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三章 王都オリーブ編3 王国に潜むの影

275 城への潜入者

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 カズはフローラと別れたあとの事を手短に話した。
 その場で一緒になって聞いていたロイヤルガードの三人は、地中にあるダンジョンの存在とルマンチーニのことを聞いて驚愕していた。

「この下にダンジョン……? ここは王都の中心部、王の住まう所だぞ」

「あり得ない。それにルマンチーニ卿がモンスターを……まさか」

「フローラ様はダンジョンの存在を御存知ですか?」

「ええ。私が王都に来る前なので詳しいことは知りませんが、ダンジョンがあったということは知っています」

「ところでフローラさんの方はどうでしたか? イキ…」

「残念だけど、まだ見つけられてないわ」

 食いぎみで返事をするフローラ。

「そうですか(まだイキシアの名前は出してないのか)」

 静かな城内から数人の走る足音が、微かにだかカズやフローラ達の居る場所に聞こえてきた。
 走る足音は徐々に大きくなり、一緒に居るロイヤルガードの三人にもハッキリと聞こえた。
 五人は足音の聞こえる方向を見ていると、フードとマントで姿を隠した人物と、それを追うジーク率いるロイヤルガード数人が視界に入ってきた。

「ジーク隊長!」

「そいつが潜入者だ。逃がすな」

 フローラと共に城外を防備していたロイヤルガード三人と、ジーク率いるロイヤルフード五人でフードとマントで姿を隠した人物を挟み囲んだ。

「ジーク隊長。王は御無事ですか?」

「大丈夫だ。そいつの狙いは、玉座の宝玉だったようだ」

「城に忍び込んだのは宝玉を狙ってのこと」

「ただの盗っ人だったのか」

「もう逃げられんぞ。大人しく宝玉を返すんだ」

「それは出来ないわね」

 囲まれた人物は、ゆっくりも被っていたフードを下ろして顔を見せた。

「……イキシア」

「久しぶりねフローラ」

「ギルドマスターの知り合いですか?」

「その者は第2ギルドのサブ・マスターだ」

「「「なッ」」」

 ジークの発言に、驚くロイヤルガードの面々。

「冒険者ギルドのサブ・マスターが、王城に潜入して宝玉を盗んだだと」

「冒険者ギルドは国と敵対するのか」

 事情を知るジーク以外のロイヤルガードは、動揺を隠しきれなかった。

「皆待て。そのサブ・マスターも洗脳され操られてると聞いている。冒険者ギルドが国と敵対しようとしてるわけではない」

「しかしジーク隊長それが本当かどうかなんて」

「そうです」

「それはオレが証明します」

 突如としてそこへ現れたのは、第3ギルドマスターのフリートと、トリモルガ家の次期当主のドセトナだった。

「フリートがドセトナを連れて来たのか」

「事情は後程説明します」

「お久しぶりです。ジーク隊長」

「ルマンチーニ卿が今回の元凶と聞いたが本当か?」

「……はい」

「そうか……全て片付いたら、フリートと共に話を聞かせてもらうぞ」

「分かってます」

「ならこれからの対処法は分かるか?」

「洗脳されている彼女が持っている宝玉を、父…ルマンチーニ卿に渡さないようにすることです。そうしないと最悪、国中の者が洗脳されてしまう可能性が」

「なに!」

「あらあらそれを言っちゃダメでしょ。あの方の御子息なら、これから起きる事を喜ばないと」

「ふざけるなッ! あれは父に取り付いてるものの仕業だ」

「怒っちゃって。ああなったのは、貴方があれを見つけたからでしょ」

「く……」

「さてと、これだけの数を相手に逃げ延びるのは大変ね。ここが使い時かしら」

「イキシアもうやめて。正気を取り戻して」

「ごめんなさいフローラ。でもこれがうまくいけば、前みたいに一緒に居られるわ。それと、ロイヤルガードあんたらの相手はコイツら。召喚サモン

 イキシアはカードを取り出し、魔力を込めてモンスターを召喚する。
 カードが消滅すると同時にモンスターが出現した。
 出現したモンスターは甲羅が固く打撃に強いデザートクラブが二体と、ストーンワームとサンドワームが二体ずつ、どれも砂漠に生息するモンスターだ。

「怯むな。落ち着いて戦えば問題ない」

「本命はこれから」

 イキシアは2個の水晶を地面に頬ると、右手首に嵌めてる腕輪に魔力を注ぎ込んだ。
 すると地面が盛り上がり、水晶を中心にして土や石で形成されたゴーレムが二体現れた。
 イキシアの使ったアイテムは、カズが砂漠のダンジョンで見つけた『ゴーレム生成の腕輪』だった。

