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三章 王都オリーブ編3 王国に潜むの影

279 巨大ゴーレムとの決戦 3 追い詰められた元凶

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「フローラさんに魔力を渡しますから、ジークさんの側に」

 カズはフローラの手に触れて魔力を流し注ぎ込んだ。

「カズさんが強いのは知ってるけど、あの素早いゴーレムから、私達全員を守りにながら戦えるの?」

「どういう訳か知らないけど、味方が来ましたから大丈夫です(来るなと言ってあったのに)」

「味方って誰?」

「フローラさんも知ってます。俺はとりあえずロイヤルガードの人達を動ける程度に回復してきます」

 カズは座り込むロイヤルガード達の所に行き、歩ける程度に回復させてジークとフローラの所へと誘導した。
 カズに対して友好的ではないロイヤルガード達だったが、戦いの疲労で歯向かう元気もなく、隊長ジークの所へと素直に歩き出した。(カズが王族を襲撃したと思っているのだから、友好的でないのは当然だ)
 全員が獣形ゴーレムから距離が離れると、遠くの空から極寒の息吹が放たれた。
 それに気付き、寸前のところで避ける獣形ゴーレム。
 辺り一帯の気温が急激に下がり、その冷気に触れた獣形ゴーレムの足一本は、みるみるうちに凍り付いた。
 フローラは魔力感知を暗い夜空に向けると、攻撃をした者の正体を知った。

「この魔力……」

「そういう事なので、ロイヤルガードの人達とジークさんを頼みます」

「分かったわ」

「これだけ離れていれば寒さの影響も少ないと思いまが、寒冷耐性を一応全員に付けときます〈プロテクション〉」

 カズはその場に居る全員に、寒冷耐性を付与した。

「ありがとう」

 突如として獣形ゴーレムの周辺が凍り付いたことで、ジークとロイヤルガードの者達は驚愕していた。

「何が起きた!?」

「少し寒く…いや気のせいか?」

「おれはまだ戦えるぞ」

「おれも戦えます。隊長」

「自分もです」

 回復したとはいえ疲れきって動くのもやっとなのに、意地を張り強がる五人のロイヤルガード。

「ジークさんはともかく、ロイヤルガードの方々を戦えるほど回復したら、無理して突っ込んで行くので却下と、ギルドマスターが言ってます」

「そ、その通りよ。だから貴方達は休みなさい(勝手に私が言ったことにして)」

 皆の元からカズが離れると、獣形ゴーレムを攻撃し者から念話が繋がる。

「『随分と不快なものと戦ってるではないか。そやつがマナを乱していたものだな』」

「『なぜ白真お前が王都に来たんだ?』」

「『あの魔力を感じたら体が勝手に動いておった』」

「『パラサイトスペクターLv8アイツを知ってるのか?』」

「『知らん』」

「『知らないのかよ!』」

「『知らんが、昔しつこく我を追ってきたやからと、似た様な魔力を感じる。とても不快な魔力をな』」

「『昔に似た魔力? それ誰だ?』」

「『う~む。ここまで出かかってるのだが、もう少しのところで思い出せん』」

「『じゃあ思い出したら話してくれ。期待してないけど』」

「『うむ』」

「『とりあえずパラサイトスペクターLv8アイツを倒すのが先だな』」

「『ならば我がこのまま…』」

「『白真がやると被害が広がりそうだから、やらんでいい』」

「『先程のブレスは手加減してやったのだぞ』」

「『手加減って……ここは王都の貴族区で、城の近くなんだぞ』」

「『だから手加減をしたと言うておろう』」

「『あれよりも手加減ができないならブレスは禁止。と言うか、手加減しても被害が出そうだからやっぱり禁止』」

「『ならば一時的に、ここを我が縄張りと…』」

「『テリトリー・クラウドも禁止だから』」

「『なんと!』」

「『第一そっちの方が効果範囲が広いだろ。周りを巻き込み過ぎるんだよ』」

「『弱者ばかりで面倒な場所だ』」

「『白真お前なぁ、言ってることがパラサイトスペクターLv8アイツと同じに聞こえるぞ』」

「奴と同じとは心外だ」

「『なら周囲に迷惑が掛からないような手加減を覚えろよ』」

「面倒だ。そんな場所に我は住まん」

「『こうやって王都に来てお……ん?』」

「どうした」

「あれ、念話…じゃない?」

「すぐ側まで来たのだから、念話を使うことはあるまい」

 カズが隣を見ると、いつの間にか白真が上空から降りてきていた。
 そのままゆっくりと振り返り、ジークとロイヤルガード達をカズは見る。
 ジークとロイヤルガードの五人は、白真フロストドラゴンの姿を見て固まっていた。
 フローラだけは面識があったため、取り乱さずにいた。

