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四章 異世界旅行編 1 オリーブ王国を離れ東へ
324 森の散歩 と デュメリル村の名物
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これはまた、根掘り葉掘りと……ツツエを憐れに思うカズ。
初対面のリザードマン相手に、また失礼なことを聞くんだ、と思うビワ。
リザードマンの恋バナか……これはこれで面白いかもと、レラと一緒に話そうと考えるアレナリア。
三者三様の考えは、ツツエにどんな事をもたらすのかは、止める者しだいだろうか。
養殖池を後にした五人はツツエの案内で、村へと戻る道を外れ森の中へと入る。
蔓草のトンネルを抜け、料理に使う木の実を拾い、香草を収穫して、木漏れ日の中を歩く。
暫くすると、太い木の根本がぽっかりと開いているのが見えた。
ツツエに誘われ中に入ると、そこは三畳程の空間があった。
「ここって昔からあるの。子供の頃、兄さんやザザウ達とよく遊んだわ」
「隠れ家みたいで、いい感じじゃない。あちしもこういう場所好き」
「子供の秘密基地って感じだな」
「子供の秘密基地? それなんなの」
「大人には秘密にして、子供達だけで隠れて遊ぶ場所かな。おもちゃとかを置いといたりして。嫌なことがあったら一人になれたりもしてさ。なんか、わくわくするような感じのとこ」
「兄さんも似たようなこと言ってました。休みなんかの時は、一人でここに来たりしてるみたいなんです」
「ツツエのお兄さんと話が合うんじゃないの、カズ。ごはんの時あちし達は女同士で話してるから、カズはゼゼイやザザウと話したら」
「そうだな。お兄さんのゼゼイさんは、お酒が好きって言ってたから、麦シュワか果実酒でよければ、夕食の時に用意しますよ」
「お客さんに出してもらうなんて」
「お酒の話が出たら、どうせレラとアレナリアも飲みたがりますから」
「それは兄さんも喜びます。でしたら村自慢の川魚をいっぱい食べてください」
「楽しみにしてます」
「やったー! 久々の魚だ!」
「はしゃぎ過ぎよレラ」
「じゃあアレナリアは、魚いらないんだ」
「そんなこと言ってないでしょ。私だって楽しみよ」
「夕食には香草焼きと、塩焼きの両方を用意しますから、楽しみにしていてください」
「聞いただけでお腹が空く」
「レラも兄さんと話が合いそうね」
「食い意地が張ってるのよ」
「そう言うんだったら、アレナリアの分はあちしが食べちゃうから」
「やらないわよ!」
「いつもながら……俺はどっちもどっちだと思うぞ」
「そうなの?」
レラはともかく、アレナリアは少し意外だなと、ツツエは思った。
「どっちもちっこい割に、よく食べるんだ。気を付けないとぷっくり太るから、出す量をこちらで調整しないとならないんだよ。レラなんか、あればあるだけ食べようとする」
「オス…男性のカズさんが、皆さんの食事を?」
「俺かビワが作ってるね。アレナリアはたまに手伝うけど。レラは食べる専門」
「ワタシ、旅なんてしたことないから。なんか皆さんを見てると、スゴく楽しそう」
「楽しいよ。でも危険な事もあった。でもまあ、そこはあちしの活躍で、危険を回避したりして」
「また盛ったわね、レラ。あなたがそんな活躍したなんて、知らないわよ」
「ほらほら、砂漠でデザートクラブの集団をいち早くに見つけて、回避できたじゃない」
「砂漠で、カニ?」
ツツエが不思議そうな顔をする。
「あれは私が気配に気付いて、レラが偵察に行ったんでしょ。カズの方が先に気付いてみたいだけど」
「そ、そうだっけか?」
「突っ込めって、みたいなこと言わなかったか? アレナリアとレラの二人が」
「そうだっけかなぁ~?」
カズが真実を話すと、レラだけではなくアレナリアも誤魔化した。
ツツエはレラとアレナリアのやり取りを見て、楽しそうに笑っていた。
森の中を木の実や香草を収穫しながら散歩してると、いつのまにか足元の影は伸び、かなりの時間が経過していた。
五人は暗くなる前に村へと戻る。
時折周囲を見渡すカズを気にして、ツツエに気付かれぬように、アレナリアがコソッと聞いていたりもした。
カズは心配かけまいと、敢えて何も言わなかったが、誰かに見られているのを、アレナリアも気付いていたようだった。
デュメリル村に戻るとツツエに代わり、ザザウがカズ達四人を、一晩泊まる家に案内した。
