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三章 王都オリーブ編3 王国に潜むの影
301 旅立つ前の駆け抜ける日々 6 手近なあなたで……
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リビングに戻ると、フローラはチーズを摘まみながら、ちびりちびりと果実酒を飲んでいた。
赤みがさしていたフローラの頬は、先程よりも少し濃くなっていた。
「フローラさんも程々にしないと、明日の仕事に差し支えますよ」
「仕事仕事で全然休みが取れなかったのよ。やっとあの事件の報告書を終わらせて、ギルドの溜まった仕事を平常時と同じ量まで減らしたの。頑張ったんだから、今日くらいはゆっくりお酒を飲んでもいいでしょ。まだイキシアの事だって……意識も……」
「そ、そうですね。たまには……(そうかイキシアはまだ……。フローラさん辛いんだな)」
「それにおばあちゃんもちょくちょく来ては、孫の顔が見たい孫の顔が見たいって、本当にうんざりなの。あんたの孫は私だっての! 私の子供なら、ひ孫でしょうが!」
「へ? そっち(悩んでたのは、イキシアの事じゃなかったかい!)」
「へ、じゃないわよ!」
「すいません。アイアさんはまだ王都に居たんですか」
「まだ居るのよあのババァ! 私が一生懸命仕事してるのに、そこへお酒の臭いを漂わせてながら来ては、今日引っ掛けた男は大きいけど早かったとか、小さいけど攻めが良かったとか、そんなことばっかり話すのよ」
とうとうフローラも完全に酔いが回り、仕事の事や祖母アイアの愚痴を言い出した。
「まぁまぁ少し落ち着いて、お酒もそろそろ終わりにして、水にしましょう(アイアさん、孫に対してセクハラ発言……身内だからいいのかな?)」
フローラの前に置いてある果実酒のビンと、少しだけ中身が残っているコップを下げようとするカズ。
「まだ飲んでるでしょ!」
下げようとしたコップを手元に引き寄せ、残りを一気に口へと流し込むフローラ。
カズは果実酒をキッチンの棚に下げると、水の入ったコップを持ってフローラの前に置いた。
この時点でフローラの顔は、先程よりも更に赤くなっていた。
フローラは出された水の入ったコップを手に取り、ゴクゴクと半分程飲む。
「ふぅ……怒鳴ってごめんなさい。少し飲み過ぎたみたい」
「気にしてません。確かにここ最近、迷惑を掛けてたのは俺ですから。愚痴なら幾らでも聞きます」
「そんな優しい言葉を……掛けないでよ」
じっとカズを見つめるフローラ。
「もうカズさんで……いいかな」
「何がですか?」
「おばあちゃんが、しつこく来てるって言ったでしょ」
「ええ」
「そこでどうしたらおばあちゃんが納得するか、諦めてここを離れるか考えてたの」
「それはフローラさんが、子供をって話ですか?」
「ええ…そう。私はまだそんな気はないのに。ハイエルフからしたら、五百歳を過ぎてから初めて子供を産むのだってざらなのよ。それなのにおばあちゃんは、今なら男は選び放題なんだから、どんどん産めばいいって言うのよ」
「はあ」
「だから……」
ソファーからゆっくり立ち上ると、千鳥足でカズの側に寄るフローラ。
カズに顔を近付けるフローラの目は据わっていた。
「あのフローラさん。もう寝た方が」
「一度だけでいいの」
「な、何がです…か」
「んふふ。やっぱり一度で宿すか分からないから、朝まで何度か……」
「だ、だから何が(分かるけど)」
「決まってるでしょ。あのババァを納得させるには、子供を作るしかないってこと。だから手近なカズさんで手を打とうかと思ったの」
「そんな大事なことを、手近な俺で手を打つとか、酔った勢いで簡単に言わないでください」
「二人ともよく寝てるから、少しくらいの音じゃ起きないから大丈夫。ベッドにはアレナリアが寝てるから、ここでしましょ」
「ちょ、ちょっと落ち着いてフローラさん。俺の話し聞いてます?」
