人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ

文字の大きさ
上 下
284 / 807
三章 王都オリーブ編3 王国に潜むの影

273 油断大敵

しおりを挟む
 フローラと共に居る騎士団の若者二人は、一瞬青白く光った事で、カズが空中で戦ってることに気付いた。

「あれは…雷撃……?」

「まさか!? ギルドマスター今のはもしや?」

 騎士団の若者二人は驚愕してフローラ尋ねた。

「精霊がお怒りかしらね」

 闇夜の空を見上げ、冗談めかして話すフローラ。
 その横顔を見て、顔に熱を帯びる騎士団の若者。

「レッドウルフの牙に毒があったのかしら? 私の判断ミスね。夜明けまでまだ少し時間もあるから、ここで私が治療するわね」

「い、いえ。だ、大丈夫です」

 近寄るフローラを見て、騎士団の若者は顔を真っ赤にして緊張する。

「大丈夫? 顔が赤いわね。熱が上がってるみたい。これは解毒薬だから飲んで。苦味は少ないから(カズさんが調合した物は、苦味が少ないのよね)」

「あ、は…はい……とても甘いです」

「……? ことあとは他の方々騎士団と合流して、倒したモンスターの処理と被害の確認をお願いしていいかしら?」

「は……はい」

「了解しました」

 フローラに傷を治療してもらった騎士団の若者は、完全に心を奪われていた。
 そこにオーシャンバットを倒したカズは、三人の所に戻った。

「飛べたのね」

「ぁ……ま、まぁ少しだけ(そういえば、飛べるの言ってなかった)」

「彼らに見えたのは一瞬だけよ」

「一瞬……? ああ(ライトニングボルトを使った時か。一瞬ならまぁ別にいいか)」

「では後の処理をお願いします。行きましょう」

「ギルドマスターはどちらへ?」

 何も言わず微笑んだフローラはカズと共に騎士団の二人と別れ、レンガ造りのあった建物の方へと歩いて行く。
 
「イキシアはあそこルマンチーニの屋敷に居るのね」

「そう思ったんですが(マップの表示は殆ど動かないから、これはおそらく使用人だ。だとすると……)」

「イキシアは居ないの?」

 カズは【マップ】の表示される範囲を広くした。
 すると貴族区の中心部に向かってる動く三つの反応を見つけた。
 人とモンスターと赤黒いマークが同じ場所に表示されており、これがそうだとカズは確信した。

「見つけたと思います。反応は三つ、ここから北の方に向かって移動してます」

「北……その方向には王城が。イキシアは国王を襲うつもりなの!?」

「それは俺にも……あッ」

 表示されていた三つの反応は二手に別れた。
 人の表示はそのまま移動し、赤黒いマークとモンスターは別方向へと進路を変えた。

「どうしたの?」

「二手に別れました。方向を変えずに移動しているのがイキシアだとすると、一人で王城に行くつもりらしいです。もう片方はおそらくルマンチーニパラサイトスペクターLv8とモンスター(どこに向かってるんだ?)」

「イキシア……私は王城に向かうから」

「俺はもう一方をですね」

 街灯の照らす明かりから外れ、カズの指示した方向へとフローラと共に走り出す。

「ねぇカズさん。イキシア達もこの辺りを通って行ったのよね」

「そのはずですが」

「だったら変よ」

 フローラは走りながら〈ライト〉を使い、光の玉で辺り照らし確認した。

「通った痕跡ですか」

「ええ。イキシアだけならともかく、モンスターが一緒なんでしょ。だったら足跡くらいはあっていいはず」

「確かに(移動してる表示を見ても、飛んでいるとも思えなかった)」

 考えながら走っていると、フローラが出した光の玉が地面に空いた大きな穴を照らしだした。

「どうやら地中を移動していたようね。通った痕跡がないわけよ。これなら誰にも見られないで移動できるわ」

「ここは……二手に別れた辺りです」

「カズさんはモンスターの方を。私は……」

「フローラさん?」

「なんでもないわ。急ぎましょう」

 フローラはそのまま王城へと向かい、カズは赤黒いマークとモンスターの反応を追い掛けた。
 地中から出たことで地面には移動した際の痕跡が残っており、カズはその跡をたどって行った。

「また穴か」

 モンスターが移動した跡が消えた場所には、地中へ続く穴がポッかりとあった。
 今度の穴も、カズが余裕で通れるほど大きなものだった。
 カズは躊躇することなく、穴に飛び込み後を追う。
 モンスターが通った穴は、地中の深くに向かっていた。
 穴に入り80m程潜った辺りで、モンスターが通った穴は横へと続いていた。
 その先で赤黒いマークとモンスターの反応は止まっていた。