元々は村の外から来た者を泊める為の建物だったが、人族の商人の事があってからは、若い者達の集まりや子供の遊び場になっていると、ザザウは話す。
ベッドは無く、落ち葉や干し草を詰めた寝具が、部屋の片隅に置いてあった。
リザードマンも布団で寝るのかと、レラがザザウに聞くと、それは来客用だと説明した。
長い間使ってなかったので、昼間の内に村の者達が作り直してくれたようだ。
夕食は村長の家でとのことで、ザザウと共に向かう。
カズは村長の家に向かう前に、村の入口の停めてある馬車を、寝泊まり建物の横まで移動させる。
その最中、小声で馬のホースに変わった事はなかったかと聞いたが、何もなく馬車を警戒する様子はなかった、と。
馬車の中を覗かれることもなく、近付くのは無邪気な子供のリザードマンくらいだとホースは話した。
アイテムボックスが使えることを隠しているため、馬車から運んできたことにして、麦シュワと果実酒が入った大きめの瓶を村長の家まで運んだ。
魚料理が出来上がり運ばれると、夕食という宴が始まった。
村のリザードマンが入れ替わり立ち替わりで宴に参加し、養殖池に居たゼゼイも村を守る村衛の仕事を終わらせて村長の家にやって来た。
カズが用意した麦シュワと果実酒や、村が用意したウイスキーのような酒を飲みながら、魚の香草焼きを口いっぱいに頬張るゼゼイと、なぜかそれに対抗しようとするレラ。
アレナリアとビワは、料理を作り運び終えたツツエと楽しそうに会話していた。
村自慢の川魚と言うだけあって、肉厚で身はふっくらと柔らかく、香草焼きも塩焼きも中々の味だった。
珍しく魚卵の塩漬けが出てきた。
素焼きした魚と一緒に食べるのが、良い酒の摘まみになった。
来客の際にしか口にすることのない魚卵は、村のリザードマンにとっても贅沢な一品だった。
他には燻製にした魚や肉も並んだりもした。
料理の種類としては少ないが量は多く、どれも客人をもてなそうとする気持ちが表れていた。
カズはザザウに旅の事、特にトレントが生息していた森について聞いてきた。
自分を含め、村のリザードマンの中には、トレントを倒すことのできる者は居るが、トレントが支配する森の中ではそうはいかず、どの様にして森を抜けてきたのかと。
魔力感知のスキルがあり、魔法が得意なアレナリアも居たので、トレントから襲撃される前に発見でき、対処して森を抜けたと、怪しまれない程度でカズは話した。
全部が嘘という訳でもない。
ただカズが不安だったのは、酔ったアレナリアとレラが、余計なことを言うんじゃないか、だった。
アレナリアはそこまで飲んでなさそうだったが、レラはゼゼイと共に、グビグビと呑みまくっていた。
明らかに二日酔いのコースだ。
時折レラがツツエの所にゆき、アレナリアと二人でヒソヒソと恋バナをしていた、いや、させていた。
話に上がった相手の一人ザザウが近くに居たため、声を潜めながら、根掘り葉掘りと聞いていた。
その圧に、ツツエは困った表情を浮かべていた。
ビワが止めに入るが、酔った二人を止められる訳もなく、女性陣は何やら盛り上がってる様子が見てとれた。
宴も終わりに差し掛かる頃には、頬をほんのり赤くしたアレナリアとビワ、レラは早々と泥酔してビワの膝の上でぐうすかと。
村のリザードマン達も各々の家に戻り、残っているのは家の主こと村長ズズイ、そしてザザウとゼゼイと、その妹ツツエが居るだけであった。
後片付けをするツツエにビワが手伝い、全てを済ませ、夕食という名の宴は終わった。
カズは寝ているレラを抱え、ほろ酔いのアレナリアとビワを連れて、村長の家を出る。
外はパラパラと雨が降りだしてきていた。
一晩泊まる建物に入ると、ビワが置いてある寝具を広げ、寝る支度をする。
するとここで問題が起きた。
置いてあった寝具は、大きな布団が一組だけしかなかった。
「これは仕方ないわね。四人で一つの布団に入って寝るしか…」
「俺はいいから、三人で使って」
むふふな表情を浮かべながら言うアレナリアの言葉を遮り、カズは一人離れて寝ると言う。
「私も…一緒の布団で寝ても……」
酒に酔ったビワも、カズと一つの布団で寝ることを拒まなかった。
「今夜はよく飲んだようだから、早く横になった方がいい。布団は大きいけど、四人だと狭いから(実質三人だけど)」
ビワの発言をさらっと流し、カズは三人を布団で寝かせた。
レラは寝たまま起きることはなく、横になったアレナリアとビワも、酔いと疲れですぐに眠ってしまった。
酒の耐性があるカズは、少量の酒では酔うことはなかった。
