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四章 異世界旅行編 2 トカ国
334 夢は心の現れ
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町から宿に戻っても、ビワは何処となく様子がおかしかった。
外でお酒の話題が出たのを忘れていなかったレラが結局騒ぎだし、夕食時に果実酒を用意する羽目になった。
お酒が入り、気持ち良さそうに酔ったアレナリアとレラは、夕食後早々と就寝。
ビワは寝付けない様子だったが、カズに果実酒を進められ、少し飲んだことで、ちょうどいい寝酒となり、ベッドに入るとゆっくり眠りに落ちていった。
三人が寝たのを確認すると、カズは自分の寝部屋に移動した。
三人に持たせる新たな付与アイテムを寝る前に考えてうとうとしていると、三人が寝る部屋から、何やら辛そうな声が……。
部屋に常備してある燭台を持ったカズは、様子を見に三人が寝る部屋に移動する。
荒い息が聞こえるベッドを見ると、ビワが寝苦しそうにしていた。
カズはビワに近付き、声を掛ける。
「ビワ、ビワ」
「……」
「ビワ、大丈夫?」
「カズ…さん? どうしたんですか」
「それはこっちだよ。魘されてたみたいだけど、嫌な夢でも見てたの?」
「ゆ…め……覚えてないです」
「寝れそう?」
「はい……」
「とりあえず、一度起きて着替えた方がいい。随分と汗をかいてるようだから」
「え……? 私…こんなに」
「水とタオルを用意するから、身体を拭いて寝るといい」
「……はい」
カズとビワは、アレナリアとレラを起こさないようにして、隣のテーブルと椅子がある部屋に移った。
カズは【アイテムボックス】から桶を出し、そこに魔力変換した水を入れる。
「お待た─」
「ぁ……」
「─せ……ごめん」
カズがタオルと水を入れた桶を持ち振り向くと、ビワが服を脱いで上半身裸になっているところだった。
ビワの黄色く長い髪が汗で背中に貼り付き、その隙間から色白い素肌が少し見えていた。
カズはすぐに目を伏せる。
「水とタオルここに置いておくから」
気不味いと、カズは自分の寝部屋に戻ろうとする。
「待って」
「え?」
「背中……拭いてくれませんか」
椅子に座りカズに背中を向けて話すビワ。
「お、俺が?」
「……はい。お願いします」
生唾を飲み込むと、タオルを水で湿らせて、カズは椅子に座るビワの後ろにしゃがみ、拭きやすい体勢をとる。
ビワは左腕全体で胸を隠し、右手で背中に垂れる長く黄色い髪を、前へと持っていく。
カズは湿らせたタオルを、ビワの色白い背中に当てて、優しく汗を拭き取る。
二人の心音は早くなり、相手に自分の鼓動が聞こえないかと、二人は考えていた。
色白いビワの背中から目線を少し上げると、蝋燭の揺れる火に照らされ、恥じらい赤くなったビワの横顔が見て取れた。
「ん……そこは…自分で…拭きます」
ビワの横顔を見て、手元から目線を外したとき、カズの持つタオルは尻尾の付け根辺りを拭いていた。
「ご、ごめん。このくらいでいいかな」
「はい……ありがとうございました」
「俺は部屋に戻って寝るから、ビワも身体を拭いて着替えたら寝るといい。あっ、汗かいて喉乾いたでしょ。そこに水があるから、飲むといいよ。タオルと桶は、そのまま置いといていいから」
「はい……」
「じゃ、じゃあおやすみ」
「ぁ……おやすみ…なさい」
カズは慌てた様子で自分の寝部屋に戻る。
ビワは尻尾の辺りと身体の前を拭い、着替えてベッドに横になった。
一人寝部屋に戻ったカズの眼には、ビワの色白い柔肌がくっきりと焼き付き、眠気なんか吹き飛んでいた。
カズは深呼吸をして、高まった気持ちを落ち着かせていると、部屋の扉が小さくノックされた。
