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四章 異世界旅行編 1 オリーブ王国を離れ東へ

308 過大評価の弱小パーティー

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 サンドワームが出現する場所に向かいながら、三人はカズに名前を教えた。
 ギルドの女性職員を口説き、カズに絡んだ冒険者の名は『ダッホ』もう一人の男の冒険者は『スコ』女性冒険者の名前は『トーリ』だという。
 ダッホがリーダーをしている『砂漠のオアシス』という名のパーティーを組んでいると。
 住んでる場所そのまんまだと思い、カズはパーティーネームのことを尋ねた。
 するとよく聞いてくれたと言わんばかりに、三人はパーティーネームのことを話した。
 自分達が名の知れた冒険者になれば、このオアシスの街が少しは栄えると思い、付けたんだと。
 あんな事をしていれば、悪い方向で名が知れ渡ると思うが、とカズは内心思っていた。
 サンドワームと遭遇する前に、カズは三人のステータスを少し調べることにした、一応。


 名前 : ダッホ
 年齢 : 24
 性別 : 男
 種族 : 人
 職業 : 剣士
 ランク: C
 レベル: 28
 力  : 392
 魔力 : 224
 敏捷 : 326
 運  : 31

 名前 : スコ
 年齢 : 26
 性別 : 男
 種族 : 人
 職業 : 格闘探検家
 ランク: C
 レベル: 26
 力  : 390
 魔力 : 156
 敏捷 : 260
 運  : 34

 名前 : トーリ
 年齢 : 21
 性別 : 女
 種族 : 人
 職業 : 魔法使い
 ランク: D
 レベル: 25
 力  : 200
 魔力 : 325
 敏捷 : 229
 運  : 35


 格闘探検家? トレジャーハンターみたいなものかな。
 しかしレベルが30もいってないのにCランクってのは、少しギルドの評価が甘いんじゃないか。
 これだとデザートクラブを倒せないどころか、三人で戦ってもサンドワーム一体を倒すのは難しいだろ。
 あのハルチアギルマスそれを分かってて、俺を付けさせたな。
 結局はこの三人のおりじゃないか。


 三人が危険ではない依頼はがりを受けて、レベルが上がらず停滞していたのを分かっていたハルチアは、カズがこの街に来る事を知り、今回の事を計画していたに違いないと、カズは考えた。
 四人が街を出て砂漠へと入り、1㎞程離れた所にある岩に向かって歩いて行く。
 カズはマップを見て確認すると、確かにモンスターの反応があった。
 砂漠のオアシスの三人は各々武器を構え、バラけて岩の周囲を歩き回り、サンドワームの現れた痕跡を探す。
 カズは手を出さないよう言われ、一人離れた所で待機している。
 サンドワームの痕跡を見つけることが出来ず、ダッホはイラつき岩を蹴り八つ当たりした。
 すると砂中さちゅうに振動が伝わり、目的のサンドワームが姿を現す。
 現れたサンドワームの大きさは4m強の中型、三人で力を合わせ連結すれば倒せなくもない。

「出たぞ! よし、トーリは離れた所から魔法で攻撃」

「任せて」

「スコはおれと突っ込むぞ!」

「おう!」

 トーリはサンドワーム目掛けて〈ファイヤーボール〉を放つ。
 が、火の玉が飛ぶスピードが遅く、当たるまで連発して無駄に魔力を消費する。
 接近したダッホは剣で斬り付け、スコは力任せに槍斧ハルバードを叩き付ける。 
 どちらの攻撃も当たるが、サンドワームが分泌するドロリとした体液あぶらでするりと滑り、ダメージが通らない。
 十数発放ったトーリのファイヤーボールも数発当たるものの、やはり大して効いてはいない。
 バラバラに攻撃する三人では、現れたサンドワームを倒すことが出来ないのは、火を見るよりも明らかだった。

「連結の戦闘に詳しい訳じゃないが、少し手助けするか〈アースバインド〉」

 息が切れする三人は、突如としてサンドワームを拘束した魔法を見て唖然とする。

「少し助言するが、聞くかどうかは三人しだい。トーリは強化系と拘束系の魔法は?」

「身体強化使える。拘束魔法は使えない。でもアースウォールが使えるけど、砂地だと強度が」

「そうか。ならダメージが入らない攻撃魔法よりも、ダッホとスコの二人に身体強化を掛けて、サンドワームの攻撃をアースウォールで防御して援護に集中する。壁は二人が隠れられる程度の大きさでいいから。そうすれば、多少は強度が増すだろ」

「ダッホとスコの攻撃では、サンドワームに傷を負わすのは難しいと、今ので分かったろ」

「チッ……ああ」

「攻撃が入っても、かすり傷程度だった」

「今度はトーリに身体強化を掛けてもらい、サンドワームの弱い所を見つけて、二人で一ヶ所を集中して攻撃することだ」

「弱い所ってどこだよ」

「それは戦いながら三人で見つけること。サンドワームの攻撃は、トーリが作ったアースウォールの壁に隠れれば、少し息もつけるだろ。ただし、必ずしも壁が守ってくれるとは限らないからな。サンドワームの攻撃が壁の耐久力を上まれば破壊される」