「ゴーレムだと!」

「どうして貴女がそれを!?」

「ごめんねフローラ。ちょっと借りただけだから。全てうまく行ったら返すわ。こっちの杖も」

「それは一緒にしまってあった『砂上の指揮杖』」

「これのお陰で砂漠のモンスターを集めるのは楽だったのよ。その成果は見ての通り。ただ肝心のミスリルが無かったんだけど、どこにやったの? あれがあれば、ワタシがこんなこそ泥のようなことをしなくてよかったのに」

「ミスリルだけは安全な所に預けてあるのよ」

「ふ~ん、まあいいわ。早く皆もワタシみたいになってもらわないと。あなたモンスター達、ワタシが逃げるまで時間を稼ぎなさい。そこのは殺しても構わないわ」

「なに、カズだと!?」

「以前に王の馬車を襲撃した者だろ」

「しかし奴は今、衛兵本部で拘束されてると聞いたぞ」

「衛兵なんて役に立たないからよ。だから簡単に脱獄されるんでしょ。ほらどうするの? ワタシを追うのか、それとも王を襲ったカズそいつを捕まえるのかしら?」

 モンスターにロイヤルガードの隙を作らせて、イキシアはその場から逃走する。

「ジーク隊長。我々はどうしたら」

「お前達はモンスターに集中しろ」

「ボクも加勢します」

「頼むぞフリート」

「私はイキシアを追います」

「オレも行く。ここは皆に任せるぞ。ドセトナは付いてこい」

「はい」

「俺も行かないと」

「待って。カズさんなら私達の居場所が分かるでしょ。だからモンスターを倒してか来て。脱獄した事実は変えられないけど、敵ではないと皆に示さないと」

「いやしかし、ルマンチーニに取り憑いてるパラサイトスペクターLv8のステータスはかなり高かったですし…」

「お願い。それに洗脳されてるとはいえ、イキシア彼女が召喚したモンスターで、これ以上人を傷つけたくないの」

「……分かりました。すぐに片付けて後を追い掛けます」

「ありがとう」

 フローラとジークとドセトナは、イキシアを追い掛ける。
 地中を出入りして、不規則な動きでロイヤルガードを翻弄するサンドワームとストーンワーム。
 デザートクラブの甲羅の固さに、最初は困惑した様子だったロイヤルガードだが、次第に落ち着き対処できるようになる。
 ただ問題はゴーレムの方であった。
 土と石で作られたゴーレムは、破壊されても地中から土や石を集め、壊れた箇所をすぐに修復してしまう。
 体内のどこかに存在する水晶コアを壊さなければ、どれだけ外装を破壊しようと意味をなさない。
 地中にある土や石と、水晶コアの魔力で何度でも修復してしまう。
 水晶コアの魔力が尽きるまで破壊し続ければいいのだが、それは時間が掛かり過ぎる。
 まさにイキシアの思うつぼだ。
 さすがのフリートでも、水晶コアの場所が分からない二体のゴーレム相手には苦戦をしていた。
 ステータスが相手より高かろうと、その時の状況や場所によってはすんなり勝つことは難しい。
 しかもフリートはギルドマスターとなってから戦闘する機会は殆どなく、勘が戻るのに少し時間が必要だった。
 兄ジークが懸念していたことが、見事に当たってしまった。

「フリートさん魔力感知は?」

「出来はするが、ゴーレムの攻撃を避けながら体内を動く水晶コアを探し破壊するのは」

「なら俺が動きを止めますから、一撃で破壊してください」

「どうやって体内を動き回る水晶コアを?」

「あそこでバラバラになってるストーンワームイーターモンスターと同じ様にするだけです」

「凍らせるのか」

「ええ〈ウォータージェット〉」

 大量の水を土が吸収して体が重くなり、動きが鈍くなるゴーレム。
 カズはゴーレムの背後に回り込み、至近距離から氷結魔法を放つ。

「〈フリーズ〉これで内部まですぐに凍るだろ」

 水で濡れたゴーレムの体は、みるみる凍っていく。
 それにより内部で動きを止めた水晶コア目掛けて、フリートが剣を突き刺し一撃で破壊する。
 媒体となった水晶コアが破壊されたことにより、二体のゴーレムは動きを止めた。
 ただ凍り付いているため、崩れることはなかった。
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