人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ

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四章 異世界旅行編 1 オリーブ王国を離れ東へ

325 危惧した事 と 村の会合

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 寝込みを襲いに来る可能性があるかも知れないと、カズは少し考え事をして、すぐには寝ないようにした。

 初めて多くのリザードマンを実際に見た事で分かったのは、性別と年齢でリザードマンの鱗が違うこと。
 村に居るオスの鱗は、黒色か深い緑色をしていて、一枚一枚が大きい。
 メスの鱗は薄茶色から黄緑色など、様々な色をしていた。
 オスの鱗に比べ小さく、見た目にも柔らかそうだった。
 子供はメスの鱗と変わらず、更に小さいだけのようだ。
 成長するにつれて、オスかメスで鱗の色や形が変化していく。
 年齢がかさみ老いてゆくと、鱗の傷は消えず色がくすみしわが増える、それは他の種族と変わりはないようだ。
 村に居る大人のリザードマンの身長は160㎝から200㎝程、大きい個体であれば270㎝近く、尻尾の先からだと350㎝はありそうだった。
 体格は大きいが、身長はそれほど高くはないようだ。

 ここでカズはふと思った。
 オリーブ王国を出てから出会うモンスターを見て、フロストドラゴン白真はそれほど大きな個体ではないのだろうか、と。
 よくよく考えれば、物語などで登場するドラゴンは、見上げるほど大きいと書いてあった。
 実際にドラゴンが居たのだから、この世界でも物語に出てくるようなドラゴンが居てもおかしくないのでは、と。
 デュメリル村を出てからでも、アレナリアに聞いてみようと、カズは頭の片隅に留めておいた。

 今のところ誰も来る気配はない。
 マップを見て表示されている村のリザードマンは、家でぐっすりと寝ているようで動くことはなかった。
 養殖池などの村の外では、動くものもあったが、見張りをするリザードマンだろうと、カズはいつものように〈アラーム〉を使用して眠りについた。
 静かな夜に聞こえるのは、強くなった雨の音だけ……。




 村の皆がそれぞれの家に戻り眠りについてから数時間、けたたましい音が頭の中で響き、カズは目を覚ました。

 村の子供は疲れて眠り、うたげに参加していた大人達は久々の酒を口にした事で、多少の物音では起きないほどよく眠っていた。

 夜の闇と雨の音に紛れて、三つの影が客人の泊まる建物に近付く。
 建物の脇で雨を避けて寝る馬を起こさぬようにし、静かに扉を開け中へと入る。
 真っ暗な建物の内部に、薪に灯した小さな灯火あかりが照らす。
 布団に横たわるアレナリアとビワエルフと獣人を無視して、壁に寄りかかり毛布を被り眠るカズ人族を囲むように、三つの影は接近する。
 灯りを持つ者は毛布の端を掴み、残りの者は武器を振りかざし、一切の声を上げさせることなく一撃で仕留めるべく力を入れ構える。
 灯り持つ者が視線で他の者に合図を送ると、掴んでいた毛布を剥ぎ取る。

「!!」

「居ない!?」

「なら向こうのメス共の……」

「〈プラントバインド〉」

 侵入者の耳に男の呟きが聞こえたと思った次の瞬間、床の一部が変形して足や体に巻き付く。

「な、なんだ動けん」

「足に……なんだこれは?」

「エルフのメスが居たはず。そいつの魔法に違いない」

「残念、違う(村長の危惧きぐしていた事が的中したか)」

「なッ!」

「騒がないでもらおうか〈麻痺パラライズ〉」

「な……」

「くぁ……」

「か、から…だが……」

「気持ち良さそうに寝てるんだ、起こしたくはない。弁解は明日、皆の前で聞いてやる〈眠りスリープ〉」

 この夜侵入してきた三つの影は、カズにより捕らえ眠らされた。


 ◇◆◇◆◇


 夜に降りだした雨は、明るくなる頃にはすっかり止んでいた。
 カズ達が宿泊した建物の軒下に、拘束され転がされた三人のリザードマンが居た。
 それにいち早くそれ気付いたのは、早朝村の見回りをするザザウと、客人の二日酔いを心配して様子を見に来たツツエだった。