「あのモンスター共を片付けて、ここまで追ってきタカ」

「まだその人に寄生しているのか。正体はもう分かってるんだぞ(ステータス見たから)」

こいつルマンチーニは居心地がよくてな。お前が大人しく牢に囚われてれば、フェアリー一匹だけですんだもノヲ」

「それはレラのことか」

「そんな名前だっタカ。ぐゲ」

 ルマンチーニの背後から黒い靄が漏れだし、カズの目が鋭くなる。

「攻撃したければすればいい。こいつルマンチーニが死ぬだケダ」

「こんな穴の中で何をするつもりだ? (服従の刻印を壊せば、イキシアの洗脳も……)」

「この石の向こうに何があるか知ってるか?」

「こんな地中に何があるって……ダンジョン」

「ぐゲゲ。そうダンジョンだ」

「ダンジョンは塞がれて入れないはずだ。それに場所もここじゃ…」

「地中のダンジョンに入る方法が一つだけだと思うノカ」

「入れたとしてダンジョンで何をする気だ?」

「長ク閉ざされたダンジョンにハ、マナが多ク蓄積されてイル」

「マナが蓄積……アソートエンジンの燃料にするのか!」

「話ハここまでダ。出ろ」

 ルマンチーニが合図をすると、地中に隠れていたモンスターがカズの居る場所の天井から姿を現す。

「強力な魔法を使うト崩れるゾ」

「斬れば問題ないだろッ」

「斬ることができれバダ。暴れろストーンワームイーター」

 現れたストーンワームイーターは天井の岩盤を噛み砕き、バラバラと岩を大量に落とす。

「これじゃ魔法を使わなくても穴が崩れるじゃないか!」

「だったら魔法を使えばよかロウ」

「お前も生き埋めだぞ!」

「それがどうシタ。ぐゲゲガ」

 不気味に笑い挑発するルマンチーニパラサイトスペクターLv8

「〈フリーズ〉」

 天井の岩盤を出入りすらストーンワームイーターに向けて、氷結魔法を放つカズ。
 ひび割れ崩れ落ちそうになっていた岩盤は凍り付き、岩の落下が止まる。
 ストーンワームイーターは氷結魔法を避け、地中へと隠れる。

「攻撃するととモニ、崩れる岩盤を防いダカ。この暗闇でそこまで動けるお前は人なノカ?」

「これでも俺は人間だ!」

「ぐゲガガガ。今だ、ここから運び出せ」

「しまっ…」

 地中を移動したストーンワームイーターは、カズの足もとから大口を開けて襲いかかる。

「ぐゲガガガッ! マナストーンを食い続ケ、大きく凶暴になったストーンワームイーターはどウダ」

 ダンジョンから溢れるマナの影響を受けた岩を取り込み続けたストーンワームイーターは、最初に見たときより倍の大きさになっていた。
 岩もろともカズを大口で飲み込んだストーンワームイーターは暴走状態となり、地上に向けて移動する。
 飲み込ませる寸前に、カズはストーンワームイーターを《分析》してステータスを見ていた。


 名前 : ストーンワームイーター
 種族 : 大ミミズ
 ランク: B
 レベル: 42
 力  : 765 → 982
 魔力 : 184 → 212
 敏捷 : 669 → 873
 スキル: ストーンイーター
 全長 : 4m40㎝ → 10m80㎝
 状態 : 濃い魔素の石や岩を多く取り込み過ぎで、巨大化して暴走状態となっている。
 補足 : 石や岩を食べる大ミミズの変異種。


 その頃カズと別れて一人イキシアを追い掛けるフローラは、王城のすぐ外でモンスターと戦うロイヤルガードを目撃した。

「援護します」

「誰だ?」

「第2ギルドマスターのフローラです」

「第2ギルドのマスター!?」

「話はモンスターを倒してからだ。足止めを頼む」

「はい〈ソーンウォール茨の壁〉〈プラントバインド〉」

 フローラの魔法で棘だらけの植物の壁を作りモンスターを進路を塞ぎ、一瞬動きを止めた隙に植物の蔓で絡め拘束をする。
 そこへ三人のロイヤルガードが剣で拘束されたモンスター斬り倒した。