「……カズさん」
扉を叩いたのはビワ、カズはゆっくりと扉を開いた。
「どうしたの?」
「あの……寝るのが怖くて。厚かましいのは…その……」
「遠慮しないで、なんでも言って(落ち着け、俺)」
顔だけではなく、耳まで真っ赤にしながらビワは言う。
「私が寝るまで…側に居て……くれませんか」
理性を保つためには、できれば断りたいと、カズは内心思っていた。
しかしビワがこんな事を言うほど、不安になっているかと思うと、断れるわけがない。
「分かった」
「ぁ……」
カズが三人の寝る部屋に行こうとすると、ビワが何か云いたそうにして、その場から動かなかった。
「どうしたの?」
「私のせいで、レラとアレナリアさんが起きたら申し訳ないので……」
そこまで言うと、ビワはチラリとカズが寝るベッドを見た。
悟ったカズは椅子を1脚持って、自分の寝部屋に戻り、ビワを招き入れた。
「わがまま言って…ごめんなさい。昼間町で…あの人達を見たら…少し胸が苦しくなって……」
「俺は横に居るから、ビワはベッドに入って」
「ごめんなさい」
「いいから」
ビワがベッドに入り横になると、カズは持ってきた椅子をベッドのすぐ横に置き座った。
目を閉じて暗くなるのが怖いと、ビワは目を開けたままベッドに横たわる。
「わた……私が故郷を目指して旅に出ると言ったのに、小さい頃のことを思い出すのが怖くて……皆に迷惑掛けて……こんなことなら……」
カズは涙ぐむビワの手を握った。
「辛ければ、無理に思い出そうとしなくてもいいよ」
「私、自分の過去から逃げちゃいたいです。辛い過去を思い出すより、お屋敷で奥様やキウイにミカンやアキレア達と、今が幸せなら……。レラやアレナリアさんとこのまま楽しく旅を続けられれば……ごめんなさい、ごめんなさい」
「いいかいビワ。逃げるのは悪いことだと、俺は思わない。辛ければ目を背けて、逃げてもいいんだよ。それに前にも言ったよね。例え他の誰もがビワを責めたとしても、俺はビワの味方でいるって(こういう時に支えは必要。でないと一人で抱え込んで、悪い方にばかり考えてしまう。ビワがそんなになるのを、俺は見てられない。今の俺には、手を差し伸べる力があるんだから)」
「はい」
ゆっくりと目を閉じたビワの手からは、少しずつ力が抜ける。
安心したのか寝息を立てて眠りについた。
暫くビワの様子を伺い、穏やかに寝たのを確認すると、カズは大きくアクビをして、そのまま椅子に座り眠った。
◇◆◇◆◇
「ふあぁぁ……よく寝た。久しぶりのお酒で、昨日は早々と寝ちゃったなぁ。あれ、ビワは? あ、朝ごはんの仕度か! お~いアレナリア、起きろ~」
「ん~ん……そんなに激しく…むふふッ。そんな、だめ…じゃないけど、もっと優しくし……でもたまには……」
枕を涎でベチョベチョにして、ニヤニヤとするアレナリア。
「また夢の中で、カズとエロいことしてるんだ。こうなったら、中々起きないんだよねぇ」
「私の小さい胸が好きなんて、カズってやっぱり……んふふ」
「カズってこんなアレナリアのどこがいいの? 同情? それともアレナリアの寝言通り、ちっこい子が好きなのかなぁ? あ、だったらあちしの魅力に、カズはメロメロ」
「誰が誰によ」
「うわ! アレナリア起きたんだ。おはよ」
「おはよ、じゃないわよ。耳元でべらべらとうるさいの」
「うるさいのは、起こそうとしてたから」
「あっそ。それよりなんでカズがレラにメロメロなのよ」
「例えばの話。アレナリアが寝言を聞いて、カズってちっこい子が好きなのかなって、思ったもんで」
「私が? 寝言でどんなこと言ってたの?」
「カズが…ぁん、とか。激しいのがいぃ、とか。私をめちゃくちゃにして、とか言ってた(私をめちゃくちゃに、とは言ってなかったけど)」
「私ったら、なんでなんで……」