「これは……!」

「ギギオ?」

「眠っているだけ。一応、怪我はさせてない」

「カズ殿……まさか」

「ギギオ達は、何を……?」

「深夜に忍び込んで、俺を襲ってきた。証拠は中ある足跡と、そいつらが持っていた武器」

 顔に手を当て苦い顔をし、拘束された三人を見るザザウ。

「レラやアレナリアさん、それにビワさんは? 誰か怪我を」

「誰も怪我はしてないから大丈夫。三人は馬車でまだ寝てる」

「馬車で、ですか?」

「こんな事があった場所で、寝かせられないから(あの後で、三人を起こさない様にして、俺が移動させたんだけど)」

「すぐに村長の家に連れて行き、ギギオ達のした事を調べる。ツツエはゼゼイを起こして、連れて来てくれ。オレは中を見て武器を回収しておく」

「わかった」

 ツツエは走ってゼゼイを起こしに行った。
 ザザウは扉を開けて、建物の中を見渡す。
 そこには三人のリザードマンの足跡と、木を切る用の斧が転がっていた。
 現状を確認したザザウは、カズを見る。

「……すまない」

「そいつらがした事による罰は、村が決めて下すんだろ」

「ああ……」

「俺を襲った理由は、やっぱり人族だったからなのか、それを聞きたい。同席させてもらうが」

「わかった。村長にはオレから(ギギオ、昨日あれほど言っておいたのに……なぜだ)」

 ツツエがゼゼイを連れて戻り、ザザウと共に村長の所へ拘束されている三人を運ぶ。
 悲しそうな顔をするツツエに、馬車で寝ている三人のことをカズは頼んだ。
 ザザウとゼゼイにも頼まれ、ツツエはその場に残った。
 ツツエに離れると、ゼゼイが口を開いた。

「妹を気遣ってくれてすまねぇ」

「ツツエさん辛そうな顔をしてたからな。同席させない方がいいと思った」

「オレとツツエとギギオは、小さい頃から一緒に遊んでいた幼馴染みなんだ。そのギギオがこんな……」

「一昨日の深夜に、偵察に来た時に居た内の一人だろ」

「ああ。人族が草原を越えて村に近付いて来たと聞いて、ギギオが探ると言い出したんだ。あの時はもしもの事を考えて、オレも同行した」

「昨日の昼間、森の中で、何度も見られていたんだが」

「ギギオだろう。カズ殿を警戒して、監視していたようだ。オレは危険はないから、何もしないようにと注意しておいたんだが」

「昨日の夕食には、たしか来てなかったな」

「話してみれば悪い人達ではないと誘ったんだが、人族やそれと馴れ合う連中と一緒に飯が食えるか……と」

「やっぱり昨日の内に、村を発つべきだったか」

「オレはそんなことはないと思うぜ。あんたらが居てくれたお陰で、村の連中はまた人族に好意を向けることができたんだ。昨日は妹も喜んでた」

 村を出なかった判断ミスだと言うカズと、落ち込むザザウを気遣うゼゼイ。

「村の男衆にも声をかけてある。村長を交えて、この先どうするか話し合って、コイツらの処分を決める。事を起こしちまったんだ。わかるな、ザザウ」

「……ああ」

 不審な行動をするギギオに気付いていながら、それを止められなかった自分にも非があると、ザザウは思い悩んでいた。

 村長の家に二十数名のリザードマンが集まると、事を起こした理由を三人に問いただす。
 当然失敗した際には罰を受けるのは分かっていたが、処分を決める話し合いの場に、カズ人族が居るのがギギオには気にくわなかった。
 カズには襲われた理由を知る権利があるため、村の者以外が話し合いの場に居ても、ギギオ以外は誰も文句を言う者はいなかった。
 カズは深夜にあった出来事を、集まった村の者達に話した。
 ギギオは反論するも、誰もが耳を傾けない。
 カズを襲った理由は予想通り、人族だからが理由の一つだった。
 他にはトレントの森を通ってきたと知ったのも、理由の一つだと言った。
 そんな危険な人族が、いつ本性を現すかも知れない、だから寝ている内に。
 ギギオはカズの危険性を危惧して起こした行動だと力説する。
 トレントの森の事については、昨夜の宴に参加していた村の者が、ギギオに聞かれて話したと情報が入っていた。
 カズがザザウに話していたことを、たまたま聞いていた村の者が居たようだった。
 昨夜、入れ替り立ち替わりで村の者が村長の家を出入りしていた、そのため誰が話を聞いていたのかなど、カズは気に留めていなかった。
 罰は村の者で決めるとのことなので、カズはその場で聞いているだけ。
 質問でもされなければ、自ら意見を言うことはなかった。

 そして話し合いが二時間程続き、ギギオと二人のリザードマンの処分が決まった。
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