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四章 異世界旅行編 1 オリーブ王国を離れ東へ

306 Cランクだと、やっぱり……

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 青白い電撃は暴れるデザートクラブを貫通し絶命させた。

「少しやり過ぎたな。取りあえずアイテムボックスに(これは自分達で食べる分にするか)」

 倒した五体のデザートクラブを【アイテムボックス】に突っ込み、カズはオアシスの街のギルドに向かった。
 朝よりも閑散としたギルドには二人の職員を除き、この街の冒険者らしき者が三人居るだけだった。
 依頼を受ける訳でもなく、隅に置いてある椅子に座り、足を目の前にあるテーブルに乗せて、酒らしき物をあおる男女の冒険者が二人。
 もう一人男の冒険者は、女性職員に話し掛け口説いているようだった。
 見た目二十代と思われる女性職員は、いつもの事なのか慣れた様子で、から返事をしてあしらっていた。
 受付に居るもう一人の職員は、今朝カズを対応した無愛想な中年の男性だ。
 体調でも悪いのか、今朝とは違い顔色が少し悪いようだ。
 女性職員の方に行くと、話している男の冒険者に絡まれそうだったので、カズは嫌々ながらも今朝の職員が居る受付に行く。

「あの…」

「! は、はい。どのような用件でしょうか?」

 カズを見て、少し驚いたような反応をする男性職員。

「受けた依頼を終わらせたので、報告に来たんですが。あと討伐したモンスターの買い取りを、と」

「は!? 依頼は今朝のはず……ってことは、やっぱり」

「やっぱり……? ああ、Cランクの俺がデザートクラブを倒せる訳がないって事ですか」

「い、いえそれは……」

「現物を出しますから(ギルドの中は狭いから、一体が限度かな)」

 カズは【アイテムボックス】から一体のデザートクラブを出した。
 何もない空間から木製の床にドスンと置かれたデザートクラブを見て、冒険者三人が驚いていた。

「これでよろしいですか?」

「あ……はい。け、結構です」

「あと一、二回依頼を受けたら、Bランクになると思うんですが」

「え、あ、し、調べますので、少々お待ちください」

 慌てふためく男性職員は、バタバタと二階に駆け上がって行った。

「何なんだ? (なんで今朝と態度が違うんだ)」

 アイテムボックスから取り出したサンドクラブの前で待つカズに、ギルドに居た三人の冒険者の内、女性職員を口説いていた男の冒険者がカズに近付く。

「お前、アイテムボックスのスキル持ちか。Cランクだと聞こえたが」

「そうですけど何か?」

「おれもCランクでよぉ。それなりにポイントが稼げる依頼を、この街に来たばかりの奴にやってほしくねぇんだ」

 残る男女の冒険者二人も、椅子から立ち上りカズの近付く。

「別にあんたらの邪魔をする気はない。あと一回か二回、依頼を受けたら街を離れるつもりだ」

「その一回、二回でも十分に邪魔なんだよ」

「痛い目をみたくなければ、デザートクラブそれを置いて、とっとと出て行け。それで勘弁してやる」

「まだ依頼の報酬を貰ってないんでね。さっきの職員が戻って来たら、すぐに出て行くよ(なんでこう絡まれるんだ? 俺は)」

 見兼ねた女性の職員が、三人の冒険者を注意する。

「あなた達いい加減にしないと、ギルドマスターに報告するわよ!」

「チッ」

 舌打ちをした三人の冒険者は、一瞬カズを睨み付けてからギルドを出て行った。

「ありがとございます。助かりました」

「この街を拠点にしている数少ない冒険者だから、少しくらいの粗暴は見逃してきたんだけど、今日のはちょっと酷かったから」

「俺が気に障る事でもしましたか?」

「自分達の立場が危ういと思ったんじゃないかしら。少し前に王都で大変な出来事があったから、そこから強い冒険者が流れて来たらどうしようかと思ってるのよ」

「でも俺、Cランクですよ」

「彼らも同じCランクだから、過敏に反応したのよ。それに貴方はアイテムボックスが使えて、デザートクラブそれを倒してくる実力があるんですもの」

「王都で使いなれてて、珍しいのを忘れてました(そういえば、アイテムボックスを使える冒険者は少ないんだっけ)」

「街で絡まれないように気を付けて」

「ありがとございます」

 女性職員が話を終えると、先程の男性職員が受付に戻った。
 依頼の報酬をカズに渡すと、あと二体のデザートクラブを討伐してくれれば、Bランクにすぐ上がると言ってきた。

