな無責任なことをするつもりはない、だからそういった行為を気安くするつもりもない。
何故なら俺の身近にも、そんな無責任な人が居たから。
幸い死という方向にはいかなかったが、産みの親が育児放棄をしたため、俺は親とその子供を育てる事に……。
もし避妊魔法というものがなく、アレナリアとキッシュに子供が出来たら、元の世界に帰るのを諦め、責任を取るつもりでいた。
「真面目…過ぎ、固い考え……ね」
片方の目を薄く開けて、眠たそうに途切れ途切れの声でアレナリアは話す。
「それは自分でも分かってる」
「私は…平気。カズの子供が……幸…せ……」
話し声が途切れると、アレナリアはスゥスゥと寝息を立て眠てしまった。
寝たことで手の力は抜け、カズはゆっくりとアレナリアから手を離した。
「ありがとう(病んでる事もあったが、純粋で優しいところもある。泣かせるような事はしたくないな)」
カズはアレナリアにそっと毛布を掛け直して、静かに部屋を出た。
隣の部屋で椅子に座り、自分のこれからについて考えだした。
俺は元の世界に帰る必要……意味があるんだろうか……?
帰ったところで待ってるのは、寝て起きて安い給金で働き、腹に溜まればというだけで適当な物を食べ、ストレスを溜めないために酒を飲み、それを繰り返す毎日……このままこちらの世界に居た方が……。
カズの視線は隣の部屋で寝る三人に向いた。
自分の目的に霧がかかり、迷走したまま眠りについた。
ーーーーーーーーーーーーーーー
「お疲れぃ」
「今日もやっと終わったな」
あの二人仕事以外でも、家族ぐるみで遊んでるだったな。
俺には関係ないけど。
「金曜だし飲みに行くか?」
「オレは遠慮しとく。嫁がうるせぇから。ほれ、アイツでも誘ったらどうだ?」
「仕事上では話すけど、一緒に飲みたいとは思わねえよ。悪い奴じゃないんだろうが」
「同感。オタクはちょっと」
「だよな。失敗してもバカ正直に言ってよ。黙ってても、分かりゃしねえのに」
「だよな。今日あった失敗だって、オレだったら黙ってるぜ」
「うるせぇ客はいるけどよお、それ以外は適当でいいんだよ。忙しくなったって、安い給料で働いてるんだから」
「同感だ」
「さてと、仕方がねぇから一人でガールズバーでも寄ってくか」
「お! ガールズバーか。ならオレも少しだけ」
「おいおい、嫁に知られたらどうすんだ?」
「それを言うならお前もだろ」
「お先です(早く帰ろ)」
「「お疲れ」」
「……独身は自由でいいよな」
「何年か前まで、子供の面倒見てたとか聞いたぞ」
「確か姉貴の子供だって話だろ。何で姉貴の子供なんかを面倒見てたんだ?」
「その姉貴が、子供よりも男を選んだってオレは聞いたぞ。それで親が戸籍を移して、仕方なくアイツも面倒見てたとか」
「それじゃ義理の弟か妹ってことか?」
「親子程に年が離れた、な」
「お前この話、誰から聞いたんだ?」
「噂だよ、うわさ。でも本当らしいぜ。今はもう面倒見てないらしいが」
「何でだ?」
「その姉貴ってのが、新しい子供を連れて戻って来たって話だ。改心して目を覚ましたのか、父親違いの子供を一緒に実家で育ててるとか」
「それで追い出されて、アラフォーの栓山が一人暮らしか。不憫な奴だな」
「ああ。でもよぉ、よくそれまで一人でいたな」
「それもそうだな」
「例えば振られてから女性恐怖性になって、未だに童貞だとか」
「あり得る。冴えない面してるもんな」
「「だはっはっはっ」」
忘れ物して取りに戻ったら、またこれか……。
まあその噂話は、大体が本当の事だけど。
自分は口が固いから相談に乗る、とか言っておきながら、ここだけの話とか言ってすぐに喋るんだ。
口の軽い連中ばかりだ。
ハァ、忘れた物は明日でいい…あ、明日休みか。
こんな気分も悪い所から離れて、次の連休は何処かに出掛けてみるかな。
旅なんてしたことないけど、久々にトレカ持って、地方のショップにでも──
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◇◆◇◆◇
「ッ!」
ガタッと椅子から落ちそうになり、カズは目を覚ました。
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