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三章 王都オリーブ編3 王国に潜むの影

278 巨大ゴーレムとの決戦 2 闇を祓う光の魔法

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「なあフローラ。ゴーレムあれを半壊させるくらいの強力な魔法はないのか?」

「簡単に言ってくれますね。あんな大きな特殊ゴーレムを半壊させる魔法なんて、詠唱なしで撃つのは無理よ」

「詠唱する時間を稼げば出来るんだな」

「ええ」

「ならオレが時間を稼ぐからやってくれ」

「盛大に殴り飛ばされた人が何を言ってるのよ」

「……」

「それに撃てたとしても一回が限度ね。魔力消費も激しいうえに、既に魔力をかなり使ってしまってるから」

「それでも効果がありそうならやってくれないか?」

「気が進まないわ。あの修復の早さ見たでしょ。私がやらないのはそのため。魔力の無駄になるから」

「ならどうする。オレにあのゴーレムを真っ二つにできるような攻撃は…」

「カズさんなら詠唱なんてしなくても、ゴーレムあれを破壊する威力の魔法を使えるでしょ」

「……!? なに! 本当かカズ?」

「無理です(ギルマスが俺に振るの。ジークさん驚いてるじゃん)」

「無理と言ってるぞ」

「私達や周辺に被害が出ると思ってるのよ。別に一撃じゃなくても、修復する暇を与えなければいいの。出来るでしょ」

「まぁ」

 渋々了承するカズ。

「やり方はカズさんにまかせるから」

「分かりました」

「なら狙いは頭部にある服従の刻印アイテムだ」

「私はジークのサポートを〈身体強化〉〈速度上昇〉それと〈エアーアーマー〉これなら動きを阻害しないで身を守れるわ。でもあのゴーレム相手だと、気休め程度でしかないけど」

「無いよりはましさ。しかしこんなことが出来るなら、最初っからやってくれ」

「ジークが勝手に突っ込んでいったんでしょ。それに冷静になれって、私に言った人が熱くなってどうするの」

「確かに突っ走ったのはオレだが……」

「そろそろ閉じ込めた石壁から出てきます。二人共用意はいいですか?」

「フローラの言ったことが本当なら、今はカズの魔法頼みだ」

「俺が渡したS・Vソードは、あと数回を振るえるかってとこですか」

「ゴーレムの攻撃を受け止めたときに欠けてしまったようだ。すまん」

「別にいいですよ。ゴーレムあれを倒すためですから」

「次こそは頭部を破壊してみせる」

「近付けば洗脳しようとしてくるかも知れないから、接近するジークは気を付けて」

「了解だ」

 三人が話してる間に、囲んでいる石壁を破壊し出てくるマナストーンゴーレム。

「チョロチョロトウットシイ連中ダ」

「これ以上城には近付けさせん」

「回復ナドシタトコロデ、苦シミガ増エルダケ。キサマラハ後々面倒ニナラナイヨウ、ココデ殺シテオク」

「殺れるものならやってみろ。コアと本体の場所は分かってるんだ」

「グゲガガ。同ジ場所ニアルト思ウノカ」

「なんだと」

「大丈夫よジーク。本体の場所なら私にも分かるから。気持ち悪い魔力反応が左肩辺りに移ってる」

「よし。行くぞカズ!」

「とりあえず攻撃しやすいように、もう一度穴を作って落とします〈アースホール〉」

 マナストーンゴーレムの足場に、先程よりも大きく深い穴を作った。

「何度モ同ジテヲクウカ」

 飛び上がり回避するマナストーンゴーレム。

「逃がすか〈アースハンド〉」

 地面が盛り上がり巨大な腕が出現し、マナストーンゴーレムの足を掴む。

「コシャク、足ナド不要。スグ元ニ戻セル」

 掴まれた足を切り離し、アースハンドから逃れるマナストーンゴーレム。

「落ちろ〈グラヴィティ〉」

「グゲ?」

 急激に地面へと引き寄せられ、穴へと落下するマナストーンゴーレム。
 スドーンと大きな地響きと共に動きを止め、肩の辺りまで穴に埋まった。

「ジーク走って!」

「もう走ってる」

「〈アースハンド〉〈ストーンプレス〉」

 大穴の内部に巨大な土の手を作りマナストーンゴーレムを掴み、更に二枚の石壁で挟み拘束する。

「ゴミクズ共メ〈ダークネスゾーン〉」

「何だ! 闇が広が…視界が」

 大穴を中心に広い範囲が完全な暗闇に包まれ、一切の光源も気配すら感じなくなる。

「『全てを覆い隠す闇を退け、我らを暗影より解き放ち光と安らぎを与えよ』〈聖なる法円ホーリーサークル〉」

 今度は大穴を中心に広がっていた暗闇に、暖かい光が差し辺りを照す。

「グァガァァァ! コレホドノヒカリ魔法ヲ使エル者ガ」

 マナストーンゴーレムのから姿を現していたパラサイトスペクターLv8は、苦しみながら憑依よりしろとしていた服従の刻印に戻った。

「そこに移動していたか!」

 それを見たジークが、マナストーンゴーレムの一本の腕に向かって、全力で攻撃を仕掛ける。

「サセルカ」

「それはこちらも同じだ〈アースハンド〉」

 新たに腕を生やしジークの攻撃を止めようとするが、カズもまた巨大な土の手を作り出し、マナストーンゴーレムの腕を掴み止める。

「ナラバキサマヲ『ブレインウォッシュ』」

 パラサイトスペクターLv8がジークに対し服従の刻印で洗脳しようとするが、フローラの魔法で速度を増したジークの攻撃の方がそれよりも早かった。
 ジークが振るった剣は石の腕を斬り、内部に隠されている服従の刻印本体に届く。