 助言をしている内に三人の荒れた息が整い、サンドワームは砂の拘束から解き放たれた。

「抜けたか。助言はここまで。あとは自分達で判断し考えて戦うんだな(もっともらしそうなことを言ったけど、三人は理解してサンドワームを倒せるかどうか)」

「ちょっと待て、まだ考えが」

「早く二人に身体強化を掛けないと、サンドワームが襲って来るぞ。トーリ」

 トーリは慌ててダッホとスコに身体強化を、次に迫るサンドワームの正面に、1m弱の壁をアースウォールで作り出した。
 サンドワームは現れた壁にぶつかる。
 アースウォールで作り出された壁は、ヒビが入るが完全には破壊されなかった。
 三人は声を掛け合い、目の前のサンドワームを倒すべく、カズに言われたことを思い返しながら戦い始めた。


ーーーーーーーーーーーーーーー


 その頃オアシスの街で待つレラとアレナリアは、ビワを連れてハルチアの所へ行っていた。
 内容はカズが卸したデザートクラブの買い取りだ。
 砂漠を抜けたらカニを食べられなくなると思い、カズが留守の間にハルチアと交渉して、デザートクラブを全て引き取るつもりでいた。
 カズに怒られかねないとビワは止めたが、レラとアレナリアに言いくるめられてギルドに来るはめになった。
 ギルドマスターの部屋に通され、長椅子に座るアレナリアとビワ。
 レラは肩掛け鞄から出て、テーブルの上にあぐらをかいて座っている。

「昨日カズが卸したデザートクラブを、こちらで買い戻させてくれない」

「あちし達の旅は始まったばかりだから、食料が欲しいの」

「と言っても、街にも貴重な食料だから。特にデザートクラブの在庫は少なくて、討伐依頼を受けてくれるような冒険者も中々来ないから、はいそうですか、とは渡せないね」

「お金は払うって言ってるでしょ。あちしの代わりに払うはカズたけど」

「随分と欲張りだね。フェアリーってのは皆そうなのかい?」

「レラだけ」

「なッ、アレナリアだって食べたいって言ったから、交渉に来たんでしょ」

「二人共落ち着いて、喧嘩はよくない」

「ビワだって食べたいでしょ」

「あの…はい。でも……一体はあるってカズさんが」

「あッ、ビワ」

「なんだい、ちゃんとあんたらの分を取ってあるのかい。だったら卸してくれた分は、街の連中に回して構わないでしょ」

「交渉失敗ね」

「ビワが余計なこと言っちゃうから」

「ごめんなさい。レラ」

「まだまだ砂漠は続くんだ。デザートクラブを見つける事もあると思うから、カズに頼むのね」

「そうね。カズに頼んで探してもらいながら進みましょう」

「ざぁ~んねん。なら街をぶらついて宿に戻ろう」

「いいけど、レラはビワが持ってる鞄の中よ」

「えぇーまたぁー。アレナリアが守ってくれるなら、外に出ててもいいでしょ」

「さぁ行くわよ。レラは鞄に入って」

「……分かったもん」

「随分とあっさり引き下がったわね。もっとごねるのかと」

「ダメ元で交渉に来ただけだから。しつこくして、カズの耳に入るのは嫌だしね」

「カズもお前ら見たいな連中と一緒で大変だな。あんまりわがまま言ってると、どこかの街に置いていかれるわよ」

「カズさんはそんなことする人じゃないです!」

「そうだそうだ!」

「ギルマスだからって、カズを愚弄するとただじゃおかないわよ」

「そんなつもりはないよ。ただ面白い連中だと思っただけ」

「私達が来たことは、カズに内緒にして。昨日のお詫びだと思って」

「分かったわ。黙っててあげる」

 三人はハルチアの元から去り、ギルドを出て行った。


ーーーーーーーーーーーーーーー


 つたないながらも連結がとれて、ギリギリのところでサンドワームを倒した三人は、疲労困憊で倒れ込む。

「はぁはぁ……見たか、あんたの手を借りることなく倒したぞ」

「お疲れさん。それでどうだ、三人でサンドワームを討伐した感想は?」

「キツイ」

「しんどい」

「も、もう魔力が空よ」

「良い経験になったな。もっとうまく連結がとれるようになれば、ここまで疲れはてる前に倒せるようになるだろう」

 三人は互いの顔を見合い、自信のついた顔で笑った。

「少し休憩したら街に戻ろう。倒したサンドワームは、俺が街まで運ぼう。状態がいいとは言えないが、苦労して倒したのを置いていきたくはないだろ」

 カズは倒れているサンドワームを【アイテムボックス】に入れた。

「アイテムボックスが使えるってのは便利だよなぁ」

「強くなって金を貯めたら、王都に行って異空間収納が出来るアイテムを探してみたらどうだ」

「そう簡単に見つかるかよ。それにどう考えても、金貨数百枚はするだろ」

「かもな。そろそろ戻るか(何かこっち向かって来てるな)」

 カズは自分達の居る場所に、二体のモンスターが向かって来ているのを気配感知で気付き、マップを見て確認した。

「もう少し休ませてくれ」

「早く戻りたいなら、魔力を回復してよ」

「すぐそこまで来たが気付かないか?」

「え? うわぁ! な、なんだ!?」
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