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三章 王都オリーブ編3 王国に潜むの影

277 巨大ゴーレムとの決戦 1 苦戦

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 フローラはカズとジークの横に並び戦闘体勢をとる。

「大丈夫かフローラ?」

「フローラさん、無理しなくても(あれはトレカのユグドラシルの枝杖。持ってきてたんだ)」

「やります! 私、凄く怒ってます!!」

「よし。オレが斬り込むから、フローラは援護を。カズはゴーレムのコアを探してくれ」

「分かり…」

「〈プラントバインド〉!」

 フローラがゴーレムの動きを封じるため、蔓でゴーレムの足を縛りあげる。
 ユグドラシルの枝杖の効果で、魔法の威力がいつもより上昇している。

「怒るのは分かるが、少しは冷静になれフローラ(流石はギルドマスターだ。魔法の威力が段違いだ)」

 フローラに注意をすると、剣を抜き走り出すジーク。

「言われなくても分かってます〈アイスジャベリン〉」

 フローラから放たれた氷の槍は、マナストーンゴーレムの外装を削り破壊する。
 が、みるみるうちに修復され、すぐに元に戻ってしまう。

「直るのが早い。これは厄介だわ」

「なら最初から飛ばしていく。オレも結構イラついてるんだ。貴族区この場所で好き勝手にやってくれがって《バーニング・スラッシュ》」

 ジークが武器スキルを使用すると、剣の刃が赤白くなって高熱を帯び、蔓で拘束されているマナストーンゴーレムの脚部を斬る。
 高熱を帯びた剣は、マナストーンゴーレムの片足を知り落とした。

「火の魔素を多く含んだ『炎魔鉄えんまてつ』で作られたオレの剣なら、相手がアイアンゴーレムだったとしても斬ることが出来る。土と石で出来ただけのゴーレムなんて……マジかよ」

 片足を切断されても体勢が崩れることもなく、斬られた部分に土と石が集まり即座に修復する。

「内部まで斬れたとしても、生物じゃないからダメージが低い。これだとスキルを使っても魔力の減りが多いだけか。しかしただ斬りかかるだけだと、かすり傷程度だけしか付けられん」

 斬られた片足を修復しつつ、二本の腕を伸ばし掴みかかろうとするマナストーンゴーレム。
 ジークは距離を取り、間合いから離れ回避する。

「ムダムダ。オ前ラノ攻撃ナンカデマナストーンゴーレムコイツヲ倒セルモノカ」

 マナストーンゴーレムの目が赤黒く灯り、口を開いて喋りだすその声は、パラサイトスペクターLv8のそれだった。
 蔓を引きちぎり、拘束された足が動き歩き出す。

「コノ服従の刻印アイテムアソートエンジンアーティファクトト同期シ発動スルマデアトスコシ。セッカクノゴーレムダ、コノママ城ニ行キ王ヲ始末シテヤロウ」

「なんだとッ!」

「国ノ全テノ者ヲ洗脳スレバ、王ナド不要。イヤ、今度ハ王ヲ操ルトシヨウカ。グゲガガガッ」

「そんなことさせるものかッ!」

「そうですとも〈ストーンウォール〉〈プラントウォール〉」

 石の壁と蔓の壁でマナストーンゴーレムを囲み、動きを封じようとするフローラ。
 四本の腕を振り回し、作った壁を容易く破壊するマナストーンゴーレム。

「あのゴーレムを閉じ込める壁を作るには、強度が足りないわ」

「オレが両足を切断する。修復する前になんとかしてくれ」

「分かったわ。やってみる」

「両足を切断するには、魔力をかなり使うことになるが仕方あるまい」

「ジークさん。これを」

 カズが1枚のトレカを投げ、ジークがそれを受け取る。

「カード?」

「魔力を込めれば、書かれてる絵の剣が実体化します」

 ジークが魔力を込めると、トレカが消え一本の剣が現れた。

「ただの剣じゃないか。こんなのでゴーレムを斬れるのか?」

「魔力を流すと刃の部分が高速で振動し、固いものでも簡単に切断出来ます。ジークさんがスキルを使うより、魔力消費は少ないはずです」

 カズはさっきまで自分が使っていたS・Vスーパーヴァイブーションソードのトレカをジークに渡したのだった。

「やるだけやってみるか」

 破壊した石壁を投げて攻撃をするマナストーンゴーレム。
 それを避けながらS・Vスーパーヴァイブレーションソードに魔力を流し、ジークはマナストーンゴーレムの両足を狙い攻撃を仕掛ける。
 ジークがS・Vスーパーヴァイブレーションソードを振るうと両足は見事に切断され、マナストーンゴーレムはバランスを崩し前のめりなるが、二本の腕で支え倒れるまでにはならなかった。 