フローラは上着を脱いで薄着になり、後退りするカズを壁際のソファーに追い詰め、カズの首に両腕を回し抱き付く。
動揺するカズは肘掛けに足を取られ、そのままソファーに倒れ込み、あお向けになる。
結果フローラがカズを押し倒すかたちになった。
薄着のフローラがカズに覆い被さり、フローラの温かく柔らかい胸の感触が伝わり、果実酒とは違う甘い良い香りが鼻腔をくすぐり、カズの鼓動は早くなる。
緊張するカズは天井から自分の上に乗っかるフローラに視線を向ける、すると当の本人は目を閉じてスゥスゥと寝息を立てていた。
「寝て…る」
カズは一呼吸して早くなった鼓動と理性を押さえ、フローラをベッドまで抱き抱えて行きアレナリアの隣に寝かせた。
カズはそのまま風呂場に向かった。
未だに女性に対してがっつけないカズ。
これで何度目の据え膳食わぬは、だろうか。
風呂に入り悶々とした気持ちを落ち着かせようとするが、少し前まで女性三人(一応レラも)が入っていたと思うと、逆にムラムラとしてしまった。
アレナリアだったら寝込みを……喜びはするが嫌がられたりは……と、頭の片隅で考えてしまったが実行に移せず、結局は自慰ことでスッキリさせた情けないカズだった。
カズが女性に対して受け身なのは、まだこの世界に骨を埋める覚悟がないのかも知れない。
キッシュから身を引いたのも、元の世界に未練があり、戻れる可能性があるはずだ、と。
湯に浸かりながらカズは、そんなことを自問自答していた。
結局答えは出ぬまま風呂から上がり、先程フローラに押し倒されたのとは別のソファーで就寝した。
◇◆◇◆◇
昨夜の事が尾を引き、カズは朝早くに目が覚めてしまった。
「あのまま流されてフローラさんを……」
今になって惜しい事をしたと、カズは少し後悔していた。
目を覚まそうと冷たい外の空気を吸いに庭へ出ると、昨日購入した馬が、庭の片隅に生えている草を食べていた。
少しして屋内に戻ったカズは、キッチンに移動し朝食を作り始めた。
焼きたてのパンの匂いを嗅ぎ付け、先に起きて来たのレラだった。
カズはフローラとアレナリアの様子をレラに見に行かせた。
戻って来るレラは、フローラと一緒だった。
「おはようカズさん」
「お、おはようございます(昨夜の事、覚えてるのかな?)」
「アレナリアは全然起きる気配ないよ」
「疲れてるんだろ。そのまま寝かせてやればいいさ。二日酔いになってるだろうから、水と薬を手の届く所に置いといてやれば」
「あちしが持って行ってあげるよ」
「大丈夫か? 重いぞ」
「それくらい大丈夫だ。あちしに任せなさい」
「じゃあ頼むよレラ」
レラに二日酔いの薬と、水の入った容器を渡すと、それを抱えゆっくりと持って行く。
「アレナリアに優しいのね」
「そうですか? 呂律が回らない事は何度もありましたし、そういう時はだいたい二日酔いになってましたから」
「昨夜は獣になってもよかったんじゃないの? もちろん男性という意味で」
「え? 急になんです」
「私に恥をかかせて」
「起きてたんですか?」
「うっすらと意識はあったわ」
「理由が理由ですし、酔いに任させての勢いでってのは。やはりお互い素面の時に同意しないと」
「良く言えば優しいさだけど、悪く言えば臆病者ってこと?」
「否定はしません。それよりフローラさんは、俺なんかでよかったんですか?」
「そのまま質問をお返しするわ。300歳も年上の私でカズさんは平気? アレナリアの三倍。人からしたら、数代前のおばあちゃんよ」
「う~ん……そうですねぇ。ハイエルフ寿命がどれ程かは知りませんが、人の寿命に換算すると、フローラさんはまだ十代から二十代前半とかじゃないんですか?」
「ん~まあそうかもね」
「それにこちらの世界に来て、フローラさん以上に美人で綺麗な人は知りません。そんな人に言い寄られて、嫌になったりは」
「あら、私を抱かなかったのに、今になって口説くの?」