「自分の淫らさに反省し─」
「そんないい夢を全然覚えてないのよおぉぉ!」
「─てない!」
「は? 何言ってるのレラ。なんで夢の中の出来事を反省しなきゃ行けないの?」
「夢は現在の自分の心を映すとか言わない?」
「時と場合によるんじゃないの」
「だったらアレナリアは、ずっと欲求不満だってことね。エロエルフ」
反論するかと身構えていたレラだが、アレナリアは黙って何かを思い返す素振りをする。
「……そうよ。だって、たった一度しかカズと身体を合わせた事ないんだもの。それも二年以上前よ。それ以降、何度もカズを求めても、なんだかんだとはぐらされて。そうしたら急に、依頼で王都に行っちゃうし─」
これ以上聞きたくはないと、レラは自分の発言を謝罪し、アレナリアの話をやめさせようとする。
「あのさアレナリア、エロエルフって言ったの謝るから、もうその話は…」
「─しかもよ、フローラ様と親しくなるは、フェアリーと同居してたりするし。私なんか、もう見向きもしないと思ったわ。それに貴族の屋敷で働く、獣人メイドと仲良しときたもんだ。仕事なんか手につかないわよ。なんとか月に一度は、私に会いに来てくれるようしてもらって、少し気が楽になったけど」
「あ、あのさアレナリア。それもう前の事でしょ。今はカズと一緒に旅をしてるんだから」
「……そうよね。カズが私を捨てるわけないわよね」
「そうそう。だからその話はもう終わり。あちしお腹空いたから、早く朝ごはんにしよう」
「そうね。昨夜はお酒ばかりで、あまり食べなかったから、私もお腹空いたわ」
いつ終わるとも知れないアレナリアの話を、なんとか話の方向を変え終わらせたレラ。
これでアレナリアの重い思い出を聞かずに済んだと、レラは一安心した。
「あれ……ビワは?」
「あちしも起きたばっかりで、すぐアレナリアを起こしたから知らない。たぶん朝ごはんを作ってるんじゃないの?」
「そうね。ビワのは早起きだから」
そう言うとアレナリアは背伸びをして、レラと共に寝室から隣の部屋へと移った。
外でお酒の話題が出たのを忘れていなかったレラが結局騒ぎだし、夕食時に果実酒を用意する羽目になった。
お酒が入り、気持ち良さそうに酔ったアレナリアとレラは、夕食後早々と就寝。
ビワは寝付けない様子だったが、カズに果実酒を進められ、少し飲んだことで、ちょうどいい寝酒となり、ベッドに入るとゆっくり眠りに落ちていった。
三人が寝たのを確認すると、カズは自分の寝部屋に移動した。
三人に持たせる新たな付与アイテムを寝る前に考えてうとうとしていると、三人が寝る部屋から、何やら辛そうな声が……。
部屋に常備してある燭台を持ったカズは、様子を見に三人が寝る部屋に移動する。
荒い息が聞こえるベッドを見ると、ビワが寝苦しそうにしていた。
カズはビワに近付き、声を掛ける。
「ビワ、ビワ」
「……」
「ビワ、大丈夫?」
「カズ…さん? どうしたんですか」
「それはこっちだよ。魘されてたみたいだけど、嫌な夢でも見てたの?」
「ゆ…め……覚えてないです」
「寝れそう?」
「はい……」
「とりあえず、一度起きて着替えた方がいい。随分と汗をかいてるようだから」
「え……? 私…こんなに」
「水とタオルを用意するから、身体を拭いて寝るといい」
「……はい」
カズとビワは、アレナリアとレラを起こさないようにして、隣のテーブルと椅子がある部屋に移った。
カズは【アイテムボックス】から桶を出し、そこに魔力変換した水を入れる。
「お待た─」
「ぁ……」
「─せ……ごめん」
カズがタオルと水を入れた桶を持ち振り向くと、ビワが服を脱いで上半身裸になっているところだった。
ビワの黄色く長い髪が汗で背中に貼り付き、その隙間から色白い素肌が少し見えていた。
カズはすぐに目を伏せる。
「水とタオルここに置いておくから」