「た、隊長……あ、あれって」

「おれ幻覚でも見てるのか?」

「南の雪山に住むフロスト……ドラゴンだよ…なあ?」

「こんな状態なのに、今度はフロストドラゴン……無理だ。何もできず確実に死ぬ」

「お、落ち着けお前達。フローラ早く回復を。カズが危険だ」

「やめてください隊長」

「そうです。こんな状態で、あんなのを相手にするなんて」

「ダメだ喰われる」

「フローラ早くしてくれ。オレはいいから、コイツらだけでも城へ逃がすんだ」

「何を言ってるんですか隊長」

「おれ達はいいです。隊長がフローラ様と逃げてください」

「お前達……」

 こんな危機迫った状況なのだからだろうか、ジークとロイヤルガードの者達との間に何か熱いものが生まれていた。
 それを見ていたフローラが、冷静な心持ちで口を開く。

「一先ず皆を回復するわ。走れるようになったらお城に向かって」

「何を言ってるんだフローラ。カズを見捨てて逃げるのか!」

「助けてはもらいましたが、カズアイツは罪人です」

「そうですよ隊長」

「早く城へ避難を」

「〈ヒーリング〉……これで走れるでしょ。早く行って(まったく呆れるわ。今までカズさんに守ってもらっておきながら)」

 フローラはジークとロイヤルガード達を回復した。

「お前達の言い分は分かるが、オレはカズを連れて行く。捕まっていたのも誤認の可能性が高そうだからな」

「ジーク、貴方もお城に避難するのよ。ここに居ると邪魔になるんだから早く。私はイキシアを連れていかないとならないんだから」

「しかしだ…」

「いいから行くの!」

「……わ、分かった。だったらオレがイキシアを背負って行こう。皆は先に城へ向かえ。オレ達もすぐに行く」

「分かりました」

「隊長の指示に従います」

「「了解です」」

「先に戻り、防備してる者達に報告します」

 ロイヤルガードの五人は、ジークとフローラを残して先に城へと戻って行った。

「カズは本当に大丈夫なのか?」

「大丈夫よ。だから早くイキシアを」

 ジークは寝かされているイキシアを背負うと、先にこの場を離れたロイヤルガード達の後を追い、フローラと共に城に向かい走り出す。
 足の一本のが凍り付き、動きが止まっている獣形ゴーレムの近くに行くカズと白真。

「キサマハイッタイナンダ。ソレニナゼ、ソイツガココニ居ル」

「なんで居るかだってさ」

「我か。うぬと同じ不快な魔力に覚えがあってな。その存在を確かめしに来た」

「キサマ二会ッタ事ナドナイ。ナゼ邪魔ヲスル」

「言うたであろう。その魔力が不快なのだ。それだけで十分」

「フザケルナ! モウ少シデコノ国ノ者達ヲ」

「ふざけてるのはお前だろ。散々好き勝手やりやがって、なんで俺があんな目に合わなきゃならないんだ」

「キサマノ存在ガ邪魔ダッタカラダ。現二コウシテ、今ココニ」

「何かは知らんが、我らが悪者扱いではないか」

「白真の言い分だと、そうとられるな。気に食わないから倒しに来たって」

「ならばカズは、奴をこのまま放置するのか」

「するわけないだろ。俺はコイツのせいで色々と酷い目にあわされたんだから(でも、ビワとの暮らしは良かったな)」

「オノレ〈ダークシャ…」

「フン」

 パラサイトスペクターLv8が闇魔法を放とうとしたとき、白真が尻尾を降り獣形ゴーレムを弾き跳ばす。
 凍り付いた獣形ゴーレムの足は根本から折れ、尻尾で叩かれた部分は大きく破損した。

「一つ聞く。服従の刻印が破壊されたんだ、皆の記憶は元に戻ったんだろうな」

「知ルカ。知ッテイタトシテモ教エルモノカ。クソ、ナゼガ溜マラナインダ」

「やっぱり気付いてなかったみたいだな」

「ナ二……?」

「イキシアに城から盗ませた宝玉は、少し純度の高いだけの水晶(宝玉がなんなのかは俺は知らないけど、盗んだのはたぶん偽物)」

「バカナ! 玉座二アッタ物ヲ持ッテ来サセタハズダ」

「ハズだとか言われてもな。まあどっちにしても、アソートエンジンアーティファクトはもう必要ないんだから、返してもらうぞ」

「オノレオノレオノレ。サセヌサセヌサセヌ。ナラバ全テノ魔力ヲ使イ、アソートエンジンコアヲ暴走サセテヤル。キサマラモロトモ、全テミチヅレダ!」

 パラサイトスペクターLv8は、獣形ゴーレムのコアに使われてるアソートエンジンアーティファクトを暴走させ爆発させるつもりだ。

「ええい面倒だ。我がブレスで」

「ヤッテミロ。ソノ衝撃デ爆発スルダケダ」

「カズが話をしているから、面倒になったのだぞ。とっとと倒してしまえばよかったものの」

「俺のせいかよ」

「グゲガガ。邪魔ヲセシ者メ、恐怖シテ死ヌガイイ」

 獣形ゴーレムの体が崩れだし、コアに使われていたアーティファクトの姿があらわになる。
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