「こいつは良い」

「〈クイックフリーズ〉」

 マナストーンゴーレムの両足が凍り、修復が遅れて前のめりにのままになる。

「よし! このまま足を切断して、ここに釘付けにするぞ」

「ウットウシイ連中ダ。アソートエンジンアーティファクトノ発動ガ遅レルガ、先ニコイツラヲ片付ケルカ〈ストーンレイン〉」

 マナストーンゴーレムが二本の腕を上に掲げると、1m程の石が多く出現して、三人に向かって降り注ぐ。

「〈ストーンウォール〉ジークさん早くこちらに」

 厚い石壁を作り出し、マナストーンゴーレムが降らせている大石から身を守るフローラとジーク。

「ストーンレインってのは、こんなデカイ石を降らせる魔法なのか?」

「大きくても30㎝程度のはずよ。かなり魔法が強化されてるわ」

「破壊した場所は即座に修復するは、魔法は強化してくるはで、どう攻めればいいんだ」

「一撃であの巨体を破壊するか、急所のコアを壊すしか」

「カズがアーティファクトコアを、体内のどこにあるか見つけるのを待つしかないのか」

 万が一の事を考えて訓練をしてきたが、やっていたことが生ぬるかったと反省するジーク。

「〈アースホール〉」

 カズが魔法でマナストーンゴーレムの足元に大穴を空けると、ズドンと落ち半分までが穴に埋まった。
 この攻撃でストーンレインの効果が解け、降り注ぐ大石が止まった。

「なんとか石壁が壊れずにすんだようだな」

「ジークはまだ行けそう? 私はもう半分も魔力を使ってしまったわ。冷静に慣れなかった結果ね。まだまだ私も未熟」

「ギルドマスターが謙虚なことを言うじゃないか」

「ゴーレムを倒す相談ですか?」

 二人の元にカズが来る。

「カズ!」

「急所のアーティファクトコアがどこかにあるか分かったの?」

「体の中心辺りにコアのアソートエンジンアーティファクトが、頭部にパラサイトスペクターLv8服従の刻印アイテムの反応があります」

「できればアーティファクトは壊さずに回収したい」

「それは分かってるけど」

「国の重要物だからな。それを守るのもオレの使命だ。だから狙いは頭部のアイテムとパラサイトスペクターLv8だ」

 一人石壁から飛び出たジークは、穴から這い上がろうとするマナストーンゴーレムを駆け上がり、頭部目掛けて剣を振るう。

「ソウ易々ト狙ワセルカ」

 腕一本でジークの剣撃を受けるマナストーンゴーレムだが、超振動する剣で太い石の腕はバッサリと斬り落とされる。

「このまま頭部を!」

「バカメ」

「しまッ! ぐぁッ!!」

 マナストーンゴーレムの背中から新たな腕が生えると、死角から石の巨大な拳が襲いかかり、ジークは殴り飛ばされる。
 ギリギリで体勢を変え剣で防御したが、空中では殆ど身動きがとれず、50m以上飛ばされて地面を転がるジーク。
 致命傷にはならなかったが、体への衝撃と剣を持っていた腕が痺れ、すぐには立ち上がれなかった。
 フローラが飛ばされたジークに駆け寄り〈ヒーリング〉を使い回復させる。
 ジークを回復しているフローラ目掛けて、斬られた石の腕を投げ飛ばすマナストーンゴーレム。

「〈バリア・フィールド〉」

 投げ飛ばされた石の腕は、光の壁に弾かれ倒れるジークとフローラに当たることはなかった。

「ナンダアレハ?」

「教えるわけないだろ〈ストーンサークル〉」

 石壁を作り出し、穴から出たマナストーンゴーレムを囲み閉じ込める。

「フローラさん。ジークさんは?」

「だ、大丈夫だ。腕が四本だけだと思い油断した。すまない助かったよフローラ」

「ゴーレムは作り出されたもの。人型というだけで、腕に決まった本数なんてないのよ」

「面目ない。オレも平和ボケしてたようだな。少し腕に痺れを感じるが、すぐに治まるだろ」

「大したことなくて良かった。時間稼ぎも長くは持たないようですね」

 囲む石壁に亀裂が生じ、出てこようと暴れるマナストーンゴーレム。
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