「あと二体でいいんですか? それなら出します(一応焦がした一体を除いて、三体を渡すか。元々そのつもりだったし)」

「へ!? まだあるんですか?」

「あと三体」

「さッ……こ、ここでは置けませんから、ギルド裏にお願いします。出来れば、ここにある一体も運んでもらえれば」

「分かりました」

 出してあったデザートクラブを一度【アイテムボックス】に入れ、ギルドの裏に回り四体のデザートクラブ出し、口を開き唖然としている男性職員に確認させた。

「申し訳ありませんが、ギルドカードをBランクに更新するのは、明日になりますがよろしいでしょうか?」

「そうですか。分かりました」

「では準備はしておきますので、よろしくお願いいたします」

 態度が変わった男性職員と別れ、カズは皆が待つ宿屋に戻ることにした。
 が、ギルド出てすぐ、隠れて後を付ける人物がいる事にカズは気付いた。
 そのため宿屋には向かわず、尾行している人物が出て来やすいように、人気のない路地を選び歩く。

「おい、待て。気付いてたんだろ、おれが付けてる事を」

 カズの後方から男の声がし、振り返ると予想通り、ギルドで女性職員を口説いていた冒険者が居た。

「何か用か?」 

「デザートクラブを一体倒した程度でいい気になるな。おれだってあの程度簡単に出来る」

「何が言いたいんだ? ギルドの掲示板に貼られてる依頼は早い者勝ち。文句を言われる筋合いはないはずだが」

「余所から来たばかりのてめぇに、おいしい依頼を取られたんだ。依頼の少ねぇこの街でのルールを教えてやる。付いて来い」

「どこへだ?  (てっきり殴り掛かってくるのだと思った)」

「てめぇを痛め付けたところで、言うことを聞くとは思えねぇ。だから、てめぇの連れを捕らえるよう言ってある。そいつらに怪我させたくなければ、分かってるな」

「他の二人がいないと思ったら、そういう事か(大丈夫か……その二人は? あと、もう一人付けてるの誰だ?)」

 他に尾行する者が居るのをカズは気付いていたが、その確認は後にして、今は男の冒険者に付いて行く事にした。
 少し歩くと、街外れの石で出来た倉庫らしき建物に着いた。
 男の冒険者が声を掛けるが返事はない。
 カズを連れて中に入り、奥に見える扉を開くと、ギルドに居た男女の冒険者が、半身氷漬けになっているのが目に入った。

「なッ、どういう事だ? 何しやがった、このちび!」

ですってぇ!」

「ひィィ~」

「お、お願いやめ、やめて。謝るから。あんたもすぐに謝って!」

 半身氷漬けにされている男女の冒険者が、寒さと怖さで震えながら、カズを連れて来た男の冒険者に謝罪させようとする。

「こんなエルフと獣人の女相手に、何やられてるんだ」

「またって言ったわね」

「言ったからなんだ!」

「この馬鹿は全身で決定。こんな暑い街に居るから、熱で頭がやられたのね。私が涼しくしてあげるわよ」

「やってみろクソちび」

「〈アイスロック〉」

「冷たッ」

 放たれた氷魔法で、両手足を拘束された男の冒険者は、力ずくで氷を砕こうとするが、ヒビすら入らない。

「〈フリー…」

「アレナリア、それ以上はやり過ぎ」

「こういった馬鹿は、少しくらい痛い目にあえばいいのよ。私のこと、クソちびって言ったんだから」

「取りあえずそれ以上はやらないように。ビワとレラの二人は大丈夫?」

「私の心配はしてくれないの」

「この状況でそれを言うか。この程度、アレナリアだったら、何の問題もないだろ」

「まあ、そうね。こんな連中相手に怪我なんかしないわよ」

「私は大丈夫です。アレナリアさんが守ってくれましたから。レラは肩掛け鞄こちらに」

「なんともなければ良かった。さて、どなたか知りませんが、そろそろ出て来てくれませんか?」

 カズは建物の外を見て、付けて来ている者に話し掛けた。
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