「く、口説いてる訳では……(ギルドの仮眠しつでは、夜這い来るなんて! とか言ってたのに、どういう風の吹き回しだ?)」
「女性に対しては、まだまだEランクってとこかしらね」
「そっちのランクは上がらなくて」
「それが優しさなのか臆病なのかは、次この国に戻って来た時に。変わってないようだったら、本気で襲うわよ」
「またまた」
「うふふ」
「まだ酔ってるんですか? 冗談でしょ」
「どうかしら(昨夜もそうだったけど、この手の話しになると、かわいい反応するわね)」
二人の会話が終わると、二日酔いのアレナリアが起きて、よたよたと歩いて来た。
隣に居るレラが持つ容器の中の水が減っているので、二日酔いの薬は飲んだようだった。
「気持ち悪い」
「飲み過ぎよアレナリア。自分の飲める量をしっかり把握しておきなさい。でないとカズさんが大変よ」
「……はい」
「まだ横になってれば」
「薬飲んだから大丈夫」
「スープでも飲むか?」
「うん。少しだけ」
ソファーに倒れ込むアレナリア。
フローラとレラに朝食を出し、カップに入れたスープをアレナリア出すカズ。
「ここに置いておくぞ」
「う~ん……」
「世話が焼けるわね」
「まったくです。俺は今日も買い出しに出掛けるから、レラはアレナリアを見てて」
「仕方ないわね」
「それじゃあ一緒にギルドへ行きましょうか。まだ渡してない報酬があるから」
「はい。あ、でもその前に」
レラに二日酔いのアレナリアと留守番を頼み、カズはフローラと家を出て、先にトラベルスパイダーの所に行った。
カズ達が旅に出た後、王都での生活や仕事のことで何かあればフローラに相談するようにと、改めてトラちゃんをフローラに会わせた。
そこでフローラからトラちゃんに対して、今回の依頼がいかに大事かを改めて伝えた。
テイマーのいないモンスターが、街の人々と友好的に暮らせるか、その試しでもあると。
何度もカズに聞かされていた事だったが、トラちゃんは嫌な顔をせず(表情はよく分からないが)真面目にフローラの話しを聞き、改めて理解しましたと丁寧に告げた。
カズはトラちゃんに食料を渡し、フローラと共に倉庫を出た。
赤みがさしていたフローラの頬は、先程よりも少し濃くなっていた。
「フローラさんも程々にしないと、明日の仕事に差し支えますよ」
「仕事仕事で全然休みが取れなかったのよ。やっとあの事件の報告書を終わらせて、ギルドの溜まった仕事を平常時と同じ量まで減らしたの。頑張ったんだから、今日くらいはゆっくりお酒を飲んでもいいでしょ。まだイキシアの事だって……意識も……」
「そ、そうですね。たまには……(そうかイキシアはまだ……。フローラさん辛いんだな)」
「それにおばあちゃんもちょくちょく来ては、孫の顔が見たい孫の顔が見たいって、本当にうんざりなの。あんたの孫は私だっての! 私の子供なら、ひ孫でしょうが!」
「へ? そっち(悩んでたのは、イキシアの事じゃなかったかい!)」
「へ、じゃないわよ!」
「すいません。アイアさんはまだ王都に居たんですか」
「まだ居るのよあのババァ! 私が一生懸命仕事してるのに、そこへお酒の臭いを漂わせてながら来ては、今日引っ掛けた男は大きいけど早かったとか、小さいけど攻めが良かったとか、そんなことばっかり話すのよ」
とうとうフローラも完全に酔いが回り、仕事の事や祖母アイアの愚痴を言い出した。
「まぁまぁ少し落ち着いて、お酒もそろそろ終わりにして、水にしましょう(アイアさん、孫に対してセクハラ発言……身内だからいいのかな?)」
フローラの前に置いてある果実酒のビンと、少しだけ中身が残っているコップを下げようとするカズ。
「まだ飲んでるでしょ!」
下げようとしたコップを手元に引き寄せ、残りを一気に口へと流し込むフローラ。
カズは果実酒をキッチンの棚に下げると、水の入ったコップを持ってフローラの前に置いた。
この時点でフローラの顔は、先程よりも更に赤くなっていた。