気不味いと、カズは自分の寝部屋に戻ろうとする。
「待って」
「え?」
「背中……拭いてくれませんか」
椅子に座りカズに背中を向けて話すビワ。
「お、俺が?」
「……はい。お願いします」
生唾を飲み込むと、タオルを水で湿らせて、カズは椅子に座るビワの後ろにしゃがみ、拭きやすい体勢をとる。
ビワは左腕全体で胸を隠し、右手で背中に垂れる長く黄色い髪を、前へと持っていく。
カズは湿らせたタオルを、ビワの色白い背中に当てて、優しく汗を拭き取る。
二人の心音は早くなり、相手に自分の鼓動が聞こえないかと、二人は考えていた。
色白いビワの背中から目線を少し上げると、蝋燭の揺れる火に照らされ、恥じらい赤くなったビワの横顔が見て取れた。
「ん……そこは…自分で…拭きます」
ビワの横顔を見て、手元から目線を外したとき、カズの持つタオルは尻尾の付け根辺りを拭いていた。
「ご、ごめん。このくらいでいいかな」
「はい……ありがとうございました」
「俺は部屋に戻って寝るから、ビワも身体を拭いて着替えたら寝るといい。あっ、汗かいて喉乾いたでしょ。そこに水があるから、飲むといいよ。タオルと桶は、そのまま置いといていいから」
「はい……」
「じゃ、じゃあおやすみ」
「ぁ……おやすみ…なさい」
カズは慌てた様子で自分の寝部屋に戻る。
ビワは尻尾の辺りと身体の前を拭い、着替えてベッドに横になった。
一人寝部屋に戻ったカズの眼には、ビワの色白い柔肌がくっきりと焼き付き、眠気なんか吹き飛んでいた。
カズは深呼吸をして、高まった気持ちを落ち着かせていると、部屋の扉が小さくノックされた。
「……カズさん」
扉を叩いたのはビワ、カズはゆっくりと扉を開いた。
「どうしたの?」
「あの……寝るのが怖くて。厚かましいのは…その……」
「遠慮しないで、なんでも言って(落ち着け、俺)」
顔だけではなく、耳まで真っ赤にしながらビワは言う。
「私が寝るまで…側に居て……くれませんか」
理性を保つためには、できれば断りたいと、カズは内心思っていた。
しかしビワがこんな事を言うほど、不安になっているかと思うと、断れるわけがない。
「分かった」
「ぁ……」
カズが三人の寝る部屋に行こうとすると、ビワが何か云いたそうにして、その場から動かなかった。
「どうしたの?」
「私のせいで、レラとアレナリアさんが起きたら申し訳ないので……」
そこまで言うと、ビワはチラリとカズが寝るベッドを見た。
悟ったカズは椅子を1脚持って、自分の寝部屋に戻り、ビワを招き入れた。
「わがまま言って…ごめんなさい。昼間町で…あの人達を見たら…少し胸が苦しくなって……」
「俺は横に居るから、ビワはベッドに入って」
「ごめんなさい」
「いいから」
ビワがベッドに入り横になると、カズは持ってきた椅子をベッドのすぐ横に置き座った。
目を閉じて暗くなるのが怖いと、ビワは目を開けたままベッドに横たわる。
「わた……私が故郷を目指して旅に出ると言ったのに、小さい頃のことを思い出すのが怖くて……皆に迷惑掛けて……こんなことなら……」
カズは涙ぐむビワの手を握った。
「辛ければ、無理に思い出そうとしなくてもいいよ」
「私、自分の過去から逃げちゃいたいです。辛い過去を思い出すより、お屋敷で奥様やキウイにミカンやアキレア達と、今が幸せなら……。レラやアレナリアさんとこのまま楽しく旅を続けられれば……ごめんなさい、ごめんなさい」
「いいかいビワ。逃げるのは悪いことだと、俺は思わない。辛ければ目を背けて、逃げてもいいんだよ。それに前にも言ったよね。例え他の誰もがビワを責めたとしても、俺はビワの味方でいるって(こういう時に支えは必要。でないと一人で抱え込んで、悪い方にばかり考えてしまう。ビワがそんなになるのを、俺は見てられない。今の俺には、手を差し伸べる力があるんだから)」