「浅いか」

「オノレハナレロッ! 〈ストーンブレット〉」

「この程度」

 飛んでくる石つぶてを剣で弾き防御するジーク。
 フローラが使ったエアーアーマーに守られてダメージは殆ど無いが、露出された服従の刻印本体から少し離される。

「コノママデハマズイ。ナラバイマココデ…」

「させるかッ!」

 ジークは服従の刻印本体目掛けて、超振動させたS・Vスーパーヴァイブレーションソードを投げる。
 切断した腕は修復を始めており、投げられたS・Vスーパーヴァイブレーションソードの勢いを弱め、服従の刻印本体に刺さる前に止まる。

「まだだ! 《バーニング・スラッシュ》」

 腰に下げる自らの剣を抜き残りの魔力を注ぎ込み、スキルを使い全力で剣を振り下ろすジーク。
 修復をするよりも早く、服従の刻印本体ごとマナストーンゴーレムの腕を完全に切り落とした。

「オノレオノレ。コウナレバ王ノ居ル城モロトモ」

 20m以上あるマナストーンゴーレムから一部が分離をして、3m程の四足歩行の獣形ゴーレムになった。
 すると大穴の中で拘束されているマナストーンゴーレムは、急にバラバラと崩れだした。
 分離をした獣形ゴーレムは、王城目指して移動を始める。
 ジークは魔力を消費し過ぎて、動くこともままならなかった。

「オレは大丈夫だ。あのゴーレムを」

「分かってるわよ〈プラントバインド〉」

 フローラが蔓でゴーレムを拘束しようとするが、動きが早く捕らえることができない。

「私も魔力を使い過ぎたわ。魔法の精度が」

「フローラ様」

「ジーク隊長無事ですか」

「加勢に来ました」

 ホーリーサークルで明るくなった場所に向かっていたロイヤルガード五人がジーク達の居る場所にたった今到着した。

「あとは我々が相手をします。隊長はこれを」

 ロイヤルガードの一人がジークに魔力回復薬を渡した。

「この程度のゴーレムなら、オレらでも」

「行くぞ」

「うおぉぉ」

「待て! お前達だけでは」

 ジークの忠告を聞かずに、ロイヤルガード達は獣形ゴーレムに向かって攻撃を仕掛ける。 

「ヨワッタトハイエ、キサマラノヨウナ者ニヤラレハシナイ」

「そんなの分かってるさ」

「オレらでも少しは時間が稼げる」

「隊長は今の内に回復を」

「ぐわぁ」

「弱ってるはずなのに、こんなに強いのか!」

 威勢よく駆け付けたロイヤルガードだったが、時間稼ぎどころか足止めをするのも難しかしく、獣形ゴーレムの動きにも付いていけなかった。
 魔力回復薬を飲んだジークだが、気を失いそうなほど魔力を使用していたため、回復してもすぐには動けなかった。

「〈ホーリーアロー〉」

 光の矢を放ち、ロイヤルガードから獣形ゴーレムを遠ざけるフローラ。

「フローラ様」

「全員離れて。貴方達も先程のモンスターと戦って疲れているんでしょ。それでは戦えないわ」

「光ノ魔法ハ厄介ダ。ヨワッタアイツヲ先ニ殺シテヤル。邪魔ダ自分自身ヲ相手ニシテイロ〈ダークシャドー〉」

 ロイヤルガードの足元から影が消え、その人物の前に現れ襲いかかる。

「うわっ!」

「なんだこいつ」

「おれ達自身の影か!?」

 ロイヤルガードの相手を魔法で作り出した影に戦わせ、獣形ゴーレムは肩で息をするフローラ狙い走り出す。

「〈ライトニングボルト〉」

 カズは雷撃を数本放ち、ロイヤルガード達の影と獣形ゴーレムを攻撃して、疲れを見せているフローラに駆け寄る。
 ロイヤルガード達の影は雷撃によって消滅し、ただの影に戻った。
 直撃を受けた獣形ゴーレムは、カズから距離を取り警戒をする。

「大丈夫ですか」

「な、何をしてたのよ!」

「腑に落ちない点があって、分離した後の切り捨てたゴーレムを少し調べてたんです」

「そんなの後にできなかったの!」

 魔力を多く消費して苛立つフローラ。

「す、すいません(さっきの光属性魔法ホーリーサークルでかなり魔力を消費してるようだな)」

「駆け付けたロイヤルガードの人達が自分を犠牲にして、私達の魔力を回復する時間を稼ごうとしてくれていたのよ。それなのに一番戦えるカズさんが……もうッ!」

 フローラが話すロイヤルガード達は、自分の影と戦い疲れると、座り込むほどに疲弊していた。
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