フローラは出された水の入ったコップを手に取り、ゴクゴクと半分程飲む。
「ふぅ……怒鳴ってごめんなさい。少し飲み過ぎたみたい」
「気にしてません。確かにここ最近、迷惑を掛けてたのは俺ですから。愚痴なら幾らでも聞きます」
「そんな優しい言葉を……掛けないでよ」
じっとカズを見つめるフローラ。
「もうカズさんで……いいかな」
「何がですか?」
「おばあちゃんが、しつこく来てるって言ったでしょ」
「ええ」
「そこでどうしたらおばあちゃんが納得するか、諦めてここを離れるか考えてたの」
「それはフローラさんが、子供をって話ですか?」
「ええ…そう。私はまだそんな気はないのに。ハイエルフからしたら、五百歳を過ぎてから初めて子供を産むのだってざらなのよ。それなのにおばあちゃんは、今なら男は選び放題なんだから、どんどん産めばいいって言うのよ」
「はあ」
「だから……」
ソファーからゆっくり立ち上ると、千鳥足でカズの側に寄るフローラ。
カズに顔を近付けるフローラの目は据わっていた。
「あのフローラさん。もう寝た方が」
「一度だけでいいの」
「な、何がです…か」
「んふふ。やっぱり一度で宿すか分からないから、朝まで何度か……」
「だ、だから何が(分かるけど)」
「決まってるでしょ。あのババァを納得させるには、子供を作るしかないってこと。だから手近なカズさんで手を打とうかと思ったの」
「そんな大事なことを、手近な俺で手を打つとか、酔った勢いで簡単に言わないでください」
「二人ともよく寝てるから、少しくらいの音じゃ起きないから大丈夫。ベッドにはアレナリアが寝てるから、ここでしましょ」
「ちょ、ちょっと落ち着いてフローラさん。俺の話し聞いてます?」
フローラは上着を脱いで薄着になり、後退りするカズを壁際のソファーに追い詰め、カズの首に両腕を回し抱き付く。
動揺するカズは肘掛けに足を取られ、そのままソファーに倒れ込み、あお向けになる。
結果フローラがカズを押し倒すかたちになった。
薄着のフローラがカズに覆い被さり、フローラの温かく柔らかい胸の感触が伝わり、果実酒とは違う甘い良い香りが鼻腔をくすぐり、カズの鼓動は早くなる。
緊張するカズは天井から自分の上に乗っかるフローラに視線を向ける、すると当の本人は目を閉じてスゥスゥと寝息を立てていた。
「寝て…る」
カズは一呼吸して早くなった鼓動と理性を押さえ、フローラをベッドまで抱き抱えて行きアレナリアの隣に寝かせた。
カズはそのまま風呂場に向かった。
未だに女性に対してがっつけないカズ。
これで何度目の据え膳食わぬは、だろうか。
風呂に入り悶々とした気持ちを落ち着かせようとするが、少し前まで女性三人(一応レラも)が入っていたと思うと、逆にムラムラとしてしまった。
アレナリアだったら寝込みを……喜びはするが嫌がられたりは……と、頭の片隅で考えてしまったが実行に移せず、結局は自慰ことでスッキリさせた情けないカズだった。
カズが女性に対して受け身なのは、まだこの世界に骨を埋める覚悟がないのかも知れない。
キッシュから身を引いたのも、元の世界に未練があり、戻れる可能性があるはずだ、と。
湯に浸かりながらカズは、そんなことを自問自答していた。
結局答えは出ぬまま風呂から上がり、先程フローラに押し倒されたのとは別のソファーで就寝した。
◇◆◇◆◇
昨夜の事が尾を引き、カズは朝早くに目が覚めてしまった。
「あのまま流されてフローラさんを……」
今になって惜しい事をしたと、カズは少し後悔していた。
目を覚まそうと冷たい外の空気を吸いに庭へ出ると、昨日購入した馬が、庭の片隅に生えている草を食べていた。
少しして屋内に戻ったカズは、キッチンに移動し朝食を作り始めた。
焼きたてのパンの匂いを嗅ぎ付け、先に起きて来たのレラだった。
カズはフローラとアレナリアの様子をレラに見に行かせた。
戻って来るレラは、フローラと一緒だった。
「おはようカズさん」
