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三章 王都オリーブ編3 王国に潜むの影

287 久々に寝起きでやらかした

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「大変よカズ! ビワが急に倒れて意識がないの、息もないようなのよ!」

「……はッ! ビワッ!」

 ソファーから飛び起きたカズは周りを見渡し、倒れているビワを見付け抱き上げる。
 驚いたビワはレラの言ったのを聞き、つい息を止めてしまった。

「なんで、急に……」

「レラは大家さんに頼んで、急いで医者を」

 レラに指示をすると、カズはビワの胸に耳を当てた。

「(大家さんだなんて、カズまだ寝ぼけてるの? 息を止めるなんて、ビワもなかなかやる。でもそろそろ)な~んて…」

「レラ早く! 心臓は動いているから、息が止まってから時間は経ってないはずだ。俺は人工呼吸で、息を吹き返すようにしてみる」

「え、なに? じんこきう?」

 焦っているカズはレラの話を遮り、抱き抱えたビワを床に寝かせると、鼻を押えてあごを上げて気道を確保すると、自分の口をビワの口に重ね空気を送り込んだ。
 ビワは唇に当たる暖かい感触を確かめるため、ゆっくりと目を開けた。
 すると間近にはカズの顔があり、次の瞬間、重ねられ口から息を吹き込まれた。
 突然の出来事で、ビワの思考は停止した。
 続けて空気を吹き込もうと、一度ビワから顔を離し息を吸おうとしたとき、カズは目を開けたビワと視線があった。
 10㎝程しか離れていない二人の唇には、透明な唾液の橋が掛かっていた。

「良かった。息を吹き返してくれたんだ。急に倒れたって聞いたから驚いて。どうしたのビワ?」

 突我に帰り現状を理解したビワは、顔を真っ赤にし目を回して気絶してしまった。

「ビワ!」

「何やってるのよカズ」

「何って、ビワが意識を失って息をしてないってレラが言ったから、助けようとしたんじゃな…い……か(あれ、ここリアーデの借家じゃ……?)」

「あれは冗談。カズが寝ぼけてなかなか起きないから、ちょっと驚かそうと思ったの」

「そうだ。マーガレットさんに言われて、部屋で休ませてもらってたんだ。ってことは、俺…今……」

 自分のした事を思い返し、カズは申し訳ない気持ちになりながら、目を回したビワを床からベッドに寝かせた。
 そしてたちの悪い冗談をしたレラを叱った。

「ごめんなさい」

「はぁ……ビワにどうお詫びすれば」

「大丈夫じゃないの」

「気楽に言うな。レラがあんな起こし方するから悪いんだぞ」

「だから謝ったじゃない。あちしだって、あんな事になるとは思わなかったもん。いきなりキスするなんて」

「キス言うな! あれは人工呼吸と言って、息をしてない人に空気を送り込む方法で」

「でもってしたじゃない」

「それは…したけど……(なんでしっかりと確かめなかったんだ俺は)」

「……あれ…私なんでベッドに……」

 カズが自分がした事に後悔していると、気絶していたビワが目を覚ました。
 ベッドから起き上がり、今あった出来事を鮮明に思いだし、またもや赤面するビワ。

「ごめんなさい」

 ビワは声のした方を向くと、両手と頭を床に付けたカズの土下座すがたが目にはいった。

「え…カズさん……どうして床に?」

「カズは寝ぼけて、ビワにぶちゅ~ってしちゃったから、誠意を込めて謝ってるんだよ。だから許してやって」

「反省しろって言っただろ。レラお前があんな起こし方したからだぞ! 一緒にビワに謝れ!」

 反省の色を示さないレラを捕まえて、カズは同じ様に土下座させ、謝罪と自分がやらかした事の説明をさせようとする。

「お話は伺いますから、その様な格好ではなく座ってください」

「それでは謝罪にならないので、このまま説明させてください。お願いします」

 床に押し付けてるカズの手を振り解き、ビワの横に飛んでゆくレラ。

「もうッ、カズ乱暴。あちしだって可愛い女性なのよ」

……謝罪と説明」

 自分を可愛いと言ってるレラの態度に、少しイラッとしたカズは口調が強くなってしまった。

「……はい」

 カズの低い声色を聞きビクッとしたレラは、ビワに対して素直に謝罪と説明をした。
 話を聞いたビワは、レラに言われるままベッドへうつ伏せになり、息を止めた自分にも非があると思い、カズとレラの謝罪を受け入れて許した。