もとより狙われる危険性があるゆえ、酔って寝るようなことはする訳がなかった。
もしもの時を考え、カズは三人が寝る布団から離れて、壁に寄り掛かり目を閉じた。
初対面のリザードマン相手に、また失礼なことを聞くんだ、と思うビワ。
リザードマンの恋バナか……これはこれで面白いかもと、レラと一緒に話そうと考えるアレナリア。
三者三様の考えは、ツツエにどんな事をもたらすのかは、止める者しだいだろうか。
養殖池を後にした五人はツツエの案内で、村へと戻る道を外れ森の中へと入る。
蔓草のトンネルを抜け、料理に使う木の実を拾い、香草を収穫して、木漏れ日の中を歩く。
暫くすると、太い木の根本がぽっかりと開いているのが見えた。
ツツエに誘われ中に入ると、そこは三畳程の空間があった。
「ここって昔からあるの。子供の頃、兄さんやザザウ達とよく遊んだわ」
「隠れ家みたいで、いい感じじゃない。あちしもこういう場所好き」
「子供の秘密基地って感じだな」
「子供の秘密基地? それなんなの」
「大人には秘密にして、子供達だけで隠れて遊ぶ場所かな。おもちゃとかを置いといたりして。嫌なことがあったら一人になれたりもしてさ。なんか、わくわくするような感じのとこ」
「兄さんも似たようなこと言ってました。休みなんかの時は、一人でここに来たりしてるみたいなんです」
「ツツエのお兄さんと話が合うんじゃないの、カズ。ごはんの時あちし達は女同士で話してるから、カズはゼゼイやザザウと話したら」
「そうだな。お兄さんのゼゼイさんは、お酒が好きって言ってたから、麦シュワか果実酒でよければ、夕食の時に用意しますよ」
「お客さんに出してもらうなんて」
「お酒の話が出たら、どうせレラとアレナリアも飲みたがりますから」
「それは兄さんも喜びます。でしたら村自慢の川魚をいっぱい食べてください」
「楽しみにしてます」
「やったー! 久々の魚だ!」
「はしゃぎ過ぎよレラ」
「じゃあアレナリアは、魚いらないんだ」
「そんなこと言ってないでしょ。私だって楽しみよ」
「夕食には香草焼きと、塩焼きの両方を用意しますから、楽しみにしていてください」
「聞いただけでお腹が空く」
「レラも兄さんと話が合いそうね」
「食い意地が張ってるのよ」
「そう言うんだったら、アレナリアの分はあちしが食べちゃうから」
「やらないわよ!」
「いつもながら……俺はどっちもどっちだと思うぞ」
「そうなの?」
レラはともかく、アレナリアは少し意外だなと、ツツエは思った。
「どっちもちっこい割に、よく食べるんだ。気を付けないとぷっくり太るから、出す量をこちらで調整しないとならないんだよ。レラなんか、あればあるだけ食べようとする」
「オス…男性のカズさんが、皆さんの食事を?」
「俺かビワが作ってるね。アレナリアはたまに手伝うけど。レラは食べる専門」
「ワタシ、旅なんてしたことないから。なんか皆さんを見てると、スゴく楽しそう」
「楽しいよ。でも危険な事もあった。でもまあ、そこはあちしの活躍で、危険を回避したりして」
「また盛ったわね、レラ。あなたがそんな活躍したなんて、知らないわよ」
「ほらほら、砂漠でデザートクラブの集団をいち早くに見つけて、回避できたじゃない」
「砂漠で、カニ?」
ツツエが不思議そうな顔をする。
「あれは私が気配に気付いて、レラが偵察に行ったんでしょ。カズの方が先に気付いてみたいだけど」
「そ、そうだっけか?」
「突っ込めって、みたいなこと言わなかったか? アレナリアとレラの二人が」
「そうだっけかなぁ~?」
カズが真実を話すと、レラだけではなくアレナリアも誤魔化した。
ツツエはレラとアレナリアのやり取りを見て、楽しそうに笑っていた。
森の中を木の実や香草を収穫しながら散歩してると、いつのまにか足元の影は伸び、かなりの時間が経過していた。
五人は暗くなる前に村へと戻る。
時折周囲を見渡すカズを気にして、ツツエに気付かれぬように、アレナリアがコソッと聞いていたりもした。
カズは心配かけまいと、敢えて何も言わなかったが、誰かに見られているのを、アレナリアも気付いていたようだった。
デュメリル村に戻るとツツエに代わり、ザザウがカズ達四人を、一晩泊まる家に案内した。
元々は村の外から来た者を泊める為の建物だったが、人族の商人の事があってからは、若い者達の集まりや子供の遊び場になっていると、ザザウは話す。
ベッドは無く、落ち葉や干し草を詰めた寝具が、部屋の片隅に置いてあった。
リザードマンも布団で寝るのかと、レラがザザウに聞くと、それは来客用だと説明した。
