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四章 異世界旅行編 1 オリーブ王国を離れ東へ

319 不機嫌になるビワ と 叱られるちびちびコンビ

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 カズに聞こえているなんて気付気もせず、声が大きくなるレラとアレナリア。
 湯船に投げ入れられたレラが底から浮き上がり、口からぴゅ~とお湯を吹き出す。

「ぷはぁ。なにすんのよ!」

「胸が小さくて何が悪い。レラの方が小さくでしょうが!」

「あちしは種族がら全部が小さいの。もしアレナリアと同じ大きさになったら、それはもう、たゆんたゆんなんだから」

「いっちょまえに……そこまで言うんだったら、揉ませなさい」

 右手でレラを掴み引き寄せるアレナリア。

「い! ちょっとアレナリア。もっと優しく……」

 親指と人差し指で、アレナリアはその小さなレラの胸を、揉んだりつついたりした。

「生意気。柔らかいし、小さいのに少し揺れるし……」

 自分の胸からレラの胸、そして背を向けるビワの胸を見比べて、気落ちするアレナリア。

「ビワの胸触っていい?」

「え……!?」

 藪から棒なアレナリアの言葉にビワは驚き、振り向くと両手の指を波打つように動かしながら、アレナリアはビワに迫った。

「ちょっとだけだから。ほら、大きくな胸を触ったら、自分のが大きくなるって噂が」

「そ…そんな噂、私聞いたことない。それに、私そんなに大きく…」

「ちょっとだけだから大丈夫。痛くしないから。先っちょだけでもいいから」

「い、言ってる意味が分からな…きゃッ」

 逃げようと後ろを向いたビワに、アレナリアが抱き付くと、後ろから両胸を掴みモミモミする。

「大き過ぎず、かといって小さ過ぎず、そのうえ柔らかい……」

「も…もう止め……ッん! 私先に出ます」

 アレナリアの手を振りほどき、ビワは慌てて石風呂を出る。

「分かっていたけど……これが…現実」

 自分を含め、三人の胸を直に触ったアレナリアの目には、奥からじんわりとするものが滲み出ようとしていた。
 アレナリアは風呂に潜り、目の奥から滲み出るものを無かった事にしようとする。
 そこからレラとアレナリアは急に静になり、夜空を見上げながらお湯に浸かっていた。
 着衣が乱れ慌てて出てきたビワを気にかけ、カズは声を掛けた。

「大丈夫ビワ? 髪も尻尾もまだ濡れてるから、焚き火の近くに。」

 こくりと小さく頷くビワ。

「三人で星でも見ながら、ゆっくり入ってもらおうと思ったんだけど……ごめんビワ」

「カズさんは…なにも……」

「三人で入るように勧めたのは俺だから」

「聞こえて…ましたか?」

 風呂で温まったからなのか、焚き火のせいなのか、カズにはビワの顔が赤く見えた。

「あれだけ騒げばね。二人が出てきたら叱っておくから、それで反省したようなら、許してやって」

「……はい」

 ビワから遅れること約二十分、レラとアレナリアが石風呂を出る。
 怒鳴られはしないが、当然のごとくカズに怒られる。
 ビワが作ってくれた夕食も、楽しく喋りしながら食べるという雰囲気ではなくなってしまった。

「せっかく森を抜けたのに、黙ってごはん食べても美味しくないよ。いつもみたいに、話しながら食べようよ」

 耐えきれなくなったレラが、一人声をあげた。
 
「最初に手を出したのはレラだけど」

「ビワの尻尾を触りたいって言ったの、アレナリアだもん」

「私は言っただけ。行動に移したのはレラ」

「尻尾を触ったのは、あちしだけど、胸を揉んだのはアレナリアだもん」

「尻尾だけじゃなく、全身でしょ」

「そこまで。二人ともビワに謝ったのか? 親しき仲にも礼儀ありだぞ(裸の付き合いで、親睦を深めてもらおうと思ったのに、失敗だった)」

「……ごめんなさい」

「ごめんビワ」

「……」

 ビワは二人に対して、無視を続ける。

「夕食のあと片付けは、レラとアレナリアがすること。俺は風呂に入ってくるから、出てくるまでに、ビワに許してもらうようにすること」

 まだ空気が重い状態にも関わらず、三人だけにしてカズは石風呂に入る。
 久々の風呂は温かく気持ちが良いが、ごつごつしていて、できはイマイチだった。
 しかし王都を出てから二ヶ月ぶりの風呂、贅沢を言わずにカズは黙ってたんのうする。
 だが三人のことが気掛かりで、二十分もしないうちに出てしまった。
 カズが静かに石風呂から出ると、三人は焚き火を囲みながら、お茶を飲んでいた。
 食器類は言われた通り、洗って一ヶ所に置いてあったので、カズはそれを【アイテムボックス】に片付けた。
 続けて石風呂と目隠し用の壁を、片付けしようとする。