「ごめんねビワ。カズがあんな行動するとは思わなかったの」

「もういいよレラ。カズさんも頭を上げてください」

「本当に申し訳ない……です。本当に……(やっと騒動が終わって気を抜いたらこれか……何やってんだ俺)」

 ビワに謝罪を受け入れてもらったとはいえ、カズはなかなか顔を上げることができなかった。

「だから…もう……カズさん!」

 立ち上がっても頭を下げっぱなしのカズ。
 ビワは両手でカズの顔を挟み、そのままで持ち上げて正面を向けさせる。

「フィワ……?」

 赤面しながらもカズを見て話すビワ。

「もう許しますと言ったんですから、顔を上げていつも通り敬語なんて使わず話して。キスの一度や二度されても、私は平気です。これから何度だって」

「フェ……?」

「何言ってるのビワ? これから会う度にするの?」

「……ち…ちが…違います。わた…私はただ…いつものカズさんに……」

 カズの顔から手を離すと、今度はビワがうつ向いてしまった。

「イチャイチャしてやってらんない。あ、そうだった。フローラがカズを探してた、なんでも急いで来てほしいって。念話で」

「フローラさんが? 上の人達への説明は頼んだんだけど『もしも~しフローラさん』」

「『遅い! 何やってるの』」

「『ね、寝てました』」

「『私に説明を押し付けて、寝てたじゃないでしょ! 今すぐお城に来なさい』」

「『いやいや、王城ですよ。俺なんて』」

「『王命でカズさんを連れて来るよう言われたの。お城の外で待ってるんだから、早く来る』」

「『王命って、冗談でしょ?』」

「『!』」

「『……はい』」

「『走れ!』」

 念話が切れると、カズは急いで城に向かう事にしたのだった。

「ちょっとお城に行ってくる(フローラさん機嫌悪かったなぁ)」

「あちしはここに居るよ」

「ん…ああ、そうして」

 オリーブ・モチヅキ家の屋敷を出たカズは、城へと向かって走って行った。
 倒されたモンスターや破壊された物の撤去と、被害の状況を調べている騎士団を横目に、戦いのあった現場を走り抜けるカズ。
 気が重いまま城の近くまで来ると、そこには見慣れた白い塊が横たわっていた。

「なんで白真がまだ居るんだ?」

「私が頼んで居てもらったの。誰かさんが、説明を丸投げしたから」

 白真フロストドラゴンの影から姿を現したフローラは、明らかに機嫌が悪い表情をしていた。

「すいません。でもそれは、俺の身の潔白…」

「それならもう大丈夫だから。ほら早く行くわよ。カズさんを連れて来ると言ってから、一時間くらいは経っちゃってるんだから。またおばあちゃんに、文句言われちゃうわ」

「おばぁ…なんですか?」

「ほらこっち」

 城の中へ足早に入っていくフローラに、カズは付いてゆく。
 そして謁見の間に入った。

「カズさんを連れてきました」

「失礼しま……す(うわッ)」

「ようやく来たか」

「はぁ~い。カズ」

「あのボロ倉庫以来じゃわい」

「ど、どうも(バルフートさんに、変態ギルマスまで居るよ)」

「カズさん、こちらに」

「あ、はい」

「あちらに御座すのが国王のマナキ様。それであそこにいるのが衛兵司令で、こっちが王都にある、冒険者ギルドの各ギルドマスターよ。見知った方もいるでしょ」

「はい(その見知った人には、会いたくなかった)」

「どれどれ、どんなもんかねぇ」

 カズに近付くアイア。

「フローラさん、こちらの方は?」

「私はアイア。フローラの祖母だよ」

「フローラさんのおばぁ…」

、分かったね。年寄り扱いするんじゃないよ」

「あ……はい(フローラさんの祖母ならハイエルフか。年寄り扱いもなにも、三十代後半くらいにしか見えないから、歳なんて分からないよ。実年齢を知るならステータスを見ないと)」

「こいつぁ……カズあんたじゃないのかい?」

「……召喚者? なんですかそれ(しまった! 《隠蔽》俺のステータスを見られたか)」

「ん? 急に分からなくなったね」

 アイアの発言に冷や汗をかくカズ。

「おばあちゃん……」

「なんだってフローラ」

「アイアさんその話は……」

「ああ…そういうことかい」

 大勢の前でカズのことを話そうとしたアイアを、フローラが話に割って入り阻止した。

「アイア殿。それでどうだった?」

 玉座に座るマナキ王が、アイアにカズのステータスを密かに探らせていた。

「あのフロストドラゴンを従魔にしているのは、どうやら本当のようです。その若さでよくそこまで強くなったもんだ」

「!!」

 白真フロストドラゴンがカズの従魔だと聞いて、フローラに顔が向くカズ。

「私じゃないわ。白真さんが自分で言ったの」

「……白真あいつ

「お陰で下手な言い訳を考えずに、私は済んだわ。それと白真さんを怒らないこと。説明を押し付けたカズさんがいけないのだから」

「……はぃ(フローラさん怒ってる)」

はオリーブ国国王マナキ。冒険者のカズで間違いないか」

「はい」

 マナキ王がカズに話し掛けたことで、全員がカズに注目し、場の緊張感が高まる。
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