長い間使ってなかったので、昼間の内に村の者達が作り直してくれたようだ。
夕食は村長の家でとのことで、ザザウと共に向かう。
カズは村長の家に向かう前に、村の入口の停めてある馬車を、寝泊まり建物の横まで移動させる。
その最中、小声で馬のホースに変わった事はなかったかと聞いたが、何もなく馬車を警戒する様子はなかった、と。
馬車の中を覗かれることもなく、近付くのは無邪気な子供のリザードマンくらいだとホースは話した。
アイテムボックスが使えることを隠しているため、馬車から運んできたことにして、麦シュワと果実酒が入った大きめの瓶を村長の家まで運んだ。
魚料理が出来上がり運ばれると、夕食という宴が始まった。
村のリザードマンが入れ替わり立ち替わりで宴に参加し、養殖池に居たゼゼイも村を守る村衛の仕事を終わらせて村長の家にやって来た。
カズが用意した麦シュワと果実酒や、村が用意したウイスキーのような酒を飲みながら、魚の香草焼きを口いっぱいに頬張るゼゼイと、なぜかそれに対抗しようとするレラ。
アレナリアとビワは、料理を作り運び終えたツツエと楽しそうに会話していた。
村自慢の川魚と言うだけあって、肉厚で身はふっくらと柔らかく、香草焼きも塩焼きも中々の味だった。
珍しく魚卵の塩漬けが出てきた。
素焼きした魚と一緒に食べるのが、良い酒の摘まみになった。
来客の際にしか口にすることのない魚卵は、村のリザードマンにとっても贅沢な一品だった。
他には燻製にした魚や肉も並んだりもした。
料理の種類としては少ないが量は多く、どれも客人をもてなそうとする気持ちが表れていた。
カズはザザウに旅の事、特にトレントが生息していた森について聞いてきた。
自分を含め、村のリザードマンの中には、トレントを倒すことのできる者は居るが、トレントが支配する森の中ではそうはいかず、どの様にして森を抜けてきたのかと。
魔力感知のスキルがあり、魔法が得意なアレナリアも居たので、トレントから襲撃される前に発見でき、対処して森を抜けたと、怪しまれない程度でカズは話した。
全部が嘘という訳でもない。
ただカズが不安だったのは、酔ったアレナリアとレラが、余計なことを言うんじゃないか、だった。
アレナリアはそこまで飲んでなさそうだったが、レラはゼゼイと共に、グビグビと呑みまくっていた。
明らかに二日酔いのコースだ。
時折レラがツツエの所にゆき、アレナリアと二人でヒソヒソと恋バナをしていた、いや、させていた。
話に上がった相手の一人ザザウが近くに居たため、声を潜めながら、根掘り葉掘りと聞いていた。
その圧に、ツツエは困った表情を浮かべていた。
ビワが止めに入るが、酔った二人を止められる訳もなく、女性陣は何やら盛り上がってる様子が見てとれた。
宴も終わりに差し掛かる頃には、頬をほんのり赤くしたアレナリアとビワ、レラは早々と泥酔してビワの膝の上でぐうすかと。
村のリザードマン達も各々の家に戻り、残っているのは家の主こと村長ズズイ、そしてザザウとゼゼイと、その妹ツツエが居るだけであった。
後片付けをするツツエにビワが手伝い、全てを済ませ、夕食という名の宴は終わった。
カズは寝ているレラを抱え、ほろ酔いのアレナリアとビワを連れて、村長の家を出る。
外はパラパラと雨が降りだしてきていた。
一晩泊まる建物に入ると、ビワが置いてある寝具を広げ、寝る支度をする。
するとここで問題が起きた。
置いてあった寝具は、大きな布団が一組だけしかなかった。
「これは仕方ないわね。四人で一つの布団に入って寝るしか…」
「俺はいいから、三人で使って」
むふふな表情を浮かべながら言うアレナリアの言葉を遮り、カズは一人離れて寝ると言う。
「私も…一緒の布団で寝ても……」
酒に酔ったビワも、カズと一つの布団で寝ることを拒まなかった。
「今夜はよく飲んだようだから、早く横になった方がいい。布団は大きいけど、四人だと狭いから(実質三人だけど)」
ビワの発言をさらっと流し、カズは三人を布団で寝かせた。
レラは寝たまま起きることはなく、横になったアレナリアとビワも、酔いと疲れですぐに眠ってしまった。
酒の耐性があるカズは、少量の酒では酔うことはなかった。
もとより狙われる危険性があるゆえ、酔って寝るようなことはする訳がなかった。
もしもの時を考え、カズは三人が寝る布団から離れて、壁に寄り掛かり目を閉じた。
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