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三章 王都オリーブ編3 王国に潜むの影

291 王族の者 と 長かった一日

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 ルータが出て行ったことで、部屋にマーガレットと二人になったカズ。
 するとマーガレットが本人にはまだ内緒だと、あることをカズに話した。

「もしカズさんが大丈夫であれば、本人に話してみるわ」

「少し考えますので、数日待ってください(目的があった方がいいかも知れないが……)」

「良い返事を期待してるわ」

 ルータがジルバに呼ばれてから十分程がたった頃、ベロニカが来客の女性と二人の少女を連れてマーガレットの元へやって来た。
 話の終わったカズは、邪魔にならないよう入れ違いで部屋を出る。
 するとそこにはアキレアの姿があった。

「お夕食まで時間がありますから、カズさんはお部屋でお寛ぎください」

「分かりました(今の子供、どこかで見たような?)」

「お部屋までは一人で大丈夫ですね。私はこちらで待機しなくてはなりませんから」

「ええ、大丈夫です。場所は分かります」

 一人で廊下を歩いて指定された部屋に向かっていると、向かいからミカンと一緒に、デイジーとダリアが嬉しそうに歩いて来た。
 姉弟二人はカズに気付くと、にこやかに挨拶をして、マーガレットと三人の来客が居る部屋へと入った。

「ルッカちゃん、ヘレナちゃん、いらっしゃい」

「うん来たよ。デイジーちゃん。ダリヤ君はお姉ちゃん達に、ぎゅってしてね」

「え、あ、うん。ルッカお姉ちゃん。ヘレナお姉ちゃん」

 聞こえるダリヤの声は、少し恥ずかしそうだった。

「挨拶したから、皆で一緒にあそ─」

 カズの居る場所まで響いていた子供達の声も、扉が閉まったことで、聞こえなくなってしまった。

「ルッカとヘレナ……誰だっけかなぁ」

 カズが来客の少女二人の名前を思い出そうとしていると、廊下の曲がり角からキウイは現れ、その表情は明らかに困っていた。

「あッ! カズにゃん」

「そんなに慌ててどうしたの?」

「カズにゃん暇そうだにゃ」

「まぁ暇と言えばひ…」

「ならちょっと手伝ってほしいにゃ。料理はもう少しで出来るんだけど、広間の支度がまだにゃ。ベロニカメイド長とアキレアは、大切なお客様の所に居て、ミカンもすぐ戻って来るか分からないにゃ」

「メイド不足なの?」

「今日はそうにゃ。だから手伝ってほしいにゃ」

「別にいいけど」

「ありがとにゃ! 一緒に来るにゃ」

 慌てるキウイに引っ張られ、連れて行かれるカズ。
 着いた場所は来客を招いたとき使う、カズも何度も皆で食事をした広間だった。
 罰と称して掃除をさせられた事を、ふとカズは思い出した。
 キウイの指示で食器を各場所に配置したり等をしていると、用事を済ませたミカンが手伝いにやって来た。
 後は二人で大丈夫だからと、カズはミカンに続きを任せて広間を出た。
 すると今度はジルバに呼ばれ、ルータが会っている来客の元へ来るように言われた。
 誰だろうと考えるカズだったが、思い当たる節がないまま来客が居る部屋へと案内された。
 そこでカズは来ていた人物を見て驚いた。
 それは紛れもなく数時間前に城で会った、この国の王だった。
 カズは咄嗟に頭を下げる。

「国王…様」

「昼間振りだね」

「お城では御無礼を」

「公務じゃないからね。堅苦しい挨拶は必要ない。君のことは以前に一度だけ見た事があったんだがね、昼間城で会うまで忘れていた。何度もルータから聞かされていたのに

「それはルマンチーニのやからがした事だと伺ってます。マナキ様が気にすることでは。そうだよねカズさん」

「え、あ、はい」

「私は今回の事で気付かされた。アーティファクトの管理や国の防備にしても、冒険者ギルドの協力や衛兵の在り方をなんとかせねば。平和だったからそれで良い、という訳にはいかず、改革が必要のようだ」