「あ……」

「なにビワ?」

「あの……もう崩してしまうんですか?」

「そのつもりだけど、また入る?」

「できれば……朝に」

「分かった。片すのは出発前にする。朝になったらお湯を入れ換えるから」

「それは大変なので、今のままで大丈夫です」

「そう。なら入る前に言って、温めるから(一応クリアできれいにするか)」

「はい」

「あちしも入る」

「またビワに、何かするんじゃないだろうな。というか、ビワに許してもらったのか?」

「しないしない。ただお風呂に入るだけ」

「嘘だったら、置いてくからな」

「分かってる…ます」

 少し反省した様子を見せるレラ。

「ねぇカズ」

「なんだ?」

「反省したから、もう怒らないでよ」

「ハァー。で、なに」

「お風呂に入ってる時の、あちし達の会話って聞こえてた?」

「レラの声はデカいからな」

「アレナリアとビワの声は?」

「まあ、少しは」

「じゃあ、ビワのひゃとか、きゃッとかも聞こえた?」

「またからかう気か? 反省してないのか」

「してる…してます。ただ……」

「レラは何が言いたいんだ?」

「聞こえた、聞こえない。なんて事で、また叱られるの嫌だから、次からは、やっぱりカズも一緒に入ればいいかな~って」

「な、何を言ってるんだ。第一、ふざけなければこんな事は起きないんだぞ」

「私は一緒に入っても大丈夫」

「アレナリアは大丈夫だって。聞かなくても分かるけど。あとはビワだかなんだけ」

「わ、私は…ちょっと……」

「ほら、分かったろ。レラとアレナリアにも恥じ─」

「……タオルを巻いてなら」

「─らいが……今なんて?」

「タオルを巻いてなら、一緒に入っても良いって。そう言ったんだよねビワ」

 ビワは恥ずかしそうにして、小さく頷く。

「やったー! 決定」

「いやいやいや。レラに流されちゃ駄目だよビワ」

「カズさんが一緒に入れば…レラもいたずらしないと思って……」

「それなら次からは、一人ずつ入ろう。そうすれば何もされないから大丈夫。それでいいでしょビワ」

「あ……はい」

「良かった……(レラの奴、変なこと言い出しやがって)」

 ついビワとの混浴を想像してしまうカズだった。

「あ、カズもしかして……」

「な、なんだよ」

「ビワと一緒に、お風呂に入ってるの考えてたでしょ」

 こんなことだけに鋭いレラの発言に、ドキッとするカズ。

「ま、まさか……」

「動揺してるの?」

「動揺なんてするわけないだろ(レラは一言二言多い。本当に、反省してるのかコイツは!)」

 アレナリアは一人ぶつぶつと呟き、時折唇を尖らせていた。

「私だったらいつでも一緒に入っていいのに。やっぱり本心はカズも大きい方が(そうよね。ビワの胸だってあんなに柔らかくて、気持ち良かったんだもん。それに比べて私は……)」

 服の上から自分の胸を触り、アレナリアは改めて現実と向き合う。

「今夜はここまで。危険な森を抜けたんだから、話は終わりにして、早く寝て朝までゆっくり休もう。ほら、馬車に戻った戻った(これ以上レラに話をされたら、余計厄介な事になる)」

 カズは三人に、早く馬車で寝るように言う。

「じゃあ、じゃあ。最後に一つ?」

「なんだ? (また余分なことを言うんじゃないだろうな)」

「あちし達が入った後に、入ったの感想は?」

「は? 感想ってなんだよ」

「だ・か・ら、美女三人の浸かったお湯に入ったんだからってこと」

「レラが自分で美女とか言うのか」

「あちしはこんなにスタイルの良いんだから、どう見ても美少女でしょ」

デザートクラブカニの食べ過ぎと運動不足で、たるんだそのお腹でか?」

「こんなは飛び回ってれば、すぐに引っ込む……もん」

 お腹の肉を掴み、言葉が詰まるレラ。

「へぇ~っ」

「あちしのことはいいの。それでどうなの」

「そんなこと毎回思ってたら…」

「男として興奮して立った? もしかして、お風呂の中で出しちゃ…」

「黙って寝ろ!」

 カズはとっさに【アイテムボックス】から枕を出して、レラに投げつけた。

「にっちっち。カズをからかっちゃ駄目って、言われてないも~ん。ぶへッ」

 枕がレラに直撃。

「それ持って、とっとと寝ろ! (結局最後はこれか)」

 レラの話に対する反応がカズが気になり、下半身をちらちらと見るアレナリア。
 その視線に気付き、二つ目の枕をアレナリアに投げつけるカズ。

「アレナリアも、もう寝ろ」

「分かった。その前に、この枕ぎゅっとして。そうしたら、反省してすぐに寝る」

「ぎゅ?」

「そう。ぎゅっ」

 言われた通り枕をぎゅっとしてから、再度アレナリアに渡たそうとするカズ。
 だが、アレナリアの次の行動が読めたので、新たな枕を【アイテムボックス】から出し渡した。

「これじゃなくて…」

「ほら、寝た寝た。悪いけどビワはこっち使って。嫌だったら先に戻ったレラと交換して。くれぐれも、アレナリアには渡さないように」

 少し変形した枕の形を整えてから、ぎゅっとした枕をビワに渡すカズ。 

「これで…大丈夫です」

 ビワは二人を許したようだが、ま少しギクシャクしているようだった。
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