「はい」
ゆっくりと目を閉じたビワの手からは、少しずつ力が抜ける。
安心したのか寝息を立てて眠りについた。
暫くビワの様子を伺い、穏やかに寝たのを確認すると、カズは大きくアクビをして、そのまま椅子に座り眠った。
◇◆◇◆◇
「ふあぁぁ……よく寝た。久しぶりのお酒で、昨日は早々と寝ちゃったなぁ。あれ、ビワは? あ、朝ごはんの仕度か! お~いアレナリア、起きろ~」
「ん~ん……そんなに激しく…むふふッ。そんな、だめ…じゃないけど、もっと優しくし……でもたまには……」
枕を涎でベチョベチョにして、ニヤニヤとするアレナリア。
「また夢の中で、カズとエロいことしてるんだ。こうなったら、中々起きないんだよねぇ」
「私の小さい胸が好きなんて、カズってやっぱり……んふふ」
「カズってこんなアレナリアのどこがいいの? 同情? それともアレナリアの寝言通り、ちっこい子が好きなのかなぁ? あ、だったらあちしの魅力に、カズはメロメロ」
「誰が誰によ」
「うわ! アレナリア起きたんだ。おはよ」
「おはよ、じゃないわよ。耳元でべらべらとうるさいの」
「うるさいのは、起こそうとしてたから」
「あっそ。それよりなんでカズがレラにメロメロなのよ」
「例えばの話。アレナリアが寝言を聞いて、カズってちっこい子が好きなのかなって、思ったもんで」
「私が? 寝言でどんなこと言ってたの?」
「カズが…ぁん、とか。激しいのがいぃ、とか。私をめちゃくちゃにして、とか言ってた(私をめちゃくちゃに、とは言ってなかったけど)」
「私ったら、なんでなんで……」
「自分の淫らさに反省し─」
「そんないい夢を全然覚えてないのよおぉぉ!」
「─てない!」
「は? 何言ってるのレラ。なんで夢の中の出来事を反省しなきゃ行けないの?」
「夢は現在の自分の心を映すとか言わない?」
「時と場合によるんじゃないの」
「だったらアレナリアは、ずっと欲求不満だってことね。エロエルフ」
反論するかと身構えていたレラだが、アレナリアは黙って何かを思い返す素振りをする。
「……そうよ。だって、たった一度しかカズと身体を合わせた事ないんだもの。それも二年以上前よ。それ以降、何度もカズを求めても、なんだかんだとはぐらされて。そうしたら急に、依頼で王都に行っちゃうし─」
これ以上聞きたくはないと、レラは自分の発言を謝罪し、アレナリアの話をやめさせようとする。
「あのさアレナリア、エロエルフって言ったの謝るから、もうその話は…」
「─しかもよ、フローラ様と親しくなるは、フェアリーと同居してたりするし。私なんか、もう見向きもしないと思ったわ。それに貴族の屋敷で働く、獣人メイドと仲良しときたもんだ。仕事なんか手につかないわよ。なんとか月に一度は、私に会いに来てくれるようしてもらって、少し気が楽になったけど」
「あ、あのさアレナリア。それもう前の事でしょ。今はカズと一緒に旅をしてるんだから」
「……そうよね。カズが私を捨てるわけないわよね」
「そうそう。だからその話はもう終わり。あちしお腹空いたから、早く朝ごはんにしよう」
「そうね。昨夜はお酒ばかりで、あまり食べなかったから、私もお腹空いたわ」
いつ終わるとも知れないアレナリアの話を、なんとか話の方向を変え終わらせたレラ。
これでアレナリアの重い思い出を聞かずに済んだと、レラは一安心した。
「あれ……ビワは?」
「あちしも起きたばっかりで、すぐアレナリアを起こしたから知らない。たぶん朝ごはんを作ってるんじゃないの?」
「そうね。ビワのは早起きだから」
そう言うとアレナリアは背伸びをして、レラと共に寝室から隣の部屋へと移った。
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