「お、おはようございます(昨夜の事、覚えてるのかな?)」
「アレナリアは全然起きる気配ないよ」
「疲れてるんだろ。そのまま寝かせてやればいいさ。二日酔いになってるだろうから、水と薬を手の届く所に置いといてやれば」
「あちしが持って行ってあげるよ」
「大丈夫か? 重いぞ」
「それくらい大丈夫だ。あちしに任せなさい」
「じゃあ頼むよレラ」
レラに二日酔いの薬と、水の入った容器を渡すと、それを抱えゆっくりと持って行く。
「アレナリアに優しいのね」
「そうですか? 呂律が回らない事は何度もありましたし、そういう時はだいたい二日酔いになってましたから」
「昨夜は獣になってもよかったんじゃないの? もちろん男性という意味で」
「え? 急になんです」
「私に恥をかかせて」
「起きてたんですか?」
「うっすらと意識はあったわ」
「理由が理由ですし、酔いに任させての勢いでってのは。やはりお互い素面の時に同意しないと」
「良く言えば優しいさだけど、悪く言えば臆病者ってこと?」
「否定はしません。それよりフローラさんは、俺なんかでよかったんですか?」
「そのまま質問をお返しするわ。300歳も年上の私でカズさんは平気? アレナリアの三倍。人からしたら、数代前のおばあちゃんよ」
「う~ん……そうですねぇ。ハイエルフ寿命がどれ程かは知りませんが、人の寿命に換算すると、フローラさんはまだ十代から二十代前半とかじゃないんですか?」
「ん~まあそうかもね」
「それにこちらの世界に来て、フローラさん以上に美人で綺麗な人は知りません。そんな人に言い寄られて、嫌になったりは」
「あら、私を抱かなかったのに、今になって口説くの?」
「く、口説いてる訳では……(ギルドの仮眠しつでは、夜這い来るなんて! とか言ってたのに、どういう風の吹き回しだ?)」
「女性に対しては、まだまだEランクってとこかしらね」
「そっちのランクは上がらなくて」
「それが優しさなのか臆病なのかは、次この国に戻って来た時に。変わってないようだったら、本気で襲うわよ」
「またまた」
「うふふ」
「まだ酔ってるんですか? 冗談でしょ」
「どうかしら(昨夜もそうだったけど、この手の話しになると、かわいい反応するわね)」
二人の会話が終わると、二日酔いのアレナリアが起きて、よたよたと歩いて来た。
隣に居るレラが持つ容器の中の水が減っているので、二日酔いの薬は飲んだようだった。
「気持ち悪い」
「飲み過ぎよアレナリア。自分の飲める量をしっかり把握しておきなさい。でないとカズさんが大変よ」
「……はい」
「まだ横になってれば」
「薬飲んだから大丈夫」
「スープでも飲むか?」
「うん。少しだけ」
ソファーに倒れ込むアレナリア。
フローラとレラに朝食を出し、カップに入れたスープをアレナリア出すカズ。
「ここに置いておくぞ」
「う~ん……」
「世話が焼けるわね」
「まったくです。俺は今日も買い出しに出掛けるから、レラはアレナリアを見てて」
「仕方ないわね」
「それじゃあ一緒にギルドへ行きましょうか。まだ渡してない報酬があるから」
「はい。あ、でもその前に」
レラに二日酔いのアレナリアと留守番を頼み、カズはフローラと家を出て、先にトラベルスパイダーの所に行った。
カズ達が旅に出た後、王都での生活や仕事のことで何かあればフローラに相談するようにと、改めてトラちゃんをフローラに会わせた。
そこでフローラからトラちゃんに対して、今回の依頼がいかに大事かを改めて伝えた。
テイマーのいないモンスターが、街の人々と友好的に暮らせるか、その試しでもあると。
何度もカズに聞かされていた事だったが、トラちゃんは嫌な顔をせず(表情はよく分からないが)真面目にフローラの話しを聞き、改めて理解しましたと丁寧に告げた。
カズはトラちゃんに食料を渡し、フローラと共に倉庫を出た。
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