「協力感謝します」

「このモンスターはどこから?」

「それが我々も……」

「トリモルガ家の近くでモンスターが多く出現したと報告を受け、防備を固めるため城から出たら、急にモンスターが現れたんです」

「急に?」

「はい。突然に」

「そういえばモンスターが現れる直前に、葉っぱのようなものが舞っているのを見た気が」

「葉っぱ? 何を言ってるんだ。この辺りには葉が舞うような木はないぞ。それに深夜とはいえ王城付近は明るいんだ、お前の見間違いだろ」

「分かってる。だから気のせいかと」

「そんな話はいい。それより第2ギルドのマスターが、こんな深夜に王城へ何の用ですか? モンスターが現れたのと関係が?」

「それなんですが、私が来る前に誰かが来ませんでしたか?」

「我々は見ていません」

「と言うか、オレらが城から出た途端にモンスターが現れたので」

「ありもしない葉っぱ……モンスター……」

 フローラは倒れてるモンスターに近づき、何かを探り始めた。

「何をしてるんです?」

「! 貴方が見た葉っぱというのは見間違いです」

「それは分かって…」

「葉っぱではなく、おそらくそれはソーサリーカードの一種です」

「ソーサリーカードの一種……?」 
しおりを挟む
感想 84

あなたにおすすめの小説

器用貧乏の底辺冒険者~俺だけ使える『ステータスボード』で最強になる!~

夢・風魔
ファンタジー
*タイトル少し変更しました。 全ての能力が平均的で、これと言って突出したところもない主人公。 適正職も見つからず、未だに見習いから職業を決められずにいる。 パーティーでは荷物持ち兼、交代要員。 全ての見習い職業の「初期スキル」を使えるがそれだけ。 ある日、新しく発見されたダンジョンにパーティーメンバーと潜るとモンスターハウスに遭遇してパーティー決壊の危機に。 パーティーリーダーの裏切りによって囮にされたロイドは、仲間たちにも見捨てられひとりダンジョン内を必死に逃げ惑う。 突然地面が陥没し、そこでロイドは『ステータスボード』を手に入れた。 ロイドのステータスはオール25。 彼にはユニークスキルが備わっていた。 ステータスが強制的に平均化される、ユニークスキルが……。 ステータスボードを手に入れてからロイドの人生は一変する。 LVUPで付与されるポイントを使ってステータスUP、スキル獲得。 不器用大富豪と蔑まれてきたロイドは、ひとりで前衛後衛支援の全てをこなす 最強の冒険者として称えられるようになる・・・かも? 【過度なざまぁはありませんが、結果的にはそうなる・・みたいな?】

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?

山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。 2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。 異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。 唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】

一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。 追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。 無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。 そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード! 異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。 【諸注意】 以前投稿した同名の短編の連載版になります。 連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。 なんでも大丈夫な方向けです。 小説の形をしていないので、読む人を選びます。 以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。 disりに見えてしまう表現があります。 以上の点から気分を害されても責任は負えません。 閲覧は自己責任でお願いします。 小説家になろう、pixivでも投稿しています。

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜

ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった! 謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。 教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。 勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。 元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。 力を持っていても順応できるかは話が別だった。 クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。 ※ご注意※ 初投稿、試作、マイペース進行となります。 作品名は今後改題する可能性があります。 世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。 旅に出るまで(序章)がすごく長いです。 他サイトでも同作を投稿しています。 更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。

クラス転移で神様に?

空見 大
ファンタジー
空想の中で自由を謳歌していた少年、晴人は、ある日突然現実と夢の境界を越えたような事態に巻き込まれる。 目覚めると彼は真っ白な空間にいた。 動揺するクラスメイト達、状況を掴めない彼の前に現れたのは「神」を名乗る怪しげな存在。彼はいままさにこのクラス全員が異世界へと送り込まれていると告げる。 神は異世界で生き抜く力を身に付けるため、自分に合った能力を自らの手で選び取れと告げる。クラスメイトが興奮と恐怖の狭間で動き出す中、自分の能力欄に違和感を覚えた晴人は手が進むままに動かすと他の者にはない力が自分の能力獲得欄にある事に気がついた。 龍神、邪神、魔神、妖精神、鍛治神、盗神。 六つの神の称号を手に入れ有頂天になる晴人だったが、クラスメイト達が続々と異世界に向かう中ただ一人取り残される。 神と二人っきりでなんとも言えない感覚を味わっていると、突如として鳴り響いた警告音と共に異世界に転生するという不穏な言葉を耳にする。 気が付けばクラスメイト達が転移してくる10年前の世界に転生した彼は、名前をエルピスに変え異世界で生きていくことになる──これは、夢見る少年が家族と運命の為に戦う物語。

処理中です...