「若輩ではありますが、わたくしも国の為に協力を惜しみません」

「マーガレットには妻や娘達がいつも世話になってる。ルータにはこれからも、愚痴をこぼしに来ると思うが、よろしく頼む」

「私しなどで宜しけばいつでも」

「しっかりしなければ、アイア殿に何を言われるか。カズにも国を支える冒険者として、期待をしているぞ」

「それはありがたいのですが……」

「カズさん。マナキ様がこうおっしゃられてるんだよ」

「何か私に不満でもあるのか?」

「そうではなく、もう少ししたら旅に出るつもりなんです」

「国を出るのか」

「そのつもりです」

「それは初耳だよ。カズさん」

「より良い国にする為に、手伝ってはくれないのか?」

「俺にも一応目的がありますし、それにこれはアイアさんからの提案でもあるので。後日国王様の所に行くと言っていたので、その時にでも聞いてください」

「アイア殿が……分かった。無理を言ってすまない」

「とんでも御座いません」

「それとここで、国王はやめてくれ。マナキで構わない」

「マナキ様…で宜しいのですか?」

「ああそれで構わない。家族とゆっくり過ごすに、城は向かない。どうしても王としての役割があるからね。だからルータには無理を言って、たまに越させてもらっている。王と言われるのは、公務のときだけで十分だ。ルータにも言葉を崩して構わないと言っているんだが」

「私しは商人です。話し方はこの方が慣れておりますので」

 マナキ王とルータは、互いの顔を見て笑う。

「そうだ、カズに一つ言っておくことがある」

「なんでしょう?」

「衛兵司令からジークに話があってね、カズには何かしらの刑罰をあたえるべきだと」

「あれ、俺の罪は無くなったのでは?」

「カズが来る前の話し合いでは、脱獄に対する何らかの刑罰は必要だと衛兵司令は言っていた。しかし元は冤罪から起きた事。衛兵が一貴族の言うことに従い、投獄していたカズに対しての行動はやり過ぎていた事もあり、カズに対する罪は全て無しと決まったのだが」

「衛兵司令一人は、納得しなかったと言うことですか」

「その通りだ。今回の事で衛兵が国に対して不信感を持っては、国の治安を守る為に冒険者ギルドと協力しあう、と言った先程の話しが進まなくなってしまう」

「でしたら衛兵司令を、他の者に変えてはどうですか?」

「そう言うなルータよ。失敗したからと簡単には切り捨てては、国への忠誠が無くなってしまう」

「でしたら貴族区内にも衛兵の拠点を設け、中と外の情報のやり取りをしやすくして、それを取り仕切る一人ということにすれば。降格ではなく、衛兵司令が一人という立場を無くすなんてどうですかね?」

「改革するためには、やはり時間が必要だ。衛兵司令も交えての話し合いをしなければ、今回のような事にまたなりかねない。より良い国をにするのは難しいものだ」

「あの、俺から提案なんですが──」

 このあと言ったカズの提案に、あまり良い顔をしなかったマナキ王だったが、対策の一つとして聞き入れてくれたのだった。
 少し話が長くなってしまっていると、夕食の支度が出来たとジルバがアキレアから聞き、三人が居る部屋へ伝えに入ってきた。
 ルータの案内のもと、マナキ王とカズは夕食の支度が出来ている広間へと移動した。
 既に広間にはマーガレットと二人の子供、来客の三人が席に付いて待っていた。
 カズはそこで来客三人が、王妃とその子供だということを知った。
 場違いだと思うカズだったが、夕食を一緒にとマナキ王から言われては、断ることができなかった。
 護衛として来ているジークを含むロイヤルガードにも、別の部屋に食事が用意されていた。
 正直カズとしては、そちらで食事を取りたかったと思っていたのだった。
 翌日ルータをトラベルスパイダーに会わせるため、カズはこのまま屋敷に泊まることになった。
 マナキ王は翌日に公務がある為、夕食を済ませるとジークと共に城へ戻って行った。
 王妃と二人の子供は、城には戻らずオリーブ・モチヅキ家に泊まっていった。
 レラは子供達四人と一緒に寝ることになったそうだ。
 カズの長い長い一日がようやく終わり、ソファーに横になり就寝した。


 ◇◆◇◆◇


 朝食を済ませた後、マーガレットが改めてカズを王妃『オリピア・オリーブ・ド・リグーリア』に紹介をした。
 王妃オリピアはマーガレットの容態の事は知ってはいたが、立場上と自分が体が弱いのもあり、見舞いに来ることすらできなかったと、当時の事を後悔をしていた。
 しかし一人の冒険者がマーガレットの病気を治し、呪いまでも消し去ったと聞きいて、是非ともお礼がしたいとのことだった。
 呪いを解呪したのは確かにカズだが、病気を治したのは、薬になる花を探していたデイジーとダリアであり、薬を作り上げたのはアキレアだ。
 どうも話が端折はしょられて伝わっているようだった。
 横で聞いていたマーガレットが訂正してくれたので、変に恩を感じられずにすんだのだった。
 しかしながら心を許せ、気楽に接してくれるマーガレットを助けてくれたカズへの感謝は、王妃オリピアにとってはとても重要であった。
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